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小話まとめ・短編・番外編
✿ 日常の、ちょっとした幸せ 2
しおりを挟む※ バスケットボールのルール、がん無視でお送り致します。大神家の人々のボール遊びです。
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✿ バスケ ONE on ONE 【1対1】
大神家の庭に作った、一つだけ据え付けられた練習用のバスケットゴール。そこで俺とジェイは、1対1の勝負をしていた。
だけど、ハイスペックのアルファに俺は一度も勝てずにいる。
ジェイに何度も勝負を挑んでいると、兄さんや姉さん達、父さんまでが番を連れて集まって来た。
皆は俺を応援してくれたけれど、ハイスペックアルファの壁は高過ぎた……。
俺は悔しくて、ちょっと涙目だ。
「ジェイデン、ちょっとタイムよ!」
禅乃兄さんの番、セレイアさんが突然タイムを叫んだ。彼女は俺の腕を引いて皆から離れると、俺の耳元に口を寄せ内緒話をする様に戦略をアドバイスしてくれる。
「でも……ちょっとズルくないかな……?」
「何言ってるのよ、雪乃。相手はハイスペックアルファよ? ズルくなんかないわ!」
セレイアさんの言う事も一理あるので、彼女に頷いた。
「ジェイ、次こそ負けないからっ!」
「いいぞ。何度でも掛かって来い」
俺の宣言に、ジェイは不敵に笑った。
腰を下げてボールをドリブルするジェイ。ジェイからボールを奪わないと点を入れられない。俺はずっと、ジェイからボールを奪えないでいた。
俺は、セレイアさんの指示通り、涙目の潤んだ目でジェイを見詰めた。
「ジェイ……。ボールが欲しい……。ちょうだい……?」
「………………ほら」
うるうるの涙目で甘えた声でお願いした俺に、ジェイはあっさりと陥落した。
困った様に眉を下げて、ボールをサッと俺に手渡す。
俺はボールを受け取ると、透かさずスリーポイントシュートを決めた。
「ありがとう! ジェイ! セレイアさんっ! やったよっ!!」
「よくやったわっ!!」
俺は、漸くシュートを決められた。セレイアさんの元に駆け寄って、がしりと喜びのハグを交わした。
それを面白くなさそうに見ているジェイ。
コートに戻り、攻守を交代してゲーム再開だ。
今度は、俺がボールをドリブルしている。ジェイのディフェンスを突破しないと、ゴール出来ない。
ボールを奪いに来たジェイをうるうるの目で見詰める。
「ジェイ……。ボール……取っちゃ駄目……」
「そうは言ってもな……」
「俺……シュートしたい……ダメ……?」
「勿論、いいに決まっている」
ジェイは、即答で頷いて道を開けた。
ジェイの横を通り抜け、シュートを決めた。そして、満面の笑みで振り返り、ジェイに抱き着いた。
「ジェイっ! ありがとう!」
お礼を言って、ジェイの頬にチュッとキスをする。
「ナイスシュートだ。雪乃」
ジェイは、しっかりと俺を抱き締めて笑った。
それを見ていた皆が自分達もやりたいと言い出す。俺とジェイは、場所を譲った。
✿ 父さんと母さんの場合。(昂雅と朱乃)
母さんは、慣れないドリブルをしながら対峙した父さんを見た。
「昂雅。私、ダンクシュートをしてみたいわ!」
「ああ、いいぞ」
楽しそうに眼をキラキラさせた母さんに、父さんは笑み崩れた顔で頷く。
辿々しいドリブルで、ゴールを目指す母さん。
父さんは、ゴール下に立っていた。シュートの為にボールを持って跳び上がった母さんに合わせて、後ろから彼女の腰を掴んで高く放り上げ跳躍の補助をした。
ドカッ…! と、見事なダンクを決める母さん。
バランスを崩して落ちて来た母さんを父さんは横抱きに受け止めた。
「凄いっ! ダンクって気持ちいいのねっ!!」
興奮した母さんは、父さんの首に勢い良く抱き着いた。
「ああ、見事なダンクシュートだったよ」
父さんは、デレデレとして母さんを褒める。いつになく、喜んでいる母さんが可愛くてしょうがないようだ。
ジェイ
「アレは、勝負なのか?」
雪乃
「母さんの願いを叶える勝負なんじゃない? ダンクって見応えあるから、大好き。仁乃兄さんのダンクも凄くカッコ良くて、それを見てバスケを始めたんだ」
仁乃兄さんは、笑いながら俺の頭をグリグリと撫でてくれた。
ジェイ
「────後で、やって見せる」
ジェイは、ちょっと拗ねたように言った。
雪乃
「ふふっ! ジェイがやったら、凄くカッコ良さそう!」
ジェイ
「雪乃……」
ジェイは嬉しそうに微笑んで、俺をぎゅっと抱き締めた。
✿ 禅乃兄さんとセレイアさんの場合。
禅乃兄さんとセレイアさんは、意外と真面目に勝負をしていた。
「もうっ……! いい加減にボールを渡しなさいよっ!! ゼンッ……!!」
「セレイア、これは勝負だぞ? 雪乃に伝授した技は、通用しないからな? ほらほら、ボールを奪ってみせろよ!」
「ゼンの、意地悪っ……!!」
禅乃兄さんは、悔しがるセレイアさんを誂うように笑い、右へ左へ、ひらりひらりとセレイアさんの伸びて来る手を躱していた。
セレイアさんは、顔を真っ赤にして頬を膨らませて悔しがっている。
「────いいわ。覚悟しなさいよ? ゼン」
闘志を燃やしたセレイアさんが不敵にニヤリと笑った。
「おう! 取れるものなら取ってみろ!」
禅乃兄さんもニヤリと笑ってセレイアさんを挑発する。
セレイアさんは、腰を下げてボールを取りに行った。
「はうっ……!?」
セレイアさんは、バスケットボールではなく禅乃兄さんの股間をわしゃりと掴んだ。
力の抜けた声を上げる禅乃兄さんから、バスケットボールをあっさりと奪い取り、華麗にシュートを決めた。
そっちのボールっ……!?!?!?
心の中で突っ込みを入れたのは、俺だけじゃないはずだ……。
「「「「おおぉぉ~~~~っ……!」」」」
皆がセレイアさんに拍手を送った。セレイアさんは、キラキラの笑顔で皆にガッツポーズを決めて応える。
「……まさか、そう来るとは……」
禅乃兄さんは、地に片膝を突きながら苦笑していた。
雪乃
「流石、セレイアさん! 思いも寄らない不意打ちが凄いっ!」
ジェイ
「────いや、雪乃も負けてないぞ? 寧ろ、上を行っているからな?」
俺を見詰めながら、ジェイが沁み沁みと言った。
雪乃
「???」
✿ 都乃姉さんと蘭花さんの場合。
都乃姉さんは、ハラハラと心配しながら蘭花さんを見ている。
蘭花さんは、運動が余り得意ではないみたいで、ドリブルが出来なかった……。
蘭花さんは小さいから、彼女が持つとボールが大きく見える。
一生懸命ドリブルをしようとしては、上手く出来なくて転がって行くボールを何度も追い駆けている。
蘭花さんのそんな姿に、都乃姉さんは落ち着きなくおろおろとしながら、固唾を呑んで見守っている。
「…………蘭ちゃんっ…………!」
涙目になりながらドリブルをしようとしている蘭花さんに、そこに居た皆が心の中でエールを送っていた。
どうにか、ゴールリングの元に辿り着いた蘭花さん。全員がホッと息を吐いた。
「……えいッ……!!」
可愛らしい掛け声を上げて、シュートを放つ蘭花さん。
ボールはゴールリングには届かず、バウンドして転がって行った。
「あっ……!」
慌てて、ボールを追い駆ける蘭花さん。
ボールを拾ってゴール下に戻ると、もう一度シュートを放つ。
「えいッ……! あッ……!!」
放ったボールはゴールリングにはほど遠く、予め待機していた都乃姉さんがボールを受け取って蘭花さんに手渡す。
そうやって、何度か同じ事を繰り返した。
「み、みや……ちゃん……。シュート……入らない……」
遂に、大粒の涙を零して泣き出した蘭花さん。
「だ、大丈夫よっ……!? 蘭ちゃんっ! 私が手伝ってあげるからっ……! 泣かないで……?」
都乃姉さんは、蘭花さんを抱き締めて必死に宥めた。
蘭花さんが落ち着くと、都乃姉さんは後ろから蘭花さんの両太腿を抱き込み、抱え上げた。
背の高い都乃姉さんに抱え上げられた蘭花さんは、間近になったゴールリングに、ポイッとボールを放ってシュートした。
「っ! ……入ったっ……!」
蘭花さんは、泣き腫らした顔で本当に嬉しそうに笑った。
息を詰めて見守っていた全員が安堵の溜め息を吐き出しながら、拍手を送った。
「都ちゃん、ありがとう。……大好き……」
「私も大好きよ。蘭ちゃん」
蘭花さんを正面から抱っこし直した都乃姉さんが彼女の額にキスを落とした。
ジェイ
「凄い……手に汗握るプレイだったな……」
雪乃
「あはは……。本当にね……」
✿ 仁乃兄さんと史人さんの場合。
仁乃兄さんは、タン、タン、と余裕の態度でドリブルをしていた。その正面にいる史人さんの息が上がっている。
二人がゲームを始めてから、結構な時間が経った。
「仁……。そろそろボールを取らせてよ……」
「ん~? 史人が可愛くお強請りするなら考えてもいいぞ?」
「……ボール…………ちょうだい…………」
「ん~……。それじゃあ、不充分だな」
仁乃兄さんは、なかなか史人さんにボールを渡してあげない。
史人さんは、悔しそうに歯噛みしている。
「────どう言えば、いいんだい?」
「どう言えばって、いつも教えているじゃないか?」
「っ!? それを此処で言わせる気なのか…?」
「何か、駄目なのか?」
史人さんは、俯いて黙り込んでしまった。
「仁……。仁のボールが欲しいんだ……。ボールをちょうだい……。お、お願い……」
顔を真っ赤にして、運動で弾む息を吐き出しながら、涙目になって、上目遣いに仁乃兄さんを見てお願いする史人さん。
「うーん……。それじゃあ、足りないな。ボールを渡しても、直ぐに奪ってしまうかもしれないな?」
「っ~~~~……!」
仁乃兄さんは、まだボールを渡さないつもりらしい。史人さんは俯いてしまった。
そして、何かを決心したように仁乃兄さんに近付いて、仁乃兄さんの胸に手を置く。
仁乃兄さんは、器用に背中の後ろでドリブルをしながらニヤ付いていた。
「……ボールをちょうだい……お願い……仁……」
史人さんは、爪先立ちになって仁乃兄さんの唇に、ちゅっとキスをした。
仁乃兄さんは、満面の笑みでドリブルをやめて、ボールを漸く史人さんに渡した。
史人さんは、顔を赤くしながらもボールを受け取りシュートを決めた。
皆が拍手する中、仁乃兄さんは史人さんを捕まえて深く口付けた。
「っんん゙~~!」
「報酬」
「!? さっき、キスしたじゃないかっ……!」
「成功報酬だ」
「っ!?」
仁乃兄さんは、更に深く、なが~く史人さんに口付けた。
「んっ……!! ……成功報酬も、渡したじゃないかっ!?」
「成功報酬がキス一回だなんて、言ってないぞ?」
「っ!!」
仁乃兄さんは悪い顔で笑うと、また史人さんに口付けて、史人さんの腰に力が入らなく成るまでキスをした。
仁乃兄さんは……取り立てが激しいようだ……。
雪乃
「仁乃兄さんって、意地悪なのかな……?」
ジェイ
「知らなかったのか? あいつはDevil Wolfだからな、当然だ」
雪乃
「Devil Wolfって……」
ジェイ
「激辛ハバネロ入りシュークリームを平気で人に食わせてくる奴だからな!」
雪乃
「激辛ハバネロ……シュークリーム???」
※ 勝負をしているつもりのオメガ勢と、番を愛でているだけのアルファ勢……でした。
✿ その後。
ジェイは、約束通り豪快なダンクシュートを披露してくれた。
「ジェイっ!! 格好良いっっ…!!!!」
俺は興奮して、ジェイに駆け寄って抱き着いた。
ジェイは、凄く嬉しそうな顔で俺を抱き留める。
ジェイ
「♪~💕」
俺だけではなく、オメガの皆も大興奮で歓声が上がった。そうなれば、黙っていないのがアルファ勢。
皆が挙って色んなダンクを決め始め、迫力あるプレイを披露した。
番に歓声を上げられて、皆、満足顔だ。
セレイア
「ホント、うちのアルファって単純で可愛いわ」
朱乃、雪乃、史人、蘭花
「「「「うんうん」」」」
おわり
読んでくださってありがとうございます。
感謝を。( ꈍᴗꈍ)
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