俺の幸せの為に

夢線香

文字の大きさ
上 下
66 / 68
王太子編

ランドラーク・パラバーデ (終) ★

しおりを挟む



 シュザークに慰められながら、何日かが過ぎた。

 この頃には、色々な悩みがあったが、シュザークの手によって官能に落とされて、碌に悩む事が出来なかった。

 悩まずに済んで良かったのか悪かったのか…ちょっと判断が付かない。

 ノルフェント殿は、ハーシャと伴侶となった。キディリガン辺境伯爵家に戻るらしい。

 ハーシャが戻るなら、シュザークも戻ってしまうのだろうか……? 今、戻られると…心も……身体も……とても拙いことになりそうなんだが……。

 ぢゅくぢゅくと疼く下腹をそっと撫でる。熱く甘い吐息が溢れる。

 この疼きは、一体、いつになったら治まるのだろうか…。どんどん、疼きが強くなって来ている気がするが…。しかも、下腹だけじゃない…。胸の頂きも…おかしい…。シャツに擦れる感触が、妙にはっきりと感じられて、痒いような…疼くような…妙な感じだ…。

 シュザークに尋ねると、準備が整って来た証拠だと笑っていた。

 そうか、此れもシュザークを受け容れる為に必要な事だったのか、と改めて知った。

「準備も整ったし、そろそろ良い頃合いだね」

 一昨日、いつものように散々、極めさせられた後にシュザークが言った。くたくただった私は、何のことか聞くこともなく眠りに落ちた。

 シュザークに、二、三日は逢いに来れないと言われて、頷いた。

 ずっと、私に付いていてくれたのだ、頷くしかない。シュザークは綺麗に微笑んで部屋を後にした。

 今はまだ、シュザークは婚約者のままだ。まだ、解消されてはいない。でも、何れ…解消になる…。シュザークは秘薬を探す気でいるようだが、そんなに簡単に見付かる筈がない。

 だが…、こんなに疼く身体になってしまって…大丈夫なんだろうか…? 何日か触れないでいれば、治まるのだろうか…? でも…こうならないと、シュザークには抱いてもらえないのだから、仕方が無い…の…だろう…。

 ずっと、シュザークが傍に居てくれて、嬉しかったな…。抱き締めてくれるようになったし、口付けだってしてくれたし、身体だって嫌がらずに触ってくれた。あんな処まで…全部。偶に、…か…可愛いって…言ってくれる。正直、私の何処が可愛いのか分からないが…。シュザークよりも小さいからだろうか…?

 私も、其処まで小さい訳ではないのだが……シュザークが大きいだけだ。

 はあ…。この先、私はどうなってしまうのだろうな? シュザークと伴侶になれない私は、誰を伴侶にしなければならないんだろう? もう、誰でも同じだな…。

 シュザークに抱いて貰ったら、私は、国の為だけに生きよう…。この国には、シュザークが居るのだ。国が善い国なら、シュザークの為にもなるだろう。

 また、溜め息しか出なくなるな……。



 シュザークが来なくなって三日が経った。身体の疼きは増すばかりだ…。気を抜くと、直ぐにシュザークを思い出す。私に触れるシュザークを…。私は、好色だったのだろうか…? シュザークにだけだから違うだろう? 違うよな…?

 夕餉を済ませた後に、突然、シュザークが訪れた。随分遅い時間だったが、シュザークに逢えるのならば問題無い。自室に招き入れると、今日は泊まっていくと伝えられた。

 泊まる? ──もしかして、今日…抱いてくれるのか…? そう謂えば、準備も整ったと言っていたな…。

 其の考えに至ると、急に心臓がどきどきと早鐘を打ち始めた。

 シュザークは、私の手を引いて寝室へと向かう。

 やっぱり、そうなのだな…? 今日、私とシュザークは身体を繋げるのだな…?

 全身が心臓になったようにドクドクと脈打つ。

 シュザークは、私をベッドの淵に座らせて、私の前に立った。

 胸を高鳴らせて、シュザークを見詰める。

 シュザークは、収納空間から小瓶を一つ取り出した。見覚えのある小瓶に、全身が固まる。

 まさかっ……! 本当にっ…手に入れたのかっ……!?

「これが、欲しかったんだよね?」

「ああっ…!! 此れさえあれば、シュザークと伴侶になれるっ…!!」

 喜びの余り、叫びながら震える両手で緻密な飾りの小瓶をそっと握り締める。

「凄いっ…! 何処で手に入れたのだっ…!!? いやっ…!! 其れよりもっ…! 早くっ…!!!」

 今度こそ、誰にも奪われないように、直ぐに飲んでしまおうっ…!!

 私が瓶の蓋を開けようとすると、スッと小瓶を取り上げられた。

「あっ…!? 何故っ…!?」

 小瓶を追い掛けて、シュザークの腕に取り付く。

 シュザークは、小瓶を収納空間に戻してしまった。

「まだ、駄目だよ」

 シュザークの腕に取り縋ったまま、恨めし気に彼を見る。

「何故だ……。やはり、私と伴侶になるのが嫌なのか…?」

 シュザークは笑いながら、私の服に手を掛ける。その瞬間、転移魔法で服だけを取り払った。

「わっ…!?」

 服を脱がすだけの為に、転移魔法を使う者などいないっ…! 魔力を多く使うからだ。其れなのにっ…。

「伴侶になる為の最終確認が終わったら、ちゃんとあげるよ?」

「? ……最終…確認……? 其れは、何だ…? 何を確認するのだ…?」

 さり気なく、股間を腕で隠しながら尋ねる。

「私の身体に、傷痕があることは知っているかい? 最初に申告しておいた筈だよ?」

 シュザークが首を傾げる。

「ああ、勿論、知っている。──複数あると、聞いているが……」

 婚約者に据える前の身辺調査の一貫で、体の病気や障害がないか、侍医達が確認した。その報告を受けているので、身体に複数の傷痕がある事は知っている。何故、付いたかまでは知らないが…。

 シュザークは頷いて、自らの服を転移魔法で取り去った。始めてみるシュザークの裸体に、色んな意味で眼が釘付けになる。

 肌は白いけれど、逞しい身体だ…。引き締まって、筋肉も綺麗について男らしい身体。其の白い肌に奔る幾本もの傷痕……。思わず、手を伸ばして傷痕に触れる。

「──今も…痛むのか…?」

 傷痕を撫でながら、シュザークの身体を確認していく。

「時々、疼く傷痕もあるかな…」

 背中側に回れば其処にも多くの傷痕がある、太ももの裏や…脹ら脛まで……。

「──何の傷なんだ…? どうして、こんな事に?」

 余りの痛ましさに、背中の傷痕に唇を寄せて舐めた。

「っ…」

 シュザークの身体がピクリと反応した。

「義理の父親による、虐待の跡だよ…」

 背中の傷痕を一つ一つ舐めて、眉を顰める。

「──いつの事だ…?」

 脇腹まで続く傷痕を舐めながら尋ねる。

「っ…六歳から始まって、九歳…までかな…」

 シュザークが始めて茶会に参加したのは八歳の時…暗い顔をして…じっとテーブルを見ていたのは、虐待されていたからなのか……。私が、あの時…気付く事が出来ていたなら…何かが変わっていただろうか…?

「──酷いな……」

 シュザークの脇腹の傷痕を舐めながら呟く。そのまま、腹の傷痕を舐める。

「──此れでも、私はまだましな方だよ…。ハーシャは、もっと酷いからね……」

 シュザークは苦々し気に顔を顰めた。

 ──此れよりも…? そんなに、酷い環境だったのか……。

 腹や胸の傷痕を丹念に舐める。今更、こんな事をしても何にもならないだろうけれど……こうせずにはいられなかった。

 そして、さっきから気になっている、シュザークの陰茎…。白金色の下生えに埋もれた陰茎は、まだ、兆してはいない。だが…色が……。

「ピンク色じゃないんだな……」

 思わず、シュザークの陰茎をちょんっと指で突付く。

「っ! ──何だって…?」

 シュザークにまじまじと、顔を覗き込まれる。

「あっ…いや、その……何でもない……」

 誤魔化そうとしたが、顎を持ち上げられて出来なかった。

「その……夢の中のシュザークのコレは、閨の道具と同じ、紅色の強いピンク色だったから……」

 眼を逸らしながら、ボソボソと答えた。

「……ランドラーク殿下……貴方は……」

「こんな時くらい、ラルクと呼んでくれ」

 シュザークの言葉を遮って、懇願する。シュザークは、大きく溜め息を吐いた。

「──ラルク。まだ、私の夢を見ているのかい?」

「毎日、見る」

 私が断言すると、シュザークは一瞬目を見張り、其れからふっと眼を和らげた。

「そう…そこまでなんだ…」

 何が、そこまでなのだろう?

 そう思っていたら、唇を塞がれた。いつもと違って荒い舌使い。─だけど…求められているようで…嬉しい。それに…何だか…いつもと感じが違う…。痛いほど舌を吸い上げられて悶える。漸く離れていった唇に、ほっとして荒く息を付く。

「ラルク、最終確認をしようか」

「──何を、確認するのだ……?」

「私とラルクの身体の相性」

「っ…!」

 シュザークに縦に抱かれて、直ぐ側のベッドに倒れ込む。素肌同士の感触が気持ちいい。シュザークの手が、私の身体をざわめかせながら撫でてくる。唇が塞がれて、いつもの優しい口付けが始まった。その間も、シュザークの手は私の身体を撫で回し、焦れったい刺激を与えてくる。

 今までは、触れられなかったシュザークの身体に触れて、傷痕をなぞるように触れていく。呼吸もままならない口付けに、苦しさと気持ち良さが混ざって、頭がぼうっとして来る。

 シュザークの距離が近くて嬉しい。ずっと、抱き着きたかった。只管、前立腺を攻められている時も、シュザークに獅噛み付きたかった。

 シュザークの手が私の胸の頂きを撫でてきて、ひくりと身体が震える。小さな乳首が刺激を拾ってしまう。前までは、何も感じなかったのに…。

 シュザークの柔らかい唇が私の顔をふにふにと啄む。耳朶を口に含まれ、歯で甘噛してきたり、舐めたり吸ったりして来る。耳元で聞こえるクチュ…ぴちゃ…ピチャリ…と鳴る水音が、酷く、厭らしく感じて…ぞくぞくする。舌が耳の中を舐めてきて、耳からぞわぞわと甘い震えが全身に回って、止まらない。

「ンッ…あ…ぁ…」

 思わぬ声が漏れて、どうして良いか分からない感覚に、シュザークの首に縋り付いて、頭を頭に擦り付ける。

 シュザークが喉奥で笑った。

 シュザークの手は私の乳首を優しく撫でながら、時々、弱い力でトントンと指の腹で叩かれる。身体がひくりと跳ねた。トントンされるのは、私の意識をそこに持って来いということ。

 私の勃起した陰茎がシュザークの腹の下で潰されて揉まれている。それがまた…気持ちいい……。きっと、シュザークは意識してそうしている…。器用な男だ…。首を彼の唇が這っていく。時折、舐めては吸って軽く歯を立てながら、きつく吸われる。

 どこもかしこも、ゾワゾワする処ばかり…。全部、トントンされた事がある場所ばかり…。

「う…ぁ…」

 でも、どの刺激も弱くて、悶えさせるものだけだ。

 何処にも行き場のない疼きに悶えて、シュザークの身体に脚を擦り付ける…。

 胸に降りていくシュザークの頭が遠ざかる。彼の白金髪の尻尾のような髪が、胸を擽る。ちっちゃな乳首に辿り着き、舐められる。

「ふ…っ……ん…」

 舌先で、そっと擽られて、濡れた感触と外気に冷やされる感触に、震える。暫くの間、指と舌で、左右の乳首をかわるがわる弄られる。

 溜まっていく疼きに、身体をじっとさせて居られない。

「あ…ぁ……シュザークっ……ぅ…ん…」

 どうにかして欲しくて、シュザークの名を呼ぶ。

 シュザークは笑うだけ。でも、片手が乳首から外れて、腹を撫で下腹を滑り、陰茎の横を通り過ぎて会陰を撫で後孔へ辿り着く。たった其れだけの動きでも、腰をくねらせ、身悶えてしまう。

 後孔に添えられた指を呑み込みたくて、ヒク付いてしまう。

「ふふっ…待ち切れないのかい?」

 浄化魔法が掛けられて、いつものスライムジェルのぬめりを感じた。

 ずっと、疼いていた奥が喉を鳴らすようにきゅむりっと蠢いた。

「ずっと…中が…疼くんだ……」

 素直に答えるとシュザークは喉で笑って、ヌルリと指を挿し込んでくれた。

 だけど、前立腺は外して拡げる動きしかしてくれない。其れでも、他の場所の弱い刺激だけを引き出してくる。

「ん~~っ…!…シュザー…クっ…!…」

 腰をくねらせ、脚をシュザークの身体に擦り付け、強請るように、彼の名を呼ぶ…。

「ん、もうちょっと我慢して? 最高に気持ち良くしてあげるから」

 …最高に…? いつも、とんでもなく気持ちいいが…。

 シュザークは手を止めず、私は疼きが溜まるばかり…。

 後孔の指は二本になり、もう片方の手は乳首を爪で掠めるようにカリカリと動く、口はもう一方の乳首を乳輪ごと吸い上げて、舌先で擽ってくる。どれも、達する程の刺激にはならない。シュザークの腹で擦られる陰茎が自身から滲み出るもので濡れていく…。


 極めたい。達したい。


 脳天を貫いて、真っ白になって、疼きから解放されたい……。

 上り詰めた疼きは、直ぐそこまで来ているのに…もっと上に行くには、刺激が足りない……。

 中途半端な刺激は、耐え難いほどに疼いて、焦れて、悶えさせられて、早く欲しいと強請る欲望でいっぱいになる。

「ふ…ン……シュ…ザークぅ…っ……」

 鼻に掛かる甘ったれた声が漏れる。涙で滲む潤んだ眼で懇願を込めて、シュザークを一心に見詰める。

「──ラルク…。貴方は本当に、可愛いね……」

 シュザークが慈愛に満ちた微笑みを浮かべ、私を見詰めてくる。でも、其れだけじゃない…。強い光も纏った視線だった。

 胸を弄っていた手が離れ、脇腹を滑りながら私の陰茎に触れてきた。

「……んっ…アッ……!…」

 人差し指の背で裏筋をぐぅぅっ…と根元からゆっくりと撫で上げてきて、身体が震えた。乳首をちゅっと吸われて離れていく。

 ちょっとだけ強い刺激だけど、やっぱり…足りない。身を捩らせて、シュザークを急かすように脚を擦り付ける。後孔の指が三本に増えた。だけど…前立腺には触れてくれない…。

 余りの焦れったさに、自分の陰茎に手を伸ばす。陰茎に辿り着く前に、伸ばした指先をシュザークの口にぱくりと食べられた。指先をぬめる舌が舐めて来て…その感触にゾクリとした。

「や…っ…!…う…ぅ……!…」

 指先をねっとりと舐め上げられる度に、ぞわぞわと身体を甘い痺れが奔って、益々、焦れったいっ…!

 後、もう少しなのにっ…! もう少し、強い刺激を貰えれば、達する事が出来るのにっ…!

 いつもなら、頭がおかしくなりそうな程に極めさせてくれるのにっ……。その、感覚を思い出して…早く…其れが欲しくて、焦れる。

「あ…お…お願いだ……シュザークっ…!…早くっ…!!」

 潤む眼で…シュザークを強く見詰めて、懇願して、強請る。もう、達することしか考えられないっ…!

 シュザークの口から指先が解放される。開放された指先がピリピリと痺れていた。


「もう、我慢できないの…?」


 シュザークは首を傾げて幼子と話すように、優しく問い掛けてくる。


「ぅ゙~~……で、…できな…い……!…」


 シュザークに釣られたように、幼い口調になってしまった……。後孔の指を、きゅむきゅむと喰んでしまう。そうしたら、三本の指が抜けて行った。

「あっ……や…やだっ…!」

 抜けて行く指を引き留めようと、ぎゅうぅっと締め付けたけれど、ヌルヌルの指は、抵抗虚しく抜けて行ってしまう。

 シュザークは、全部の刺激を止めてしまった。焦れったい刺激すら取り上げられてしまって、行き場を失った疼きに灼かれて、涙が零れた。


「シュザークっ…どう…して…だ……?」


 恨みがましく聞いてしまう。

 シュザークは喉でクツクツ笑いながら、私を抱き締めた。その身体に獅噛み付く。


「よしよし、ちゃんとあげるから、泣かないの」


 シュザークは、優しく宥めすかすように言いながら、私の顔に唇を落としていく。頭の後ろを支えられながら、抱き上げられて、大きなクッションの上に降ろされた。

 身体に熱が燻って、熱い…。達したいと暴れる疼きは、私の陰茎をがちがちに硬くして、張り詰め過ぎて痛い…。早く、出してしまいたい…。

「シュザーク……お願いだ……早く、いつもみたいにしてくれ……」

 身体の熱が下がってしまわない内に、早くっ…!

 片脚をシュザークの肩に担がれ、後孔にスライムジェルが押し込まれて、割られた。

 やっとっ…、いつもの快楽が貰える。指で前立腺を容赦なく触って貰える。─なのに、指はまた、抜けて行った。

「あ…」

 落胆の声が漏れてしまう…。だけど、今度は熱くて肉質なものが、ぴとりと後孔に充てがわれた。シュザークの赤黒い陰茎が……後孔に添えられている…。

「っ…!」

 え… あんなに、大きいのか……?

 閨の道具よりも…ずっと、………大きい…が……。

 え… 其れを…私の中に……容れる…の…か……?

「…シュ…シュザーク……容れるのか…? ソレ、いる…のか……?」

 ヒクヒクと後孔が怯える。

 シュザークが、やんわりと濡れそぼった私の陰茎を撫でる。身体がひくりと跳ねた。

「大丈夫。その為に、身体の準備をしてきただろう? ちゃんと、いるようになったから、心配ないよ」

 シュザークの硬くて弾力のある切っ先が、後孔をぬるぬると撫でる。

 そ、そうか…。そうだな…。その為に準備をして来たのだ。シュザークがいると言うのなら、間違いはないのだろう…。

 ほっと、胸を撫で下ろす。

 私の陰茎を壊れ物のように撫でながら、後孔を熱い切っ先が撫で回す。

 シュザークが私の中に押し入って来るのを、今か今かと待っているのに、なかなか、いって来てくれない。弱い刺激ばかりが与えられる。


「…シュザークっ…!…早くっ…いつもみたいに極めさせてくれっ……!…なんで…くれないんだっ……!」


 もう、我慢の限界で…シュザークを責める。

 シュザークは意地の悪い顔で、くつり、と笑って、陰茎を撫でていた手を離し、陰茎の付け根の直ぐ上の腹を濡れた手で…くっと力を入れて…じっとりと撫でてきた。何故か、身体がビクビクと震えた。

「は…ぅ…」

 私の口から熱い吐息が漏れる。


「ふふっ…。ちゃんと、あげるって言っているじゃないか。──ここが、疼いて仕方がないんだろう…?」


 撫で回す手に軽く押されて、何とも言えない痺れが身体を奔る…。息が上がって、荒くなる。

 腹に気を取られていたら、後孔をシュザークの切っ先がトントン、と叩いた。

 条件反射のように、後孔に意識が集中する。

「ほら、最高に気持ち良くしてあげるから、ここに集中して」

 その言葉に、期待が高まる。いつもの、あの刺激がやっと貰える。早く…早く…欲しい…。

 襲って来るだろう快楽に期待して、喉がごくりと鳴った。


「さあ、私と繋がるよ…?」


 シュザークの言葉に、期待が更に高まり、胸も高鳴った。

 シュザークの切っ先が、ぐぐっと後孔に押し付けられてくる。其れは、じりじりとにじり寄るようにゆっくりで…少しずつ後孔を拡げて行く感覚まで、はっきりと分かる。じわじわと侵蝕されていく…。じりじりと迫ってくる…。今まで…知らなかったものが…這い入ってくる…。

 ぐぐぐぐっ…と、後孔がこれ以上ないほど拡がって、ぐ~~ぽり…!とシュザークの先端を呑み込んだ。


「ぅああ~…ぁ~…ぁ~…っっ!」


 ゆっくりな動作のせいで、間延びしたような声が漏れた。

 今まで感じたことがない、太いものが私の後孔にいっている…。その感触にぎゅう~っとシュザークの肉杭を喰い締める…。

「ぐっ……!」

 シュザークが歯を食い縛って、顔を歪め何かに耐えている。

 下腹に置かれていたシュザークの手の指先が、ある一点をトントンと叩くと、強い刺激が奔って、ビクビクと身体が震えた。

「アアッ…!?…ぅあっ……!?!?」

 達しそうになったが、僅かに足りない…。

 シュザークの陰茎はじりじりと躙り寄ってくる。強い圧迫感に押し上げられて射精感が込み上げてくる。

 何故か、涙まで涙腺から押し上げられるようにして、勝手に溢れる……。

「ぅ…ううぅっ……う…っ……」

 じわじわと進んでくるシュザークの…硬い肉の塊が、ゆっくり、ゆっくり、その存在を知らしめるように迫って来る…。それと一緒に、ぞわぞわしたものも押し上げられてきて、じわじわ、ざわざわ、と徐々に強さを増して迫って来る。


 なんだ……? なんだか……漏れそう……?


 何かが…押し上げられながら…込み上げてくる…。抑えることが出来ないその感覚に、焦りと恐怖を覚える…。身体が、ゆっくりと弓の弦を引くように力が入って張り詰めていく……。ま、まずい……漏れてしまうっ……!


「あ、あぁ~……ぁああ…あ…ぁ…ぁぁ~~…!!!…」


 シーツをぎゅうぅっと握り締める。

 シュザークの緩慢な動きは止まらない。じりじり、じわじわと進んで来て、ついに、前立腺に辿り着いた。びくびくと身体が震えた。自分では制御出来ない何かが、直ぐ…そこまで込み上げてくるっ……!


 ま、待ってっ……! 待ってくれっ……!! このままではっ……そ、粗相してしまうっ……!!!!


「んああァァっ……!?!?」


 驚く位、大きな声が出た。身体を強い刺激が襲う。シュザークは、止まらない。前立腺をゆっくり、ゆっくり、押し潰しながら躙り寄ってくる。


「ああっ…あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙~~~…ん゙ん゙ぁ゙あ゙ぁあ゙あ゙~!!!!」


 込み上げて来ていたものが、何もかも勝手に開放されて押し出されていく。……まるで、粗相してしまったように……。脳天を突き上げ続け、真っ白に頭を灼き続け、見開いた目からは、涙まで押し上げられて流れ続ける。開いた口から唾液が流れ落ちるのも感じたが、どうにもならない…。

 声を出していないと何かが溜まって吐き出せないように感じて、意味のない声を垂れ流す。極めた解放感が長く続き、達しているのに次々と達し続ける……。

 止まらない射精に、ガクガク、ガクガクと身体が…激しく痙攣したように震えて、私の陰茎から…ぴゅるぴゅるぴゅるぴゅると子種が漏れ続けた…。


 ………とんでもない、絶頂だった………。


 シュザークの陰茎の先端が、私の中の行き止まりに辿り着くまで…彼は動きを止めなかった……。

 漸く、シュザークが止まっても、極みの波は止まらず、ガクガクと痙攣し続ける身体も止まらず、暫くの間、其処から戻って来ることが出来なかった…。

 シュザークは、私の身体を抱き締めてゆっくりと撫で続けてくれるが、その、撫でる手にすら強く感じてしまう。シュザークに獅噛み付きたいけれど、強く握り締めたシーツを離せない。

 頭が…馬鹿になるかと思った……。今まで覚えてきた知識のすべてが、一瞬で飛び散るような感覚だった。


 ……凄すぎる……。


 漸く、戻って来れたと思ったら、シュザークに聞かれた。


「最高に、気持ちよかったでしょう?」


 ……度が過ぎているようにも思ったが、有り得ないほどの絶頂だったのは本当だ。

 だから、私は素直に頷いた。──頷いてしまった…。

 シュザークは、此の上なく美しく笑って、言った。


「じゃあ、次は、私を極めさせてね?」


「え…???」


 何のことか分からずにいると、くたくたの腰を引き寄せられて、奥にシュザークの陰茎の切っ先がぐりぐりとあたって、酷く敏感になっている身体に、強い刺激が奔る。

「ん゙ん゙あぁっ…!!!!!」

「ああ、あれだけ極めたから、初めてでも奥が開いているね……」

 シュザークは北叟笑ほくそえんで、揺するようにして奥に先端を押し付けてきて……ぐっぽりっ…!! と、私の奥の奥に嵌まった。


「ん゙ん゙あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙っ゙ん゙ん゙ん゙~~…~…~~!?!?!?!!」


 漸く、降りて来られたのに、いとも容易く絶頂に投げ込まれ、激しい突き上げに、降りることを許されなかった。

 意識が何度飛んだか、分からない……。意識が戻る度に、絶頂にいて、もう、止めてくれと言う言葉さえ口に出来ない程、極めさせられた。



 余りにも強い快楽に、────地獄を見た。



 激しい疲労困憊の中、目を覚ます。何もかも出し切って、空っぽの状態だったが、シュザークと遂に一つになれたのだ。

 閨を共にすると謂うのは、こんなにも凄いことだったのだな…。

 でも、普段は涼し気な様子でいるシュザークに、あんなに激しく求められて…優越感にも似た悦びを感じる。

 瞼が腫れ過ぎて、目が開かない。

「ぅ゙…ぁ゙……」

 声も潰れて、出なかった。

「おはよう」

 シュザークの声がして、顔付近に魔力を感じた。治癒魔法だ。

 お陰で、目を開く事が出来た。でも、身体はぴくりとも動かない。

 シュザークは私を抱き起こし、背中から抱えるようにして彼の前に座らせてくれた。収納空間から水を取り出し、そのコップを私の唇に当てて、ゆっくりと飲ませてくれた。三杯飲んで、漸く満足する。

 暫くの間、シュザークの胸にぐったりと背凭れて、ぼうっとしていると、眼の前に秘薬の小瓶が差し出された。

「お互い、身体の相性は確認出来た事だし。─どうする? 私を知っても、此れを飲むかい?」
 

 何を言っているのだ…? 例え、身体の相性が悪かったとしても、シュザークは手放さない。


「飲む」

 本当は小瓶を掴みたかったけれど、腕が全く上がらない。だから、即答した。

「───そう」

 シュザークは、くすりと笑って小瓶の蓋を外した。

 そして、シュザーク自らの手で私に飲ませてくれた。

 此れは、シュザーク自身も私の伴侶となる事を認めたと謂う事だろうか?


「──駄目だと言っても離しはしないが、……良かったのか…?」


 思わず、聞いてしまった。


「ふふっ、──私は、とっくに可愛いラルクに堕ちていたようだよ」


「っ…!」


 シュザークは、熱を孕んだ眼で私を覗き込み艶然と笑った。その秀麗な顔を、茫然と見詰める。


「──其れは…つまり……私を好きと謂うことか…?」


 シュザークの氷のような碧い眼を見詰めながら尋ねる。

 まさか……。本当に…? そんな…私に都合よく行くだろうか…?

「つまり、そう謂うことだね。──より、愛しているに近い好きだけど」

 するりと答えたシュザークを、まじまじと見詰める。


 ──愛しているに、近い…好き……。


 ならば……もっと頑張れば……愛しているに変わるのか……?


「ならば私は、シュザークに愛して貰えるように…もっと頑張るよ…」


 ふわふわとした気持ちで微笑むと、シュザークは深く溜め息を吐いた。


「……もう~~~……。ラルクには、敵わないね…」


 シュザークは苦笑しながら、私の唇に触れるだけの口付けをした。

「もう、頑張らなくていいよ…」

「何故だ…?」

 私を愛したくはない、と謂うことだろうか……。

 眉が下がって情けない顔になったのが、自分でも分かった。


「──たった今、愛しているに変わったから…もう、頑張らなくても大丈夫と謂うことだよ」


 シュザークは、もう一度、私に深い口付けをして…ぎゅうぅと抱き締めてくれた。

 私が朦朧とした頭で、その言葉を理解するまでに…かなりの時間を要した。

 理解したときには、飛び跳ねて走り回りたいほど嬉しかったが……身体が全く動かなくて、心だけが暴れ回ってしまい、興奮のあまり気を失ってしまった。


 ──父上、初恋は叶わない、なんて嘘でしたよ。


 私は、これ迄もこれからも……。


 シュザークしか愛さない。














 
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

醜さを理由に毒を盛られたけど、何だか綺麗になってない?

京月
恋愛
エリーナは生まれつき体に無数の痣があった。 顔にまで広がった痣のせいで周囲から醜いと蔑まれる日々。 貴族令嬢のため婚約をしたが、婚約者から笑顔を向けられたことなど一度もなかった。 「君はあまりにも醜い。僕の幸せのために死んでくれ」 毒を盛られ、体中に走る激痛。 痛みが引いた後起きてみると…。 「あれ?私綺麗になってない?」 ※前編、中編、後編の3話完結  作成済み。

処理中です...