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第208話
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逃亡したコボルトの残党からの反撃や、他の魔物からの襲撃を警戒して、ジャンロードは商人の横に座る。
リゼとエンヴィーは荷台で後ろを警戒しながら雑談をする。
「リゼ。あなた、変わっているわね」
「なにがですか?」
「いや、報酬にサンドリザードの爪って……」
「そうですか?」
「まぁ、変な人って自覚がないからね。ある意味、羨ましすぎるわ」
リゼは自分が褒められているのか貶されているのか分からずにいた……。
「その武器って、なんですか?」
「あぁ、これね。よく聞かれるわ、珍しいものね。レイピアっていう剣よ」
「レイピアですか」
エンヴィーは腰からレイピアを抜きリゼに見せる。
「触ってもいいですか?」
「えぇ、どうぞ」
リゼは恐る恐るレイピアに触れる。
細くてしなりがあることに驚くも、コボルトとの戦闘中に鞭のように剣が曲がっている様子を思い出していた。
「ありがとうございます」
「私にとっては、使い勝手が良いけど、万人向けではないわ」
リゼがレイピアに興味を持ってくれたことが嬉しかったようだが、扱いに難しいことを教えてくれた。
エンヴィーはバビロニアに用事があるそうで、数日で他の町に行くため、迷宮に入るつもりないそうだ。
予定より一日遅れでバビロニアに到着した。
急ぎの用事でもあったようで遅れていることを気にしていたジャンロードとは、到着早々に別れる。
エンヴィーも途中で下車して一足先に冒険者ギルドにより、コボルトのことを報告すると馬車を降りた。
リゼも下りようとしたが、商人から目的地までの同行を頼まれたので、商人に同行することにした。
エンヴィーは別れる際に「また、どこかで」と挨拶をしてくれた。
二人のアイテムバッグから荷物を出したことや、馬の疲労でさらに進む速度が遅くなる。
リゼは商人の目的地で下りるが、「これは少ないですが、追加報酬です」と金貨を一枚をくれた。
返そうとするリゼだったが、報酬にサンドリザードの爪を選んだリゼの優しさが嬉しかったと微笑む。
その笑顔にリゼは逆らえず、有難く金貨一枚を頂くことにした。
「バビロニアは初めてですか?」
「はい」
「そうですか。私たち商人の間でさえ騙し騙されの繰り返しです。私が言えたことではありませんが、人の言葉が必ず本心や正解とは限りません。だからこそ、注意深く観察して下さい」
「有難う御座います」
商人は親切に冒険者ギルド会館までの道順や、おすすめの武具屋と道具屋を教えてくれた。
「武具屋って、なんでしょうか?」
「武器屋と防具屋を兼用で営んでいる店のことです。ここバビロニアでは武器を買い替える人が多いので、同じ場所で一式購入できるようになっているんですよ」
場所によって、いろいろな店があるのだと知る。
商人と別れると、とりあえず教えてもらった武具屋と道具屋を見て回ることにした。
「いらっしゃいませ」
元気の良い声でリゼを迎え入れる。
入店して驚いたのは、新品と同じくらいの数の中古品が多くあったことだ。
所狭しと、いろいろな商品が並べ……置かれていた。
新品の武器や防具は割高だが、その一方で中古品は二束三文で売られている物が多くある。
リゼは両手で武器を使用したい場面が何回かあったが、クウガの小太刀を折ってしまった。
そのため、もう一振り小太刀、出来れば小太刀より小さい短刀が欲しかった。
当然、新品を買えるわけでもないので、中古武器の中から小太刀や短刀を手に取り感触を確認する。
中古品でも価格が高いものは、それなりに良い素材と状態が良い。
反対に価格が低いものは……。
なかなか手に馴染むものが無く、納得できるような小太刀や短刀はなかった。
中古品が並ぶ一番奥の店の片隅に、特売品と書かれた木箱に目が止まる。
特売品と一見、お値打ちのような表現をしているが、要は長年の売れ残った品だ。
リゼは期待せずに覗き込むと、手入れを放置され汚れた武器が無造作に放り込まれていた。
見たこともない武器も多数入っている。
刃が剝き出しになっているが、ほとんどが錆びている。
一応、注意しながらリゼは目的の武器を探す。
途中で店主に中を確認したいので、箱から出した武器を箱の横に置いて良いかの確認を取り、了承を得る。
自分でもどうして特売品を漁り、こんなに武器を出してまで探しているのか不思議だった。
武器と武器の間から少しだけ見えた小太刀のような武器。
無意識のうちに、その武器を探す行動だと気付いていなかった。
ミルキーチータ―の防具に身を包みながらも、特売品を漁るリゼ。
その姿を見ていた店主や、他の冒険者たちはリゼに哀れむような視線を向けていた。
ちょっと高い防具を購入したため、武器を買う予算がないのだと勘違いしていたのだ。
冒険者として通貨の使い方がどうなのか? という思いも重なり可哀そうで不思議な冒険者だという姿に映ったのだ。
そんな視線に気づくことなく、箱の一番下にあった短刀に触れる。
すると、短刀の周りが薄っすらと光る。
(あれ? これって、さっきもあったけど……)
サンドリザードの爪と同じような現象に戸惑いながらも、リゼは短刀を手に取り抜いてみる。
かなり古いのか、錆びていて研がないと使い物にならない……研いでも使い物になるかさえ分からない。
だが、持った時の感触は今までで一番しっくりとくる。
値段は銀貨五枚だ。
とりあえず、リゼは箱から出した特売品の武器を箱に戻す。
戻しながらも短刀を購入するかを考えていた。
箱から出した武器を全て戻し終えると、短刀を手に取り軽く振り、何度も感触を確かめる。
先程からリゼの行動は見られているので、錆びた小汚い短刀を真剣に振るリゼの姿は、より可哀そうに映っていた。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:三十六』
『魔力:三十』
『力:二十三』
『防御:二十』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十六』
『敏捷:八十六』
『回避:四十三』
『魅力:二十四』
『運:四十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・迷宮で未討伐の魔物討伐(討伐種類:三十)。期限:三十日
・報酬:転職ステータス値向上
■サブクエスト
・防具の変更。期限:二年
・報酬:ドヴォルグ国での武器製作率向上
・バビロニアの骨董市で骨董品の購入。期限:一年
・報酬:観察眼強化
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
リゼとエンヴィーは荷台で後ろを警戒しながら雑談をする。
「リゼ。あなた、変わっているわね」
「なにがですか?」
「いや、報酬にサンドリザードの爪って……」
「そうですか?」
「まぁ、変な人って自覚がないからね。ある意味、羨ましすぎるわ」
リゼは自分が褒められているのか貶されているのか分からずにいた……。
「その武器って、なんですか?」
「あぁ、これね。よく聞かれるわ、珍しいものね。レイピアっていう剣よ」
「レイピアですか」
エンヴィーは腰からレイピアを抜きリゼに見せる。
「触ってもいいですか?」
「えぇ、どうぞ」
リゼは恐る恐るレイピアに触れる。
細くてしなりがあることに驚くも、コボルトとの戦闘中に鞭のように剣が曲がっている様子を思い出していた。
「ありがとうございます」
「私にとっては、使い勝手が良いけど、万人向けではないわ」
リゼがレイピアに興味を持ってくれたことが嬉しかったようだが、扱いに難しいことを教えてくれた。
エンヴィーはバビロニアに用事があるそうで、数日で他の町に行くため、迷宮に入るつもりないそうだ。
予定より一日遅れでバビロニアに到着した。
急ぎの用事でもあったようで遅れていることを気にしていたジャンロードとは、到着早々に別れる。
エンヴィーも途中で下車して一足先に冒険者ギルドにより、コボルトのことを報告すると馬車を降りた。
リゼも下りようとしたが、商人から目的地までの同行を頼まれたので、商人に同行することにした。
エンヴィーは別れる際に「また、どこかで」と挨拶をしてくれた。
二人のアイテムバッグから荷物を出したことや、馬の疲労でさらに進む速度が遅くなる。
リゼは商人の目的地で下りるが、「これは少ないですが、追加報酬です」と金貨を一枚をくれた。
返そうとするリゼだったが、報酬にサンドリザードの爪を選んだリゼの優しさが嬉しかったと微笑む。
その笑顔にリゼは逆らえず、有難く金貨一枚を頂くことにした。
「バビロニアは初めてですか?」
「はい」
「そうですか。私たち商人の間でさえ騙し騙されの繰り返しです。私が言えたことではありませんが、人の言葉が必ず本心や正解とは限りません。だからこそ、注意深く観察して下さい」
「有難う御座います」
商人は親切に冒険者ギルド会館までの道順や、おすすめの武具屋と道具屋を教えてくれた。
「武具屋って、なんでしょうか?」
「武器屋と防具屋を兼用で営んでいる店のことです。ここバビロニアでは武器を買い替える人が多いので、同じ場所で一式購入できるようになっているんですよ」
場所によって、いろいろな店があるのだと知る。
商人と別れると、とりあえず教えてもらった武具屋と道具屋を見て回ることにした。
「いらっしゃいませ」
元気の良い声でリゼを迎え入れる。
入店して驚いたのは、新品と同じくらいの数の中古品が多くあったことだ。
所狭しと、いろいろな商品が並べ……置かれていた。
新品の武器や防具は割高だが、その一方で中古品は二束三文で売られている物が多くある。
リゼは両手で武器を使用したい場面が何回かあったが、クウガの小太刀を折ってしまった。
そのため、もう一振り小太刀、出来れば小太刀より小さい短刀が欲しかった。
当然、新品を買えるわけでもないので、中古武器の中から小太刀や短刀を手に取り感触を確認する。
中古品でも価格が高いものは、それなりに良い素材と状態が良い。
反対に価格が低いものは……。
なかなか手に馴染むものが無く、納得できるような小太刀や短刀はなかった。
中古品が並ぶ一番奥の店の片隅に、特売品と書かれた木箱に目が止まる。
特売品と一見、お値打ちのような表現をしているが、要は長年の売れ残った品だ。
リゼは期待せずに覗き込むと、手入れを放置され汚れた武器が無造作に放り込まれていた。
見たこともない武器も多数入っている。
刃が剝き出しになっているが、ほとんどが錆びている。
一応、注意しながらリゼは目的の武器を探す。
途中で店主に中を確認したいので、箱から出した武器を箱の横に置いて良いかの確認を取り、了承を得る。
自分でもどうして特売品を漁り、こんなに武器を出してまで探しているのか不思議だった。
武器と武器の間から少しだけ見えた小太刀のような武器。
無意識のうちに、その武器を探す行動だと気付いていなかった。
ミルキーチータ―の防具に身を包みながらも、特売品を漁るリゼ。
その姿を見ていた店主や、他の冒険者たちはリゼに哀れむような視線を向けていた。
ちょっと高い防具を購入したため、武器を買う予算がないのだと勘違いしていたのだ。
冒険者として通貨の使い方がどうなのか? という思いも重なり可哀そうで不思議な冒険者だという姿に映ったのだ。
そんな視線に気づくことなく、箱の一番下にあった短刀に触れる。
すると、短刀の周りが薄っすらと光る。
(あれ? これって、さっきもあったけど……)
サンドリザードの爪と同じような現象に戸惑いながらも、リゼは短刀を手に取り抜いてみる。
かなり古いのか、錆びていて研がないと使い物にならない……研いでも使い物になるかさえ分からない。
だが、持った時の感触は今までで一番しっくりとくる。
値段は銀貨五枚だ。
とりあえず、リゼは箱から出した特売品の武器を箱に戻す。
戻しながらも短刀を購入するかを考えていた。
箱から出した武器を全て戻し終えると、短刀を手に取り軽く振り、何度も感触を確かめる。
先程からリゼの行動は見られているので、錆びた小汚い短刀を真剣に振るリゼの姿は、より可哀そうに映っていた。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:三十六』
『魔力:三十』
『力:二十三』
『防御:二十』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十六』
『敏捷:八十六』
『回避:四十三』
『魅力:二十四』
『運:四十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・迷宮で未討伐の魔物討伐(討伐種類:三十)。期限:三十日
・報酬:転職ステータス値向上
■サブクエスト
・防具の変更。期限:二年
・報酬:ドヴォルグ国での武器製作率向上
・バビロニアの骨董市で骨董品の購入。期限:一年
・報酬:観察眼強化
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
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