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第201話
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窓から見えるリゼを何度も見る。
その度に「会った方が……」と考えることもある。
会ってしまえば、楽になることは分かっていた。
今日もリゼが居なくなるのを確認して窓際に移動する。
夜になると、いつも一人で過ごしていたお気に入りの場所に罪悪感を感じるようになっていた。
「なにを感傷に浸っているのかな?」
自分しか居ない部屋で話し掛けられる。
だが、驚きは無かった。
故郷に戻って来てから……いや、両親との思い出の家で領主として、この部屋で過ごし始めて何度も何度も同じような状況があったから慣れてしまっている。
「相変わらず神出鬼没ね。女性の部屋に入るならノックすることをお勧めするわ」
「僕とラスティアの仲じゃない」
「その名前で呼ばないで!」
「ゴメンゴメン。今はエルダだったね」
「オプティミス!」
人を小馬鹿にする話し方が癇に障ったのか、大声で叫ぶ。
名前を呼ばれたオプティミスは気にすることなく笑う。
「この監視は、いつまで続くのかしら」
「監視って酷いな。 仲間に会いに来ただけじゃない」
「仲間ねぇ……私が信用出来ないだけじゃないのかしら?」
「そんなことないよ。仲良く銀翼を裏切った仲間じゃないか」
オプティミスの言葉にエルダは表情を歪ませる。
「なになに、その顔は。もしかして、罪悪感を感じているのかな?」
揶揄い楽しむ言葉が、エルダの感情を逆撫でる。
それさえも楽しむオプティミスにエルダは、嫌悪感を一層強める。
「まぁ、僕の誘いに乗った時から、こうなることは決まっていたのに」
「なにを言っているの。あなたとの約束はアルベルトを殺す手助けをすることだけだったじゃない‼」
「う~ん。臨機応変ってやつだね。クウガも、なにか感づいていたようだったしね」
悪びれることなく笑顔で話すオプティミス。
エルダは冒険者時代のラスティアとして、オプティミスに出会った時のことを思い出す。
クエストの途中で出会い、銀翼へ入りたいと志願してきた。
”道化師”というレア職業ということや、無償でクエストの案内してくれることや、戦力にならなければ、すぐに諦める。
そして、試用期間で自分の実力を認めたうえで結論を出してもらえれば構わないというオプティミスにとって不利な条件ばかりだった。
まだ、アンジュやジェイドが入る随分と前のことだ。
持ち前の陽気さですぐにメンバーとも馴染み、戦力としても申し分なかった。
オプティミスが正式なメンバーになためのメンバー推薦についても、満場一致だった。
銀翼の正式メンバーになって半年ほど経った時、オプティミスから相談を受ける。
二人っきりでとのことだったので、余程のことかと思いその相談に乗る。
だが、その場でオプティミスから出た言葉に衝撃を受ける。
「アルベルトを殺害する手助けをしてくれない」
当然、そのような申し出を受け入れることなど出来ない。
それにそれは銀翼への裏切りでもある……が、オプティミスの次の言葉に心を揺さぶられた。
「見返りとして、僕がラスティアを昔の名前エルダに戻してあげる。そして、あの領主を追い出してラスティアを領主にしてあげるよ」
自分の過去を……昔の名を知っていることに驚いたが、オプティミスは最初からアルベルトを殺害するために、銀翼に入ったのだと確信する。
「どう? 悪くない条件だと思うけどな」
いつもと変わらない表情で話し掛けるオプティミスに恐怖感を感じながらも、憶測だが私だけでなく銀翼のメンバーもことを調べ上げていると思いながら、その情報力にオプティミスへ脅威さえ感じていた。
仮に自分が断っても他のメンバーに同じ提案をするだろうが、断ったりすれば……。
「この話をするのは、私が初めて?」
「もちろんだよ。ラスティアが一番交渉しやすいしね。それに、他のメンバーに話していたら、そのメンバーは既にこの世にいないよ」
笑いながら話すオプティミスに戦慄が走った。
肉弾戦ではアルベルトやミラン、ローガンに敵わない。
魔法戦ではササ爺の足元にも及ばない。
総合的に見てもクウガに分はある。
だが、目の前のオプティミスからは虚言でなく、確実に殺害できる自信を感じた。
「それなら、オプティミスだけでアルベルトを殺害すれば?」
「うーん。それでもいいけど、後処理が面倒くさいじゃない。やたらと勘が鋭いメンバーもいるしね」
オプティミスがクウガやアリスのことを言っていることは明白だった。
「……分かったわ。だたし、私からも条件をつけさせてもらうわよ」
「出来る範囲なら構わないよ」
「私が確実に領主になることを証明出来るかしら?」
「たしかにそうだね」
オプティミスは暫く考えていたが、名案が浮かんだのか、今まで以上の笑顔で口を開いた。
「先に領主を殺して、ラスティアが領主になるまでの間、身代わりで領主が死んだことを知らさないってのはどう?」
「可能なの?」
「うん、可能だよ。簡単なことだよ。僕は約束は絶対に守るからね」
オプティミスの目が不気味に下がる。
この時点で自分に選択の余地がないのだと悟る。
「今度のクエストが終わったら故郷に戻ったら? その時にラスティアの望むことをしてあげるよ。協力者としてね」
オプティミスの協力者という言葉が重く圧し掛かる。
そして、エルダはオプティミスの言葉に従い、クエストを終えたと同時に休暇を貰い故郷レトゥーンに戻る。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:三十六』
『魔力:三十』
『力:二十二』
『防御:二十』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十六』
『敏捷:八十四』
『回避:四十三』
『魅力:二十四』
『運:四十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・ラバンニアル共和国に入国。期限:九十日
・報酬:敏捷(二増加)
■サブクエスト
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
その度に「会った方が……」と考えることもある。
会ってしまえば、楽になることは分かっていた。
今日もリゼが居なくなるのを確認して窓際に移動する。
夜になると、いつも一人で過ごしていたお気に入りの場所に罪悪感を感じるようになっていた。
「なにを感傷に浸っているのかな?」
自分しか居ない部屋で話し掛けられる。
だが、驚きは無かった。
故郷に戻って来てから……いや、両親との思い出の家で領主として、この部屋で過ごし始めて何度も何度も同じような状況があったから慣れてしまっている。
「相変わらず神出鬼没ね。女性の部屋に入るならノックすることをお勧めするわ」
「僕とラスティアの仲じゃない」
「その名前で呼ばないで!」
「ゴメンゴメン。今はエルダだったね」
「オプティミス!」
人を小馬鹿にする話し方が癇に障ったのか、大声で叫ぶ。
名前を呼ばれたオプティミスは気にすることなく笑う。
「この監視は、いつまで続くのかしら」
「監視って酷いな。 仲間に会いに来ただけじゃない」
「仲間ねぇ……私が信用出来ないだけじゃないのかしら?」
「そんなことないよ。仲良く銀翼を裏切った仲間じゃないか」
オプティミスの言葉にエルダは表情を歪ませる。
「なになに、その顔は。もしかして、罪悪感を感じているのかな?」
揶揄い楽しむ言葉が、エルダの感情を逆撫でる。
それさえも楽しむオプティミスにエルダは、嫌悪感を一層強める。
「まぁ、僕の誘いに乗った時から、こうなることは決まっていたのに」
「なにを言っているの。あなたとの約束はアルベルトを殺す手助けをすることだけだったじゃない‼」
「う~ん。臨機応変ってやつだね。クウガも、なにか感づいていたようだったしね」
悪びれることなく笑顔で話すオプティミス。
エルダは冒険者時代のラスティアとして、オプティミスに出会った時のことを思い出す。
クエストの途中で出会い、銀翼へ入りたいと志願してきた。
”道化師”というレア職業ということや、無償でクエストの案内してくれることや、戦力にならなければ、すぐに諦める。
そして、試用期間で自分の実力を認めたうえで結論を出してもらえれば構わないというオプティミスにとって不利な条件ばかりだった。
まだ、アンジュやジェイドが入る随分と前のことだ。
持ち前の陽気さですぐにメンバーとも馴染み、戦力としても申し分なかった。
オプティミスが正式なメンバーになためのメンバー推薦についても、満場一致だった。
銀翼の正式メンバーになって半年ほど経った時、オプティミスから相談を受ける。
二人っきりでとのことだったので、余程のことかと思いその相談に乗る。
だが、その場でオプティミスから出た言葉に衝撃を受ける。
「アルベルトを殺害する手助けをしてくれない」
当然、そのような申し出を受け入れることなど出来ない。
それにそれは銀翼への裏切りでもある……が、オプティミスの次の言葉に心を揺さぶられた。
「見返りとして、僕がラスティアを昔の名前エルダに戻してあげる。そして、あの領主を追い出してラスティアを領主にしてあげるよ」
自分の過去を……昔の名を知っていることに驚いたが、オプティミスは最初からアルベルトを殺害するために、銀翼に入ったのだと確信する。
「どう? 悪くない条件だと思うけどな」
いつもと変わらない表情で話し掛けるオプティミスに恐怖感を感じながらも、憶測だが私だけでなく銀翼のメンバーもことを調べ上げていると思いながら、その情報力にオプティミスへ脅威さえ感じていた。
仮に自分が断っても他のメンバーに同じ提案をするだろうが、断ったりすれば……。
「この話をするのは、私が初めて?」
「もちろんだよ。ラスティアが一番交渉しやすいしね。それに、他のメンバーに話していたら、そのメンバーは既にこの世にいないよ」
笑いながら話すオプティミスに戦慄が走った。
肉弾戦ではアルベルトやミラン、ローガンに敵わない。
魔法戦ではササ爺の足元にも及ばない。
総合的に見てもクウガに分はある。
だが、目の前のオプティミスからは虚言でなく、確実に殺害できる自信を感じた。
「それなら、オプティミスだけでアルベルトを殺害すれば?」
「うーん。それでもいいけど、後処理が面倒くさいじゃない。やたらと勘が鋭いメンバーもいるしね」
オプティミスがクウガやアリスのことを言っていることは明白だった。
「……分かったわ。だたし、私からも条件をつけさせてもらうわよ」
「出来る範囲なら構わないよ」
「私が確実に領主になることを証明出来るかしら?」
「たしかにそうだね」
オプティミスは暫く考えていたが、名案が浮かんだのか、今まで以上の笑顔で口を開いた。
「先に領主を殺して、ラスティアが領主になるまでの間、身代わりで領主が死んだことを知らさないってのはどう?」
「可能なの?」
「うん、可能だよ。簡単なことだよ。僕は約束は絶対に守るからね」
オプティミスの目が不気味に下がる。
この時点で自分に選択の余地がないのだと悟る。
「今度のクエストが終わったら故郷に戻ったら? その時にラスティアの望むことをしてあげるよ。協力者としてね」
オプティミスの協力者という言葉が重く圧し掛かる。
そして、エルダはオプティミスの言葉に従い、クエストを終えたと同時に休暇を貰い故郷レトゥーンに戻る。
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■リゼの能力値
『体力:三十六』
『魔力:三十』
『力:二十二』
『防御:二十』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十六』
『敏捷:八十四』
『回避:四十三』
『魅力:二十四』
『運:四十八』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・ラバンニアル共和国に入国。期限:九十日
・報酬:敏捷(二増加)
■サブクエスト
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
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