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Summer Camp
第34投
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リーグ戦の疲れをとるための十日間のオフ期間が終わり久留美たちはいつもの河川敷のグラウンドに集合した。
スマホの時刻を確認する。もう三限が終わっているころだからそろそろだ。
「こ、こんにちは!!」
あんこの元気な声が響いて久留美の右耳がキーンとなる。
颯爽と登場した菜穂はしっかりユニフォーム姿で昔の面影を残している。
さすがに元プロ野球選手だ。帽子の上にかかった日光を遮断するスポーツ用のサングラスがすごくかっこよく見える。
「集合!」
真咲の掛け声で小さな輪になる。
「監督さっそくなんですが……」
「ちょっとまって、やっぱり監督ってのはやめてくれる。なんか偉そうでいや、普段通り先生でいいです」
真咲は改めて言い直すと今日の練習メニューを説明した。アップしてノック、バッティング、ランニングトレーニング、クールダウン。この流れでいいのか承諾をとると菜穂は頷いた。
アップと言っても野球の基本動作ができるように体を動かし、最後に短距離ダッシュをして体のキレをつくる。菜穂はなにも言わずアップを見ていた。キャッチボールが終わりいよいよノックが始まる。
ノックバットを持つ蔵田先生はキャッチャーの真咲に「すごく楽しみと」言って笑顔を見せている。
真咲が「内野七、五」(オールファースト七、ゲッツー五)と内野に呼びかけ何スイングかしたあとサードに打った。
正面に飛んだ打球はまるでバッターが打ち返したかのような回転がかかる。眞子のグラブは打球に少し押されながらゴロをさばき、ショート、セカンド、ファーストと流れるようにノックを打っていく。
菜穂は二周目から打球を右にふった。三周目は左、四周目は正面、五周目は「ショートバウンドでさばきなさい」と言って打球を野手がちょうどショートバウンドでさばける位置に打球を落とした。
さらに六周目はなんとバットのヘッドを下げながら地を這うゴロを打った。普通ノックでゴロを打つときはバットのヘッドを立てるのだがこの人はレベルスイングに近い軌道でボールを打つ。ノックバットは普通のバットより長いためどうしてもゴロを打とうとすると必要以上のダウンスイングになりがちだが蔵田先生はノックバットの長さをグリップを前に走らせることで克服してより実戦に近い打球を打っている。
ノックが終わるとすぐにバッティングに入る今日はバッティングマシーンがないから三か所バッティングのうち二か所は野手によるハーフバッティングになる。菜穂は一人ひとりのバッティングを観察するとなにかメモをとって指導らしいこともせずただ黙って見ていた。
ランニングトレーニングが終わると全体の練習は終了した。再び真咲が集合をかける。
「お疲れ様。とりあえず初回の練習の感想だけどチーム全体に伸びしろは感じたわ。特に打撃に関してはもっと改善できるところがある。早乙女さん今後のオープン戦の予定はどうなっているの?」
真咲は秋までのリーグ戦の間の夏のオープン戦の大まかの予定を伝えた。それを聞いて菜穂は驚いた。
「夏休みの間に五試合って少なすぎない、しかもほとんど地方リーグの二部じゃない」
「すいません。そのくらいしかつてがなくて」
一度ため息をつくとポケットからスマートフォンを取り出して私たちの前でどこかに電話をかけ始めた。
「もしもし、あ、そうです。その節はどうも」
五分ほどの会話にオープン戦をぜひとの言葉が飛び出して私たちは緊張を隠せなかった。
電話越しの相手にお礼をいうとにやりと笑った。
「よし。今週の土曜日、城東大学オープン戦入ったからね」
先輩たちは驚いた。城東大学と言えば帝都大学リーグ一部に所属しているチームで春季リーグ戦は四位だ。帝都大学リーグは京成大学、ニッポン体育大学、築場大学を始めとする全国屈指の強豪がひしめき合うレベルの高いリーグであり、全国大会でもベスト8に食い込んでくる。
「まぁお手並み拝見で城東大学に乗り込みましょう」
スマホの時刻を確認する。もう三限が終わっているころだからそろそろだ。
「こ、こんにちは!!」
あんこの元気な声が響いて久留美の右耳がキーンとなる。
颯爽と登場した菜穂はしっかりユニフォーム姿で昔の面影を残している。
さすがに元プロ野球選手だ。帽子の上にかかった日光を遮断するスポーツ用のサングラスがすごくかっこよく見える。
「集合!」
真咲の掛け声で小さな輪になる。
「監督さっそくなんですが……」
「ちょっとまって、やっぱり監督ってのはやめてくれる。なんか偉そうでいや、普段通り先生でいいです」
真咲は改めて言い直すと今日の練習メニューを説明した。アップしてノック、バッティング、ランニングトレーニング、クールダウン。この流れでいいのか承諾をとると菜穂は頷いた。
アップと言っても野球の基本動作ができるように体を動かし、最後に短距離ダッシュをして体のキレをつくる。菜穂はなにも言わずアップを見ていた。キャッチボールが終わりいよいよノックが始まる。
ノックバットを持つ蔵田先生はキャッチャーの真咲に「すごく楽しみと」言って笑顔を見せている。
真咲が「内野七、五」(オールファースト七、ゲッツー五)と内野に呼びかけ何スイングかしたあとサードに打った。
正面に飛んだ打球はまるでバッターが打ち返したかのような回転がかかる。眞子のグラブは打球に少し押されながらゴロをさばき、ショート、セカンド、ファーストと流れるようにノックを打っていく。
菜穂は二周目から打球を右にふった。三周目は左、四周目は正面、五周目は「ショートバウンドでさばきなさい」と言って打球を野手がちょうどショートバウンドでさばける位置に打球を落とした。
さらに六周目はなんとバットのヘッドを下げながら地を這うゴロを打った。普通ノックでゴロを打つときはバットのヘッドを立てるのだがこの人はレベルスイングに近い軌道でボールを打つ。ノックバットは普通のバットより長いためどうしてもゴロを打とうとすると必要以上のダウンスイングになりがちだが蔵田先生はノックバットの長さをグリップを前に走らせることで克服してより実戦に近い打球を打っている。
ノックが終わるとすぐにバッティングに入る今日はバッティングマシーンがないから三か所バッティングのうち二か所は野手によるハーフバッティングになる。菜穂は一人ひとりのバッティングを観察するとなにかメモをとって指導らしいこともせずただ黙って見ていた。
ランニングトレーニングが終わると全体の練習は終了した。再び真咲が集合をかける。
「お疲れ様。とりあえず初回の練習の感想だけどチーム全体に伸びしろは感じたわ。特に打撃に関してはもっと改善できるところがある。早乙女さん今後のオープン戦の予定はどうなっているの?」
真咲は秋までのリーグ戦の間の夏のオープン戦の大まかの予定を伝えた。それを聞いて菜穂は驚いた。
「夏休みの間に五試合って少なすぎない、しかもほとんど地方リーグの二部じゃない」
「すいません。そのくらいしかつてがなくて」
一度ため息をつくとポケットからスマートフォンを取り出して私たちの前でどこかに電話をかけ始めた。
「もしもし、あ、そうです。その節はどうも」
五分ほどの会話にオープン戦をぜひとの言葉が飛び出して私たちは緊張を隠せなかった。
電話越しの相手にお礼をいうとにやりと笑った。
「よし。今週の土曜日、城東大学オープン戦入ったからね」
先輩たちは驚いた。城東大学と言えば帝都大学リーグ一部に所属しているチームで春季リーグ戦は四位だ。帝都大学リーグは京成大学、ニッポン体育大学、築場大学を始めとする全国屈指の強豪がひしめき合うレベルの高いリーグであり、全国大会でもベスト8に食い込んでくる。
「まぁお手並み拝見で城東大学に乗り込みましょう」
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