僕のお兄様がヤンデレなんて聞いてない

ふわりんしず。

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番外編

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温かな日差しが窓から差し込み、部屋の中をオレンジ色に染め上げる。

「今日で試験も無事に終わったわけだけど、

ーーーーーー…調子はどうだいリシウス」


閑散とした図書館内で、唐突にも口を開く者がいた。声音はごく穏やかに。

そう、目の前に腰を下ろして本を読む男…


ユリウスの婚約者・・・である。

左目を隠す様に流された髪は皇帝譲りか、汚れすら知らない綺麗な金髪。

前に一度、大切な子ユリウスが、奴の髪を見て綺麗だと発した瞬間から嫌いになった色でもある。


「お陰様で。普段通りですが」

「ふーん。普段通り・・・・ね。

大切な弟が消えて、言えるセリフとは思えないのだがな」



呆れた様な声音で発せられた言葉

今、奴の脳内は1人の人物で埋め尽くされているのだろう。突然消えた…婚約者

ただ1人を思い続けているのかもしれない


「そう言えば聞きそびれていましたね…俺のユリウスを何故婚約者に?」

たいした興味もない本を捲りながら聞いたのは、なんとなくではなく。確信していたからだ

ユリウスは気づいていないかもしれないが、



何人の人間が、男が…ユリウスを見ているのか

魅せられているのか、気付いていない。

自己評価がやたらと低く天然で鈍い。その癖、変なところで鋭いのはなんなのか、


初めてユリウスを抱いた日の夜、

ユリウスはイキ疲れて朦朧としていたから覚えていないだろうが、口にした。

『僕は…仮の婚約者、だよ』と。

少なくともユリウスはそう思っていた。



けれど俺は知っている。

ユリウスにいい顔だけを見せてきた俺と、目の前の皇子は同類だと。

ユリウスに向ける、優しい目。しかし、時折見せる雄の顔。

やたらとスキンシップが多かったこと、
ユリウスに近づく害虫が急激に減ったこと、

用意周到にも程がある。

周りから固めていく事で、逃げてを防いだのだから。



「本気で好きになったから、かな

まぁ行方不明じゃ結婚できないし、婚約の話しも消えると思うよ。

おっと。予定があるからこの辺で。」


分厚い本をとじ、席を立つ男。

また話そう。そう言い残して、図書館を去る男に軽く頭だけ下げておく。

本当なら未来の家臣らしく席を立ち、胸に手を当て頭を下げるのが常識だが…ここはあくまで学園だ。

そして彼も堅苦しい接し方を嫌う節がある

だからわざわざ席を立つことをしないし。自身をへり下る言い回しも、ゴマも擦らない


上に立つ者としてのカリスマ性や、頭だってきれる。下につきたい、従いたいとすら思う者は多すぎるほどだ。俺だってユリウスが関わっていなければもっといい関係になれていただろう





「取り敢えずユリウス関連の記憶、全部消す魔道具とか無いかな」

穏やかな夕方。
温かな日差しが差し込む中、

穏やかな声音で呟かれた独白は冗談か本気か



リシウスにしか分からない。

消えたと言われている弟、ユリウスは誰かに摘まれる前に愛でて摘み。

大事に保護している。


今もあの・・部屋で俺の帰りを待っている。





大切なは、外から出さなければいいのだと


身をもって知ったから。
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