運命の番に為る

夢線香

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小話まとめ・短編・番外編

✿ 添い寝 (雪乃)

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 一日が終わり寝る時間。

 寝室のベッドにジェイと二人潜り込む。

 ジェイと向かい合って横になり、眠るには窮屈なほどしっかりと抱き締められて顔中にキスされる。

 俺もジェイの背中に腕を回して抱き返す。

 ジェイの啄むようなキスは止まらず、俺の唇を優しく柔らかく啄み始める。

 ジェイのおやすみのキスは、いつもこうだ。

 そして、おやすみ出来るのはずっと後になる。

 優しいキスで俺を油断させて唇だけを何度も啄んで、やがて深いキスに変わる。

 繰り返されるキスにその気にさせられて、いつの間にか抱かれている。ここのところ、それが毎晩続いていた。

「ん……ぁ……ジェイ……」

 俺の舌を散々絡め取って撫で擦るジェイの舌が離れた隙を狙って、ジェイのくるくるの髪に指を潜らせ、またキスをしようとするジェイをどうにか止める。

「ジェイ……今日もするの……?」

 お互いの吐息が掛かる距離で尋ねる。

「駄目か?」

 ジェイは、そう言いながら俺の背中やお尻を服越しに、誘うようにゆっくりと撫でてくる。

「俺、思うんだけど……流石に毎日するのはやり過ぎだと思うんだ」

 これ以上キスされないように、ジェイの頬に頬を擦り付けながら彼の耳元で囁く。

「駄目か?」

 ジェイは、さっきと同じ言葉を俺の耳元に甘く吹き込んで来る。

 俺だってジェイとするのは嫌じゃない。嫌じゃないけど、こうも毎日快楽に沈められたんじゃ堪らない。

「……何事もやり過ぎは良くないと思う……あっ……」

 話の途中なのに優しく耳を舐められて、思わず甘い声が漏れてしまった。

「俺は毎日でも構わない」

 ジェイは俺の耳をゆっくりと舐めたり喰んだりしながら耳元で囁くから、俺の身体はゾクゾクと震えた。

 そうされると彼がくれる快楽を知っている身体は、直ぐに反応してしまいそうになってしまう。

 ジェイは俺をその気にさせて、続行しようとしてくる。

 ここで流されたら駄目だ。

「んっ……ぁあっ……だ、だめ……今日は添い寝して……」

「添い寝? いつもしているだろう」

 確かにそうだけど、それは抱かれた後のことだ。抱かれた後はヘトヘトで直ぐに寝落ちしてしまうから、添い寝されているような気がしない。

 執拗に耳を嬲ってくるジェイの頭を両手で押さえて、どうにか視線を合わせる。

 艶めいたエメラルドの目が俺をじっと見詰めて来る。

「ジェイの指に髪を優しく梳かれながら、ジェイの体温を感じて安心して寝たいの」

「…………」

 俺の提案にジェイは、不満そうな顔をする。

「ここ最近、毎日してるじゃないか。偶には穏やかに眠りたい……だめ……?」

「…………」

 甘えた口調でお願いしてみる。

 不服そうなジェイは、暫く俺を覗き込んだまま何かを考えているようだったけど、深々と諦めの溜め息を吐いた。

「はあぁ、分かったよ」

 俺を抱き締めていたジェイの腕が緩で仰向けに転がった彼の腰に腕を回して、身体の半分をジェイの身体に覆い被せ、厚い胸に頬を付けた。

 ジェイは俺を腕枕するように抱き込んで、長い指を俺の髪の中に潜り込ませてゆっくりと梳きながら撫でてくれる。

「この体勢、苦しくない?」

「平気だ」

 俺達が使っている枕は、枕というより大きなクッションといった方が正しい。そのクッションに深く埋もれて眠るから、緩い傾斜になってジェイの胸に顔を付けている俺の首にも負担は掛からない。ジェイの腰に回した俺の腕も、彼の身体の重さで痺れたりしない。

 ジェイの指に髪を梳かれるのは本当に気持ち良くて、いつの間にか顔が緩んでしまう。

「ん……気持ちいい……」

 目を閉じてTシャツ越しの彼の胸に擦り寄り、無意識に言葉が漏れてしまう。

「はぁ……こんな無邪気な顔をされたんじゃ、何も出来ないな……」

 まだ諦めていなかったのか、ジェイがひっそりと呟いた。

「ふふ、こうしてるとジェイと初めてあった日を思い出すよ……」

 ジェイと初めてあった日、デカいカエルが釣れたのに驚いて冷たい湖にジェイを道連れにして飛び込んだ。寒さに震えて抱き合って、最後はジェイとハグしているうちに眠くなってこんな風にされながら眠っていたな。

「ああ……インパクトが強烈過ぎて忘れられないな」

 ジェイも喉で笑いながら俺の頭をするりと撫でる。

「ジェイとこうしてるのは、あったかくて大好き」

 ジェイの胸に頬をすりすりと擦り付けながら甘えて懐いてしまう。

 初めて会った日と違うのは、堪らなくいい匂いが漂うこと。俺だけのアルファの匂い。俺の番の匂い。

「雪乃……」

 ジェイの慈しむように優しい声が頭上から降ってきて、何度も髪をゆっくりと梳かれているうちにうとうととしてくる。

「ま、偶には添い寝だけっていうのも悪くない。――おやすみ、雪乃……」

「ん……おやすみ……」

 声を潜めて優しく囁いてくるジェイの声に、穏やかな眠りへと誘われ、俺は抗うことなく心地良い眠りへと落ちていった。











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