運命の番に為る

夢線香

文字の大きさ
上 下
39 / 66
小話まとめ・短編・番外編

短編 甘やかしたい ☆

しおりを挟む



 今日は、ジェイと庭に出てバーベキューをしている。

 俺がバーベキューをしようと言ったら、ジェイは色んな食材を取り寄せてくれた。

 高級な牛肉や鶏肉、ロブスターや赤海老、白身魚にとうもろこしや各種野菜。

 俺はジンジャーエールやコーラ、アイスティーを飲んで、ジェイはビールやワインを飲んでいた。

 ジェイに、“バーベキューをした事があるのか”と聞いたら、“一人でやった事はあるけど、つまらなかった”と答えた。

 俺は、年に何度か家族の皆でバーベキューをして、ワイワイと賑やかに楽しんでいたので、それを聞いて胸がキュッ…っと切なくなった。

 二人だけだけど、ジェイが楽しめたらいいなと思ってやる事にした。

 外国では、庭でホームパーティーをしたりするからバーベキュー用のガゼボも、一応、建ててあるんだって。

 俺が此処に住むようになってからは、ホームキーパーさん達も姿を見せるようになっていた。俺が来る前までは、ジェイの側に近付けなかったから、して欲しい事はスマホで頼んだりして準備して貰っていたらしい……。


 そういう話を聞くと……何だかとても切なくなって、ジェイを一杯、甘やかしたくなる。


 ラジオを付けて、音楽を流しながらバーベキューをする。


「ジェイ、上手に焼いてね」

「任せろ」


 ジェイはビールを飲みながら、張り切って肉を焼いてくれた。

 ジェイが焼いてくれた肉を切り分けて、焼いているジェイにフォークに刺して食べさせてあげながら、俺も食べる。


「ん! サイコーの焼き加減だよ! ジェイ!」


 俺が賛辞を贈ると、ジェイは満足そうに微笑んだ。


「ロブスターって、どうやって焼くんだ? このまま焼いても良いのか?」


 ジェイが軍手を嵌めた手で、大きなロブスターを両手に一尾ずつ掴んで首を傾げる。

 ジェイが可愛かったので、パシャリと写真を撮った。


「えっと……家では、そのまま焼いてた気がするけど……ちょっと待って。今、調べるから」


 デジカメを置いて、スマホで調べる。

 近寄ってきたジェイと身を寄せて、二人でスマホを覗き込む。


「お腹を下にして十分位焼いて、ひっくり返して十分だって。……結構、時間が掛かるんだね……」

「なるほど……」


 ジェイは、二尾のロブスターをお腹を下にして網に置いた。軍手を外して赤ワインを飲みながら、野菜を焼く。

 その隣でジェイの口に、焼き上がったものに色々なソースやバターを付けながら、せっせと運ぶ。

 ジェイは、美味しそうにパクパクと食べてくれる。

 俺も一緒に食べながら、他愛もない話をした。

 ジェイは、ワインを飲みながら上機嫌だ。

 楽しそうにしているジェイを見ているだけで、嬉しくなる。

 そうこうしている内にロブスターがこんがりと焼けて、軍手を嵌めたジェイが頭としっぽを捩じるようにバキリッ、と捩じ切った。

 バキボキと爪や脚を折っていく。

 頭をロブスタークラッカーで挟み込み力を入れると、力が強すぎて殻と身がメキャリと潰れてしまった。


「「あ……」」


 二人、残念な声が揃った。


「……すまん、雪乃……」


 ジェイが、ガックリと肩を落とした。


「ふふっ、殻を取れば大丈夫だよ」


 俺は苦笑して、潰れたロブスターの頭を引き寄せて、持ち手の長いフォークを使って砕けた殻を弾いていく。


「雪乃……。それは、食べなくてもいい……」


 俺の隣に座って項垂れたジェイが、ボソリと呟いた。

 落ち込んだジェイの顎を人差し指でクイッと俺の方へ向けて、笑う。


「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよ。ジェイが俺のために焼いてくれたから、ちゃんと食べるよ」


 そう言って、ジェイの唇にチュッとキスをした。


「雪乃……」


「ほら、もう一つも焦げちゃうよ?」


 ジェイは、慌ててもう一つのロブスターを取り上げて、バキボキと折り始めた。


 砕けた殻を弾いていると、今度はジェイが俺にロブスターを食べさせてくれる。


「ん、美味しい。焼き加減もいい感じ!」


 ジェイは苦笑しながら、白ワインを飲んでいた。


「今度、父さん達がこっちに来たら、その時は皆でバーベキューパーティーをしようよ。二人でするのも良いけど、人が多いのも楽しいよ?」


「ホームパーティーだな……? そうだな、それも楽しそうだ」


 そんな感じで、バーベキューを楽しんだ。



 バーベキューを終えて部屋に戻った俺達は、煙たくなってしまったのでお風呂に入った。

 その後は、部屋のソファで寛ぐ。

 俺の隣に座ったジェイが、珍しく、うつらうつらとしていた。


「ジェイ……? 眠いの? ベッドに行く?」


 俺の問い掛けに、彼はコクリと頷いた。

 ジェイは、俺の手を握って立ち上がり寝室へと向かった。どうやら俺も一緒に連れて行かれるみたいだ。俺は苦笑しつつ、手を引かれるままに付いて行く。

 俺を先にベットへ寝かせ、覆い被さる様にして俺の胸に顔をくっ付けて抱き着いてきた。

 俺の胸に頬擦りしてくるジェイの頭を撫でる。


「雪乃……好きだ……」

「ふふっ……俺も好き」


 ジェイは、俺の胸に押し付けていた頭を上げて、身体をずらして俺に深く口付けてきた。

 今日のキスは、ジェイの味以外にお酒の味がした。

 何度も角度を変えて、ゆっくりと貪られる。


「雪乃が想う以上に……俺は、雪乃が好きだ……」

「ふ…ぅ……」


 ジェイが熱っぽく囁いて、俺の口を塞ぐ。


 俺だって、ジェイが想う以上にジェイが好き。


 そう言い返したいのに、ジェイの唇が話す隙を与えてくれない。


「……雪乃……雪乃……」


 熱に浮かされた様に、恋しに俺の名を呼びながら深いキスを繰り返すジェイ。

 ゆっくりと優しいキスに見せかけて、じっくりと余すことなく貪ってくるキス……。


 脳が……蕩けそうになる……。


 漸く唇が離れて、熱に蕩けて潤んだエメラルドが俺を一心に見詰めてくる。


「……はぁ……。急に……どうしたの……?」


 ジェイは、俺の問には答えず俺の胸に頭を擦り付けた。


 ……もしかして……甘えてる……?


 そう云えば、バーベキューをしている間、ジェイはビールやワインをずっと飲んでいた。


「ジェイ……。酔ってるの?」

「酔ってない」

「……本当に?」

「酔った事は、一度もない」

「でも、酔ってるよね……?」

「酔ってない」


 俺の胸に頭を擦り付けながら、“酔ってない”と言い張るジェイ。

 その仕草が既に酔っている様に見えるんだけど……。

 顔に出なかったから気が付かなかったけれど……。酔ってるね……。コレ……。キスも酒気が凄かったし……。


 それなのに、“酔ってない”って……甘えながら言い張るジェイが、堪らなく可愛いんだけどっ……!?


 ど、どうしよう……!? すっっっごく! 甘やかしたいっ……!!


 俺は、ジェイの雑に結った髪を解き、指で髪を梳きながら撫で回した。

 ジェイは、気持ち良さそうに目を細める。


「……ジェイ……可愛い……」

「……?……」


 俺がジェイの黄金色のくるくる髪を撫で回していると、彼の手が俺のTシャツを捲り上げながら身体を撫で上げてきた。


「……ジェイ……? 眠いんじゃないの……?」

「ん……」


 ジェイは、生返事を返しながら露わになった俺の胸の突起にチュウっと吸い付いてきた。


「ッ……」


 片方を舌で味わう様に舐めながら、もう片方を指で摘んでクリクリと弄られる。

 どちらも緩慢な刺激で……何だか……物足りない……。


「ジェイ……ッ……」


 思わず、強請る様な声音でジェイの名を呼んでしまう……。もどかしくて、ジェイの髪に潜らせた指に力が入った。

 それでもジェイは、俺の勃ち上がった小さな突起を舌で押し潰すように舐めあげてくる。もう片方は、そっと触れる様な弱い力の指先で…すりすりと弄られて、身体を捩って悶えてしまう。


「フッ…ぅ…ぅ……ジェ…イ……」


 欲情を煽られる……。


 暫くの間、ずっとソレを続けられて…すっかり、その気にさせられた頃、緩慢な愛撫を繰り返すジェイの動きが更に遅くなって……チュウゥゥ~っとキツく乳首を吸い上げられて、身体がヒクヒクと震えた。


「ぅンン~~ッ……!」


 ジェイは、それっ切り……ぱたりと動きが止まってしまう……。


 胸の上の彼を見ると、片頬を俺の胸に付けたまま……眠っていた……。


「………………嘘でしょ………………?」


 散々、焦れったい愛撫でその気にさせておいて眠るなんて……。俺の息子も、後ろも……その気なのに……。


「ぅぅ…ぅ…~~~………酷いよ………ジェイ………」


 くるくるの猫っ毛をそっと掻き混ぜながら、恨みがましく無防備な顔ですやすやと眠るジェイを見詰める。


 ……そんな顔で眠られたら……起こせないじゃないか……。


 俺は深く溜め息を吐いて、煩悩を鎮めることに専念した……。



 だけど……ジェイが眠ったまま、不意打ちで胸の突起を吸ってきて……煩悩を鎮めさせてくれない……。

 もう片方も、何故か摘んだまま離してくれなくて……時々、クリっと転がされて身体が跳ねる。

 ジェイの重みと甘い刺激に身体に力が入らなくて、彼を押し退けられない。──眠っているジェイが、可愛かった所為もある……。

 息を詰めて声を殺しながら、ジェイの身体の下でもじもじと悶えた。


「フッ……ぁうッ……ぅぅぅ~~……!」


 ジェイが目覚めるまで、其れはずっと続いた。

 余りにも、指や口を器用に動かすから……本当は、起きているんじゃないかと疑いたくなった……。
 

 目覚めたジェイが、中途半端な刺激で軽く息の上がった涙目の俺を見て、宥めながらも嬉しそうに俺を抱くのは、もうちょっと後の事……。


















 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 雪乃も生殺しを体験する……。

 読んで頂いて、ありがとうございます。(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)














しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

愛しいアルファが擬態をやめたら。

フジミサヤ
BL
「樹を傷物にしたの俺だし。責任とらせて」 「その言い方ヤメロ」  黒川樹の幼馴染みである九條蓮は、『運命の番』に憧れるハイスペック完璧人間のアルファである。蓮の元恋人が原因の事故で、樹は蓮に項を噛まれてしまう。樹は「番になっていないので責任をとる必要はない」と告げるが蓮は納得しない。しかし、樹は蓮に伝えていない秘密を抱えていた。 ◇同級生の幼馴染みがお互いの本性曝すまでの話です。小学生→中学生→高校生→大学生までサクサク進みます。ハッピーエンド。 ◇オメガバースの設定を一応借りてますが、あまりそれっぽい描写はありません。ムーンライトノベルズにも投稿しています。

仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~

天埜鳩愛
BL
ハピエン約束! 義兄にしか興味がない弟 × 無自覚に翻弄する優しい義兄  番外編は11月末までまだまだ続きます~  <あらすじ> 「柚希、あの人じゃなく、僕を選んで」   過剰な愛情を兄に注ぐ和哉と、そんな和哉が可愛くて仕方がない柚希。 二人は親の再婚で義兄弟になった。 ある日ヒートのショックで意識を失った柚希が覚めると項に覚えのない噛み跡が……。 アルファの恋人と番になる決心がつかず、弟の和哉と宿泊施設に逃げたはずだったのに。なぜ? 柚希の首を噛んだのは追いかけてきた恋人か、それともベータのはずの義弟なのか。 果たして……。 <登場人物> 一ノ瀬 柚希 成人するまでβ(判定不能のため)だと思っていたが、突然ヒートを起こしてΩになり 戸惑う。和哉とは元々友人同士だったが、番であった夫を亡くした母が和哉の父と再婚。 義理の兄弟に。家族が何より大切だったがあることがきっかけで距離を置くことに……。 弟大好きのブラコンで、推しに弱い優柔不断な面もある。 一ノ瀬 和哉 幼い頃オメガだった母を亡くし、失意のどん底にいたところを柚希の愛情に救われ 以来彼を一途に愛する。とある理由からバース性を隠している。 佐々木 晶  柚希の恋人。柚希とは高校のバスケ部の先輩後輩。アルファ性を持つ。 柚希は彼が同情で付き合い始めたと思っているが、実際は……。 この度、以前に投稿していた物語をBL大賞用に改稿・加筆してお届けします。 第一部・第二部が本篇 番外編を含めて秋金木犀が香るころ、ハロウィン、クリスマスと物語も季節と共に 進行していきます。どうぞよろしくお願いいたします♡ ☆エブリスタにて2021年、年末年始日間トレンド2位、昨年夏にはBL特集に取り上げて 頂きました。根強く愛していただいております。

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!

白雨 音
BL
早くに両親を亡くし、孤児院で育ったテオは、勉強が好きだった為、修道院に入った。 現在二十歳、修道士となり、修道院で静かに暮らしていたが、 ある時、強制的に、第三王子クリストフの影武者にされてしまう。 クリストフは、テオに全てを丸投げし、「世界を見て来る!」と旅に出てしまった。 正体がバレたら、処刑されるかもしれない…必死でクリストフを演じるテオ。 そんなテオに、何かと構って来る、兄殿下の王太子ランベール。 どうやら、兄殿下と弟殿下は、密な関係の様で…??  BL異世界恋愛:短編(全24話) ※魔法要素ありません。※一部18禁(☆印です) 《完結しました》

出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様

冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~ 二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。 ■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。 ■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...