22 / 66
本 編
J−Ⅸ The person I love 【愛しい人】
しおりを挟むあれから、どうなったかといえば……
あの後、俺は……何回も雪乃にイかされて、散々、スパームを搾り取られた……
そこまでは、別に良い。俺も望むところだ。
だが……散々、イかされたその後……
……………
……………
……………
……………………雪乃に……潮を吹かされた……
やばいほど気持ち良かったが、何ていうか……
雪乃に犯された気分だ……
立て続けにイかされた挙げ句、潮まで吹かされるとは……
変な性癖が付いたらどうしてくれる? 責任は取って貰うからな?
それにしても……雪乃は、俺のスパームを一滴残らず飲んでいた。腹を壊したりしないだろうか? 飲み易いものでもないのに、表情一つ変えず飲み干していた。
熱で朦朧としていたにしても、ちょっと、おかしくないか? それとも、熱のせいで喉が乾いていたのだろうか。
俺のスパームを大量に飲んだ雪乃は、俺の匂いに完全に染まっている。今は、狼共の匂いは何処にもない。希少種のコーガやジーノの匂いまで消えている。
そのことに満足する。俺だけのものになったようで、嬉しい。
ちゃんとしたセックスではないが、性交でこれほど満足したのは初めてだ。
寧ろ、抜かれ過ぎて身体が軽過ぎるくらいだ。
隣で眠っている雪乃を見る。汗で髪が濡れて額に張り付いている。
それを丁寧に払ってやる。額に手を当てて熱を診る。――まだ、熱い。
体温計で熱を測ると、39.8度もある。
サイドテーブルからスマホを取って、コーガに連絡を入れた。
現状を知らせると、医者を連れて来るから雪乃の傍に居ろと指示される。
医者が来るまでに、雪乃の身体を拭いて着替えさせよう。
身体を起こし、ベッドから下りようとしたら、背中の服を掴まれた。
顔だけで振り向くと、雪乃が虚ろな目で俺を見ている。
「……どこに……いくの……?」
舌っ足らずに喋る雪乃。
「汗で気持ち悪いだろう? 身体を拭いてやる」
「……やだ……シャワーが、いい……」
まるで、昨夜のようなやり取りに苦笑する。
髪の毛も汗で濡れているし、シャワーだけなら良いか。
その前に、水を飲ませよう。雪乃を背中から抱き込むように起こして、冷えた水ではなく、サイドテーブルに出しておいた常温の水を飲ませた。
余程、喉が渇いていたのか、あっと言う間にペットボトル一本を飲み干した。
その後は、湿った服を脱がせて全裸にする。また、ペニスを掴まれたら大変なので、俺は脱がなかった。
雪乃を抱き上げようとすると、当たり前のように俺の首に腕を回す雪乃。尻の下に腕を通して昨夜と同じく、先にトイレに連れて行く。
便座に下ろしてやると、今回は出て行けと言われたので、トイレに籠もった時用の簡易な机を雪乃の前に置くと、ぐったりと突っ伏した。それを見届けてトイレの外に出た。
今の内に、ベッドのシーツを新しいものに変える。昨日のシーツと雪乃が着ていた服も纏めて籠に入れて廊下に出しておく。もう一つあるトイレで俺も用を足した。
雪乃が入っているトイレの前で待っていると、雪乃が俺をか細い声で呼んだ。
雪乃を抱き上げて、バスルームへと向かう。雪乃を一旦、チェアに座らせて、その場で服を脱ぎ脱衣場へ投げておいた。今回は、背凭れのないチェアを二つ並べて前に雪乃、その後ろに雪乃の身体を跨ぐようにして座った。
勿論、ペニスを掴まれない為の位置取りだ。
雪乃は俺に背凭れて、大人しく洗われていく。歯磨き粉を付けた歯ブラシを雪乃の口に入れておくのも、忘れない。
散々、俺のスパームを飲んだんだ。口の中が気持ち悪いだろう。
雪乃を洗いながら、自分も手早く洗って、今回はバスルームを無事に出ることが出来た。
流石に、雪乃も高熱のせいでクタクタのようだ。
ベッドに寝かせようとしたが、雪乃が離れない。
「雪乃、何か食べられそうか?」
ベッドに一緒に横になって、雪乃の後頭部をゆっくりと撫でた。雪乃は小さく頭を横に振る。
食欲はないか……だが、これ程の高熱だ。体力を消耗しているはず。
「何か食べないと良くならないぞ? ゼリーとかプリンはどうだ? ふやかしたコーンフレークなら食べれるか?」
雪乃は、頭を横に振る。
医者が来るまでは、様子をみるか。
そう思っていると雪乃がもそもそと顔を上げて、俺の唇に熱い唇で、ちゅう~と、吸い付いてきた。ペロリと俺の唇を舐めてから離れて行く。
「おいしい……」
雪乃は、力なく笑った。
美味しい? 俺が、美味しい?
「雪乃……お……」
俺の言葉を遮るように、もう一度、雪乃が吸い付いてくる。今度は開いた口の中に、熱い舌が入って来て舌を絡めて来た。元気がないせいで、のろのろと舌をぎこちなく動かし口内を舐める。
「おいしい……」
口を離した雪乃が、また呟いた。
そして、そのまま目を閉じて眠ってしまった。
俺が、美味しい……? だから、俺のスパームをあんなに何度も飲んでいたのか?
決して、旨いはずがない。――いや、雪乃はあの味が好きなのか? 逆に、あの独特の味が癖になるやつもいるからな。
まあ、俺も雪乃のスパームなら、喜んで飲み干すけどな。
雪乃の熱い身体に冷やすものが必要だと思い、スマホでマティーロに連絡を取り氷のうを頼んだ。
雪乃の額に氷のうを当てていると、マティーロがコーガと華奢な背の低い子供みたいな男を連れて来た。匂いで、オメガだと直ぐに分かった。
部屋に入るなり、コーガと小柄な男は顔を顰めた。
「――おい、皇帝。これは、どういうことだ。熱がある雪乃に手を出したのか?」
俺だけに、刺すような強烈な威圧が向けられる。
――本気で怒っているな……流石に圧迫感がキツイ……
「っ!……違う。――威圧するのをやめろ。雪乃に搾り取られただけだ」
顔を顰めて、コーガを睨む。
「……搾り取られた?」
コーガは、訝しげに俺を見てくる。
「昨夜、寝ていたら、雪乃にスパームを何度も搾り取られて――飲まれた……っ!」
コーガの威圧が更に重くなった。俺は、益々、顔を顰めた。
「お前、そんな嘘が通じるとでも思っているのか?」
「事実だ」
暫し、二人で睨み合う。
「――昂雅さん。まあ、落ち着いて下さい」
小柄な男がコーガを宥めた。
「初めまして。僕は、雪乃くんの主治医、実弦・神田です。よろしくね」
「ああ。ジェイデン・アースキングだ」
お互いに握手はしないで、目だけで挨拶を済ませる。
「じゃあ、アースキングさん。搾り取られた回数は?」
「――必要なことか?」
恥じらいもなく、ダイレクトに聞いてくる神田に戸惑う。思わず、聞き返してしまった。
「そうだね。関係があるかは分からないけれど、聞いておく必要があるね」
厭らしさや含んだものがない神田の表情に、医者ならそんなものかと溜め息を吐いた。
「ちゃんと覚えてはいないが――四、五回は抜かれた……」
流石に、潮を吹いたとは言えなかった。
「へぇ~、スパームは飲んでいた?」
「――ああ、一滴も残さずに飲んでいた」
神田は、持っていた黒いアタッシュケースを開き、注射器を取り出しながら相槌を打つ。
「そっか。取り敢えず、雪乃くんの容態を診させてもらうね――ベッドに乗っても良いかい?」
普段なら断るが、医者なら仕方がない。俺が頷くと神田はベッドに乗って来て雪乃の側に座った。俺は雪乃を挟んで、神田とは反対側に移動する。
神田は、血圧計を出して測定を始めた。
『――神田……先生……?』
雪乃が、ぼんやりと目を覚まして日本語で神田を呼んだ。
『おはよう、雪乃くん。どんな具合かな? 痛い所はない?』
『……平気。頭が、ぼうっとするくらい……』
雪乃と神田は、日本語で会話をする。偶に聴き取れないところはあるが、何となく話している内容は理解できた。
『喉の痛みや、咳が出るとかはない?』
神田の質問に、雪乃は首を横に振る。
『ちょっと、採血させてね?』
神田は、慣れた様子で雪乃の袖を捲りあげ、ゴム紐で上腕を締めて注射器で採血していく。
『雪乃くん、昨日アルファの体液を飲んだかい?』
神田が医者じゃなかったら凄い質問だが、世間話のように尋ねている。
『……体液……?』
『唾液とか、精子とか』
『……ジェイと、いっぱいキスした……』
雪乃は、ぼうっとしながら舌っ足らずに答える。
『そう。キスする前は、熱はなかった?』
『……うん……たぶん、ない……』
『昨夜は? 何か飲んだ?』
雪乃は、暫く考え込んだ。
『……水……あと……すごく、美味しいの、飲んだ……』
昨夜の雪乃は、水以外は俺のスパームしか飲んでいない。
――――そうか。凄く……美味しかったのか。
『――美味しかったの?』
雪乃は、コクリと頷いた。
『そっか。食欲はどうかな? 何か、食べたいものはある?』
雪乃が俺を見た。
『ジェイが食べたい……』
「っ!?」
色んな感情で、吹き出しそうになった。
これは……どう、受け取るべきなんだ。俺が食べたい? え、また、可愛くペニスをしゃぶられるのか? それとも、俺を抱きたいと言われているのか?……まさか、それはないよな……?
『――彼が美味しいの?』
雪乃がコクリと頷く。
『そこに居る、彼はどうかな? 美味しそうかい?』
神田が後ろに居るマティーロを見た。
雪乃は、マティーロを見て首を横に振る。
マティーロは、引き攣った顔で笑っていた。
『じゃあ、昂雅さんはどう? 美味しそうかい?』
『………父さんは………父さんだから、だめ』
『もし、昂雅さんがお父さんじゃなかったらどう? 美味しそうに見えるかい?』
雪乃は、暫く考えてからコクリと頷いた。
昂雅が、当然だといわんばかりに頷いている。
『――でも、ジェイの方が……美味しそう』
雪乃の言葉に喜んでいいものなのか悩むが、俺の方が良いと言われれば悪い気はしない。
『そっか。でも、ちゃんとした食べ物も食べなくちゃね。食べ易いもので良いから、頑張って食べてみようか。あと、精密検査が必要だから、一日だけ検査入院しよう』
『……やだ……』
雪乃が駄々を捏ねている。――可愛いな。
『どうして?』
『ジェイと、一緒にいる……』
雪乃が俺の方へ手を伸ばして来たので、その手を握る。
そうか。俺と一緒に居たいと思ってくれているのか。
『……う~ん。じゃあ、彼が一緒なら検査入院してくれるかい?』
神田が困ったように尋ねると、雪乃は黙って頷いて俺に擦り寄ってくる。
……凄く、可愛いんだが……
胡座をかいた俺の脚に、熱い頭を乗せて来た。雪乃の頭を優しく撫でると眼を細める。
「アースキングさん、雪乃くんの付き添いを頼めるかな?」
「ああ。勿論だ」
神田に確認されて、頷く。
俺だって、雪乃の傍に居たい。
「食事を摂っていないのなら丁度いい。このまま、病院に行って検査をしよう。昂雅さん、それで良いですか?」
神田は、拡げた器材をアタッシュケースに収めながらコーガに確認している。
「ああ、それで良い。ジェイデン、お前もそれで良いな?」
断ることを許さない眼で一瞥される。勿論、断る訳がない。俺は、黙って頷いた。
コーガは、俺に雪乃を任せて番の元へ戻って行った。雪乃を縦抱っこして病院に来ると、予め手配していたのか、スムーズに検査は進んだ。
検査の間は雪乃から離れず、手を握ったり雪乃の足を掴んだりして片時も離れなかった。
雪乃と触れ合っていないと、俺の存在に周囲の者が体調を崩すだろうし、雪乃は雪乃で俺と離れることを嫌がった。それはもう、俺にひしりとしがみ付いて泣いて駄々を捏ねるように嫌がった。
……めちゃくちゃ、可愛かった。
用意された個室に入って、ベッドに一緒に横になる。後は、時間毎に検査に来るようだ。
「アースキングさん、これを雪乃くんに飲ませてくれるかな。その後で解熱剤も飲ませて欲しい」
神田に渡されたのは、栄養を摂る為のゼリー飲料だった。
「構わないが、飲むのか?」
つい、さっき、プリンを食べさせようとしたが、雪乃は食べなかった。
「大丈夫。君が口移しで飲ませると良いよ」
神田は、にこにこ笑いながら言うと、部屋を出て行った。
口移しで?
よく分からないが、ゼリー飲料のキャップを外し、雪乃の口元に当てると顔を逸らされた。
ゼリー飲料を口に含み雪乃に口付けると、素直に受け入れて少しずつ飲んでいく。
何だそれ……可愛過ぎるだろっ……!
俺の口移しなら飲むのかっ……!? か、可愛いっ……!!
ぼんやりしながら雛鳥みたいに餌付けされる雪乃に悶えながら、どうにか全部飲ませることが出来た。
ゼリーがなくなっても、雪乃は俺とキスをしたがった。
勿論、拒絶する理由などないので、雪乃が満足するまで応えた。
俺の腕の中で甘え捲る雪乃は、最高に可愛くて、俺のアルファとしての本能を満たしてくれる。
愛おしさが胸の奥から次々と溢れて来て、止まらない……
もう、この腕の中から離してやることなど出来ない。
絶対に手に入れる。ずっと、傍におく。
こんなにも愛おしい存在を手放すなんて、考えられない。
雪乃だって、本心ではそれを望んでいる。俺の自惚れや勘違いなんかじゃないはずだ。
俺に、縋り付くように甘えてくる雪乃。
まるで、全身で伝えて来るようだ。
愛して……と。
絶対に、俺の自惚れや勘違いじゃない。
1,110
お気に入りに追加
1,491
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
番に囲われ逃げられない
ネコフク
BL
高校の入学と同時に入寮した部屋へ一歩踏み出したら目の前に笑顔の綺麗な同室人がいてあれよあれよという間にベッドへ押し倒され即挿入!俺Ωなのに同室人で学校の理事長の息子である颯人と一緒にα寮で生活する事に。「ヒートが来たら噛むから」と宣言され有言実行され番に。そんなヤベェ奴に捕まったΩとヤベェαのちょっとしたお話。
結局現状を受け入れている受けとどこまでも囲い込もうとする攻めです。オメガバース。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる