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俺の為に、ね
しおりを挟む歌いながら息苦しさを感じたり、空気が恋しくなる経験は初めてだと思う。
ブレスを行う所では息を止め、間奏の所では息を吸っていない証拠としてリスナーさんに話し掛ける。1時間以上ノンブレスをしていたような苦しさだったが…、
実際1分も満たなかったらしい。思わず吸ってしまった空気音を聞いてしまったリスナーは、
“え!?はやっ!”
“負け確定の勝負だったねw”
というコメントを残すが、嫌味というよりニュアンス的には労いすらも感じられた。
『きっつ。いや、俺どんくらい頑張った?』
「大体50秒くらいですね」
『…一応聞くけどさぁ。最高何分位なんかな』
「人間が息を止められる平均は大体1~2分ですかね…多分」
『え。…じゃあ俺最弱ってことかよ』
軽く頭を抱えつつ、項垂れる俺を他所に。
何故かリスナーが盛り上がる。
–□□さんワクワク
–がんばれぇええ!
–願い事なにかなぁ///
–推しと推しがやばいっ
–□□さんはあくあに何をお願いするの!?
あ、あれ…おっかしいなぁ。なんか俺もう負けてる前提でコメント欄書き込まれてるんですけど。
いやいや。奇跡が起きるかもしれないじゃん
もしかしたら俺より肺活量よわよわかもしんないじゃん。
「ははっ。あくあさんのいっぱいいっぱいの声…可愛かったです。聞けてよかった」
『へ!?か、かわっ…?』
「じゃ、俺も頑張っちゃおうかな。俺の為に、ね」
イヤホン越しに聞こえた、吐息混じりの艶っぽい声に…
かぁああ、っと頬が熱くなる。
それを誤魔化したくて、『じゃあ早く歌えよ!!!俺が勝ったら1年分の菓子買わせるからなっ』
と、ほぼ大声で叫んでいた。
その声ががっつりひっくり返った事も、普段より早口になってしまったことも…
気付くはずも無く。
スマホ越しに聞いていたリスナー全員が
“あくあたん…ガチ照れじゃん”
もれなく、あくあ推しリスナーが悶えていた事など知る筈もない。
そして、あくあガチ恋勢の彼もまた、ミュートをする事すら忘れ
あくあの可愛さに悶え、
あらゆる神に感謝した。
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