70 / 108
第70話 イースト攻略前夜
しおりを挟む相変わらずカーテンのない部屋で朝日を浴びながら目を覚ました俺は、不安定な通信状況に苛つきながらも田辺さんに詠唱破棄について秘匿したまま報告を行い、再びイーストエリアの札幌当初の宿を取る。
中級エリアであるイーストエリアを拠点としてランニングで体力をつけ、火球や消火の詠唱破棄の取得とEP稼ぎを目指す事にしたのだ。
最早、ススキノエリアのこの自宅は住民票と郵便物のためだけの仮住まい扱いだ。
ただ、地下鉄駅徒歩2分の1LDKで月5.5万円は家賃相場的に安いのは確かなので、しばらくは様子見とする。ススキノエリア攻略後には良い住まいと変貌する可能性もあるからだ。
増え続けるタスクの優先度を思い耽っていると、不確かな電波を拾ったスマホがぶるりと震えた。田辺さんからの返信だ。
冒険者ギルドの新たな商売を歓迎するメッセージと、明日のイースト攻略を形式だけでも冒険者ギルドのオーダーとし、実績としてはどうかという提案であった。
なるほど、初期の実績とは創作するものなのだなと納得しながらも、冒険者ギルドのクエスト方式やギルド入会手続きも何も決まっていないのだ。
もう明日だ。
とりあえず、飯を奢るとかの報酬でみんなの同意を取ればいいだろうか。
もう明日なのだ。開き直るしかあるまい。
とりあえずリーダーとサブリーダーに話を通そう。
◆
「いいんじゃない?」
開店時間に餃子バーにやってきて事情を説明すると、あっさりとマスターの同意が得られた。
「明日はモモちゃんも増えたから11人か。たまにはウチの売上にも貢献して欲しいところだけどウチじゃキャパ的にキツイしなー」
「後の5人はどなたなんです?」
「ドーリで会ったことあるはずだよ。ポーター上がりのタンク5人組」
「ああー」
引きこもらないニートさん達か。
「あいつら、スキル足りなくて火力はないけど硬さはソコソコなんだよね。長期戦のサポートには向いてるのさ」
「なるほど。でも、11人なら屋根裏も使えばなるとかなるのでは?」
「イースト攻略記念に貸し切っちゃう? 土曜日だし貸し切りオッケーよ」
「冒険者ギルド旗揚げ記念もあるので貸し切りで」
「オッケー。1人3000円くらいでいい?」
「それでお願いします。サポートの方々にも事情を伝えておいていただけると助かります」
「商談成立。お任せあれ」
中級魔法書クラスの予算で、ガッチリと握手を交わす。色々、お任せだ。
最近、とても金銭感覚がおかしくなってきている気がする。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる