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第一章
第二郷土室
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「お連れさんは?」
「あぁ隣のクラスの佐伯くん」
「あっどうも佐伯です」
きりっとした顔つきでいつもより低い声で挨拶する。
「先生中島さんきてる?」
前髪センターわけが聞くと長野先生はうんと頷いたあと、珍しそうに笑って、
「さっきまで三組のミッシェルさんと学習室でお話してたんよ。中島ちゃん人気者やねぇ」
ミッシェルと聞いて思い浮かぶのは一人しかいなかった。
「じゃあ、まだ学習室に?」
「いやいや、今は受付におるよ。今日当番の子が職員室に呼び出されちゃったらしくてね、来るまでお仕事してくれてるんよ……急用なら声かけてあげるけど」
司書室と図書館をつないでいるのは一枚のドアだった。そのドアの向こうが本の貸し借りができるカウンターになっている。
ガラス張りで佐伯たちからでも図書館の室内がよく見えるようになっていて、たぶんあそこで座っている後ろ髪の主が中島美知恵なのだろう。
「いや大丈夫っす。あっちのドアから入って正面から会いに行きます」
前髪センターわけがそう言うと長野先生はにっこり笑い手を振った。一礼して図書室とかかれたプレートが掲げられたドアを開ける。スライド式のドアの音に反応したカウンターに座る女の子がこちらを見つめて佐伯たちは軽く会釈しながら近づいていく。
「あのなんでしょう」
カウンターにいた中島美知恵は、少し疲れた表情で佐伯たちと視線を合わせた。
「中島さん、この前の話なんだけど彼が拝み屋なんだ。つらいとは思うけどもう一度お話してくれないかな」
「もういいです、話したくない」
そこをなんとか頼むよと前髪センターわけは得意のいけ好かない爽やかスマイルでお願いするも中島美知恵は頑として譲らない。
「分かった。だいたいこいつから聞いてるから無理して話さなくてもいいよ」
佐伯はしびれを切らしそうな前髪センターわけをなだめてから口を開く。
ため息を吐きながら彼女は返却ボックスに置かれた本を取りに歩く。
「そう言ってくれると助かります。でもさっきミッシェルさんとお話して解決しそうなので」
背中越しに聞こえた返答に佐伯はちらりと前髪センターわけを見る。
「解決したって、俺の親戚でもだめだったのについこの間転校してきた外国人の女の子にそんなことできるわけないだろう」
「あの人エクソシストで、霊が見えるって……それで祓ってもらいました。で、その原因は三階の第二郷土資料室に足を踏み入れたからって言われたから」
彼女は回収した本を手に抱えながらうんざりしたように答えて上を向いた。佐伯が彼女の動きにつられて上を向いた瞬間、のしかかるような邪気を感じた。
――意識した瞬間、殺気を飛ばしたようなそんな鋭い邪気だ。
さっきまで趣があった図書館棟は、招かれざる客を歓迎する気はないらしい。
「ちなみにどうして第二郷土室に入ったの?」
前髪センターわけが中島に質問するが、彼女は口を閉ざした。
「おい、現場にむかわせてくれ」
このままじゃらちがあかないので前髪センターわけに耳打ちする。前髪センターわけも何かを察していた。
「もういいですか? これから返却された本の整理をしなくちゃいけないんです」
語尾を強めた彼女は苛立ちをおさえながら低い声で言う。
「わかったよ中島さん、じゃあせめて第二郷土室のカギを貸してくれないか?」
「それならもうミッシェルさんにお貸ししました」
「あぁ隣のクラスの佐伯くん」
「あっどうも佐伯です」
きりっとした顔つきでいつもより低い声で挨拶する。
「先生中島さんきてる?」
前髪センターわけが聞くと長野先生はうんと頷いたあと、珍しそうに笑って、
「さっきまで三組のミッシェルさんと学習室でお話してたんよ。中島ちゃん人気者やねぇ」
ミッシェルと聞いて思い浮かぶのは一人しかいなかった。
「じゃあ、まだ学習室に?」
「いやいや、今は受付におるよ。今日当番の子が職員室に呼び出されちゃったらしくてね、来るまでお仕事してくれてるんよ……急用なら声かけてあげるけど」
司書室と図書館をつないでいるのは一枚のドアだった。そのドアの向こうが本の貸し借りができるカウンターになっている。
ガラス張りで佐伯たちからでも図書館の室内がよく見えるようになっていて、たぶんあそこで座っている後ろ髪の主が中島美知恵なのだろう。
「いや大丈夫っす。あっちのドアから入って正面から会いに行きます」
前髪センターわけがそう言うと長野先生はにっこり笑い手を振った。一礼して図書室とかかれたプレートが掲げられたドアを開ける。スライド式のドアの音に反応したカウンターに座る女の子がこちらを見つめて佐伯たちは軽く会釈しながら近づいていく。
「あのなんでしょう」
カウンターにいた中島美知恵は、少し疲れた表情で佐伯たちと視線を合わせた。
「中島さん、この前の話なんだけど彼が拝み屋なんだ。つらいとは思うけどもう一度お話してくれないかな」
「もういいです、話したくない」
そこをなんとか頼むよと前髪センターわけは得意のいけ好かない爽やかスマイルでお願いするも中島美知恵は頑として譲らない。
「分かった。だいたいこいつから聞いてるから無理して話さなくてもいいよ」
佐伯はしびれを切らしそうな前髪センターわけをなだめてから口を開く。
ため息を吐きながら彼女は返却ボックスに置かれた本を取りに歩く。
「そう言ってくれると助かります。でもさっきミッシェルさんとお話して解決しそうなので」
背中越しに聞こえた返答に佐伯はちらりと前髪センターわけを見る。
「解決したって、俺の親戚でもだめだったのについこの間転校してきた外国人の女の子にそんなことできるわけないだろう」
「あの人エクソシストで、霊が見えるって……それで祓ってもらいました。で、その原因は三階の第二郷土資料室に足を踏み入れたからって言われたから」
彼女は回収した本を手に抱えながらうんざりしたように答えて上を向いた。佐伯が彼女の動きにつられて上を向いた瞬間、のしかかるような邪気を感じた。
――意識した瞬間、殺気を飛ばしたようなそんな鋭い邪気だ。
さっきまで趣があった図書館棟は、招かれざる客を歓迎する気はないらしい。
「ちなみにどうして第二郷土室に入ったの?」
前髪センターわけが中島に質問するが、彼女は口を閉ざした。
「おい、現場にむかわせてくれ」
このままじゃらちがあかないので前髪センターわけに耳打ちする。前髪センターわけも何かを察していた。
「もういいですか? これから返却された本の整理をしなくちゃいけないんです」
語尾を強めた彼女は苛立ちをおさえながら低い声で言う。
「わかったよ中島さん、じゃあせめて第二郷土室のカギを貸してくれないか?」
「それならもうミッシェルさんにお貸ししました」
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