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第4章
4-32
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4-32「ライリーのターン」
「では、また馬車で迎えにあがります」
私とアンスが馬車から降り教会の門の前に立つと、エリアスはそう言い残して帰って行った。
「今日は思った以上に早く終わらせることが出来たわ」
日は暮れ始めていたが、明るいうちに教会に帰ってくることが出来た。
「あなたが頑張ってくれたおかげよ。疲れたでしょう」
私はアンスの肩に手を置いてねぎらった。
「いえっ、だいじょうぶです」
「私はもうクタクタよ。早くシャワーを浴びて休みたいわ。貴方も浴びるでしょう?一緒に行きましょう」
「え、あっ・・・・・・」
教会には個人個人にシャワー室は与えられていない。共同の小さな浴室を交代で使用している。
肩に乗せた手をそのままに浴室に連れて行こうとするも、アンスがまた遠慮して首を振る。
それでも彼女を少し強引に連れて門をくぐろうとしたところで、後ろから呼び止める声がした。
「ライリー様」
振り返るとココとアデリナが監視の任務を終えたのか帰ってくるところだった。
「あなた達も今帰ってきたところ?」
「はい。ユウが宿に戻ったので私達も帰ってきました」
「そう、じゃあ先に報告を済ませましょうか。アンス、あなたはもう休んでいていいわよ」
「はい、」
私は報告を受けるため部屋へ向かった。
「それで、今日はどうだった?」
部屋に1つしかない椅子に腰かけ、二人に向き合う。
アデリナはいつも通り姿勢を正して立っている。その隣でココも今日は姿勢を正して立っていた。まだ気は緩んでいないようだ。
「今日、ユウは河原で獣を狩っていました。」
「獣を?モンスターではなく?詳しく聞きたいわ。朝から順を追って話して」
「はい。では・・・・・・朝、ライリー様が出発してすぐに、ユウとチェアリーが教会にやってきました。シスターの話によるとエルフの彼女の方は、ほぼ毎日お祈りする為に教会へ顔を出しているようです」
「待っていれば向こうからやって来てくれるのだから、監視しやすいわね。それで?」
「ユウの方はライリー様を探していたようですよ」
「私を?」
「はい。ユウは”お世話になった”と言っていたので、ライリー様にお礼をしに来たのではないでしょうか?」
(そういえば、お金を返しに来るとか言っていたわね)
昨日は一日スライムの大群を相手にしていたので彼を監視することは出来なかった。私達が戦っている間、たった1日でまとまったお金を得たのだろうか?
「今は手が離せないから、しばらく彼に会う事は出来ないわ。それと、私が教会にいるのが街の人達に知れ渡ると面倒だわ。シスター達には私の名前は出さないように伝えておいて」
「分かりました」
「ライリー様は有名人ですもんね」
ココは帰ってきた安心感からか、その口ぶりにいつもの調子が出てきた。
「それから?」
私はココの気が緩まないように、落ち着いた声で話の続きを促した。
「それから、教会を出た後二人でマルシェに寄って買い物をし、一昨日と同じように街の南を流れる川に行きスライムを探していました」
「今回は近くで見守ってましたよ」
ココは咎められるのではないかと思ったのか、私が聞く前に口を挟んできた。
「草原は見晴らしがいいでしょうに、どうやって近くにいたの?」
「2人は一緒に河原を歩いて行動していたので土手の上から見つからないように付いて行ったんです」
「なるほど」
「えへへっ」
今回は失敗しなかったと言わんばかりに、ココが得意げに笑う。
「土手の上にはあがって来なかったの?」
・・・・・・
私の質問に二人は黙ってしまった。
「ココ、」
何かあったのだろうとココに視線を合わせ尋ねる。
「そのですねぇ・・・・・・途中ユウが、その・・・・・・用を足しに土手の上にあがってきたんです」
「見つかったの?」
「見つかりはしなかったです。側に生えていた木の裏に隠れてたから・・・・・・ただ、隠れている間、側で用を足してたものだから」
「もう!とても恥ずかしい思いをしました!」
アデリナがその時の事を思い出したのか、たまらず声を上げた。
「何とかならないんですか?ライリー様。近くにいるとやりにくいです」
「何とかといっても・・・・・・あなた達、弓は使えないの?アデリナの目があれば彼の近くにモンスターが寄って来たら気付けるでしょう?そしたら弓で遠くから攻撃すればいいわ」
2人は顔を見合わせ、首を横に振った。
「弓は扱った事がありません。それにライリー様じゃあるまいし遠くのモンスターに当てるなんて無理です」
「当てる必要はないわ。モンスターを引き付けるために側に落とすだけでいいんだから」
「それって、私達がおとりになるってことですか?」
私は二人に微笑んだ。
「大丈夫よ。今はスライムぐらいしかいないんだから」
「スライムしかいないんだったら、私達が守る必要あるんですかね?いくらなんでも2度もスライムにやられるとは思えないんですけど」
「それにエルフも付いてますし。今日は彼女がピッタリ側にいて守ってあげているように見えました」
二人は昨日スライムとの戦いで大泣きしたことをもう忘れてしまったのだろうか?
「スライムだからといって、あなどってはダメよ」
「それはっ!・・・・・・あんなに沢山いなければ、」
「そうねぇ、エルフも注意しているのなら大丈夫かもしれないわね。いいわ。次からは少し離れて監視しなさい」
「ハイ」
「では、また馬車で迎えにあがります」
私とアンスが馬車から降り教会の門の前に立つと、エリアスはそう言い残して帰って行った。
「今日は思った以上に早く終わらせることが出来たわ」
日は暮れ始めていたが、明るいうちに教会に帰ってくることが出来た。
「あなたが頑張ってくれたおかげよ。疲れたでしょう」
私はアンスの肩に手を置いてねぎらった。
「いえっ、だいじょうぶです」
「私はもうクタクタよ。早くシャワーを浴びて休みたいわ。貴方も浴びるでしょう?一緒に行きましょう」
「え、あっ・・・・・・」
教会には個人個人にシャワー室は与えられていない。共同の小さな浴室を交代で使用している。
肩に乗せた手をそのままに浴室に連れて行こうとするも、アンスがまた遠慮して首を振る。
それでも彼女を少し強引に連れて門をくぐろうとしたところで、後ろから呼び止める声がした。
「ライリー様」
振り返るとココとアデリナが監視の任務を終えたのか帰ってくるところだった。
「あなた達も今帰ってきたところ?」
「はい。ユウが宿に戻ったので私達も帰ってきました」
「そう、じゃあ先に報告を済ませましょうか。アンス、あなたはもう休んでいていいわよ」
「はい、」
私は報告を受けるため部屋へ向かった。
「それで、今日はどうだった?」
部屋に1つしかない椅子に腰かけ、二人に向き合う。
アデリナはいつも通り姿勢を正して立っている。その隣でココも今日は姿勢を正して立っていた。まだ気は緩んでいないようだ。
「今日、ユウは河原で獣を狩っていました。」
「獣を?モンスターではなく?詳しく聞きたいわ。朝から順を追って話して」
「はい。では・・・・・・朝、ライリー様が出発してすぐに、ユウとチェアリーが教会にやってきました。シスターの話によるとエルフの彼女の方は、ほぼ毎日お祈りする為に教会へ顔を出しているようです」
「待っていれば向こうからやって来てくれるのだから、監視しやすいわね。それで?」
「ユウの方はライリー様を探していたようですよ」
「私を?」
「はい。ユウは”お世話になった”と言っていたので、ライリー様にお礼をしに来たのではないでしょうか?」
(そういえば、お金を返しに来るとか言っていたわね)
昨日は一日スライムの大群を相手にしていたので彼を監視することは出来なかった。私達が戦っている間、たった1日でまとまったお金を得たのだろうか?
「今は手が離せないから、しばらく彼に会う事は出来ないわ。それと、私が教会にいるのが街の人達に知れ渡ると面倒だわ。シスター達には私の名前は出さないように伝えておいて」
「分かりました」
「ライリー様は有名人ですもんね」
ココは帰ってきた安心感からか、その口ぶりにいつもの調子が出てきた。
「それから?」
私はココの気が緩まないように、落ち着いた声で話の続きを促した。
「それから、教会を出た後二人でマルシェに寄って買い物をし、一昨日と同じように街の南を流れる川に行きスライムを探していました」
「今回は近くで見守ってましたよ」
ココは咎められるのではないかと思ったのか、私が聞く前に口を挟んできた。
「草原は見晴らしがいいでしょうに、どうやって近くにいたの?」
「2人は一緒に河原を歩いて行動していたので土手の上から見つからないように付いて行ったんです」
「なるほど」
「えへへっ」
今回は失敗しなかったと言わんばかりに、ココが得意げに笑う。
「土手の上にはあがって来なかったの?」
・・・・・・
私の質問に二人は黙ってしまった。
「ココ、」
何かあったのだろうとココに視線を合わせ尋ねる。
「そのですねぇ・・・・・・途中ユウが、その・・・・・・用を足しに土手の上にあがってきたんです」
「見つかったの?」
「見つかりはしなかったです。側に生えていた木の裏に隠れてたから・・・・・・ただ、隠れている間、側で用を足してたものだから」
「もう!とても恥ずかしい思いをしました!」
アデリナがその時の事を思い出したのか、たまらず声を上げた。
「何とかならないんですか?ライリー様。近くにいるとやりにくいです」
「何とかといっても・・・・・・あなた達、弓は使えないの?アデリナの目があれば彼の近くにモンスターが寄って来たら気付けるでしょう?そしたら弓で遠くから攻撃すればいいわ」
2人は顔を見合わせ、首を横に振った。
「弓は扱った事がありません。それにライリー様じゃあるまいし遠くのモンスターに当てるなんて無理です」
「当てる必要はないわ。モンスターを引き付けるために側に落とすだけでいいんだから」
「それって、私達がおとりになるってことですか?」
私は二人に微笑んだ。
「大丈夫よ。今はスライムぐらいしかいないんだから」
「スライムしかいないんだったら、私達が守る必要あるんですかね?いくらなんでも2度もスライムにやられるとは思えないんですけど」
「それにエルフも付いてますし。今日は彼女がピッタリ側にいて守ってあげているように見えました」
二人は昨日スライムとの戦いで大泣きしたことをもう忘れてしまったのだろうか?
「スライムだからといって、あなどってはダメよ」
「それはっ!・・・・・・あんなに沢山いなければ、」
「そうねぇ、エルフも注意しているのなら大丈夫かもしれないわね。いいわ。次からは少し離れて監視しなさい」
「ハイ」
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