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本 編
01. 大神家
しおりを挟む初めまして。僕の名前は大神雪乃。大神家の三男。末っ子です。十五歳。上位オメガです。
身長は百五十三センチ、体重は……内緒。まだ、第二成長期が来ていないから、もう少しは伸びるはず。青味のある黒髪の癖っ毛。薄い碧の眼。顔は……可愛いと良く云われます。
家族皆、顔が整っているので自惚れてはいない、と思います。よろしくお願いします。
皆さんに、僕の家族を紹介します。
父、大神昂雅。三十九歳。特級アルファ。
僕と同じ青味掛かった黒髪。灰色の眼。切れ長の鋭い目をした野性的な超絶イケメンです。身長も百九十八センチあり、がっしりとしています。ガチムチではないけど細過ぎでもないです。バランスが取れていて、立っているだけで芸術品です。
僕の父さんは、今現在、世界に五人しかいない特級アルファ。希少種です。『狼王』と謂う二つ名を持っています。
母、大神朱乃。三十七歳。上位オメガ。女性。米国人とのハーフ。
癖っ毛の赤味が強い金髪碧眼。大きめな猫目の絶世の美女。僕は、母さんに似ているとよく言われます。
華奢な者が多いとされるオメガだけれど、母さんは身長が百七十四センチあります。昔、モデルをやっていたんだって。父さんとは運命の番です。
長男、大神仁乃。二十歳。大学生。上位アルファ。
青味掛かった黒髪、灰色の眼。百九十六センチ。顔も身体つきも父さんを若くした感じ。そっくりです。
上位アルファだけれど、特級アルファなんじゃないかと云われています。
運命の番である男性、上位オメガの史人さんと既に番っていて、一児の父親です。
史人さんは百七十八センチで一般的なオメガよりも背が高いけれど、凄い端麗な容姿です。長く伸ばした真っ直ぐな黒髪を一つに束ねています。和服を着せたら凄く似合いそうな和風美人です。
長女、大神都乃。十八歳。高校生。上位アルファ。
青味掛かった真っ直ぐな黒髪、僕より少し濃い目の碧眼。母さんの猫目と父さんの鼻や口に似ていて、父さんと母さんの良い所が混ざりあった感じの、キリッとしたクールビューティです。
背は百七十八センチで、運命の番である上位オメガの蘭花さんと番っています。
蘭花さんは、百五十センチの如何にも華奢な女性オメガです。くりんとした大きな目が印象的な可愛らしい方です。
次男、大神禅乃。十七歳。高校生。上位アルファ。
癖っ毛の赤味が強い金髪、灰色の眼。眼は父さんに似て鋭く、他は母さんに似ています。美人寄りの秀麗な容姿です。背も百八十五センチで、まだ伸びているので、父さんと仁乃兄さんと同じ位には伸びそうです。
最近、運命の番であるセレイアさんと番になったばかりです。
上位オメガのセレイアさんは、フランス人で薄い褐色肌がセクシーな、淡い金髪の女性です。眼は赤茶眼。背は百七十三センチ。やっぱり、オメガにしては大きいです。
これが、僕の大好きな家族です。
『狼王』の二つ名を持つ父さんは、一般的なアルファとは大分違った特性を持っています。
基本的にアルファは、アルファを側に置くことを嫌います。それは、家族に対しても同じです。番至上主義のアルファは、親や子供に興味がありません。
成人する迄、或いは大学を卒業する迄は、生活面や金銭的な面倒を見ますが、子供を可愛がると云うことはしません。
ある程度成長すると、一人暮らしをさせるのが殆どです。自分の子供であっても、アルファを番に近付けたくないからです。それがアルファの常識です。
だけど、僕の父さんは違います。血縁者を大事にします。『狼王』の二つ名は、これに由来するものです。父さんは、大神一族の群れのボスなのです。
上位アルファの兄さん達や、姉さんを家から追い出すことはありません。その番も大事にします。
だから、僕の家族は皆、仲良しです。
家の広い敷地内に幾つか別邸を建てて、兄さんと姉さん達は、其々の番と一緒に住んでいます。
でも、ご飯は皆で一緒に食べます。番のヒートが近付かない限りは、殆ど本邸の方に住んでいます。
大神家のアルファは、群れの仲間を全員で守ります。大神家の誰かと番えば、たくさんの一族のアルファに守って貰えるので、オメガには大人気の嫁ぎ先です。
逆に、大神一族のオメガを番にしたいと願うアルファにも大人気です。大神一族のオメガと番えば、大神一族と太い縁が持てるからです。
ですが、大神一族の者は鼻が利くのか、運命の番に出会いやすいです。運命の番とは、なかなか出会えないものなのに、ほぼ、百パーセントの確率で出会います。
たくさんのアルファやオメガが、どれほど大神一族の者と番になりたいと望んでも、運命の番でなければ相手にされません。
無理やり番にしようとすれば、希少種の最強ともいえる父さんを始め、上位アルファや上位オメガ、更には上位ベータまでもが群れをなして報復に来ます。
どれほど優秀な上位アルファや上位オメガといえども、一対一ならいざ知らず、複数の上位バース性を敵に回して勝てる訳がありません。
大神一族には、何があっても絶対に手を出すな。
これが、世の常識になっています。
父さんが経営をしているたくさんの会社も、バース性関係なく、就職したい会社、として、一番、人気があります。
番を満足させられて、家族を十分に養える金銭が有ればいい。という考えの父さんは、仕事に心血を注ぐよりも番と過ごす時間を大切にします。残業なんて滅多にしません。
それでも仕事をしている時間は、物凄い処理能力を発揮しているそうです。上位ベータを何人も側に置き、番のヒートで長期間不在にしても、経営が滞ることがないようにしています。
その性質は会社にも反映されて、社員の皆さんも滅多な事で残業をしません。定時で帰宅出来て、会社に勤めていればベータは勿論、中位や下位のアルファやオメガも、ある程度、護ってもらえるのが人気の有る理由です。その分、ある程度の優秀さは求められますが。
そんな父さんの子供として生まれた僕は、世界一恵まれた幸運なオメガだと思います。
希少種の父さんや上位アルファの兄さん、姉さん達が、僕に毎日ハグしてマーキングしてくれるので、他のアルファは近付けません。もし、それでも近付けるのだとしたら、それは、僕の運命の番だけです。
家族の皆が運命の番と出逢って番っているので、僕も絶対に運命の番と出逢えると信じています。
でも、父さんと母さんは、運命の番と出逢えることが必ずしも幸福なことではない、と言います。
偶々、家族の皆は上手く行ったけれど、中には運命の番に既に他の番が居たり、結婚をしていたり、運命の番に拒絶される事も有るのだと、何度も言い聞かされます。もしもそんなことになったらどうするのか、考えておくことも大事だと。
もしも相手に番がいた場合、別のオメガと二人で運命の番を共有するのか。番わずに他のアルファを探すのか。その時は、番ったアルファに運命の番が現れることも覚悟しなければならないよ。運命の番に出逢っても直ぐに番ってはいけないよ。等など、何度も繰り返し教えられました。
特に、大神一族の者は、番を一人しか持ちません。独占欲が一際強いのです。そして、一途です。番の共有など有り得ないのです。
最悪、共有することになった場合は、狂って死ぬか、狂って殺してしまうか、だ、そうです。
運命の番に出会っても直ぐに番ってはいけない。というのは、相手に番が居ないことを確認する為です。番わなければ、時間は掛かっても正気を保っていられるからです。
一族の中には、少ないですが運命の番を諦めた方もいます。ですが、運命とは別の番を得ている方もいます。中には、他に番を持った運命の番と無理矢理番って、狂って亡くなる方もいるそうです……
その時の僕は、そんな不幸もあるのかと思いながらも、あまり、気にしてはいませんでした。家族の皆が運命の番と仲睦まじくしていたからです。
きっと僕も運命の番と出逢って、お互いを求めて愛し合い、幸福な人生を送れるはず。一体、どんな人が僕の運命なんだろう。運命の匂いはどんな匂いだろう。まだ見ぬ運命の番に期待と想像が膨らむばかりです。
でも、もし、『運命の番』に既に番が居たのなら、アルファを他のオメガと共有するのは、絶対に嫌だな。僕は僕だけのアルファが欲しい。番に他のオメガの匂いが付くなんて、想像しただけで嫉妬でおかしくなってしまいそう。
だから……その時は────
僕にはまだ、ヒートが来ていません。初めてのヒートがいつ来るのかは、個人差があります。平均は十四~十六歳位です。第二成長期が終わる頃に、初めてのヒートを起こすことが多いそうです。
抑制剤が有るとはいえ、ヒートは本当に辛そうなので、早く来て欲しいような、番に出逢える迄は来て欲しくないような、複雑な気持ちです。
発情抑制剤と緊急用の強力な発情抑制剤、万が一襲われた時の為の避妊薬、アルファ用の強力な発情抑制剤をペンダントのように首から下げています。
どの薬も十センチ程の直径七ミリのペンタイプで、首に押し当てれば打てる簡易タイプの注射です。
何があっても必ず身に着けることを徹底して教え込まれたので、今では首から下げていないと落ち着かなくなりました。両親──家族の教育の賜物です。
僕は今、中学三年生です。来年は高校生。
受験先の高校は、兄さんや姉さん達が通っている高校です。アルファとオメガのバース性に対するサポートが手厚い高校です。アルファ、ベータ、オメガ、其々のバースでクラスが分かれています。分かれているからといって、バースの交流がない訳では有りません。
入学して直ぐに、全校生徒を集めアルファとオメガを引き合わせます。何故そんなことをするのかというと、『運命の番』対策です。
運命の番と出会うと、お互いに発情してしまい理性を失って、その場で性交を始めてしまう可能性があるので、最初に顔合わせをして運命の番を焙り出すことが目的です。
全校生徒がいれば、ヒートを起こしたオメガは、同じオメガが外へ連れ出してシェルターへ。
マストを起こしたアルファは、同じアルファが抑えて別のシェルターへ。
ベータは、アルファとオメガの間に立って進路を阻むそうです。
これを始めに遣っておかないと、後々になって偶然出逢ってしまい大騒ぎになるからです。数で抑えられる最初に遣っておく事が大事なんだそうです。
だから、この集まりは強制参加であり、出席できない場合は相応の理由が必要になります。
どうしても出席することが無理だった場合は、後日、番持ちの上位アルファ数人に囲まれながら、新入生のオメガクラスに顔合わせに来るそうです。
毎年、何組か『運命の番』と出逢うみたいです。
それを終えてしまえば、安心して交流授業が開始されます。全バース合同だったり、アルファとベータ、アルファとオメガ、ベータとオメガ、だったりします。思惑は其々ですが。
この高校は偏差値が高めなので、全バースの殆どが上位か中位の者達です。
その学校の見学会が、もうすぐあります。父さんと一緒に、僕も参加する予定です。都乃姉さんと禅乃兄さんも、学園で出迎えてくれると約束してくれました。
今は、五月の半ば。見学会は六月一日。
六月一日。────僕の運命が壊れた日。
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