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Spring Season

第25投

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「ストライクバッターアウト!」
 スタンドからうなり声に近いため息が漏れた。
 久留美はこの回先頭だった四番笠居を三球三振に抑えたのだ。
「ストレートにめっぽう強い笠居を力で抑えたぞ、あの娘はだれだ?」
「咲坂って言うのか」
 柊を見にきていた。女子プロ野球のスカウトや社会人チームのスカウトの注目は一気にマウンドにいる久留美に集まる。
 ーーこの感じ久しぶりだ。
 久留美はロージンを手にまぶし、早くも投球モーションに入っていた。
「ストライク!」
 五番鴻巣のバットは空を切り、その度に大きな歓声が巻き起こる。電光掲示板のスピードガンはまたも126キロを表示した。
「おいおい偵察班からあんなに速いなんて聞いてなかったぞ」
 笠居が半笑いしながら久留美を眺めた。
「速いだけじゃない、すごいブレ球だ」
 指宿は静かな声で答えると、柊だけは嬉しそうに頬を緩ませた。
「さすがだ咲坂久留美! がっぷりよっつといこうじゃないか!」
 柊の言葉で創世大学のベンチは一点勝負になることを想定し始めた。
「甘いですね先輩方、そんなことでは全国で足元をすくわれますよ」
 ベンチが一瞬にしてピリついた。ネクストバッターの遥夏の一言で沈黙が流れる。
「ストライクツー!」
 ど真ん中のストレートにタイミングが合わず、スピードガンは128キロを表示する。
「相変わらず口だけは達者だな遥夏。萌絵里があれだけ降り遅れているストレートに非力なお前が対応できるわけないだろう」
 笠居が遥夏の背中を睨みつける。遥夏は立ち上がりバットを軽く振って首だけ振り返る。
「バッティングは力じゃない。技で長打を打つこともできます。奏さんそんな考えでいつまでも四番の座にいられるとでも?」
「おまえ、誰に向かって……」
「おいその辺にしとけ、試合中だ」
 一触即発の空気に口を出したのは創世大学監督の一色伊織だ。
「奏は一度頭から水かぶってこい」
「すみませんそうします……おい遥夏三振したらどうなるかわかってんだろうな」
「さぁ、私三振しないので」
「てめぇ」
「奏! 二度言わすな」
「チッ」
 笠居は注意され虫の居所が悪くなったのかベンチの裏にきえた。殺伐となったベンチで柊だけは大笑いする。
「ハハハ! 高めあっていてけっこう!」
「ジャスティス。お前は少し静かにして」
 指宿はベンチが変な空気になることを恐れて柊の口を塞いだ。もがもが言っている柊を押さえながら遥夏に視線を向ける。
「でも遥夏、あそこまで啖呵切るんだから何か手はあるの?」
「まぁ見ててくださいキャプテン」
 ストライクバッターアウト!
 二者連続三振で調子を上げる久留美を睨み遥夏はバッターボックスに向かう。
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