ロードノベル 死ねないレグノと生きたいマーロ

うさみかずと

文字の大きさ
上 下
4 / 5
平等に溢れた世界

3

しおりを挟む
 そのままホテルを出て辺りを見回すと道路を一本挟んだところにレストランとかいてある建物があった。カラス越しに見える客や店員はみんな男性なら青い服。女性なら赤い服を着ている。

「やっぱり変よ。この国」

 青い服を着たマーロが追いかけてきて言った。

「明日この国の歴史について調べてみようか」

 レストランに入ったふたりを出迎えたのはやはり同じ服を着た人たちで、門の外から来たことを話すと条件つきで今晩の食事を無料にしてくれるというのでレグノは二つ返事で承諾した。

「何を話していたの?」

「うん、たいしたことじゃないよ。ただちょっと明日この国の人に会う約束をした」

「ふーん」

 聞いたわりに対して興味のなさそうにマーロはメニュー表を眺める。

 しかしそこに書かれているメニューはひとつしかない。

「もうなんなのよ、一つしかないならメニュー表なんていらないじゃない」

「わびさびってやつじゃないかな」

 悪態をついてメニュー表をテーブルに放り投げたマーロにレグノは口元を緩ませながら言った。

 ふたりはメニュー表にあったたったひとつのメニューを注文する。焼き魚と米のような穀物と野菜、デザート不思議な色のフルーツの料理を全ての客が食べている。五分もしないうちにその料理が運ばれてきて、ふたりはそれを食べた。おいしかったと言っていい。

 ホテルに戻るとレグノはシャワーを浴びた。明日のことをマーロと相談するつもりで早くあがったのにマーロはベッドで寝息をかいて寝ていた。レグノがマーロの体を揺すって起こすと彼女は不満そうに睨んでくる。 

「明日のことなんだけど」

「眠いの」

「それは僕も同じさ」

「私はねレグノ、きれいでふかふかなベッドがあるとすぐに眠くなる病気なの。難病なの。もう永くないの。だからおやすみなさい」

「そうじゃなくて明日の……」

「もう! あなたって人は本当にわびさびがないわね!」

「わびさびとは?」

 そう言うとマーロは、もうなにをしても起きることはなかった。レグノは諦めて、

「おやすみなさい。マーロ」

 小さくつぶやくと、こくりと頷いてまた寝息をかきはじめる。

 レグノも次第に眠くなって横になった視界がぼやけてまぶたがどっと重くなって目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

処理中です...