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食堂には生徒がまばらでした。どの子も食事に来たというよりは、おしゃべりに来ているようです。みんな時間を持て余しているのでしょう。
「メイベールさん」
呼びかけてきたのはアイラです。
「ああ、アイラさんも今、朝ごはん?」
フフッと彼女が笑いました。
「私はお昼ごはんです」
どうやら寝ている内にもうお昼になっていたようです。
紅茶とサンドイッチを受け取り、席に着きました。
「今まで寝てたんですか?」
「うん……朝早くに起きたんだけど、二度寝しちゃって」
「私も今日は少し早起きして外を見てたんですよ。フォグウォーカーが見れないかなって」
「へー、そうなんだ」
サンドイッチを頬張ります。具はレタスにチーズ、味付けはチャツネが塗られていました。果物をペーストにして香辛料やハーブで煮込まれたチャツネは冬の保存食です。
アイラも胸の前で手を握り、祈りのポーズをとってから食べ始めました。
「で、見れたの?」
「いいえ、ガードの騒ぎがあったから、流石に現れなかったみたいです」
「ふーん、もしかしたら昨日帰省した生徒の中にフォグウォーカーがいたんじゃないかな?」
「なるほど……メイベールさんはまだ犯人捜ししてるんですね」
「うん、気になっちゃって。ねえ、アイラさんはフォグウォーカーの正体って誰だと思う?」
「そうですねぇ……案外本当に幽霊なんじゃないかって思うんです。だってお兄さんの怖がりようは嘘ではない気がするので」
「確かに」
「お兄さん、夜は寝られないみたいで嫌な夢も見ているみたいなんですよ」
「そっかー、アタシも今朝は変な夢を見たなぁ……確か空を飛んでいる夢だったと思う」
アイラがフフフと笑います。
彼女は制服のポケットから手帳を取り出しました。
「夢占いしてあげましょうか?私、図書室で占いの本を読んでメモしたんです」
「なにそれ、面白そう」
「じゃあ、占ってあげますね」
手帳をパラパラとめくります。
「飛んでいる時、どんな気持ちでした?楽しかった?それとも苦しくて逃げている感じ?」
「楽しかった……と、思う。たぶん。夢って起きるとすぐに忘れちゃうから」
「楽しく飛び回っていたのなら、今のメイベールさんは上昇志向が強いですね。何か目標に向かって頑張っているんだと思います」
「当たってるかも。明日、お祭りでボムを撃ちあげないといけないからさぁ」
朝日はサンドイッチを両手で挟み魔力操作で温め始めました。やっぱりチーズはとろけた方がおいしい。
「他に覚えている事は?」
「うーん、たぶんアタシ、猫になってたと思うんだよねぇ。飛んでいる間ずっと足をバタバタさせて空中で猫かきしてたんじゃないかな?」
「猫ですか?フフ。えーっと……猫は女性の象徴とされています。夢で現れるのは男性なら女性トラブル、女性が見るとライバルの出現を意味します」
「ライバルかぁ……」
朝日は当たっている気がしました。今朝の広間の件はメイベールお嬢様がエミリーの存在に動揺して前に出てしまったハズだから。そして自分自身にも当てはまっている気がします。目の前でニコニコしているアイラに妹の座が奪われているようで最近嫉妬しているのです。
温まったサンドイッチをがぶりと頬張り、ゴクリと飲み込みました。
「猫には別の意味もあって、もし飼い猫など可愛がっていた猫が出て来たのなら、危険が迫っている事を知らせてくれているのかもしれませんよ」
「うーん、自分が猫になってたから、知ってる猫かどうか分からないな」
「他に覚えている事はありますか?」
「そうだなぁ、隣に女の子が居た気がする。姿は見えないんだけど、なんかいる感じがして、なぜか女の子だと分かるの」
「女の子が出てくるのは運気アップや願いが叶う予兆だったり、自分の能力が開花する暗示だそうですよ」
「なーんだ、いい夢だったのか。よかった」
朝日は紅茶をすすりました。
「メイベールさん」
呼びかけてきたのはアイラです。
「ああ、アイラさんも今、朝ごはん?」
フフッと彼女が笑いました。
「私はお昼ごはんです」
どうやら寝ている内にもうお昼になっていたようです。
紅茶とサンドイッチを受け取り、席に着きました。
「今まで寝てたんですか?」
「うん……朝早くに起きたんだけど、二度寝しちゃって」
「私も今日は少し早起きして外を見てたんですよ。フォグウォーカーが見れないかなって」
「へー、そうなんだ」
サンドイッチを頬張ります。具はレタスにチーズ、味付けはチャツネが塗られていました。果物をペーストにして香辛料やハーブで煮込まれたチャツネは冬の保存食です。
アイラも胸の前で手を握り、祈りのポーズをとってから食べ始めました。
「で、見れたの?」
「いいえ、ガードの騒ぎがあったから、流石に現れなかったみたいです」
「ふーん、もしかしたら昨日帰省した生徒の中にフォグウォーカーがいたんじゃないかな?」
「なるほど……メイベールさんはまだ犯人捜ししてるんですね」
「うん、気になっちゃって。ねえ、アイラさんはフォグウォーカーの正体って誰だと思う?」
「そうですねぇ……案外本当に幽霊なんじゃないかって思うんです。だってお兄さんの怖がりようは嘘ではない気がするので」
「確かに」
「お兄さん、夜は寝られないみたいで嫌な夢も見ているみたいなんですよ」
「そっかー、アタシも今朝は変な夢を見たなぁ……確か空を飛んでいる夢だったと思う」
アイラがフフフと笑います。
彼女は制服のポケットから手帳を取り出しました。
「夢占いしてあげましょうか?私、図書室で占いの本を読んでメモしたんです」
「なにそれ、面白そう」
「じゃあ、占ってあげますね」
手帳をパラパラとめくります。
「飛んでいる時、どんな気持ちでした?楽しかった?それとも苦しくて逃げている感じ?」
「楽しかった……と、思う。たぶん。夢って起きるとすぐに忘れちゃうから」
「楽しく飛び回っていたのなら、今のメイベールさんは上昇志向が強いですね。何か目標に向かって頑張っているんだと思います」
「当たってるかも。明日、お祭りでボムを撃ちあげないといけないからさぁ」
朝日はサンドイッチを両手で挟み魔力操作で温め始めました。やっぱりチーズはとろけた方がおいしい。
「他に覚えている事は?」
「うーん、たぶんアタシ、猫になってたと思うんだよねぇ。飛んでいる間ずっと足をバタバタさせて空中で猫かきしてたんじゃないかな?」
「猫ですか?フフ。えーっと……猫は女性の象徴とされています。夢で現れるのは男性なら女性トラブル、女性が見るとライバルの出現を意味します」
「ライバルかぁ……」
朝日は当たっている気がしました。今朝の広間の件はメイベールお嬢様がエミリーの存在に動揺して前に出てしまったハズだから。そして自分自身にも当てはまっている気がします。目の前でニコニコしているアイラに妹の座が奪われているようで最近嫉妬しているのです。
温まったサンドイッチをがぶりと頬張り、ゴクリと飲み込みました。
「猫には別の意味もあって、もし飼い猫など可愛がっていた猫が出て来たのなら、危険が迫っている事を知らせてくれているのかもしれませんよ」
「うーん、自分が猫になってたから、知ってる猫かどうか分からないな」
「他に覚えている事はありますか?」
「そうだなぁ、隣に女の子が居た気がする。姿は見えないんだけど、なんかいる感じがして、なぜか女の子だと分かるの」
「女の子が出てくるのは運気アップや願いが叶う予兆だったり、自分の能力が開花する暗示だそうですよ」
「なーんだ、いい夢だったのか。よかった」
朝日は紅茶をすすりました。
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