11 / 108
第11話 ススキノ探索
しおりを挟む歓迎会の会場はススキノのラーメン横丁の北向かいのビルだった。五分前に到着したものの誰もいない。
結局、全員揃わないまま、なし崩しにスタートし、全員揃わないまま終了した。
火鍋は美味かった。野菜も沢山食べれる鍋は良い。漢方の香りがする辛いスープを潜ったラム肉もビールと非常によく合い、杯を重ねてしまった。
⋯⋯が目的であったはずの歓迎会の体はなしていなかった。参加者が増えるたびに仕事内容を何度も説明する羽目にはなったが逆に良かったのかも知れない。
業務内容が違い過ぎるのだ。彼等のお客さんにあだ名を付けた内輪ネタには全くついていけない。
人並み以上に飲んだのに割り勘だったので得した事にしておこう。
外に出るとまだ冷たい外気が火照った肌に心地良い。
二次会のお誘いは、やんわりとお断りしたらあっさりと引き下がってくれた。向こうも同じフロアにいるとは言え、共通話題のない異物と飲みたいわけでもないだろう。二次会に誘うのも礼儀みたいなものだ。
お疲れ様ですと二次会へ向かう面々を見送り、スマホを見るとアンテナ表示が不安定で、圏外になったり繋がったりしている。これがススキノの電波障害か。
先日、戦って死んだところはここまで酷くはなかったが、ここのこの状態ではろくに通話もできないだろう。客足も減っているというのも致し方ない状況だ。
ふと正面に目をやると電波障害なんのそのと外国人観光客で溢れるラーメン横丁も昔とは大分様変わりして見える。
ここからならホテルへも余裕で徒歩で帰れる距離なので時間的にも余裕はある。
外国人観光客をかき分ける様にラーメン横丁を通り抜け、ラーメン屋を物色する。やはり昔ながらの札幌味噌ラーメンとは違うイマドキのラーメン屋や札幌ではない北海道のラーメン屋などに移り変わっている様だ。
そういえば、餃子バーのマスターに聞いていたルイさんの職場はすぐ近くだった様な⋯⋯。
左に行って⋯⋯バニーのバーの隣に階段が⋯⋯あった。
扉を開けると、フカフカとした絨毯が敷かれた上り階段のみ。怪しいが店名は合っている。
恐る恐る上がっていくと、薄暗い照明に窮屈そうなテーブルが並び、奥には天井まで伸びるポールが見える。
やっちまったかなと思いながら、マスターからは悪質な店だとは聞いていないのだ。ボッタクリには合わない普通の店か、札幌イーストがボッタクリかの二択だ。
「いらっしゃいませー。お一人様ですか?」
下着姿の女の子が照れも恥ずかしげもなくやってきた。
「って、さいとーさんじゃない。何やってるの?」
どうやらこの扇情的な格好をした女の子が我等がイーストのチームリーダーであるルイさんの様だ。流される様に席に案内される。
「⋯⋯えーと。初めまして?」
「初めまして。ルイです」
そう笑いながら、ブラジャーに包まれた豊かな膨らみを顔に押し付けられたのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる