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第一章
言い訳
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「っ」
アンネの高い声で佐伯は目を覚ました。
「あぁ、朝か」
昨晩のことは悪い夢とも思いたかったが、身体がそれを否定していた。悪魔から受けたダメージは思ったよりも大きく浅い眠りでは回復も追い付かない。
「なんであなたが私の布団で寝てるんですか?」
上体を起こして座り込んだアンネははだけた胸元を両手で隠しながら耳を赤くしている。
「いや……いやいやち、違うよ」
佐伯はようやく状況を理解して起きると正座しながら全力で否定する。
「なにが違うのですか? 変態、スケベ、痴漢」
アンネは自分が知っている言葉で罵倒しながら近くにあった枕を佐伯に何度も叩きつけた。
「ちが、違うんだ。これには空よりも高く海よりも深いわけがあって」
「どんなわけがあって同じ布団に?」
「昨夜アンネが……」
そこまで言って佐伯は口をつむんだ。
――もし昨夜のことをアンネに伝えたら、彼女はどう思う?
『私に親切にしてくれる人が傷つく姿をもう見たくなかったから』
彼女が言った言葉が脳内に再生され繰り返される。
――もし、自分が本当のことを言ったら、アンネは傷ついてしまうかも知れない。
「昨夜私がなんです?」
「いや、たぶん寝ぼけて間違っちゃった……のかも」
咄嗟にでた苦し紛れの言い訳にしては及第点ではなかろうか。
「呆れました。そんな予定にないことをされたら困ります」
「ご、ごめんて、次から気を付けるから」
「はい、次回は前もって言ってください、まったくもうそれならこちらも心の準備が……」
「なんて?」
「なんでもありません!」
顔面に枕をくらう。佐伯は寝不足も相まってそのまま布団に倒れこんだ。
アンネの高い声で佐伯は目を覚ました。
「あぁ、朝か」
昨晩のことは悪い夢とも思いたかったが、身体がそれを否定していた。悪魔から受けたダメージは思ったよりも大きく浅い眠りでは回復も追い付かない。
「なんであなたが私の布団で寝てるんですか?」
上体を起こして座り込んだアンネははだけた胸元を両手で隠しながら耳を赤くしている。
「いや……いやいやち、違うよ」
佐伯はようやく状況を理解して起きると正座しながら全力で否定する。
「なにが違うのですか? 変態、スケベ、痴漢」
アンネは自分が知っている言葉で罵倒しながら近くにあった枕を佐伯に何度も叩きつけた。
「ちが、違うんだ。これには空よりも高く海よりも深いわけがあって」
「どんなわけがあって同じ布団に?」
「昨夜アンネが……」
そこまで言って佐伯は口をつむんだ。
――もし昨夜のことをアンネに伝えたら、彼女はどう思う?
『私に親切にしてくれる人が傷つく姿をもう見たくなかったから』
彼女が言った言葉が脳内に再生され繰り返される。
――もし、自分が本当のことを言ったら、アンネは傷ついてしまうかも知れない。
「昨夜私がなんです?」
「いや、たぶん寝ぼけて間違っちゃった……のかも」
咄嗟にでた苦し紛れの言い訳にしては及第点ではなかろうか。
「呆れました。そんな予定にないことをされたら困ります」
「ご、ごめんて、次から気を付けるから」
「はい、次回は前もって言ってください、まったくもうそれならこちらも心の準備が……」
「なんて?」
「なんでもありません!」
顔面に枕をくらう。佐伯は寝不足も相まってそのまま布団に倒れこんだ。
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