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第256話
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コジロウとハンゾウに、いままでのお礼と明日にはドヴォルク国を出国することを伝える。
サイゾウが連絡したのか不明だが、コジロウの屋敷に着くとハンゾウもいた。
「いつでも……とは言えませんが、縁があれば、また」
簡単に入国出来ないドヴォルク国。
そのドヴォルク国内で暮らすコジロウたちにとっても、リゼとは最後の対面になるかも知れない。
「お戻りになるのであれば、こちらを――」
コジロウは三枚の紙を机の上に置く。
その紙には似顔絵が書かれていた。
右から”サンダユウ”、”サスケ”、”ムサシ”と説明される。
ムサシ以外は顔を変えているかも知れないが、一応覚えておいて欲しいということだった。
リゼは礼を言って、少しだけ世間話をコジロウとする。
話を終えるとハンゾウに外までの送り届けるように伝えた。
最後にリゼはもう一度、コジロウに礼を言う。
「私は何もしていません。気に掛けていたのはハンゾウですし」
ハンゾウを見るが動揺する様子はなく平然としていた。
簡単に心を乱さないことも忍として重要なことだと、ハンゾウは身を以て示した。
しかし、その思いにリゼは気付いていない。
ハンゾウの屋敷を出てるとハンゾウはリゼに忠告する。
「もし、サンダユウと出会ったら、すぐに逃げなさい。それも自然にです」
リゼが忍だとすれば、必ず接触をしてくる。
それがヤマト大国出身でないと分かっても、徹底的に調べるはずだと……。
そして、戦っても勝ち目がないことも。
「忍とは主君や国などに尽くす者たちのことです。あなたも守るべきもののために、命を捧げて下さい。そうすることで忍はより一層強くなると考えられています。当然、裏切れば……」
命を捧げるという言葉が大袈裟に聞こえたが、忍とは元来そういうものなのだと、改めて知る。
そして、ハンゾウの言葉で気付いたこともあった。
「ハンゾウさんの主君? である若様の似顔絵がありませんでしたが?」
サスケは若様と行動しているし、ムサシは若様を探すために国を飛び出した。
「それはお答えできません」
ハンゾウの雰囲気から、「これ以上は聞かないほうが良い」という感じだった。
それはハンゾウが若様かヤマト大国に尽くしているのかを濁しているようにも思えた。
未だに若様がサンダユウに命を狙われているかも知れないため、余計な情報を出さないようにしているのかも知れない。
リゼが若様の顔を知れば、ヤマト大国との繋がりがより強いと思われる。
それはハンゾウの本意では無いし、ヤマト大国だけでなくドヴォルク国への問題にも発展する恐れがある。
ハンゾウなりに考えた結論だった。
「サイゾウから聞きましたが、闇糸が使えないそうですね」
「はい」
いつ、サイゾウから聞いたのか不思議だったが、忍という言葉で納得出来る自分がいた。
「忍頭として、私からも助言をしましょう」
ハンゾウは右手をリゼの顔も前で広げる。
親指から出た人差し指に黒い糸……闇糸が繋がる。
それから人差し指から中指、中指から薬指、薬指から小指へと繋がっていく。
「これは幼少期に行う鍛錬です。反復練習すれば、いずれ自由に使えるようになるでしょう」
リゼはクナイを投げる左手を見る。
「まずは人差し指から始めるのが簡単だと思います。忍術を使って指先から糸を出すのだと頭で考えることから始めて見てください」
「有難う御座います」
「では、我々もこの辺りで……お元気で」
「ハンゾウさんもサイゾウさんも。頼まれたことは」
再度、ハンゾウに礼を言う。
ヤマト大国と関係ない転職した忍とはいえ、忍頭であるハンゾウに対しては敬意を示すべきだと感じていた。
戻りながらリゼはハンゾウの言葉を考えていた。
ヤマト大国を裏切ったサンダユウ。
主君を裏切ったはずだが、忍としての強さはどうだったのだろうか?
忍として主君に尽くしていたからこそ強くなっていたはずだから、裏切れば弱くなる。
忍頭だったサンダユウは弱った状態でも、他の忍たちを圧倒できる強さを持っていたのか?
答え合わせが出来ない謎を考えながらも、主君という言葉についても考える。
当然だが仕える人物を頭に思い描こうとしたが、誰も浮かんでこなかった。
ましてや国などという想像も出来ないような大きさのものなど、全く思い浮かばなかった。
……銀翼。
人物や国ではないが、クラン名が浮かんだ。
すると、目の前に『銀翼に命を捧げる覚悟はありますか? (はい/いいえ)』と表示された。
あまりにも突然の出来事に気持ちが追い付かず戸惑う。
一呼吸おいて冷静さを取り戻す。
これは自分のスキルではない。
先程、ハンゾウからの言葉で発生したジョブスキルだと推測する。
具体的に強くなる感じまで分かっていないが……今、自分に守るべきものがあるとすれば、それは銀翼だということだけは分かっていた。
アンジュやジェイドには死んでほしくないし、クウガたちも死んだことを受け入れていない。
だからこそ、帰る場所を守る……。
(あれ? 帰る場所を守る……それは私自身のことなんじゃ)
いままで気付かなかった気持ちに気付く。
きっかけは違っていたが、今はアンジュやジェイドの元へ帰りたい自分がいる。
クウガたちのためだと言っていたが、それは自分の気持ちを誤魔化そうとしていただけなのではないか?
以前、寒さに耐えながらも働く母親に聞いた言葉を思い出した。
「どうして、お母さんは頑張れるの?」
「それはリゼがいるからよ。リゼを守るためにお母さんは強くないといけないからね」
守るべき者がいる強さ……母親から「やっと、気付いたの?」と言われた気がした。
そして、単独に拘っていた昔の自分を笑うと、『はい』の表示を押す。
一旦、表示が消えるが、すぐに能力値が表示されて、一番下に『全ての能力値:二増加』『契約破棄の場合、全ての能力値:四減少』と表示される。
思っていた以上の能力値増加に喜びを隠せないリゼ。
いままで生半可な気持ちではなかったが、改めて自分も含めて帰る場所を守る決意をする。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十三』(二増加)
『魔力:三十二』(二増加)
『力:二十七』(二増加)
『防御:十九』(二増加)
『魔法力:二十三』(二増加)
『魔力耐性:十二』(二増加)
『敏捷:百六』(二増加)
『回避:五十五』(二増加)
『魅力:二十三』(二増加)
『運:五十七』(二増加)
『万能能力値:二』(二増加)
■メインクエスト
・ドヴォルク国王を満足させる。期限:七日
・報酬:万能能力値(三増加)
■サブクエスト
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
・闇糸の習得。期限:二十日
・報酬:魔法力(二増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
サイゾウが連絡したのか不明だが、コジロウの屋敷に着くとハンゾウもいた。
「いつでも……とは言えませんが、縁があれば、また」
簡単に入国出来ないドヴォルク国。
そのドヴォルク国内で暮らすコジロウたちにとっても、リゼとは最後の対面になるかも知れない。
「お戻りになるのであれば、こちらを――」
コジロウは三枚の紙を机の上に置く。
その紙には似顔絵が書かれていた。
右から”サンダユウ”、”サスケ”、”ムサシ”と説明される。
ムサシ以外は顔を変えているかも知れないが、一応覚えておいて欲しいということだった。
リゼは礼を言って、少しだけ世間話をコジロウとする。
話を終えるとハンゾウに外までの送り届けるように伝えた。
最後にリゼはもう一度、コジロウに礼を言う。
「私は何もしていません。気に掛けていたのはハンゾウですし」
ハンゾウを見るが動揺する様子はなく平然としていた。
簡単に心を乱さないことも忍として重要なことだと、ハンゾウは身を以て示した。
しかし、その思いにリゼは気付いていない。
ハンゾウの屋敷を出てるとハンゾウはリゼに忠告する。
「もし、サンダユウと出会ったら、すぐに逃げなさい。それも自然にです」
リゼが忍だとすれば、必ず接触をしてくる。
それがヤマト大国出身でないと分かっても、徹底的に調べるはずだと……。
そして、戦っても勝ち目がないことも。
「忍とは主君や国などに尽くす者たちのことです。あなたも守るべきもののために、命を捧げて下さい。そうすることで忍はより一層強くなると考えられています。当然、裏切れば……」
命を捧げるという言葉が大袈裟に聞こえたが、忍とは元来そういうものなのだと、改めて知る。
そして、ハンゾウの言葉で気付いたこともあった。
「ハンゾウさんの主君? である若様の似顔絵がありませんでしたが?」
サスケは若様と行動しているし、ムサシは若様を探すために国を飛び出した。
「それはお答えできません」
ハンゾウの雰囲気から、「これ以上は聞かないほうが良い」という感じだった。
それはハンゾウが若様かヤマト大国に尽くしているのかを濁しているようにも思えた。
未だに若様がサンダユウに命を狙われているかも知れないため、余計な情報を出さないようにしているのかも知れない。
リゼが若様の顔を知れば、ヤマト大国との繋がりがより強いと思われる。
それはハンゾウの本意では無いし、ヤマト大国だけでなくドヴォルク国への問題にも発展する恐れがある。
ハンゾウなりに考えた結論だった。
「サイゾウから聞きましたが、闇糸が使えないそうですね」
「はい」
いつ、サイゾウから聞いたのか不思議だったが、忍という言葉で納得出来る自分がいた。
「忍頭として、私からも助言をしましょう」
ハンゾウは右手をリゼの顔も前で広げる。
親指から出た人差し指に黒い糸……闇糸が繋がる。
それから人差し指から中指、中指から薬指、薬指から小指へと繋がっていく。
「これは幼少期に行う鍛錬です。反復練習すれば、いずれ自由に使えるようになるでしょう」
リゼはクナイを投げる左手を見る。
「まずは人差し指から始めるのが簡単だと思います。忍術を使って指先から糸を出すのだと頭で考えることから始めて見てください」
「有難う御座います」
「では、我々もこの辺りで……お元気で」
「ハンゾウさんもサイゾウさんも。頼まれたことは」
再度、ハンゾウに礼を言う。
ヤマト大国と関係ない転職した忍とはいえ、忍頭であるハンゾウに対しては敬意を示すべきだと感じていた。
戻りながらリゼはハンゾウの言葉を考えていた。
ヤマト大国を裏切ったサンダユウ。
主君を裏切ったはずだが、忍としての強さはどうだったのだろうか?
忍として主君に尽くしていたからこそ強くなっていたはずだから、裏切れば弱くなる。
忍頭だったサンダユウは弱った状態でも、他の忍たちを圧倒できる強さを持っていたのか?
答え合わせが出来ない謎を考えながらも、主君という言葉についても考える。
当然だが仕える人物を頭に思い描こうとしたが、誰も浮かんでこなかった。
ましてや国などという想像も出来ないような大きさのものなど、全く思い浮かばなかった。
……銀翼。
人物や国ではないが、クラン名が浮かんだ。
すると、目の前に『銀翼に命を捧げる覚悟はありますか? (はい/いいえ)』と表示された。
あまりにも突然の出来事に気持ちが追い付かず戸惑う。
一呼吸おいて冷静さを取り戻す。
これは自分のスキルではない。
先程、ハンゾウからの言葉で発生したジョブスキルだと推測する。
具体的に強くなる感じまで分かっていないが……今、自分に守るべきものがあるとすれば、それは銀翼だということだけは分かっていた。
アンジュやジェイドには死んでほしくないし、クウガたちも死んだことを受け入れていない。
だからこそ、帰る場所を守る……。
(あれ? 帰る場所を守る……それは私自身のことなんじゃ)
いままで気付かなかった気持ちに気付く。
きっかけは違っていたが、今はアンジュやジェイドの元へ帰りたい自分がいる。
クウガたちのためだと言っていたが、それは自分の気持ちを誤魔化そうとしていただけなのではないか?
以前、寒さに耐えながらも働く母親に聞いた言葉を思い出した。
「どうして、お母さんは頑張れるの?」
「それはリゼがいるからよ。リゼを守るためにお母さんは強くないといけないからね」
守るべき者がいる強さ……母親から「やっと、気付いたの?」と言われた気がした。
そして、単独に拘っていた昔の自分を笑うと、『はい』の表示を押す。
一旦、表示が消えるが、すぐに能力値が表示されて、一番下に『全ての能力値:二増加』『契約破棄の場合、全ての能力値:四減少』と表示される。
思っていた以上の能力値増加に喜びを隠せないリゼ。
いままで生半可な気持ちではなかったが、改めて自分も含めて帰る場所を守る決意をする。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十三』(二増加)
『魔力:三十二』(二増加)
『力:二十七』(二増加)
『防御:十九』(二増加)
『魔法力:二十三』(二増加)
『魔力耐性:十二』(二増加)
『敏捷:百六』(二増加)
『回避:五十五』(二増加)
『魅力:二十三』(二増加)
『運:五十七』(二増加)
『万能能力値:二』(二増加)
■メインクエスト
・ドヴォルク国王を満足させる。期限:七日
・報酬:万能能力値(三増加)
■サブクエスト
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
・闇糸の習得。期限:二十日
・報酬:魔法力(二増加)
■シークレットクエスト
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