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第268話

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 リャンリーが実力のある冒険者の名前を叫び招集を始めた。
 ゴーレムへ攻撃を仕掛けるためだ。
 リャンリーから離れた場所で戦っていたリゼは、リャンリーが叫んでいることさえ知らずに戦っていた。
 だが、近くで戦っていた冒険者たちから「リャンリーがゴーレムを倒す仲間を招集している」と聞かされる。
 自分が呼ばれることは無いだろうと思いながら、目の前の魔物たちと戦闘をしていた。

「リゼ‼ レティオールにシャルル、リャンリーからの招集だ。この辺の魔物は俺たちに任せて、早く行け!」
「はい。御願いします」

 まさかの招集にリゼたちは急いでリャンリーの元へと走った。
 走っている途中で何人もの冒険者から「頼んだぞ!」「頑張れよ!」と声をかけられる。
 その表情は招集されずに悔しいという表情ではなかった。
 どちらかと言えば、「助かった」と思っているだろうし、魔物の数が少なくなれば「装置を探す」と、町へ戻ることも考えている冒険者もいたからだ。
 危険は出来るだけ回避する……これも冒険者にとっては当たり前のことだからだ。
 だからと言って、時間稼ぎのような消極的な戦闘をしているわけでもない。

 リャンリーの所に向かっていると、大きな土壁が地面から現れてゴーレムの進行を妨害する。
 それが幾重にも罠のように張り巡らされた。

「遅くなりました」

 すでにリャンリーの指示で攻撃を開始している。
 ゴーレムは魔核を破壊するしか方法がない。
 通常は胸や頭部に外敵から隠すように埋め込まれている。
 当然、リャンリーも知っているが、もう一つ別の方法も考えていた。
 それは魔法陣が刻まれている部位を引きはがすことだ。

 最初は闇雲にゴーレムを攻撃していたが、効果的でないと判断をして、まずは足を攻撃して歩行を困難にしたうえで、魔法陣を取り除き町への進行を止めることにした。
 その後、魔核の場所を探して破壊する作戦だった。
 目の前のゴーレムは岩などを材料に形成されている“ロックゴーレム”と呼ばれるゴーレムになる。
 似た種類で“サンドゴーレム”もあり、遠目では判断が難しい。
 ロックゴーレムは形成した岩などを強化しているため、簡単に破壊することが出来ない。
 一方のサンドゴーレムはロックゴーレムと異なり、自己修復機能があるため戦い方が異なるが、双方ともに戦い辛く、長期戦になることが多い。

「リゼ。倒すまでに時間がかかると思う。そこで、身軽なお前がロックゴーレムの体を上り、魔法陣の場所を探してくれるか? もちろん、何人かと一緒にだ」
「はい、やってみます」

 思っていた以上に責任重大な役割だった。
 レティオールは足を攻撃する冒険者たちの援護に回り、シャルルは傷ついた冒険者の治療にあたる。

「今からロックゴーレムに上るから、援護してやってくれ」

 リャンリーの言葉で戦っている冒険者たちの気持ちが一つになる。 

「頼んだぞ、宵姫‼」

 リゼの姿を発見した冒険者から期待の言葉を受け、リゼも応える気持ちになり自然と力が入る。
 土壁を避けながら、ロックゴーレムの足元へと移動をし、近くの土壁を利用して登ろうと試みる。
 何人かの冒険者は、的確で素早く行動してロックゴーレムに乗り移っていた。
 リゼも後に続こうと必死でタイミングを計る。
 そして【闇糸】をロックゴーレムの腰辺りに取り付けて、ロックゴーレムに向かって飛ぶ。
同時にロックゴーレムが大きく動いたことで、リゼとの距離が遠のいてしまった。
 反射的にリゼは、闇糸を縄のように使いロックゴーレムの体に乗り移ろうとする。

(お願い、切れないで‼)

 リゼの思いに応えるように闇糸は切れることなく、リゼをロックゴーレムまで運んだ。
 実戦での経験が一瞬だが、飛躍的に闇糸の能力を上げたのだ。

(ここからだ)

 動き回るロックゴーレムから振り落とされないようにクナイを手に取り、ロックゴーレムの体に突き刺しながら魔法陣を探す……が、簡単には見つからない。
 先行していた冒険者たちも必死でしがみついていたり、既に振り落とされて大怪我をしている者もいる。
 自分でなくても誰かが見つけてくれれば……と思いもあり、他の冒険者の邪魔にならないように気を付けていた。
 なかなか先へ進めない状況のなかで、シャルルから聞いた話を思い出す。
 魔法陣は体の表面に刻まれるので、外から確認することが可能だということ。
 ただ、ゴーレムのような製造物の場合、後から覆い隠すことも可能らしい。
 時折、動きに耐え切れず小さな石などがロックゴーレムの体から崩れ落ちる。
 リゼは見落とさないようにと凝視して魔法陣を探す。
 かなり頑丈なのか、ロックゴーレムの足をなかなか破壊出来ずにいたが、土壁の効果で進行は止まっている。
 簡単に見つけられないことは分かっていたが、冒険者たちからの期待が重圧となり、必要以上にリゼを焦らせていた。
 目に入るロックゴーレムの足元で戦う冒険者たちを見て、申し訳ない気持ちが強くなる。
 背中を登って左肩に到着すると、今まで以上のロックゴーレムの動きに振り回されながらも、必死でしがみつくリゼ。
 先行していた冒険者たちもリゼ以外は全員が振り落とされていた。
 軽傷な冒険者は再度、ロックゴーレムに乗り移っていたがリゼよりも後方にいる。
 その必死でロックゴーレムにしがみつく姿は下で戦っているリャンリーたちからも見えていた。
 そして、リゼたちの必死な姿に鼓舞される。
 振り回されながら、ロックゴーレムの頭頂部に薄っすらとした光が目に入る。

「もしかして!」

 その光が魔法陣だとリゼは確信する。
 かなり遠い場所でないと、頭頂部を見ることは出来ないし、見えたとしても小さな魔法陣を発見することは困難だ。
 巧みに闇糸を使用して振り落とされないように、頭頂部を目指す。

「くっ!」

 予想以上に激しい動きにしがみ付くだけで精一杯だった。
 足元への攻撃が有効なほどロックゴーレムの動きが大きくなる。
 リゼのことを気にしながら、ロックゴーレムを攻撃することは無いので、力の限り戦っている。
 もう一本クナイを取り出して、首元まで辿り着く。
 首の回転が加わり、さらに頭頂部への移動が困難になる。
 耳の辺りまで登ると、下で戦っている冒険者たちの期待が高まる。
 その時、ロックゴーレムが今までと違う行動を始める。
 歩きながら土壁を破壊ししていたが、しゃがみ込んだかと思ったら、そのまま跳躍して土壁を飛び越えた。
 距離的にも一気に町へと近づき、戦っていた冒険者たちは置き去りにされた形になる。

「くそっ‼」

 ロックゴーレムに裏をかかれたリャンリーは、悔しそうに振り返った。
 戦っている冒険者たちにロックゴーレムへの移動を促す。
 気力体力ともに限界に近かった冒険者たちの中には心が折れた者もいた。
 その中でもリャンリーの指示に従い、必死でロックゴーレムに向かう者たちもいた。
 その姿を見て、一度は消えかかった心の火に再度、火が灯る。


――――――――――――――――――――

■リゼの能力値
 『体力:四十三』
 『魔力:三十二』
 『力:二十七』
 『防御:十九』
 『魔法力:二十五』
 『魔力耐性:十二』
 『敏捷:百七』
 『回避:五十五』
 『魅力:二十三』
 『運:五十七』
 『万能能力値:五』
 
■メインクエスト
 ・スタンピードからバビロニアを防衛。期限:スタンピード終息まで
 ・報酬:達成度により変動。最高報酬(万能能力値:十増加)

■サブクエスト
 ・瀕死の重傷を負う。期限:三年
 ・報酬:全ての能力値(一増加)

 ・殺人(一人)。期限:無
 ・報酬:万能能力値:(十増加)

■シークレットクエスト
 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
 ・報酬:万能能力値(五増加)
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