47 / 108
第47話 東京出張1日目
しおりを挟む二泊の予定で取った宿は東急蒲田駅近くの温泉旅館の様なホテルだ。レトロな昭和の雰囲気がある、古くとも味のあるホテルで意外と気に入っていた。
ブラックコーヒー色の湯に浸かりながら、ざわめく心を落ち着かせる。
掛け流され、オーバーフローしていく黒い湯を眺めるも考えがまとまらない。
二千万と言っても人を雇う必要がある。その金額でチームの人数を抱えるなんて到底無理だ。
少し休憩を挟み、サウナに入る。
しかし、ススキノ攻略後はどちらにせよ発注が途絶えるだろう。
自分が手を挙げなければ他の人に注文を出すだけだ。他のアテがないとは思えない。
頭から冷水をかぶり、水風呂に入る。
水温は北海道より緩めだ。吐息が冷たく感じるまで座禅を組み、頭の中を空にする。
⋯⋯やるしかないのだ。
独立起業する前提でどう実現していくかを考えよう。
手拭いを肩に掛け休憩する。冷えて縮こまっていた身体中の毛細血管がじわりじわりと開いていく。
「⋯⋯後、2ターンは行けるな」
減量するボクサーの様に身体の水分を絞り出した後は線路の向こう側のバーボンストリートに向かった。今日は少し元気の出るものが食いたい。
看板にうなぎ串焼と肝焼きと書いてあるのを見つけて暖簾をくぐる。前に一回来たことがあるなここは。
「生とモツ煮込みと、うなぎ串下さい」
まずはカラカラの体に水分を補給せねばなるまい。
「はい、生ぁ」
ビールジョッキを受け取るとそのまま二口で飲み干す。
目を瞑るとビールがぐんぐんと身体を巡っていくのを感じる。立ち飲み屋をチョイスしたのは失敗したかも知れない。回りが早い。
「生お代わりと肝焼きも追加で」
「はいよぅ」
やがて、やってきたうなぎ串には山椒をたっぷりと掛け、香ばしく焼き上げられたうなぎをビールで流し込んでゆく。濃い目の味付けのタレがビールを誘っているかの様だ。
記憶のうなぎ串より小ぶりになっている気がしないでもないが、うなぎの高騰を鑑みると仕方のない事なのかも知れない。
時代は移り変わるのだ。
変化を拒んだところで取り残されるだけだ。
「冷酒とうざくも下さい」
常識など一旦捨てて考えよう。自分から変化を起こすのだ。
しかし、酔った頭では考えはまとまらないまま、座りたくなったのでホテルに戻るとそのまま寝落ちしてしまうのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる