71 / 276
第71話
しおりを挟む
いつもは冒険者たちが大勢いるギルド会館だが、今は寂しい雰囲気だった。
リゼは、いつも通りクエストボードから、クエストの紙を剥がして受付へと持っていく。
ランクCのクエストも、もう少しで全て受注することになる。
本当であれば、リゼは討伐系のクエストばかりしたいと思っていた。
しかし、清掃系のクエストも街のためには大事なことだと、分かっていたので同じようにクエストをするように心掛けていた。
今回、リゼが受注したクエストは『川原の除草と清掃』だった。
区間ごとにクエストが分かれている。
今回の場所は、特に荒れている地域にため、除草だけでなく清掃も加わっていた。
労働力が多いため、報酬も高いし、区間も短い。
当然、ランクBとの共通クエストだ。
ランクBの冒険者がいない今、清掃作業をする冒険者がいないので、リゼは積極的に清掃系のクエストを受注していた。
「はい、リゼちゃん」
受付嬢のアイリは、リゼに背籠と大きめの皮袋を渡す。
通常であれば、除草した草は肥料になるため、その場所に固めて置いておく。
しかし、今回の区間では、食料を扱う店が近くに幾つかある飲食街と呼ばれる場所だ。
そのため、虫が大量発生することを嫌うので、除草した草は持ち帰るようになっていた。
清掃も、食べ歩きした食事のゴミを川原に捨てる者がいるためだ。
当然、店側の要求や、本来であれば店側がすべき清掃作業をするのだから、店側も報酬の一部を負担している。
「ありがとうございます」
リゼはアイリに礼を言うと、クエスト場所へと向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「久しぶりって感じもしないわね」
「当り前だろう。この間、来たばかりだ」
「儂は疲れたから、休みたいんじゃがの~」
オーリスに着いたアリスにクウガ、ササジールの三人が口々に話す。
「はぁ~、僕は久々だけどね」
「お前は前回のクエストに参加しなかったからな」
「だって、留守番していろっていったのアルベルトたちだろう⁈」
欠伸をしながら話すのは、銀翼のメンバー『オプティミス』だった。
「それよりもなんで、今回はフルメンバーなんだよ!」
「お前がサボりすぎなんだ」
「そうそう。残してきた二人を教育するって言っておいて、遊んでいたのは知っているのよ」
「そ、そんなことないよ‼」
言い争うクウガたち――。
「お前さんたち。声が大きいから注目を浴びておるぞ‼」
疲れ切っているササジールが諭すような口調で、三人に話す。
街の人々も銀翼のメンバーが又、オーリスに来たことに驚く。
そして同時に、期待を抱いていた。
「とりあえず、ギルド会館だな」
「そうね」
クウガたちは馬から下りて、ギルド会館へと歩き出した。
馬の見張りもあったので、ギルド会館へはクウガとアリスの二人が入る。
クウガとアリスの姿を目にした受付嬢は、すぐに受付長のクリスティーナへと報告をする。
アイリとレベッカは、リゼのことを話すべきかと悩みながらも、必死で冷静を装っていた。
奥の部屋からクリスティーナが飛び出してきた。
そして、そのままクウガとアリスの所へと走っていく。
「銀翼のメンバーであるお二方に、お願いが御座います」
呼吸を乱しながらも冷静に話をするクリスティーナ。
「ゴブリンたちのことなら、アルベルトとラスティアに、ローガンとミランの四人が向かっている。もう、合流しているだろう」
クウガは、クリスティーナの言おうとしていたことが分かっていた。
「ありがとうございます」
クリスティーナは頭を下げる。
ランクAの冒険者が、ゴブリン討伐に加わってくれれば、生存率が格段に上がる。
「俺としては、あっちは心配していないんだが……」
クウガは受付にいるアイリとレベッカのほうを見る。
アイリとレベッカは、冷静に営業スマイルで返した。
「例の事件。報告してくれて、ありがとうな」
「いいえ。仕事ですので、お礼を言われるようなことではありません」
クリスティーナは表情を変えることなく、淡々と話す。
「それで、事件の被害者は今、どこにいる?」
クウガはリゼの名を出さずに、被害者という言葉を使った。
クリスティーナは、受付にいるアイリとレベッカのほうを向く。
「飲食街のクエスト『川原の除草と清掃』をしているかと思います」
アイリが答える。
殆ど、人がいないギルド会館なので声が通るため、クリスティーナとクウガたちの会話が聞こえていた。
「怪我の具合はどうなんだ?」
「はい、ほぼ完治しているかと思います」
「……もう、ギルドの部屋からは出たんだよな?」
「はい、その通りです」
「アルベルトが来たら、事件の詳しい内容を教えてもらってもいいか?」
「はい。しかし、詳しい話であれば、衛兵詰所のほうが良いかと思います」
「そうだな。衛兵詰所へは、話を聞いた後で行ってみる」
「お願いします。しかし、ゴブリン討伐に向かわれているのであれば、ギルマスと会うかと思います。もしかしたら、話を聞いておられるかも知れません」
「ギルマス自ら、討伐に参加しているのか‼」
「はい。事情が事情でしたので――」
クウガはクリスティーナに、乗ってきた馬を預かってもらうよう交渉をする。
とりあえず、受付に移動をして、クウガは一泊分の料金をクリスティーナに支払った。
そして、八人分の宿を紹介してもらおうとするが、ゴブリン討伐を手伝ってもらっているので、宿の手配はギルドがすることとなった。
「では、愛しの妹分に会いに行きましょう‼」
アリスはリゼに会うのが嬉しいのか、笑顔になる。
「その前に、アイリとレベッカに話を聞いてからだ」
「……相変わらず、慎重ね」
クウガはアリスの言葉を聞き流すように、受付のアイリとレベッカに話し掛けた。
「リゼの様子はどんな感じだ?」
クウガの質問にアイリとレベッカは顔を見合わせる。
「事件前と変わっていないと感じます」
「そうですね」
アイリとレベッカが答えると、クウガは礼を言って受付から離れた。
ギルド会館から出ると、ササジールとオプティミスが暇そうにしていた。
「これから、どうするの?」
「とりあえず、自由行動だな」
オプティミスの質問にクウガが答える。
「儂は疲れたから、エールでも飲んで休んでおるわ」
エールを飲みたいササジールは、立ち上がる。
「クウガとアリスは、どうするの?」
「私たちは、ちょっと用事があるのよ」
「……クラン内の恋愛は禁止だよ‼」
「馬鹿ね。私がクウガのような男に惚れるわけないでしょう!」
「それは俺も同じだ」
クウガとアリスは、睨み合っていた。
「ケンカなら他所でしてくれ。儂は先に行くから、宿が決まったら探して教えてくれ」
「ササ爺。途中までは一緒に行きましょう」
「……お主らも、エールを飲むのか?」
「違うわよ」
クウガとアリスは、リゼのクエスト場所である飲食街まで行くつもりだったので、向かう先はササジールと同じだった。
「オプティミスは、どうするんだ?」
「一人で行動しても面白くないから、クウガたちに付いていくよ」
「えぇ~、オプティミスはササ爺と二人で、エールでも飲んでればいいじゃない」
「……やっぱり、アリスはクウガと二人っきりになりたいんじゃないの?」
「違うわよ‼」
「じょ、冗談だよ!」
本気で怒るアリスに気付いて、オプティミスは笑って誤魔化した。
「お主ら、もう行くぞ‼ 儂は我慢出来んのじゃ」
「ごめんごめん!」
オプティミスは、怒っているアリスから離れるように、ササジールに駆け寄った。
そして銀翼の四人は、ギルド会館から飲食街へと歩き始める。
リゼは、いつも通りクエストボードから、クエストの紙を剥がして受付へと持っていく。
ランクCのクエストも、もう少しで全て受注することになる。
本当であれば、リゼは討伐系のクエストばかりしたいと思っていた。
しかし、清掃系のクエストも街のためには大事なことだと、分かっていたので同じようにクエストをするように心掛けていた。
今回、リゼが受注したクエストは『川原の除草と清掃』だった。
区間ごとにクエストが分かれている。
今回の場所は、特に荒れている地域にため、除草だけでなく清掃も加わっていた。
労働力が多いため、報酬も高いし、区間も短い。
当然、ランクBとの共通クエストだ。
ランクBの冒険者がいない今、清掃作業をする冒険者がいないので、リゼは積極的に清掃系のクエストを受注していた。
「はい、リゼちゃん」
受付嬢のアイリは、リゼに背籠と大きめの皮袋を渡す。
通常であれば、除草した草は肥料になるため、その場所に固めて置いておく。
しかし、今回の区間では、食料を扱う店が近くに幾つかある飲食街と呼ばれる場所だ。
そのため、虫が大量発生することを嫌うので、除草した草は持ち帰るようになっていた。
清掃も、食べ歩きした食事のゴミを川原に捨てる者がいるためだ。
当然、店側の要求や、本来であれば店側がすべき清掃作業をするのだから、店側も報酬の一部を負担している。
「ありがとうございます」
リゼはアイリに礼を言うと、クエスト場所へと向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「久しぶりって感じもしないわね」
「当り前だろう。この間、来たばかりだ」
「儂は疲れたから、休みたいんじゃがの~」
オーリスに着いたアリスにクウガ、ササジールの三人が口々に話す。
「はぁ~、僕は久々だけどね」
「お前は前回のクエストに参加しなかったからな」
「だって、留守番していろっていったのアルベルトたちだろう⁈」
欠伸をしながら話すのは、銀翼のメンバー『オプティミス』だった。
「それよりもなんで、今回はフルメンバーなんだよ!」
「お前がサボりすぎなんだ」
「そうそう。残してきた二人を教育するって言っておいて、遊んでいたのは知っているのよ」
「そ、そんなことないよ‼」
言い争うクウガたち――。
「お前さんたち。声が大きいから注目を浴びておるぞ‼」
疲れ切っているササジールが諭すような口調で、三人に話す。
街の人々も銀翼のメンバーが又、オーリスに来たことに驚く。
そして同時に、期待を抱いていた。
「とりあえず、ギルド会館だな」
「そうね」
クウガたちは馬から下りて、ギルド会館へと歩き出した。
馬の見張りもあったので、ギルド会館へはクウガとアリスの二人が入る。
クウガとアリスの姿を目にした受付嬢は、すぐに受付長のクリスティーナへと報告をする。
アイリとレベッカは、リゼのことを話すべきかと悩みながらも、必死で冷静を装っていた。
奥の部屋からクリスティーナが飛び出してきた。
そして、そのままクウガとアリスの所へと走っていく。
「銀翼のメンバーであるお二方に、お願いが御座います」
呼吸を乱しながらも冷静に話をするクリスティーナ。
「ゴブリンたちのことなら、アルベルトとラスティアに、ローガンとミランの四人が向かっている。もう、合流しているだろう」
クウガは、クリスティーナの言おうとしていたことが分かっていた。
「ありがとうございます」
クリスティーナは頭を下げる。
ランクAの冒険者が、ゴブリン討伐に加わってくれれば、生存率が格段に上がる。
「俺としては、あっちは心配していないんだが……」
クウガは受付にいるアイリとレベッカのほうを見る。
アイリとレベッカは、冷静に営業スマイルで返した。
「例の事件。報告してくれて、ありがとうな」
「いいえ。仕事ですので、お礼を言われるようなことではありません」
クリスティーナは表情を変えることなく、淡々と話す。
「それで、事件の被害者は今、どこにいる?」
クウガはリゼの名を出さずに、被害者という言葉を使った。
クリスティーナは、受付にいるアイリとレベッカのほうを向く。
「飲食街のクエスト『川原の除草と清掃』をしているかと思います」
アイリが答える。
殆ど、人がいないギルド会館なので声が通るため、クリスティーナとクウガたちの会話が聞こえていた。
「怪我の具合はどうなんだ?」
「はい、ほぼ完治しているかと思います」
「……もう、ギルドの部屋からは出たんだよな?」
「はい、その通りです」
「アルベルトが来たら、事件の詳しい内容を教えてもらってもいいか?」
「はい。しかし、詳しい話であれば、衛兵詰所のほうが良いかと思います」
「そうだな。衛兵詰所へは、話を聞いた後で行ってみる」
「お願いします。しかし、ゴブリン討伐に向かわれているのであれば、ギルマスと会うかと思います。もしかしたら、話を聞いておられるかも知れません」
「ギルマス自ら、討伐に参加しているのか‼」
「はい。事情が事情でしたので――」
クウガはクリスティーナに、乗ってきた馬を預かってもらうよう交渉をする。
とりあえず、受付に移動をして、クウガは一泊分の料金をクリスティーナに支払った。
そして、八人分の宿を紹介してもらおうとするが、ゴブリン討伐を手伝ってもらっているので、宿の手配はギルドがすることとなった。
「では、愛しの妹分に会いに行きましょう‼」
アリスはリゼに会うのが嬉しいのか、笑顔になる。
「その前に、アイリとレベッカに話を聞いてからだ」
「……相変わらず、慎重ね」
クウガはアリスの言葉を聞き流すように、受付のアイリとレベッカに話し掛けた。
「リゼの様子はどんな感じだ?」
クウガの質問にアイリとレベッカは顔を見合わせる。
「事件前と変わっていないと感じます」
「そうですね」
アイリとレベッカが答えると、クウガは礼を言って受付から離れた。
ギルド会館から出ると、ササジールとオプティミスが暇そうにしていた。
「これから、どうするの?」
「とりあえず、自由行動だな」
オプティミスの質問にクウガが答える。
「儂は疲れたから、エールでも飲んで休んでおるわ」
エールを飲みたいササジールは、立ち上がる。
「クウガとアリスは、どうするの?」
「私たちは、ちょっと用事があるのよ」
「……クラン内の恋愛は禁止だよ‼」
「馬鹿ね。私がクウガのような男に惚れるわけないでしょう!」
「それは俺も同じだ」
クウガとアリスは、睨み合っていた。
「ケンカなら他所でしてくれ。儂は先に行くから、宿が決まったら探して教えてくれ」
「ササ爺。途中までは一緒に行きましょう」
「……お主らも、エールを飲むのか?」
「違うわよ」
クウガとアリスは、リゼのクエスト場所である飲食街まで行くつもりだったので、向かう先はササジールと同じだった。
「オプティミスは、どうするんだ?」
「一人で行動しても面白くないから、クウガたちに付いていくよ」
「えぇ~、オプティミスはササ爺と二人で、エールでも飲んでればいいじゃない」
「……やっぱり、アリスはクウガと二人っきりになりたいんじゃないの?」
「違うわよ‼」
「じょ、冗談だよ!」
本気で怒るアリスに気付いて、オプティミスは笑って誤魔化した。
「お主ら、もう行くぞ‼ 儂は我慢出来んのじゃ」
「ごめんごめん!」
オプティミスは、怒っているアリスから離れるように、ササジールに駆け寄った。
そして銀翼の四人は、ギルド会館から飲食街へと歩き始める。
32
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説
もういらないと言われたので隣国で聖女やります。
ゆーぞー
ファンタジー
孤児院出身のアリスは5歳の時に天女様の加護があることがわかり、王都で聖女をしていた。
しかし国王が崩御したため、国外追放されてしまう。
しかし隣国で聖女をやることになり、アリスは幸せを掴んでいく。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる