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第7章
7-5
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7-5「チェアリーのターン」
ギルドについた私達はさっそく武器を借りに4番カウンターへと向かった。
カウンターの前に出ると武器の手入れをしていた受付嬢が手を止め対応してくれた。
「武器を借りたいのですが」
「会員バッチの提示をお願いします」
バックにいつも付けているバッチを見せる。
彼女は書類にバッチナンバーを書き込むと、ペンを渡してきた。
「ではココにサインを」
(アリーチェ、っと)
「ハイ、では剣と弓がありますが、どの武器にいたしますか?」
「弓をお願いします」
「ハイ、少々お待ちを」
受付嬢は台に立てかけてあった弓を取ると、慣れた手つきで保管の為に外してあった弦を掛け直し持ってきた。
(さすが、慣れてる)
「矢はどうしますか?」
「一緒にお願いします」
矢は個人個人で腕の長さや身長に合わせて調整するのが普通だ。モンスターを相手にするのなら自分用に買って調整しておいた方がいいが、今回は狩の為に使うのだし、あまりこだわらない事にした。
受付嬢が矢筒と矢を取り出して言う。
「貸出期間は7日間です。期間を過ぎると延滞料金が発生しますのでお気を付けください。なお、矢は10本まで無償でお貸ししています。紛失しても弁償の対象とはなりませんが、なるべく返却してもらえますと助かります」
「分かりました」
私は弓と矢を受け取った。
「ユウ、ボウガン借りるんでしょ?」
「ああ」
「じゃあ、私はその間にヌマタヌキの歯を渡してくるから。終わったらそこのイスに座って待っててね」
私はユウと別れて一旦建物の外へ出た。
害獣駆除はその証明として狩った動物そのものか、特徴的な部位を持ってくることになっている。そのため、獣臭くならないよう外に専用の小屋が設けられている。
小屋まで来てみると、冒険者が数人来ていた。
(私達と同じね)
ここに来ている冒険者達も狩をして生活の糧を得ているようだ。普段であれば害獣の駆除などは農家が自前でする事が多い。
小屋の中を覗くと床に駆除された動物がそのまま寝かされているのが見えた。
(ラクーンにイタチか・・・・・・)
どちらも毛皮として利用できるのに、捌く手間を嫌ったのかそのまま持ち込まれている。
ギルドにとってはその方がありがたいはずだ。手付かずのものは状態が良ければここで毛皮を剥ぎ取り、それを売ってギルドは収入を得ていると聞いた事がある。
小屋では害獣駆除の依頼も掲示板に張り出されている。ヌマタヌキの様に随時受け付けている害獣と違って、狩る動物が指定されているものだ。
私は順番が回ってくるまで張り出されている依頼を眺めた。
(えーっと、シカの駆除依頼かぁ。報酬は一頭3000シルバー)
シカは毛皮を売ることも出来るし、肉も食べる部位が多いので売ってお金に出来る。その上3000シルバー貰えるのなら悪い話ではないが、駆除できなければ報酬も何も無いのだから、いかに日にちをかけず狩を済ませられるか、その腕前が問われる。
それに、シカは大きいので運んだり捌いたりするには手間がかかるのだ。
(一人だと無理だけど、ユウがいてくれれば・・・・・・)
彼に手伝ってもらえば狩はなんとかなると思う。手間はかかるけど捌くまではいいとして、問題はそれを運ぶのに馬車を借りなくてはいけない事だ。
(依頼場所は・・・・・・シエルボの西、私の村の近くじゃない。でもちょっと遠いな)
コッレからシエルボまでは馬車で半日程かかる。朝早くにコッレを出発して日が沈むまでには私の村まで行けるかもしれないが、往復するだけで2日かかっていては馬車代や食事代などを考えると、いったい何頭のシカを狩れば元が取れるのか分からない。
シカに限らず、例え沢山狩れたとしても毛皮を剥ぎ、肉を売って、仕留めた証しとなる角なり牙なりを持って帰る手間などを考えると、駆除依頼は冒険者からは敬遠されがちだ。これならお金の代わりとなる魔宝石を落としてくれるモンスターを狙った方が割がいい。
ここに来ている冒険者達も駆除の依頼ではなく、随時受け付けている害獣を持ち込んでいるようだった。きっとモンスターを探すついでに見つけたのだろう。
(依頼期間は春までだし、どちらにしろ時間もないから無理ね)
「次の方どうぞ」
順番が回ってきた。私はバックから持ってきたヌマタヌキの前歯を取り出し、担当者に見せた。
「ヌマタヌキを2匹捕まえたので、駆除報酬をお願いします」
担当者に前歯を渡すと、確認のために布でこすり始めた。
ヌマタヌキの前歯は特徴的なオレンジ色をしている。私が持ってきたものはたき火で焼いたため少し黒くすすけてしまっていた。
「ハイ、前歯がオレンジ色ですので確かにヌマタヌキですね。少々お待ちを」
そう言って担当者は書類を用意した。
「会員バッチの提示をお願いします」
バックに付けていたバッチを見せる。
「では、捕まえた場所を教えてもらえますか?なるべく詳細にお願いします」
「コッレの街を南に行った先にある川で捕まえました。2匹とも橋の下にいました」
「・・・・・・橋の下っと、前歯以外はどうしました?」
「肉は食べて、毛皮の方は売りました」
「毛皮は売ったっと、結構です。ではサインをお願いします」
私が書類を受け取りサインしようとすると、
「前もって断っておきますが、今確認した事項にもし虚偽があれば報酬をだまし取った罪に問われます。この内容で間違いありませんね?」
担当者が私の目を見据えて言う。
「はい、間違いありません」
「では、こちらがヌマタヌキ2匹分の駆除報酬となります」
サインした書類を渡し、私は赤い魔宝石1個を受け取った。
(ヌマタヌキって報酬高いんだ・・・・・・)
今日だけで赤い魔法石を5個も得ることが出来き、大収穫だ。
私は気分よくユウの元へ戻った。
ギルドについた私達はさっそく武器を借りに4番カウンターへと向かった。
カウンターの前に出ると武器の手入れをしていた受付嬢が手を止め対応してくれた。
「武器を借りたいのですが」
「会員バッチの提示をお願いします」
バックにいつも付けているバッチを見せる。
彼女は書類にバッチナンバーを書き込むと、ペンを渡してきた。
「ではココにサインを」
(アリーチェ、っと)
「ハイ、では剣と弓がありますが、どの武器にいたしますか?」
「弓をお願いします」
「ハイ、少々お待ちを」
受付嬢は台に立てかけてあった弓を取ると、慣れた手つきで保管の為に外してあった弦を掛け直し持ってきた。
(さすが、慣れてる)
「矢はどうしますか?」
「一緒にお願いします」
矢は個人個人で腕の長さや身長に合わせて調整するのが普通だ。モンスターを相手にするのなら自分用に買って調整しておいた方がいいが、今回は狩の為に使うのだし、あまりこだわらない事にした。
受付嬢が矢筒と矢を取り出して言う。
「貸出期間は7日間です。期間を過ぎると延滞料金が発生しますのでお気を付けください。なお、矢は10本まで無償でお貸ししています。紛失しても弁償の対象とはなりませんが、なるべく返却してもらえますと助かります」
「分かりました」
私は弓と矢を受け取った。
「ユウ、ボウガン借りるんでしょ?」
「ああ」
「じゃあ、私はその間にヌマタヌキの歯を渡してくるから。終わったらそこのイスに座って待っててね」
私はユウと別れて一旦建物の外へ出た。
害獣駆除はその証明として狩った動物そのものか、特徴的な部位を持ってくることになっている。そのため、獣臭くならないよう外に専用の小屋が設けられている。
小屋まで来てみると、冒険者が数人来ていた。
(私達と同じね)
ここに来ている冒険者達も狩をして生活の糧を得ているようだ。普段であれば害獣の駆除などは農家が自前でする事が多い。
小屋の中を覗くと床に駆除された動物がそのまま寝かされているのが見えた。
(ラクーンにイタチか・・・・・・)
どちらも毛皮として利用できるのに、捌く手間を嫌ったのかそのまま持ち込まれている。
ギルドにとってはその方がありがたいはずだ。手付かずのものは状態が良ければここで毛皮を剥ぎ取り、それを売ってギルドは収入を得ていると聞いた事がある。
小屋では害獣駆除の依頼も掲示板に張り出されている。ヌマタヌキの様に随時受け付けている害獣と違って、狩る動物が指定されているものだ。
私は順番が回ってくるまで張り出されている依頼を眺めた。
(えーっと、シカの駆除依頼かぁ。報酬は一頭3000シルバー)
シカは毛皮を売ることも出来るし、肉も食べる部位が多いので売ってお金に出来る。その上3000シルバー貰えるのなら悪い話ではないが、駆除できなければ報酬も何も無いのだから、いかに日にちをかけず狩を済ませられるか、その腕前が問われる。
それに、シカは大きいので運んだり捌いたりするには手間がかかるのだ。
(一人だと無理だけど、ユウがいてくれれば・・・・・・)
彼に手伝ってもらえば狩はなんとかなると思う。手間はかかるけど捌くまではいいとして、問題はそれを運ぶのに馬車を借りなくてはいけない事だ。
(依頼場所は・・・・・・シエルボの西、私の村の近くじゃない。でもちょっと遠いな)
コッレからシエルボまでは馬車で半日程かかる。朝早くにコッレを出発して日が沈むまでには私の村まで行けるかもしれないが、往復するだけで2日かかっていては馬車代や食事代などを考えると、いったい何頭のシカを狩れば元が取れるのか分からない。
シカに限らず、例え沢山狩れたとしても毛皮を剥ぎ、肉を売って、仕留めた証しとなる角なり牙なりを持って帰る手間などを考えると、駆除依頼は冒険者からは敬遠されがちだ。これならお金の代わりとなる魔宝石を落としてくれるモンスターを狙った方が割がいい。
ここに来ている冒険者達も駆除の依頼ではなく、随時受け付けている害獣を持ち込んでいるようだった。きっとモンスターを探すついでに見つけたのだろう。
(依頼期間は春までだし、どちらにしろ時間もないから無理ね)
「次の方どうぞ」
順番が回ってきた。私はバックから持ってきたヌマタヌキの前歯を取り出し、担当者に見せた。
「ヌマタヌキを2匹捕まえたので、駆除報酬をお願いします」
担当者に前歯を渡すと、確認のために布でこすり始めた。
ヌマタヌキの前歯は特徴的なオレンジ色をしている。私が持ってきたものはたき火で焼いたため少し黒くすすけてしまっていた。
「ハイ、前歯がオレンジ色ですので確かにヌマタヌキですね。少々お待ちを」
そう言って担当者は書類を用意した。
「会員バッチの提示をお願いします」
バックに付けていたバッチを見せる。
「では、捕まえた場所を教えてもらえますか?なるべく詳細にお願いします」
「コッレの街を南に行った先にある川で捕まえました。2匹とも橋の下にいました」
「・・・・・・橋の下っと、前歯以外はどうしました?」
「肉は食べて、毛皮の方は売りました」
「毛皮は売ったっと、結構です。ではサインをお願いします」
私が書類を受け取りサインしようとすると、
「前もって断っておきますが、今確認した事項にもし虚偽があれば報酬をだまし取った罪に問われます。この内容で間違いありませんね?」
担当者が私の目を見据えて言う。
「はい、間違いありません」
「では、こちらがヌマタヌキ2匹分の駆除報酬となります」
サインした書類を渡し、私は赤い魔宝石1個を受け取った。
(ヌマタヌキって報酬高いんだ・・・・・・)
今日だけで赤い魔法石を5個も得ることが出来き、大収穫だ。
私は気分よくユウの元へ戻った。
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