運命の番に為る

夢線香

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J−Ⅷ keep me in agony 【生殺し状態】 ☆

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 俺の自宅に帰る前に、一度、コーガ達が滞在しているホテルに戻った。そこで、雪乃の白い首に柔らかい特殊な人工皮で出来た、雪乃の肌の色に限りなく近い肌色のネックガードが嵌められた。

 青銀の牡丹のような華が描かれたそれは、ぱっと見、首に鮮やかなタトゥーでも入れているようで雪乃にとても似合っていた。

 この人工皮は、マストを起こして正気を失ったアルファが全力で噛み付いても決して破れないし、傷を付けることすら出来ない丈夫なものだ。

 ハサミなどでは切ることも出来ない。切ろうと思ったら、特殊な工具が必要になる。通気性もよく、着けていることを忘れると評判の最上級のネックガードだ。

 首の後ろで、ガチリと凸凹の歯を噛み合わせるように嵌め込んでロックする。外すには、遠隔操作でコードを知っているものに頼んで外してもらうしかない。

「ロックコードは、私しか知らない。雪乃自身が私に頼むのなら外して遣るよ」

 コーガは、ニヤリと意地の悪い顔で笑った。

「ああ……」

 ベータなのに、そこまでするのか。この、ネックガードだって雪乃にぴったりだということは、大分前から雪乃用にあつらえてあったということだ。

 どんだけ過保護なんだよ……

 それとも、俺が雪乃の項を咬みまくるとでも思われているのか?……否定は出来ないな……

 俺は頷いて、自宅まで車で送ってもらった。



 大分、熱が高くなってきている雪乃を抱いて、自室のベッドに寝かせた。

 雪乃のパーカーを脱がせて、ベルトを抜いてスニーカーやソックスを脱がせる。

 解熱剤を飲ませる為に、薬を取りに部屋を出て戻って来ると、雪乃が煩わし気にズボンの腰部分に手を当てて脱ごうとしていた。

 起きたのかと思ったが、眠ったまま……う~う~唸りながら、なかなか脱げなくて苛ついている。

 薬をサイドテーブルに置いて、雪乃のズボンを脱がせる。汗で湿ったズボンは雪乃の白い肌に張り付いて、中々脱げなかった。

 ズボンを脱がせると、今度はTシャツを捲りあげて脱ごうとしている。

 それも手伝って脱がせると、今度は湿った下着が嫌なのか、下着をずり下げる。少し、迷ったが脱がせると、漸く、ほっとしたのかパタリと動かなくなった。

 全裸の雪乃を前に目が離せなくなる。ちゃんとした引き締まった男の身体だ。

 肌よりも濃い目の乳輪に目が行く。勃っていない乳首は、普通の男よりは大きくて、女よりは小さい。男のオメガみたいだ……

 男性オメガは、乳首の感度が良いらしいが。

 雪乃が、ネックガードを着けているせいでオメガに見える。

 白い肌に浮かぶ黒い下生えが、妙に卑猥だ。そこに鎮座する肌色のペニスが、あまり使われていないことを証明している。

 股間が反応しそうになって、慌てて雪乃の身体に毛布を掛けた。

 持って来た薬を雪乃の口に押し込み、頭を抱えるようにして、口に含んだ水を口移しで飲ませる。雪乃は、喉が渇いていたのか素直に飲み下していった。俺の口内に水がなくなっても吸い付いて来るので、何度か繰り返して水を飲ませた。

 その後は、湯で絞ったタオルで身体を拭いて、俺の予備の下着とTシャツだけ着せた。全裸は目に毒だ。

 雪乃は、身体を拭いてやったら不快さが薄れたのか、大人しく眠り始めた。

 それを見届けてからバスルームでシャワーを浴びて、寝支度を済ませる。寝室に戻って雪乃の隣に横になった。

 昨日、今日と、俺の一日は雪乃のお陰でとても充実していた。

 初めてのことばかりで、驚きと喜びに溢れていた。退屈な毎日が一変した。

 本当に運命の番とは、雪乃以上に惹かれる存在なのか?

 ジーノでさえ、運命に抗うのは難しいと言った。

 狼王の考えが解らない。

 今迄、俺に会わせなかった雪乃を何故、今頃になって連れて来た? 運命の番がいるかも知れない俺に、一人しか愛せない大神一族の雪乃と、どうして引き合わせた? ネックガードは着けられてしまったが、俺が連れ帰ることに反対することはなかった。過保護な 狼王らしくない。

 雪乃に、何か事情があるのか?――解らない。

 狼共に聞いても、素直に話すとは思えないしな。

 雪乃の熱い額を撫でてから、部屋の明かりを消した。

 抱き締めて眠りたいところだが、熱があるんじゃ、くっ付いて寝るのは熱くて嫌だろうと思い、我慢した。

 それでも今日は、雪乃を連れて帰って来れたのだから上出来だ。

 隣の微かな息遣いを聞きながら目を閉じた。



 夜中、ボフリっと、何かが布団に倒れる音がして目が覚めた。

 部屋の明かりを一番暗い明るさで点けると、雪乃が蹲っていた。舌っ足らずな口調で水を欲しがったので、冷蔵庫からペットボトルを取り出して差し出すと、動けないと呟いた。

 蹲っている雪乃を後ろから上半身を抱き起こして、俺の胸に寄り掛からせる。雪乃の額を触ると、もの凄く熱かった。
 
 ペットボトルを雪乃の口に当て、ゆっくりと飲ませる。余程、喉が乾いていたのかゴクゴクと飲んでいく。飲み干した後は、ぼんやりとした様子で俺に全体重を預けて、ボソリと呟いた。

「シャワー……浴びたい……」

 こんな高熱で、一人でシャワーなど浴びれるはずがない。身体を拭いてやると言うと、甘えた声で子供のように駄々を捏ねた。

 あんまり、可愛いくて笑みが零れる。

「仕方ないな、直ぐに終わらせるぞ」

 一緒に入って、シャワーだけで直ぐに済ませれば大丈夫だろう。

 着せ替えたはずのTシャツは、汗でじっとりと重くなっていて、確かに気持ちが悪そうだ。

 雪乃は大人しく服を脱がされていく。俺自身もその場で服を脱ぎ捨て、全裸になって雪乃を縦抱っこしてバスルームへ向かう。

 ぴったりと張り付く素肌同士が気持ち良い。腹に当たる、ふにゃふにゃの雪乃の股間が気持ち良すぎて……勃起してしまった。

 だが、熱でぼんやりとした雪乃は、俺の勃起に全く気が付いていない。

 序でだから、先にトイレに連れて行って便座に下ろしてやると、俺の腹に寄り掛かって来た。

 ――そうすると、俺の臍まで反り返った勃起したペニスがあるわけで……

 雪乃は、ペニスに頬をくっ付けて全然気にした様子がなかった。

「っ!」

 ……っていうか……俺の方が拙いんだが……

 ペニスに掛かる雪乃の熱い息に、ゾクゾクする。それなのに、雪乃が頬擦りしてくるから、堪らないっ……!


 何だ、これ……生殺しか……? やばいっ……! 先走りがっ……!


 先走りが滲み出てきて、雪乃の頬を汚してしまうと思っていたら、雪乃に先端をパクリっと食べられた。

「っッ!?」

 ビクリと身体が震えて、欲望が首をもたげてくる。

 俺のペニスはデカいからカリ首まで口に容れることは出来ないようだが、雪乃は、ぼんやりとした顔で、先端を熱い舌でチロチロと舐めてきて、ちゅうちゅう吸ってくる。アイスキャンディーでも舐めているかのように、熱心に吸い付かれる……

「っ……! ……ゆ、きのっ……!」

 暫く、雪乃に可愛くしゃぶられて、俺の理性が怪しくなって来た頃に、チュポンっと口を離された。


「……おわった……」

 俺は、まだだけどっ!?


 思わず、心の中で全力で突っ込んだ。

 その気にさせて放置されるという、鬼畜な所業に奥歯を噛み締めた。


 ……いやいや、高熱を出している雪乃に手を出す訳には行かない! 我慢しろっ……! 俺っ!


 ペニスをガチガチにさせながら、雪乃を抱き上げてバスルームに連れて行き、そのままバスチェアに腰掛けた。

 予備の新しい歯ブラシに歯磨き粉を付けて、雪乃の口の中に放り込む。

 雪乃は、ぼうっとしながら歯ブラシを掴むと、シャコ……シャコ……と、ゆっくりと磨き始めた。

 その間に、雪乃の髪や身体を手早く洗っていく。

 雪乃は、ぐったりと俺に凭れ掛かりながら、歯ブラシを持つ手とは逆の手を、もぞもぞと動かし始めて。

 ――何故か、俺のペニスを洗い始めた……

「っ!」

 クソっ……! 多分、自分のペニスを洗っているつもりなんだろう。もどかしい手付きで、ソープで滑る竿部分を撫で擦られる。

 くっ……! 早く、終わらせてしまわないと拙いことになるっ!

 雪乃の、ふにゃふにゃの股間や尻の間を急いで洗うと、洗い終わったと認識したのか、俺のペニスから手を離した。

 ほっとしたような、残念なような、何とも言えない気持ちになる。

 バスルームを出ると、急いで雪乃の身体を拭いて、下着とスウェットの上下に着替えさせた。俺自身は全裸のままだ。勃起しているからズボンが履けない。縦抱っこして雪乃の髪を丁寧に乾かした。ネックガードにもドライヤーの風を当てて乾かす。

 雪乃は、ぐったりと俺に寄り掛かったまま……俺のペニスを握って離さない……


 雪乃……何で、そこを握るんだ……? 欲しいのか? そうなのか?


「ジェイの腕……なんか……細くなった、ね……?」

 不思議そうに、俺の耳元で首を傾げてペニスを撫で擦られた。

「ッ~~……!」


 ……ソレはっ……! 腕じゃないっ……!!


 俺は、歯を食い縛って雪乃の拷問に耐えた。



「雪乃、ベッドのシーツを替えて来るから、ここで待っててくれ」

 雪乃を部屋のソファに下ろすと、漸く、俺のペニスから手が離された。また、握られないようにペットボトルの水を渡す。雪乃の隣にクッションを積んで寄り掛かれるようにしてから、急いで寝室に向かった。


 兎に角、一回、射精しないと限界だっ!


 ベッドに腰掛けて、自身を扱く。今、さっきの雪乃を思い浮かべれば、あっと言う間に上り詰めて――イった……

 自慰して、こんなに早くイったのは初めてだ……

 大量に出てしまったsemen精液をシーツを剥がして拭き取る。

「ジェイ……どこ……? ジェイ……ジェイ……」

 雪乃が、心細い声で俺を呼んでいる。早く、傍に行ってやらないと。

 シーツを急いで綺麗なものに替えている間も、俺の名前を呼び続ける雪乃。勃起が治まったので、下着とスウェットの上下を身に着ける。

 泣きそうな声に切なくなりながらも、俺を求める声に愉悦を感じる。

 雪乃の元に戻ると、ぼうっとしたまま涙を流していた。慌てて雪乃をさっきまでと同じように、縦に抱き抱える。

「……ジェイ……どこに行ってたの……?」

 雪乃が俺の首に腕を回して擦り寄って来て、可愛く不貞腐れて咎めてくる。

「ククっ……シーツを替えて来るって、言っただろ?」

 甘えたな雪乃に、顔が緩みっ放しになる。

「――ジェイは、俺のアルファなんでしょう?」

「ああ、雪乃のアルファだ」

「じゃあ、ちゃんと傍にいて……」

 俺の首筋に、ぐりぐりと頭を押し付けてくる雪乃が、堪らなく、可愛い。

「ああ……悪かった。ちゃんと傍にいるよ」

 愛おしくて、愛おしくて、自分でも驚くほどの優しく甘い声が出た。

 雪乃は、俺にべったりと擦り寄って俺の耳元に頬ずりする。

 だから、聞こえた。

 雪乃の、小さな小さな、吐息に乗せたような声が。


「――でも……嘘になる……」


 嘘になる?


 俺が、雪乃から離れて行くと確信しているのか?

 運命の番か……? また、運命の番。

 運命の番にって、雪乃が傷付けられたのは間違いないだろう。

 俺がアルファだから、運命の番の影はずっと付き纏う。

 もし、俺がベータなら、雪乃はすんなりと俺のものになったのだろうか?

 だが、俺がベータだったとしたら、雪乃とは出逢う機会もなかったと思う。ベータの俺だったら、狼王達と関わることはなかったはずだ。

 腕の中に抱き込んだ雪乃の顔に、触れるだけのキスを落として行く。

 雪乃……お前の為ならガラクタアルファになると言っているじゃないか。お前の為なら、運命にも抗ってみせるから……だから――


 俺を選べ、雪乃。


 俺に縋り付くようにして、雪乃は眠りの中に落ちて行った。

 雪乃だって、こんなにも俺を欲しがっているくせに。

 雪乃の熱い身体を抱き締めながら、俺も眠りに落ちた。



 だが……雪乃による拷問は、終わっていなかった。


 腹の辺りや股間が、やけに熱くて目が覚めた。

 隣で眠っているはずの雪乃が居なかった。腹を見ると、俺の脚の間に陣取って、俺の腹の上に雪乃が熱い頭を乗せて寝ていた。

 ――それは、良い。

 ただ、いつの間にか俺の下着とズボンが引き下げられていた。勃起したのか、させられたのか、腹にくっ付いたペニスを雪乃に握られていた。

 ペニスの先端をおしゃぶりのように口にして、ちゅくちゅく吸い付いている。


 ――これは……アレだな……

 絶対、俺のsperm精子を欲しがっているよな……


 オメガなら分かるが、何故、ベータの雪乃が? スパームspermを飲みたがる性癖だろうか……? 


 いや――それはそれで、大歓迎だが。


 雪乃の唾液か、俺の先走りか……ベタベタに濡れそぼったペニスを握る雪乃の手の上に、手を添える。そして、雪乃の手ごと上下に動かして扱いた。

 視覚的にも興奮しかしない状況で、中途半端に高められていた欲望は、あっと言う間に開放された。

「ゥっ……!」

 突然、溢れ出したスパームを、雪乃は、赤ん坊がミルクでも飲むみたいに、ングングと飲んでいく。

 最後まで出し切るように何度か扱く。雪乃は、零すことなく、全てを飲み下した。

 ――――最高に……気持ち良かった……

 先端を舐められながら、ちゅうちゅう吸われることが、こんなに気持ちいいとは知らなかった……

 マストの時に相手にした者達は、直ぐに気を失うから、フェラチオをされたことがなかった。

 ぼうっと、快楽の余韻に浸っていられたのは、そこ迄だった。


 雪乃の舌が止まらない。


 イッたばかりの先端を雪乃の熱い舌が、もっと寄越せと言わんばかりに這い回る。時折り、ちゅくちゅく吸いながら先端ばかりを刺激される……



 拷問の始まりだった……














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