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第10章
10-4
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10-4「リンカのターン」
離れて暮らしてきた時間を埋める様に長い抱擁を交わした後、私はアンスに聞いた。
「アンス、あなた私達の見張りをしに来たの?」
「はぁ!?そんな訳ないじゃない!私はお姉ちゃんに会いに来ただけよっ」
虚を突かれた妹は少し慌てた様子で否定した。
会いに来たのは本当だろうが、他の目的もあるのだろう。姉の私には妹が何か隠しているのが分かる。
「本当に?」
「・・・・・・」
アンスは黙ってしまった。
「言えないのなら別に構わないわ。あなたを困らせるつもりなんて無いから」
「お姉ちゃん・・・・・・」
言えない時点で、もう言っている様なものだ。
昨日の二人組はきっとユウの事を見張っていた。
フォコン族の女性は格好こそ冒険者風だったが、シスターの素振りを見せた。そして、短髪の女性の方も助けを呼びに行って連れてきたのがあのライリーだったのだから、2人は教会関係者であることは間違いない。
どうして教会がユウを見張っているのかは分からないが、なぜかエルフの長もユウに会いたがっている。
ユウを中心に何か起ころうとしている気がする。いや、もしかするとあのハウンドの群れの出現は、既にその一端なのかもしれない。
(シエルボに早く向かうように言ったのは正解だったかもしれないわね)
何か嫌な予感がする。そう思ったから昨日のうちにシエルボに行くようにチェアリーに勧めたのだ。
(でも、教会はいったい何を隠しているのかしら?)
気にはなるが、余計な詮索はしないことにした。妹の立場もある。
それに、全てはエルフの長にユウを引き合わせれば、かたは付くだろう。
困った表情で目を合わせようとしないアンスに私は言った。
「あなたも一緒に行く?これから私達シエルボに行くのよ」
「シエルボに?なんで?」
「ちょっと野暮用でエルフの長に会いに行くの。そうだ私、長の専属冒険者になったのよ」
「専属に!?お姉ちゃんスゴイ!」
「フフフッ」
困った表情は消え、素直に喜んでくれる妹の笑顔に私も嬉しくなった。
「あなただってあの英雄ライリーの護衛として働いているんでしょ?凄いじゃない」
「うん。・・・・・・これで村の奴らを見返せるわ。もうピコ族の奴らに好き勝手言わせない!」
アンスは拳を握りしめ言った。
「アンス・・・・・・もう昔の事よ。いつまでもこだわるのはやめましょう。それに、私達にもピコ族の血が半分流れているのだから、同族の事を悪く言うものじゃないわ」
「・・・・・・」
返事が返ってこない。どうやら姉の私が言っても納得は出来ないらしい。私も妹の前でもっともらしい事を言ったが、未だに思うところはある。
「それで、付いてくるの?」
「行きたいけど、」
「そんなに長旅じゃないわ。早ければ明日には帰って来れるし、長くても数日よ。それに一緒に来れば見張る必要なんて無いでしょ?」
「それは、」
陰で見張られるより、側に置いておいた方がやりやすい。それにまたモンスターの群れに襲われた時はアンスの協力もあった方がいい。
「分かった。一緒に行く。でもその前にライリー様に一言いっておかないと」
「それは、無理そうね」
食堂から丁度ユウが出てきた。
「パパ、遅いわよ!どれだけ待たせるの?早く行かないと門が閉まるわよ」
「ごめん」
私に謝りながらも、ユウの目はアンスの方に向いている。
「私の妹よ。昨日、偶然再会してね。一緒に付いて来る事になったから」
「妹!?んー??うん、よろしくお願いします」
彼は交互に私達を見ている。初めて私達、姉妹を見ればそんな反応をするのが普通だろう。
「姉妹なのに全然、」
気にしていることを言いかけたので、私はユウの言葉を遮った。
「それ以上言ったら殴るわよ」
「それ以上言ったら蹴りますよ」
アンスも気に障ったらしく、同時に喋って言葉がかぶった。
「はははっ、そっくりな姉妹ですね。妹っていうことは、同じピコ族?」
「そうです」
「やっぱり、強かったりするの?」
「それなりには」
「へぇ~」
ユウにはピコ族の私達に対して物おじしないところがある。その点も私がパパと認めたところかもしれない。
「一緒に付いて来るって、オレ達のパーティーに入るって事?」
「まあ、そういう形になりますね」
「じゃあ、オレの事はパパって呼ぶの?」
「はぁ!?そっ、そんな風には呼びません!」
「あれ?でもリンカは、」
彼の視線がこちらに向く。
「言わなかったっけ?守るに値する者をピコ族の間ではパパ、ママと呼ぶのよ。誰でもホイホイそんな呼び方しないわよ」
「と言うより、お姉ちゃんが時代遅れなのよ!今どきパパ、ママなんて呼ぶピコ族いないんだから!いつまでも昔の風習守って、ピコ族に一番こだわってるのはお姉ちゃんじゃない」
アンスの言う通りかもしれない。私は誰よりもピコ族らしくあろうとしてきた。
「そうなのか。オレもいきなりパパなんて呼ばれて恥ずかしかったんだよ」
「お姉ちゃんがズレてるだけですからっ!」
「ああ、なるほど」
「なるほどって何よ!フフッ、まあ、いいわ。妹も少しの間だけだから、一緒に行ってもいいでしょ?」
「オレは構わないけど、チェアリーにも聞いてみないと」
そのチェアリーも遅れて食堂から出てきた。
私達の事を見つけ、不思議そうに近づいて来る。彼女の方は私が頼めば問題は無い。
「そちらは?」
「私の妹よ。一緒にシエルボに連れていきたいんだけどいいでしょ?」
「ええ、・・・・・・構わないわ」
「いいの?」
ユウの方は少し気にしてはいたけど、私の予想通り話はまとまったようだ。
「うん。それより早く出発しないと、門が閉まるかも」
「そうね、急ぎましょ。アンスは私の荷物持って。ほら、パパ!おんぶして」
「ちょ!お姉ちゃん!!」
私達は慌ただしく南門へと向かった。
離れて暮らしてきた時間を埋める様に長い抱擁を交わした後、私はアンスに聞いた。
「アンス、あなた私達の見張りをしに来たの?」
「はぁ!?そんな訳ないじゃない!私はお姉ちゃんに会いに来ただけよっ」
虚を突かれた妹は少し慌てた様子で否定した。
会いに来たのは本当だろうが、他の目的もあるのだろう。姉の私には妹が何か隠しているのが分かる。
「本当に?」
「・・・・・・」
アンスは黙ってしまった。
「言えないのなら別に構わないわ。あなたを困らせるつもりなんて無いから」
「お姉ちゃん・・・・・・」
言えない時点で、もう言っている様なものだ。
昨日の二人組はきっとユウの事を見張っていた。
フォコン族の女性は格好こそ冒険者風だったが、シスターの素振りを見せた。そして、短髪の女性の方も助けを呼びに行って連れてきたのがあのライリーだったのだから、2人は教会関係者であることは間違いない。
どうして教会がユウを見張っているのかは分からないが、なぜかエルフの長もユウに会いたがっている。
ユウを中心に何か起ころうとしている気がする。いや、もしかするとあのハウンドの群れの出現は、既にその一端なのかもしれない。
(シエルボに早く向かうように言ったのは正解だったかもしれないわね)
何か嫌な予感がする。そう思ったから昨日のうちにシエルボに行くようにチェアリーに勧めたのだ。
(でも、教会はいったい何を隠しているのかしら?)
気にはなるが、余計な詮索はしないことにした。妹の立場もある。
それに、全てはエルフの長にユウを引き合わせれば、かたは付くだろう。
困った表情で目を合わせようとしないアンスに私は言った。
「あなたも一緒に行く?これから私達シエルボに行くのよ」
「シエルボに?なんで?」
「ちょっと野暮用でエルフの長に会いに行くの。そうだ私、長の専属冒険者になったのよ」
「専属に!?お姉ちゃんスゴイ!」
「フフフッ」
困った表情は消え、素直に喜んでくれる妹の笑顔に私も嬉しくなった。
「あなただってあの英雄ライリーの護衛として働いているんでしょ?凄いじゃない」
「うん。・・・・・・これで村の奴らを見返せるわ。もうピコ族の奴らに好き勝手言わせない!」
アンスは拳を握りしめ言った。
「アンス・・・・・・もう昔の事よ。いつまでもこだわるのはやめましょう。それに、私達にもピコ族の血が半分流れているのだから、同族の事を悪く言うものじゃないわ」
「・・・・・・」
返事が返ってこない。どうやら姉の私が言っても納得は出来ないらしい。私も妹の前でもっともらしい事を言ったが、未だに思うところはある。
「それで、付いてくるの?」
「行きたいけど、」
「そんなに長旅じゃないわ。早ければ明日には帰って来れるし、長くても数日よ。それに一緒に来れば見張る必要なんて無いでしょ?」
「それは、」
陰で見張られるより、側に置いておいた方がやりやすい。それにまたモンスターの群れに襲われた時はアンスの協力もあった方がいい。
「分かった。一緒に行く。でもその前にライリー様に一言いっておかないと」
「それは、無理そうね」
食堂から丁度ユウが出てきた。
「パパ、遅いわよ!どれだけ待たせるの?早く行かないと門が閉まるわよ」
「ごめん」
私に謝りながらも、ユウの目はアンスの方に向いている。
「私の妹よ。昨日、偶然再会してね。一緒に付いて来る事になったから」
「妹!?んー??うん、よろしくお願いします」
彼は交互に私達を見ている。初めて私達、姉妹を見ればそんな反応をするのが普通だろう。
「姉妹なのに全然、」
気にしていることを言いかけたので、私はユウの言葉を遮った。
「それ以上言ったら殴るわよ」
「それ以上言ったら蹴りますよ」
アンスも気に障ったらしく、同時に喋って言葉がかぶった。
「はははっ、そっくりな姉妹ですね。妹っていうことは、同じピコ族?」
「そうです」
「やっぱり、強かったりするの?」
「それなりには」
「へぇ~」
ユウにはピコ族の私達に対して物おじしないところがある。その点も私がパパと認めたところかもしれない。
「一緒に付いて来るって、オレ達のパーティーに入るって事?」
「まあ、そういう形になりますね」
「じゃあ、オレの事はパパって呼ぶの?」
「はぁ!?そっ、そんな風には呼びません!」
「あれ?でもリンカは、」
彼の視線がこちらに向く。
「言わなかったっけ?守るに値する者をピコ族の間ではパパ、ママと呼ぶのよ。誰でもホイホイそんな呼び方しないわよ」
「と言うより、お姉ちゃんが時代遅れなのよ!今どきパパ、ママなんて呼ぶピコ族いないんだから!いつまでも昔の風習守って、ピコ族に一番こだわってるのはお姉ちゃんじゃない」
アンスの言う通りかもしれない。私は誰よりもピコ族らしくあろうとしてきた。
「そうなのか。オレもいきなりパパなんて呼ばれて恥ずかしかったんだよ」
「お姉ちゃんがズレてるだけですからっ!」
「ああ、なるほど」
「なるほどって何よ!フフッ、まあ、いいわ。妹も少しの間だけだから、一緒に行ってもいいでしょ?」
「オレは構わないけど、チェアリーにも聞いてみないと」
そのチェアリーも遅れて食堂から出てきた。
私達の事を見つけ、不思議そうに近づいて来る。彼女の方は私が頼めば問題は無い。
「そちらは?」
「私の妹よ。一緒にシエルボに連れていきたいんだけどいいでしょ?」
「ええ、・・・・・・構わないわ」
「いいの?」
ユウの方は少し気にしてはいたけど、私の予想通り話はまとまったようだ。
「うん。それより早く出発しないと、門が閉まるかも」
「そうね、急ぎましょ。アンスは私の荷物持って。ほら、パパ!おんぶして」
「ちょ!お姉ちゃん!!」
私達は慌ただしく南門へと向かった。
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