配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました！？お、俺は彼女が欲しいかな！！

キャラ崩壊なんてしてたまるか

残りの3時間、ただ機械みたく心を無にして働いた。ただのレジ打ちじゃん？なんて考えながら選んだバイトは想像以上にキツく、やり甲斐がある仕事だった。ずっと立ちっぱなしだし、時折1人で全てを回さないと行けない時があり、楽な仕事ではないと…働き始めてすぐ、自身の考えが誤っていた事を知った。

楽な仕事なんてあるわけがないのだ。なんなら職業に上も下もない。

とは言ってもスタッフには恵まれて、人間関係の点では働きやすい場所ではある。

普段の俺なら満面の笑みでレジに立っているのだが…


今はイキイキと働けない。なんなら表情は無である。いや、げっそりしていると言ったほうがいいだろうか。


逃げるようにして来たバイト先では、何の嫌がらせか…コンビニのコピー機で誰が描いたか知らないが、複数枚俺のオリキャラが描かれた紙をコピーしたいとお客が俺にゆってきた時には顔が盛大に引きつったし、


ぶっちゃけメンタルがゴリゴリに殺られたとか言えない。

そしてなんとか3時間耐え抜いた俺は…、


午後のシフトが入っている職員と入れ替わりで、無事帰路へと着く事ができたのだった





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『ぁああああぁああ…どーすっかなぁ配信』

自室にて、パソコンの前で頭を抱える俺が

真っ暗なパソコンの画面に映っていた。配信しないといけない、そう思うのだが


中々踏み切れないのは自分のやらかした失態が余りにもデカ過ぎるからだ。

最悪だ、…マジで。
煽り系配信者だからリスナーが付いてきてくれていたのに。
糞みたいな配信だったからアンチがいっぱいいてくれたのに、

素が出た俺なんて…面白みのないただの一般人でしかない。


ありえねぇ。

しかも配信を切り忘れた上に、あくあに向かって『にゃんにゃん』なんて言って話しかけてしまった。

気の抜けたアホみたいな話し方を何人に聞かれたのか、

スマホがその音声を拾わなかった事を願いたいが、如何せん朝のSNSを見た限り


がっつり聞かれている。

じゃなかったら『猫語』なんて単語はハッシュタグに乗らない筈だ。

もっと最悪なのは、たまたま配信に行けれなかった人に向けてリスナーが器用にも素の部分を切り抜き投稿している事だ。


その投稿をみた輩が面白半分か何かで反応(いいね、RT、リツイート、リプ)をするものだから、人が人を呼び悲しいかな拡散されてゆく。

不幸中の幸いなのは、

スマホの充電が配信中に落ちたらしく、夜中に配信が終わっていた。

その間、充電が切れるまで配信を繋げようとしていたのかリスナーから大量の延長アイテムが投げられていたのには…


軽く頭痛を覚えたが、


だからと言って、開き直って素で配信するのか

と、問われれば否である。今までずっとあのキャラでやって来た。それを今更、ついうっかり放送事故にあったから。という理由で手の平を返してキャラ変、なんて事はしたくない。




『はー…うっし、やるか謝罪配信兼煽り配信』

1度決めた事は貫き通したい。

その決断がどう転ぶかは…まだ分からないけれど。




覚悟を決めて俺はスマホをタップした。