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本編
16. パーティ追放イベント……?
しおりを挟むガルド、ソーン、シリア、メル。
新たに四人の冒険者登録を終えて、一階層に連れて来た。魔物を呼び寄せて、一人一種百体をノルマに倒しまくって貰った。
シリアを除く三人の魔力は、少なくもなく、多くもなく、ごく普通の量だそう。
シリアはなんと、タキートと同じく魔人の血が混ざっているらしく、タキートよりもやや少ないくらい。
転移と収納空間が使えるので、使い勝手がいい。
他の三人は、物理攻撃に長けている。ガルドは槍と相性がいい。
ソーンはロングソード。ロングソードをまるで包丁のように扱う。流石、料理人というべきか。もしかして、日本刀の方がもっと相性が良いかもしれない。
驚いたのはメル。あの、ぽやんとした見た目に反してトリッキーな動きでレイピアを操り獲物を仕留める姿は、まるで舞踊を観ているようだ。思わず拍手を送りたくなる。
ちゃんと育てれば、かなりいい線を行くのでは?
ただ、俺もシュザークも剣は全然扱ったことがないので教えようがない。
他の皆の魔力量を増やしたいので、元の世界の物語を参考に試してみることに。魔力を限界まで使い切る方法だ。
夜、寝る前にステータスを確認してから、収納空間をがんがん拡げてみた。目眩がしてきた辺りで止めて、そのまま気絶するように眠った。
朝、目が覚めてステータスを確認すると、最大魔力量の1%分が増えていた。一万で百上がるということだ。これを毎日続ければ、凄いことにならないか?
早速その日、皆に告知する。
その日は、ハニエルの父親のカドリスも来ていた。
収納空間は絶対あった方が良いので、まだ習得していないガルド、ソーン、メルを特訓して習得してもらった。魔力量が少ないので、林檎一個が入るかどうかの広さしかなかったけど……へそくりくらいは、入れられるだろう。
夜、寝る前にギルドカードで自分のステータスを確認してから、残っている魔力を目眩がするまで収納空間に注いでもらう。目眩がしたら直ぐ止めないと死ぬからね、と警告も忘れない。
だけど、次の日に確認すると、誰も魔力量は増えていなかった。
頭を悩ませていると、シュザークが。
「ハル。今日、一緒に寝ようか」
そう言われて、夜、一緒のベッドに入り、其々の収納空間を拡げながら限界まで魔力を注ぎ、気を失うように眠った。
そうしたら、シュザークの魔力量が増えていた。
「多分、魔力を増やすこのやり方は、誰でも出来ることじゃないんだよ。ハルに教わって習得して初めて出来るようになるんじゃないかな?」
その日の夜、皆で毛布と枕を持ち寄って、一つの部屋で寝ることにした。カドリスも来た。
シュザークも毛布と枕を持ってやって来た。
「あれ? 兄さんは、もう習得したからこんな硬い床で寝なくても良いのに」
俺がそう言うと、シュザークは珍しく口を尖らせて不貞腐れた。
「私だけ一人、仲間外れみたいじゃないか!」
珍しいシュザークの姿に皆は、笑って一緒に寝ようと口々に声を掛けた。漸く、シュザーク機嫌が治った。
皆で収納空間を拡げ始め、魔力の少ない者から気絶するように眠って行く。最後に残ったのは俺とシュザーク。でも俺の方が先に限界が来る。
「もう駄目……おやすみ、にい……さ……」
「おやすみ、ハル」
それを最後に気絶するように眠った。
翌朝目覚めると、全員が身体が痛いとぼやきながらステータスを確認する。
全員の魔力が上がっていた。
そして、三階層の魔物を全員が全種百体をコンプリートして冒険者ランクがDランクになった。
ダンジョンに潜り始めて四回目のことだ。
流石にこれは、ハイスピード過ぎないか? 四階層からは、ガラリとモンスターの強さが変わるらしい。
俺は、ゲームとかはガチ勢と言うわけじゃなかったので、攻略の仕方とかセオリーみたいなものがよくわからない。ダンジョンに詳しくないのだ。
このまま勢いで進むのは不味い気がする。ダンジョンの潜り方に詳しい人が必要だ。でも、誰を……?
そんなことを考えながら、皆でギルドに戻った。転移部屋を出ると、何やら周りが騒がしい。
情報交換の為の、交流の場である酒場の方からだ。
ハニエルの身長じゃ、人集りの足しか見えない。
「タキート、抱っこして」
タキートのズボンを掴んで軽く揺する。
彼は、直ぐに俺を腕に乗せてくれた。
「あそこに、もう少し近付いてくれる?」
「分かりました」
タキートは、俺を抱えたまま人集りの中に入ってくれた。
いかにも冒険者らしい大剣を背負ったガタイの良い厳つい男と、同じくらいの身体つきの大きな盾を背負った髭面の男、中肉中背の茶色いローブを着た男、ベージュ色のローブを着たケバそうな女が細身の若い青年の一人と対峙している。
ガタイの良い男達は全員二十代前後くらいだろうか? 女に至っては、化粧が濃過ぎて年齢不詳だ。
両者は睨み合っていた。
「何か、あったんですか?」
背の高いタキートに抱っこして貰っているので、隣に居る背の高いおっちゃんに聞いてみる。
「ん? パーティからの追放だよ。あの若い兄ちゃんが追放を言い渡されたのさ」
冒険者らしいおっちゃんは、親切に教えてくれた。
……パーティからの追放……追放イベントとかって聞いたことがあるな? 元の世界の小説や漫画とかで、そんなのがあった気がする。
「あの兄ちゃん、魔力があんまりないらしいぜ? 上の階層を目指すのに、足手纏だから追放するとさ」
「――魔力が?」
「上の階層だと、魔法を使えないとヤバいんだよ。まあ、仲間がフォローすれば良いだけだが……あの仲間じゃな」
「――へぇ……」
おっちゃんが色々教えてくれた。
おっちゃんが言うところの若い兄ちゃんが吠える。
「ふざけんなっ! 今迄、下調べや必要な荷物を揃えてきたのは俺だぞっ!? それを荷物持ち扱いしやがってっ……!」
若い兄ちゃんを、ガタイの良い大剣を背負った男が鼻で笑った。
「ハッ、碌な魔力がねぇんだから、それぐらいやって当たり前だろ? 今迄はそれでも良かったが、俺達は上の階層を目指したいんだよっ! 自分の身も守れねぇ奴は足手纏なんだよっ!」
「っ! いつ、お前等が俺を守ったって言うんだっ……! 寧ろ、囮に使ってたくせにっ!」
若い兄ちゃんが、ギリギリと歯噛みする。
「それしか使い道がねぇんだから仕方ねぇだろ? 文句タラタラじゃねぇか! そんなに文句があるなら黙って追放されとけよっ!!」
「そうよっ! 大体あんた何様なのよっ! パーティ組んでくれる相手がいなくて困ってたくせにっ、拾ってやったあたし達に感謝しなさいよっ!」
二人の怒鳴り合いに、ケバい女が参戦する。
「パーティを組んでくれる相手がいない?」
俺の呟きを隣のおっちゃんが拾う。
「三十階層辺りからは、パーティ組まねぇと無理なんだよ。襲って来る魔物は大型だし、数も多い。余程の腕がなけりゃ、一人じゃ無理だな。パーティは仲間の信頼が大事だ、途中からパーティに入るのは中々大変なんだぜ? 知りもしない相手に、仲間に入れてもいいなんて言って来るようなパーティは碌な扱いをしない連中が殆どだ。当たり外れの、ハズレが多いのさ」
「そうなんだ……」
試しに若い兄ちゃんを鑑定してみる。
え……? マジか……
確かに魔力は、六百程しかない。だけど――
「もういいっ! お前等なんかこっちから願い下げだっ! 俺の装備品、返しやがれっ!」
「装備品? アハハハッ!! そんなものないわよ。邪魔だから全部売っちゃたわ!」
「なっ……!」
「ついでに、お前の部屋も引き払って置いてやったよ! 親切だろ?」
「てめぇらっ!」
若い兄ちゃんは、怒りでぶるぶる震えている。
「うっわ……あの兄ちゃん、質悪いのに引っかかっちまったなぁ……身包み剥がされたぜ……」
おっちゃんが気の毒そうに言う。
「でも、ギルドのルールで他人の物を奪うのは禁止じゃないの?」
「ああ、その通りだ。だが、あの兄ちゃんは装備品を預けちまったんだろ? 奪ってはいない」
「凄い屁理屈だね?」
「だが、パーティなら収納空間を持ってるやつに物を預けたりするのは当たり前だ。一旦預けちまったら、それはパーティの共有の財産になる。売られても文句は言えねぇよ。恐らく借りていた部屋も、パーティの誰かに保証人を頼んだんだろうよ。勝手に引き払われて、部屋の中のもんを処分されても仕方がねぇ」
「何か怖いね……」
「ああ、そうだぞ。坊主も大事なもんは絶対に他人に預けちゃいけねぇ。じゃないと、あの兄ちゃんみたいにカモにされるぞ」
「カモ……じゃあ、最初からそれ目当てでパーティに入れたってこと?」
「そうだろうな」
「ありがとう、おっちゃん。気を付ける」
「おお、気を付けろ!」
タキートがおっちゃんから離れる。
「恐ろしいね」
思わず、タキートにしがみ付く。
「そうですね。でも、私達のパーティでは無縁な話ですが」
タキートが背中を撫でながら慰めてくれた。
どうやら、あの詐欺グループみたいなパーティはいなくなったようだ。
若い兄ちゃんは、床にへたり込んで呆然としている。誰も声を掛けないのか、掛けられないのか人集りは、さぁっと引いて行った。
「タキート、あの兄ちゃんのところに降ろしてくれる?」
「何をするおつもりですか?」
「いいから」
訝し気なタキートを急かして、降ろして貰う。
座り込んでいる兄ちゃんの直ぐ前に立った。
「――ねえ、何も残ってないの?」
俺が声を掛けると、兄ちゃんは表情がごっそり抜けた青白い顔をゆっくりと上げた。
へぇ、痩せてるけど硬派なイケメンだね。眼の色は緑と青が混じった、なかなか綺麗な眼だ。白髪の真っ直ぐな髪を後で束ねている。
「――ギルドカードしかねぇよ……」
兄ちゃんは、聴き取るのがやっとな程の低い声で呟いた。
「住む所もない?」
「……ねぇよ……」
「行く所もない?」
「……ねぇよ……」
「お金も?」
「……ねぇよ……もう、なんもねぇよ……魔力も、ねぇっ……!」
兄ちゃんはそう言って、骨張った手で顔を覆って項垂れた。
「俺のパーティに、入ってくれない?」
「…………」
兄ちゃんは、身動ぎ一つせず項垂れている。
根気よく、じっと待つ。
「……パーティ……?」
「そう」
「…………」
顔を覆ったまま動かない。
「……魔力がねぇって、言ったろ……」
「別にゼロじゃないでしょ。なくても構わないし」
「…………」
「パーティに入ってくれるなら、住む場所とご飯はあげられるよ? 取り分はちゃんと渡すし、……兄ちゃんのこと、強くしてあげる」
「……話が旨すぎる」
「そうかもね。でも、もう何も残ってないんでしょ?」
「……ああ」
「だったらもう、失うものもないじゃない。断る理由ある?」
「……ねぇよ」
兄ちゃんは、ぱたりと顔を覆っていた手を落とした。
俺は耳元に顔を寄せ、こっそりと囁く。
パーティに入ってくれたら地道な努力は必要だけど、魔力も増やしてあげる。
兄ちゃんは、眼を見開いて俺を見る。
「――何?……お前……天使かよ……?」
俺はともかく、ハニエルは天使だよ?
「……なんで、俺をパーティに誘う?」
「君が必要だから」
ダンジョン攻略の為にね。
言った瞬間、兄ちゃんの顔がくしゃりと歪んで涙が溢れ落ちた。そして、俺を引き寄せて肩に顔を埋めて小さく身体を震わせて泣かれた。
おう、ハニエルの頼りない小さくて狭い肩だけど、いくらでも貸してやるぜ!
兄ちゃんは、そうして暫く泣いていたけれど落ち着きを取り戻して小さく言った。
「――分かった……パーティに入る……」
やった! 貴重な人材をゲットしたぜ!
「――ハニエル? 説明して?」
いつの間にか傍に来ていたシュザークがにこやかな笑顔で、あり得ない圧を掛けてきた。
俺は、シュザークに近付いて内緒話をするように口元に手を添えて、彼の耳元で囁いた。
「――兄さん、剣聖の卵を拾いました」
シュザークは、俺をまじまじと見て溜め息を吐いた。
「――分かったよ。彼をパーティに入れるんだね?」
「はいっ!」
俺は、満面の笑みで返事をする。
「お前等、一体何やってんだぁ?」
ドスの効いた低い声がしたかと思ったら、デカい手で頭を鷲掴みにされた。
この声は、ギャジェスだな。
「痛いですっ……パーティの勧誘をしていただけですっ!」
必死に手を外そうと暴れたら、手が離れていってシュザークごと抱き上げられた。
「取り敢えず、ここじゃ何だし精算もあるだろ? そこのお前も付いて来い」
ギャジェスは、兄ちゃんを見て顎をしゃくるとズンズンと歩き出した。皆もそれに続く。
買い取り部屋に入ると、今度はミーメナが迫って来た。
「ハル、当然私にも説明してくれるわよね?」
「はい……」
小さくなって頷く。
「俺達、今日、Dランクになったじゃないですか?」
「そうね」
「始めてダンジョンに入ってから、まだ四回目のダンジョンです」
「そうね」
「魔物は一杯倒したけど、ダンジョンの探索の仕方だとかダンジョン内の暗黙のルールだとか、何も知らないでここまで来てしまったじゃないですか?」
「確かに……そうね」
「四階層からは魔物の強さも、これ迄とはガラリと変わると聞いています。今のままでは、とても危険だと思ったんです……」
「…………」
ミーメナは、思案顔で黙り込んでしまった。
「お、凄いじゃねぇか。それにちゃんと気が付いていたのか。感心したぞっ!」
ギャジェスが、ぐりぐり頭を撫でてくる。
「うっ……! 俺達に足りない経験を補う為に、彼が必要なんですっ! だからパーティに入れたいんです。序に、詐欺パーティに身包み剥がされて装備も住む所もお金もないので、家に連れて帰ります。いいでしょう? 母様……?」
眼をうるうるさせてミーメナにお願いする。
なんか、子犬を飼って! とお強請りしているみたいだな。
「はあぁ……ハル、貴方の言う通りね。――分かったわ、許可します」
ミーメナの許可が出たので、兄ちゃんの傍に行く。
「名前、何ていうの?」
「――俺は、ユリセス……」
「俺はハニエル・キディリガン。よろしくね、ユリセス」
俺は、パーティ登録するためにギルドカードを差し出した。
ユリセスもカードを出して、くっつける。
カードにユリセスの名前が出た。
「――キディリガン一家? こんなパーティ名付けて大丈夫なのか?」
ユリセスが眉間に皺を寄せる。
「ん? 何が?」
「キディリガンって領主様の家名だろう? 機嫌を損ねるんじゃないか?」
そんなことを言うユリセスに首を傾げる。
あれ、俺フルネームで名乗ったよな? 聞こえなかったのか?
「俺の名前は、ハニエル・キディリガン……」
「それは、さっきも聞いた――ハニエル・キディリガン?」
「キディリガン」
ユリセスが固まる。
「私はシュザーク・キディリガン。よろしくね」
まだ信じていなさそうなユリセスに、シュザークが名乗った。呆然としてギルドカードを握っているユリセスのカードにシュザークは自分のカードをくっつけて、パーティ登録をする。
「シュザーク・キディリガン……?」
「そう、キディリガン」
シュザークが、にこりと笑った。
「私はミーメナ・キディリガン。キディリガン家の当主よ。よろしくね、ユリセス」
「…………」
ミーメナは、 唖然としてカードを持ったまま固まったユリセスのカードに自分のカードを重ねる。
他の皆も次々と名乗ってカードを重ねて行く。
ユリセスが正気に返ったときには、全員とパーティ登録を済ませた後だった。
「……待て……領主様の屋敷に連れてって、俺をどうしようってんだ?」
ユリセスが俺を見て訝しむ。
「どうって、ダンジョンの探索の仕方を教えて欲しいんだよ?」
それが一番の目的で引き入れたんだから。
「それは、普通にパーティとしてやることだ。ただで寝床や食事を与えるのは何の為だ?」
「だって、住む所がないんでしょ?」
俺は首を傾げる。
「――それは、そうだが……無償なんて有り得ないだろ?」
ユリセスは俺を睨む。
「そう言われても……」
俺が困って居るとシュザークが助け舟を出してくれた。
「無償が嫌なんだね? じゃあ、我が家の騎士団長見習いになってもらいましょう。良いですか? 母上」
おお? 我が家に騎士団なんてないけど……しかも団長見習いって……
ミーメナは、困惑顔でシュザークを見る。暫く見詰め合っていたけれど、シュザークが痺れを切らし、ミーメナを屈ませて口元に手を添えて何事か囁く。驚いた顔でシュザークを凝視して、今度は俺を見た。
「――いいわ。ユリセス、貴方を騎士団長見習いとして雇います。報酬は部屋と食事よ。正式に騎士団長になったら給金を払います」
「…………」
ユリセスは、まだ怪しんでいる。
「ダンジョンのことを教えてくれたら後は出て行くなり残るなり、好きにしてくれたらいいよ。ただ屋敷に居るうちは、皆と一緒に屋敷のことをして貰う」
シュザークが補足する。
「皆?」
「タキートは我が家の執事だし、ガルドは庭師、ソーンは料理人、シリアとメルはメイドだよ?」
俺がそう言うとユリセスは口をあんぐりと開けた。
「さっきも言ったけど、家に居てくれるなら君を強くしてあげる。強く成りたくない?」
「……成りたい……」
「じゃあ決まりだね」
俺がにこりと笑って手を差し出すと、ユリセスは躊躇いながらも手を握り返した。
その後は其々精算を済ませ、今は皆で座って歓談中。俺とシュザークは定位置のギャジェスの上。
「ギルマス、ああいう詐欺パーティって取り締まれないの?」
俺の質問にギャジェスは難しい顔で顎髭を撫でた。
「ああ~……あのたぐいはなぁ……ギルドはそもそも警邏でも騎士団でもないからな。決まりは作れても、生命に係ることでもない限り手は出せねぇな」
「そうですね。あんまりにも頻繁なようなら出入り禁止にも出来るけど、ああいう連中はヤバい空気を察知すると、直ぐに狩り場を変えるんですよ」
ショーンが溜息を吐く。
「今回は、わざわざ目立つところでやらかしたんだ。今頃、別のダンジョンに向かってる頃だろうよ」
ギャジェスが唾を吐くように言い捨てる。
「いいか? 簡単に他の冒険者を信用するなよ? いい奴も居れば悪い奴だって居る。怪我した振りして薬を強請って来る奴、助けてくれと言って荷物を持って逃げる奴、手に負えない魔物を押し付けて来る奴、色々だ」
「そうそう、特にパーティに入ったり入れたりした時は要注意ですよ。ユリセスみたいに散々良いように使われて身包み剥がされたり、もっと酷いと奴隷商に売られたりしますよ。入って来たやつは金や装備品を持ち逃げしたり、ダンジョンでわざと罠に嵌めて有り金持って逃げる奴だって居る。メンバーがしょっちゅう変わるパーティも要注意ですよ。大体囮に使われて、死んでますよ」
ギャジェスとショーンが次々と事例を上げていく。
「だから、あんまりホイホイ拾って来てパーティに入れたりするんじゃねぇぞ? 分かったか?」
ギャジェスが俺の顔を覗き込んで凄む。
「うぅっ……今回は特別だから」
俺は言い訳する。だって、剣聖候補なんてステータスに出てたら、拾うしかないでしょ。
「それと、あそこのダンジョンは上級ダンジョンだってことを絶対に忘れるんじゃねぇ。あそこは、一階層から三階層までは拍子抜けするほど弱い魔物しか出ねぇ。それは罠だ。余裕で倒せるからと調子に乗って四階層にのこのこ出て行くと、あっという間に死んじまうぞ。臆病な程、慎重に進め。お前たちが余裕でも他の奴らは違うってことを忘れんなよ」
「「はい」」
俺とシュザークが素直に返事すると、ギャジェスは俺達の頭をわしわし撫でながら満足そうに頷いた。
「でも、ハニエルはそれに気付いていたから、リーダーはお前だな」
「え? リーダーは兄さんで。俺は兄さんのサポートをします」
俺は速攻でシュザークに投げる。
「何でだ?」
ギャジェスが聞いて来たので応える。
「家のパーティで一番強いのは、兄さんですよ? それに唯一回復魔法が使えます。何が何でも兄さんを生かして、回復して貰わないと」
「ハル、前も言ったけれど私はまだ回復魔法は使えないよ? それに私は、ハルがリーダーでいいと思うよ。サポートは、私がしてあげる」
シュザークが投げ返して来た。
「え……?」
「だってハルは、いつも私達が気付かない危険を指摘してくるでしょう? 私達が獲った天……鳥の時もそうだったし、今回もそうだった。だからハルがいい」
シュザークの言葉に全員が頷く。
「大丈夫。ハルはそのままでいいよ。ハルはやろうと思わなくても、そのままでリーダーの役割は果たしているから。今度こそハルを守るために、私を強くして?」
「兄さん、カッコいい……」
思わず真顔でそんなことを呟いてしまった。
流石、魔王候補は違うな。今からこんなスパダリみたいなこと言えるなんて。まだ九歳だよな?
でも、シュザークはハニエルを守ろうとしてくれているんだな。
シュザークは、照れたのか頬を赤らめてもじもじしている。
そんなところは、年相応で可愛らしい。
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