赤い疑惑

ダンボ菩薩

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赤い疑惑

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春の日差しが暖かく照らすある日のことでした。

お姫様は夫と仲良く暮らしておりましたが、いつものように夫婦の営みをする日が来たので、目を細めて夫の準備が出来るのを待っていました。

夫は楚々としてお姫様を後ろから抱きしめ始めました。
いつもと何も変わったところのない、普通通りのおっとりした営みが始まりました。

お姫様はこんなのんきな自分を抱いてくれる夫が嬉しくて、ついつい感情がこもり力が入ってしまいました。

その時でした、夫は怒ってつぶやきました。
「お前は、俺を誘惑しているのか?」
「こんなことをする人なのか?!」

営みはそのまま続けられましたが、お姫様にはなんとしたことかさっぱり解りません。
何か自分の体が淫らに動いたのだなと思い、ショックを受けてしまいました。

夫もお姫様も気を取り直して続きましたが、なんとも気がかりなことがあるとノリません。

しかし、それからが不思議でした。

夫はこの妻の嵯峨を知りたくなっていました。

姫様は無我夢中でした。

そのうちに営みは終わりましたが、
終わった後の夫は、竜宮城へ行ってきた浦島太郎が玉手箱を開けて白髪だらけのよぼよぼのお爺さんになったあの姿のようによぼよぼになってしまいました。


「浦島太郎」

昔 昔 浦島は 
助けた亀に連れられて 
龍宮城へ来て見れば 
絵にもかけない美しさ 

乙姫様の御馳走に 
鯛や比目魚の舞踊 
ただ珍しくおもしろく 
月日のたつのも夢の中 

遊にあきて気がついて 
お暇乞もそこそこに 
帰る途中の楽しみは 
土産に貰った玉手箱 

帰って見れば.こは如何に 
元居た家も村も無く 
路に行きあう人々は 
顔も知らない者ばかり 

心細さに蓋とれば 
あけて悔しき玉手箱 
中からぱっと白煙 
たちまち太郎はお爺さん 





姫様はまた考え込んでしまいました。

こんなやつれたよぼよぼの姿になった夫は、もう私のことを好きではなくなってしまったのではないだろうかと・・・・・。

夫はまたつぶやきました。
「血みどろになりたい」
「いい女と寝まくりたい」
「気が狂った」


姫様には残酷な言葉ばかりでした。
しかしなぜか、姫様は傷つく心にはなりませんでした。
なぜだか解らないのですが、ケロリです。
「私は悪い女なのかしら」
「神様、このたびはどうなってしまったのでしょうか?」
姫様はそんなことを考えましたが、そのなに傷ついた心持ちにもなりません。

その後も日常生活は普通に流れています。
夫婦は仲良く暮らしています。

しかし何かが違うのかしら?

姫様は一人になると考えます。



赤い目のお姫様は、自分の嵯峨がどのようなものなのか少し不安になり始めています。

嵯峨を知るってどうゆうことなのかしら・・・・・。




おしまい
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