運命の番に為る

夢線香

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小話まとめ・短編・番外編

✿ 添い寝……? (J)

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 今夜も雪乃を抱こうと思って、ベットの中で雪乃を抱き締めながらせっせと誘惑のキスをしていると、今日は添い寝して欲しいと言われた。

 雪乃を抱く気でいた俺は、不満だ。

 雪乃が言う通り、ここのところ毎晩雪乃を抱いていた。

 雪乃と出会う前は性欲で厄介だったのはラットの時くらいで、性欲よりもそれを解消する面倒臭さの方が先に立ってしまい、性欲はここまで強くはなかったと思う。

 それなのに雪乃を見ていると可愛さの余り舐め回したくなるし、がぶがぶ噛み付きたくなる。

 兎に角、毎日抱いても飽きない。


 それなのに添い寝……


 どうにか雪乃をその気に出来ないかと思案していると、可愛くお願いされて俺の腰に腕を回してくる。胸に頬擦りしながら無邪気な顔で嬉しそう微笑まれては、諦めるしかない。

 まあ、これはこれで可愛いからいいけどな。

 御要望通り、雪乃の柔らかな髪に指を潜らせてゆっくりと梳きながら撫でる。

 雪乃は俺達が出会った日のことを思い出して、ふふっと可愛く笑っていた。

 俺も釣られて笑ってしまう。

 俺にとっても忘れることなんて出来ないほど強烈で、鮮烈な思い出だ。

 雪乃に出会ってからは、色んな感情や雪乃自身に翻弄されまくって賑やかな時間が続いている。

 そんなことを思い出しているうちに、俺も諦めが付いた。

 今日は、大人しく雪乃をあやして眠ることにしよう。

 腕の中にある温かい雪乃の身体を撫でて、番の匂いを嗅ぎながらふわふわと優しい眠りに落ちて行った。




 ふっ……俺も、まだまだ考えが甘いな……


 夜中に目を覚ました俺は、一人で自分自身を嘲笑していた。

 仰向けに寝ていた俺の身体は、いつの間にか横向きになっていた。きっと寝返りを打ったんだろう。

 俺の背中にぴったりと張り付いて眠る雪乃。

 まるで俺を絶対に離さないぞと言わんばかりに抱き着いている。

 腰から回された雪乃の腕。

 そして、俺の勃起したモノをしっかりと握り締めている雪乃の両手。

「…………」


 なんでそこを握るんだ、雪乃。

 ソレに添い寝は必要ないぞ、雪乃。


 雪乃の握りぐせは健在だった……


 以前、雪乃になんでそこを握るのかと尋ねたら丁度いい位置にあるからと言っていたな。握り心地が良いとも。

 確かに丁度いい場所まで勃っているが……コレ、俺が勃起していたのか雪乃に触られて勃起したのか、眠っていた俺には分からない。

 雪乃の手だって小さくはないのに、両手を上下にずらしてしっかりと握り込んでいる。

 眠っているから徐々に握る手の力が緩んできて、その隙に雪乃の手から抜こうとすると何かを察知したかのように、ぎゅむりと握り直されてしまう。

 諦めて眠ろうとしても雪乃の握力が緩んでくる度に、ぎゅむぎゅむと握り直されて眠れないっ……!

 そのうち雪乃に握り潰されるんじゃないかと、若干恐怖を感じる。

 雪乃の指を一本一本慎重に外してどうにか片手を外し、もう片方の手も同じ様に慎重に外していく。

 漸く外れたと思ったら、先に外していた手にまた握られた……

 それを外していたら別の手に掴まれる。そんなことを何度か繰り返し最終的に雪乃の手を脇に挟んで押さえ込みながら、どうにか雪乃の手を外すことが出来た。

 すっかり目が覚めてしまった俺は、一体何をしているんだろうと情けなくなってくる。

 俺の背中でスヤスヤと眠る雪乃を恨めしく思う。

 雪乃に、ぎゅむぎゅむ、ぎゅむぎゅむ握られたせいで完全にやる気になってしまった俺のモノ。

 これは、どう考えても雪乃が悪いよな。

 俺はサイドテーブルからローションを取り出して自分のモノに塗りたくった。そして、雪乃の背中側にそっと移動して、彼の下着とズボンをずり下げる。

 流石に、眠っている雪乃にいきなり挿れるほど俺も鬼畜じゃない。……いや、こんなことが続けばやるかもしれない。

 だが、今はこれで我慢する。

 雪乃の尻の間を通って股の間に、にゅるんと挿し込んで雪乃を背中から抱き締めた。

 
 ここに挟み込んでおけば、そのうち萎えるだろう。


 雪乃の項に顔を埋めながら、眠る為に目を閉じた。

 腰が僅かに動くのは、仕方がないよな。


 翌朝、無意識に腰を振って雪乃の股を濡らしていた俺に、雪乃は真っ赤になって叫んだ。

「ジェッ……ジェイのっ……えっちっっ……!」

「…………」

 いや、散々俺を昂らせたのは雪乃なんだが……


 ――――納得いかない。


 あまりの理不尽さにモヤモヤして……

 取り敢えず雪乃を抱くことに決めた。










                   💕

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 ありがとうございます。(⁠*⁠˘⁠︶⁠˘⁠*⁠)⁠.⁠。⁠*⁠🌸
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