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Spring Season
第26投
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「これはスピード違反やぁ、誰か取り締まってぇな」
鴻巣が呆れながら呟く。それもそのはずコースは全て甘いのに捉えることができない。女子プロ野球でも130キロ近いボールを投げる選手は少ない。まして女子大学野球など速球派と言われる投手でも125キロの壁は高いのだ。
「ナイスピッチ!」
真咲は素早くファーストにボールを投げるとボール回しがスムーズに流れる。
再び久留美にボールがかえってアウトカウントを確認して間をとった。
ーーさて次が問題ね。
真咲は左バッターボックスに入った香坂遥夏をマスク越しからじっと眺めた。
全国大会常連の創世大学にて、一年生からレギュラーの座を掴み、二試合で打率5割。驚異的な数字を叩き出している。
マウンド上の久留美は複雑な心境だった。かつてのチームメイトで姉妹のように仲睦まじく中学、高校ではバッテリーを組んでいた。しかし再び相見えると仲が良かったとは思えないほど二人はお互いに目を合わせようとしない。
真咲はアウトコースにミットを構えた。
久留美に細かいコントロールはない。球の球威で抑え込むことしか出来ないから、配給など皆無だ。
しかしそれでもボール球をストライクに見せたり、ミットにおさまる音を大きくしたり、ピッチャーに気持ちよく投げさせる方法はいくらでも知っている。
真咲は、なかなか投球モーションに入らず、プレートを外した久留美を鼓舞するようにミットを鳴らす。そして、大きくミットを開いて構えた。
久留美の初球に注目が集まる。彗星の如く現れた速球派と新人賞候補で創世大学の若き主砲の対決はこの試合で一番の見ものだ。
久留美の初球を観客は静かに見守る。
構えたミットよりボール一個分内に入ってきたが遥夏は平然と見送った。
続く二球目も真ん中寄りのコースだったが、遥夏は球筋を見極める素振りを見せずに見送る。
ーー遥夏ちゃん何を狙っているのだろう?
簡単に追い込んだ久留美は遥夏の狙いが分からずにいた。
今までのバッターは初球からどんどん振ってきたので、ただ思い切り腕を振ればよかったのだが、遥夏はまだバットを振る気配すら見せない。
しかし今日はすごく調子が良かった。それに何も考えず真咲のミット目掛けてボールを投げていれば抑えることができそうだ。
ーー早く抑えてベンチに帰りたい。
そんな考えが頭をよぎる。
第三球目も同じように腕を振る。遥夏は足を上げることなく、そのまま後ろ足に体重を乗せると、トスバッティングみたくボールをファールゾーンに弾き返した。
鴻巣が呆れながら呟く。それもそのはずコースは全て甘いのに捉えることができない。女子プロ野球でも130キロ近いボールを投げる選手は少ない。まして女子大学野球など速球派と言われる投手でも125キロの壁は高いのだ。
「ナイスピッチ!」
真咲は素早くファーストにボールを投げるとボール回しがスムーズに流れる。
再び久留美にボールがかえってアウトカウントを確認して間をとった。
ーーさて次が問題ね。
真咲は左バッターボックスに入った香坂遥夏をマスク越しからじっと眺めた。
全国大会常連の創世大学にて、一年生からレギュラーの座を掴み、二試合で打率5割。驚異的な数字を叩き出している。
マウンド上の久留美は複雑な心境だった。かつてのチームメイトで姉妹のように仲睦まじく中学、高校ではバッテリーを組んでいた。しかし再び相見えると仲が良かったとは思えないほど二人はお互いに目を合わせようとしない。
真咲はアウトコースにミットを構えた。
久留美に細かいコントロールはない。球の球威で抑え込むことしか出来ないから、配給など皆無だ。
しかしそれでもボール球をストライクに見せたり、ミットにおさまる音を大きくしたり、ピッチャーに気持ちよく投げさせる方法はいくらでも知っている。
真咲は、なかなか投球モーションに入らず、プレートを外した久留美を鼓舞するようにミットを鳴らす。そして、大きくミットを開いて構えた。
久留美の初球に注目が集まる。彗星の如く現れた速球派と新人賞候補で創世大学の若き主砲の対決はこの試合で一番の見ものだ。
久留美の初球を観客は静かに見守る。
構えたミットよりボール一個分内に入ってきたが遥夏は平然と見送った。
続く二球目も真ん中寄りのコースだったが、遥夏は球筋を見極める素振りを見せずに見送る。
ーー遥夏ちゃん何を狙っているのだろう?
簡単に追い込んだ久留美は遥夏の狙いが分からずにいた。
今までのバッターは初球からどんどん振ってきたので、ただ思い切り腕を振ればよかったのだが、遥夏はまだバットを振る気配すら見せない。
しかし今日はすごく調子が良かった。それに何も考えず真咲のミット目掛けてボールを投げていれば抑えることができそうだ。
ーー早く抑えてベンチに帰りたい。
そんな考えが頭をよぎる。
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