運命の番に為る

夢線香

文字の大きさ
上 下
41 / 66
小話まとめ・短編・番外編

番外編 花火大会(二)

しおりを挟む



 のんびりと食事を終えて、家族の皆と別れた。俺達は、会場内を散策する事にした。

 出店でみせの通りを歩いていると、射的の店があった。『祭』と黒字で書かれた赤い半纏はんてんを着た店員さんが数人、客待ちをしていた。コミカルな動物の絵が描かれた簡単な作りのお面を頭にずらして着けている。


「ジェイ、射的をやろうよ」

「射的?」

「玩具のエアーガンで、景品を撃ち落とす遊びだよ」

「面白そうだな」

「「「いらっしゃませ~!」」」


 俺とジェイが寄って行くと、店員さん達がにこやかに挨拶をして来る。

 二人分のお金を払い、エアーガンとコルクの弾を五個ずつ渡された。

 三メートルほど離れた棚に、小さめのお菓子やぬいぐるみ、子供の玩具が間隔を空けて並べられている。


「コルクを銃の先に付けて、景品を撃ち落とせれば落としたものを貰えるよ」

「簡単じゃないか」

「ふふっ、それはどうかな?」

「?」


 撃ち易い様にジェイの背中に回って、彼のお腹と胸に腕を回して抱き着き、さわさわと撫で回す。


「雪乃?」

「ふふっ、アルファにはこれくらいのハンデが必要でしょう?」

「随分と幸せなハンデだな」

「そう?」


 余裕で笑うジェイの耳に、ふ……っと息を吹き掛けると僅かに身動みじろいだ。

 その後、直ぐにパンッ! と大きな音がした。


「ぅわっ……!」

「え…?」


 何故か、店員さんが悲鳴を上げた。

 景品の置かれた棚の横に、少し離れて立っていた店員さんが頭を押さえて背中を丸めている。

 あ、あれ? もしかして、俺がジェイに悪戯したから狙いが逸れたせい……?


「す、すみませんっ! 大丈夫ですかっ……!?」

「あ……はい……。当たって無いので、大丈夫です……。びっくりしましたが……」


 俺が慌てて声を掛けると、店員さんは苦笑しながら大丈夫だと手を振ってみせた。

 俺は、しゅんとして店員さんとジェイに謝った。


「本当に、ごめんなさい……。ジェイも、ごめん……。俺の所為で狙いが逸れたんだよね…? もう、悪巫山戯わるふざけはしないよ……」

「ん? 外してないぞ? 狙い通りだ」

「え……? 店員さんを狙ったの……?」

「? ああ」


 俺と店員さんは、口をぱっかりと開けて真顔で頷くジェイを見た。

 え? どういうこと? 店員さんを狙った? 確かに、撃ち落とした景品は貰えるって説明したけれど……店員さんを貰うつもりだったってこと……?

 驚いている店員さんに目を向ける。中肉中背のおっとりとした二十代後半位のベータ男性だ。

 え……? この店員さんが欲しかったってこと……? 俺の目の前で、堂々と浮気……!?


「────ジェイ……。あの店員さんが欲しかったの……?」


 地の底から這うような低い声で、ジェイに尋ねる。ジェイを抱き締める腕に力が籠もる。


「ぐぅッ……! 別にっ、店員は要らないぞっ……!」


 俺に締め上げられて、苦しそうに顔を歪めたジェイが慌てて否定した。

 その言葉に、ほっと息を吐く。店員さんまで、胸を撫で下ろしていた。

 ……そ、そうだよねっ! いくらなんでも、人間が景品として貰えるなんて……そんな事を思っている理由ないよねっ……!


「そ、そう……。それならいいんだけど……。兎に角、あの店員さんは狙っちゃ駄目だからっ!」

「? 分かった」


 ジェイは、よく分かってない様な顔で頷いた。

 浮気ではない様なので、ほっとしてジェイの肩に額を押し付け、彼をきゅっと抱き締めた。


「ヒッ……!!」


 さっきの店員さんとは違う声の悲鳴に、顔を上げる。


「なあ、裏の方に逃げた場合は、追い掛けて行って撃っていいのか?」


 ジェイの言葉に、耳を疑った。


「駄目だよっ……!? って謂うか、何で店員さんを狙うのっ!?」


 慌ててジェイの正面に回って、彼の顔をまじまじと覗き込む。

 ジェイは、きょとんとした顔で首を傾げた。


「店員は、狙ってないぞ」

「は……? ──じゃあ、何を狙ったの?」

「あの、頭に着けているやつだ」

「お面のこと……? お面が欲しかったの……?」


 こくりと頷いたジェイに、身体の力が抜けそうになる。

 改めて店員さんの頭を見ると、最初に狙われた人は狼のお面で、店の裏からこっちを怯えた様子で覗き込んでいる人は、ライオンのお面を着けていた。

 俺は脱力して、ジェイにもたれ掛かった。


「────ジェイ。あれは、景品じゃないから狙っちゃ駄目……。棚に乗っている物だけが景品だからね……」

「なんだ、そうなのか」


 ジェイは、俺を正面から片腕で抱き締めたまま、残りの四発を撃ってお菓子を四つ貰った。

 今度は、俺がやる番。ジェイが俺の後ろに回って腰とお腹に腕を回す。──それはいいんだけど、しっかりと抱き込んでくるからやり辛い。


「ジェイ……。もうちょっと、腕の力をゆるめてくれない?」

「────嫌だ」

「ジェイ? お願い」

「駄目だ」


 ジェイがお願いをしても聞いてくれないのは、珍しい。

 どうやら本気で離す気がないみたいだ。

 仕方が無いから、この状態で景品を狙う。撃とうとした瞬間に、さわりと身体を撫でられて手元がぶれた。コルクの弾は、狙った的を外したけれど別の景品に運良く当たった。


「ハイ、おめでとうございます!」


 店員さんに渡されたのは、シャボン玉セット……。

 二発目のコルクをエアーガンの先に詰めて、キャラメルの箱を狙う。

 ジェイが俺の耳に、ふ……っと息を吹き掛けた。


「っ!?」


 ピクリと身体が震えて、手元がぶれた。だけど、また何かに当たった。

 膨らませる前の物が沢山入った、水風船だった……。

 そんな感じで、項にキスをされ身体が跳ねてピロピロ笛(吹き戻し)を貰い、脇腹を擽られて手持ち花火セットを貰い、もう一度項にキスをされてねずみ花火を貰った。

 パーフェクトだったけど、釈然としない……。

 景品を袋に入れてもらって店を離れようとしたら、最初に狙われた店員さんが狼とライオンのお面をくれた。


「え? 貰ってもいいんですか?」

「はい。予備でいくつかありますから」

「ありがとうございます!」

Cheers ありがと!」


 俺とジェイは、笑顔でお礼を言ってその場を離れた。

 ジェイはライオンのお面を頭にずらして着けて、俺に狼のお面を同じ様に着けてきた。

 凄く、嬉しそうだ。

 そんなに、欲しかったのかな……。

 まあ、ジェイが楽しそうなら何でもいいんだけどね。



 ぷらぷらしながらお店やパフォーマンスをしている人を見て回る。ジェイは缶ビールを買っては飲んで、売っているお店を見付ける度に買って飲んでいた。


「ジェイ、そんなに飲んで大丈夫?」


 前に、ビールやワインをかぱかぱ飲んで、酔っていたジェイを思い出す。顔に全然出ないから酔っているのか分からなかった。

 酔って、甘えたになっているジェイも可愛かったな……。その後は、ちょっと……アレだったけど……。


「ビールぐらいじゃ酔わないぞ? ジュースと一緒だ」


 確かにあの時は、アルコール度数の高いワインもかぱかぱ飲んでいたから、そんなものなのかな。

 しっかりとした足取りで歩くジェイを見て、納得した。


「あ、金魚すくいのお店だ。ジェイ、やってみる?」

「金魚すくい?」


 ジェイの腕を引っ張ってお店に連れて行く。

 何人かのお客さんが挑戦している姿を見せる。


「ほら、あんな風にポイって謂うものを使って金魚をすくうんだよ。あの薄い紙は破れやすいから沢山すくうにはテクニックが必要なんだ」

「ふーん」


 俺とジェイは、暫くやっている人を観察した。丁度、上手い人がいて次々と金魚をすくっている。ジェイはそれをじっと見ていた。


「やってみる? すくった金魚は貰えるよ」

「そうだな、やってみるか」


 お金を払ってポイを受け取る。

 ジェイは、上手い人のやり方を真似まねて五匹すくって紙が破れた。


「ジェイ、凄い! 初めてやって五匹もすくえたなら上出来だよっ!」

「そうか? コツが分かってきたから次はもっとすくえるかもな」


 俺が感心して褒めるとジェイは嬉しそうに、にこにこしながら俺を覗き込んでくる。


「じゃあ、俺の分をあげる」

「いいのか?」

「うん、いつもやってたから大丈夫」


 ジェイに、未使用の俺のポイを渡した。ジェイは、ポイを受け取ると次々と金魚をいとも容易くすくっていく。

 流石、希少種アルファ……。コツを掴んだというのは嘘じゃないみたいだ。

 五十匹位すくって、ポイに穴が空いた。


「────雪乃。これ、持って帰らなきゃ駄目なのか……?」

「うーんっと、うちでは持って帰れるのは、一人三匹までって決まりがあるんだよね。俺の分と合わせて六匹までは持って帰れるよ?」

「何だ? その決まりは?」


 ジェイが首を傾げる。俺は苦笑した。


「小さい頃、お祭りの度に兄さん達と金魚すくいをやって、その度に大漁に金魚を持って帰るものだから、水槽が一杯になっちゃうんだよね……。だから、父さんが持って帰ってくるのは一人三匹までって決めたんだよ。実際、うちにはでっかくなった金魚が沢山いるんだ」

「そうなのか。じゃあ、貰わない方がいいな」

「う~ん……でも、ジェイが初めてすくった金魚だから、六匹だけ選んで連れて帰ろうよ」


 ジェイは、微笑んで頷いた。


 金魚を持ってイベントを眺めて歩いていたのだけど、ジェイがまたビールを買うのを見て、そろそろ止めるべきかなと思った。かなりの本数を飲んでるんだよね……。


「ジェイ。ビールはもう、それでお仕舞いね?」

「んー……。分かった」


 ジェイは、残念そうに頷いた。


「ジェイがこんなにお酒好きだとは、知らなかったよ」

「んー。雪乃と居ると楽しくて、凄く美味うまく感じるんだよな……」

「楽しいの?」

「ああ、凄く楽しい」


 ジェイは、満面の笑顔で俺に抱き着いてきた。

 その顔がとても無邪気で、堪らなく可愛い。

 ジェイを抱き締め返すと、首筋に擦り寄ってくる。

 そこで漸く、ジェイが酔っている事に気が付いた。

 もう……! 足取りもしっかりしているし、顔に全然出ないから気が付かなかったよっ!


「ジェイ。一旦、屋敷に戻ろうか」


 花火が始まる夜までには、まだ大分時間がある。一度屋敷に戻って仮眠を取らせないと、折角の花火を見逃してしまう。

 ジェイは、花火を観た事がないと言っていたから、真下で観る迫って来る様な花火を観せてあげたい。

 素直に頷いたジェイを連れて会場の外を目指す。タクシー乗り場がいくつかあって、イベントがある日は直ぐにタクシーに乗れる。

 向かう途中で苺飴を買って、ジェイの口に放り込んだ。串にした本物の苺に、べっ甲飴を薄く掛けたやつ。

 ジェイは、ガリガリと噛み砕いて食べていた。


「これ、美味うまいな」

「気に入った? 俺のもあげるよ」

「雪乃の分だろ?」

「また、後で買うからいいよ」


 渋るジェイの口に、持っていた苺飴を放り込む。

 ジェイはまた、ガリガリと噛み砕いてあっと言う間に食べてしまった。

 そんなに気に入ったのかと思って見ていたら、肩を抱かれて引き寄せられ深く口付けられた。

 口の中に、甘いべっ甲飴と瑞々みずみずしい苺の甘酸っぱい味、そして、僅かなビールの味が広がった。

 ゆっくりと舌を念入りに絡められて、じっくりと可愛がる様に舌で撫で回される。それに応えながら、美味しい苺飴を味わった。


「ふふっ。凄く、美味しいね?」


 離れて行く唇に、ちゅっと追い打ちを掛けて微笑むと、ジェイの顔が笑み崩れて俺をぎゅうぎゅうに抱き締めて来た。

 ジェイは酔うと、甘えたになってしまって本当に可愛くなっちゃうんだから……。

 ジェイをぎゅっと抱き締めてから、タクシー乗り場に急いだ。

 タクシーの中でジェイは、ずっと俺の膝枕に頭を擦り付けていた。


 ライオンのお面を着けているけど──。


 俺には、くるくるたてがみのライオンみたいなでっかい猫にしか見えなくて、笑いを噛み殺すのが大変だった。












しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様

冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~ 二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。 ■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。 ■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

愛しいアルファが擬態をやめたら。

フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」 「その言い方ヤメロ」  黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。 ◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。 ◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

オメガ社長は秘書に抱かれたい

須宮りんこ
BL
 芦原奏は二十九歳の若手社長として活躍しているオメガだ。奏の隣には、元同級生であり現在は有能な秘書である高辻理仁がいる。  高校生の時から高辻に恋をしている奏はヒートのたびに高辻に抱いてもらおうとするが、受け入れてもらえたことはない。  ある時、奏は高辻への不毛な恋を諦めようと母から勧められた相手と見合いをする。知り合った女性とデートを重ねる奏だったが――。 ※この作品はエブリスタとムーンライトノベルスにも掲載しています。  

【完結】利害が一致したクラスメイトと契約番になりましたが、好きなアルファが忘れられません。

亜沙美多郎
BL
 高校に入学して直ぐのバース性検査で『突然変異オメガ』と診断された時田伊央。  密かに想いを寄せている幼馴染の天海叶翔は特殊性アルファで、もう一緒には過ごせないと距離をとる。  そんな折、伊央に声をかけて来たのがクラスメイトの森島海星だった。海星も突然変異でバース性が変わったのだという。  アルファになった海星から「契約番にならないか」と話を持ちかけられ、叶翔とこれからも友達として側にいられるようにと、伊央は海星と番になることを決めた。  しかし避けられていると気付いた叶翔が伊央を図書室へ呼び出した。そこで伊央はヒートを起こしてしまい叶翔に襲われる。  駆けつけた海星に助けられ、その場は収まったが、獣化した叶翔は後遺症と闘う羽目になってしまった。  叶翔と会えない日々を過ごしているうちに、伊央に発情期が訪れる。約束通り、海星と番になった伊央のオメガの香りは叶翔には届かなくなった……はずだったのに……。  あるひ突然、叶翔が「伊央からオメガの匂いがする」を言い出して事態は急変する。 ⭐︎オメガバースの独自設定があります。

【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜

MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね? 前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです! 後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛 ※独自のオメガバース設定有り

侍従でいさせて

灰鷹
BL
王弟騎士α(22才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、オメガ嫌いと噂される第3王弟の侍従になった。  侍従として働き始めて二日目。予定より早く発情期(ヒート)がきてしまい、アルファである王弟殿下と互いに望まぬ形で番(つがい)になってしまう。主の後悔を見て取り、「これからも侍従でいさせてください」と願い出たユリウスであったが、それからまもなくして、第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるらしいという噂を聞く。

処理中です...