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カップにアイスを山盛りすくおうとすると、明星がじっと見つめているのに気が付きました。
「おい、」
「わかってるよぉ……」
遠慮して朝日はひとすくいでやめました。
「おや、随分と遠慮深いんだねぇ、ハハハ!」
笑われるくらいならやっぱり大盛にすればよかったと思いつつ、10と刻印されたチップを払います。
「外のテラスで食べていいから。食べ終わったらカップを返しておくれ」
マリーさんがおつりを差し出します。その手から1と刻印されたチップだけ摘まみ、言いました。
「あと、2ついただきますわ」
「そうかい?ありがとね。でも賢い生徒はカップ山盛りにして分けて食べるんだけどねぇ、アハハ!」
(おにぃ!)
朝日が睨むと明星はそっぽを向いてしまいました。
アイラにもカップを手渡します。
「アイラさんは好きなだけすくってもよろしくてよ」
「おごってもらっていいんですか?」
「構いませんわ。もともとこのチップはテオ様のモノですもの。一緒に楽しめた方が、使い道としていいじゃありませんか」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
3人はテラスに出てアイスを頬張りました。魔力を放出して疲れた体にバニラアイスの優しい甘みがしみわたります。
こうしてベンチに座り、友達と一緒に夕日を浴びながらアイスを食べるという経験は、中学をほとんど行かなかった朝日には新鮮なものでした。
「あの、メイベールさん。コレ」
アイラがポプリを渡してきました。
「アイスのお礼です。受け取ってください」
「いいの?」
「はい……えっと、お兄さんも良かったら、どうぞ。あっ!あまりこういうの興味ないかもしれないけど、その……枕元に置いたらゆっくり眠れると思います……はい」
「ありがとう。使わせてもらうよ」
テオが笑いかけるとアイラは顔を真っ赤にして、うつむいてしまいました。
(ムー……)
なんだかテオにプレゼントを渡すダシにされた気がします。
(あ、)
朝日は気付きました。マリーさんのお店で買ったアイテムを意中の相手に渡すのは、重要なイベントであることに。邪魔者は二人の間でアイスを頬張っている自分なのだと。
今度はテオがポケットから何か取り出して言います。
「先を越されたな。コレ買ったんだ。あげるよ」
テオが持っているのはネクタイピンの様です。ワンポイントに三日月のモチーフが施されたシンプルなデザインをしています。
この学校の制服は男女共にチェック柄のネクタイを締めるのが決まりになっているので、明星にしては気が利くなと朝日は思いました。
「いいんですか⁉うれしい」
アイラは言葉通り嬉しそうにピンを受け取ると、さっそくネクタイに付けて見せ、はにかみました。
(完全にアタシ、邪魔者だ……)
ベンチの真ん中に座っている朝日はプレゼント交換を目の前でまざまざと見せつけられているのです。テオの優しい笑顔とアイラの照れ笑いに挟まれ、なんとも言えない気分になりました。
我慢できず立ち上がって、夕日に向かい『バカヤロー』とベタなセリフを叫んでも、今なら許される気がします。
無心でアイスを食べていた姿が可笑しかったのか、テオがフッと笑いました。
「お前にはコレだ」
取り出したのは真っ赤なリボンです。
「その髪、長くて邪魔じゃないか?結んでやるよ」
明星は朝日の後ろに立つと、髪をまとめてリボンで結ってくれました。懐かしい記憶が蘇ります。小さかった頃、まだ自分では上手く髪を結えなかった朝日は、こうして兄に結んでもらっていたのです。
懐かしい記憶と、アイラに見られている恥ずかしさと、明星がまた自分の髪と同じ色のプレゼントをくれたうれしさが混ざり合い、朝日の顔は夕日の様に真っ赤です。
学校生活の初日から色々ありましたが、なんとか朝日は乗り切ったのでした。
「おい、」
「わかってるよぉ……」
遠慮して朝日はひとすくいでやめました。
「おや、随分と遠慮深いんだねぇ、ハハハ!」
笑われるくらいならやっぱり大盛にすればよかったと思いつつ、10と刻印されたチップを払います。
「外のテラスで食べていいから。食べ終わったらカップを返しておくれ」
マリーさんがおつりを差し出します。その手から1と刻印されたチップだけ摘まみ、言いました。
「あと、2ついただきますわ」
「そうかい?ありがとね。でも賢い生徒はカップ山盛りにして分けて食べるんだけどねぇ、アハハ!」
(おにぃ!)
朝日が睨むと明星はそっぽを向いてしまいました。
アイラにもカップを手渡します。
「アイラさんは好きなだけすくってもよろしくてよ」
「おごってもらっていいんですか?」
「構いませんわ。もともとこのチップはテオ様のモノですもの。一緒に楽しめた方が、使い道としていいじゃありませんか」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
3人はテラスに出てアイスを頬張りました。魔力を放出して疲れた体にバニラアイスの優しい甘みがしみわたります。
こうしてベンチに座り、友達と一緒に夕日を浴びながらアイスを食べるという経験は、中学をほとんど行かなかった朝日には新鮮なものでした。
「あの、メイベールさん。コレ」
アイラがポプリを渡してきました。
「アイスのお礼です。受け取ってください」
「いいの?」
「はい……えっと、お兄さんも良かったら、どうぞ。あっ!あまりこういうの興味ないかもしれないけど、その……枕元に置いたらゆっくり眠れると思います……はい」
「ありがとう。使わせてもらうよ」
テオが笑いかけるとアイラは顔を真っ赤にして、うつむいてしまいました。
(ムー……)
なんだかテオにプレゼントを渡すダシにされた気がします。
(あ、)
朝日は気付きました。マリーさんのお店で買ったアイテムを意中の相手に渡すのは、重要なイベントであることに。邪魔者は二人の間でアイスを頬張っている自分なのだと。
今度はテオがポケットから何か取り出して言います。
「先を越されたな。コレ買ったんだ。あげるよ」
テオが持っているのはネクタイピンの様です。ワンポイントに三日月のモチーフが施されたシンプルなデザインをしています。
この学校の制服は男女共にチェック柄のネクタイを締めるのが決まりになっているので、明星にしては気が利くなと朝日は思いました。
「いいんですか⁉うれしい」
アイラは言葉通り嬉しそうにピンを受け取ると、さっそくネクタイに付けて見せ、はにかみました。
(完全にアタシ、邪魔者だ……)
ベンチの真ん中に座っている朝日はプレゼント交換を目の前でまざまざと見せつけられているのです。テオの優しい笑顔とアイラの照れ笑いに挟まれ、なんとも言えない気分になりました。
我慢できず立ち上がって、夕日に向かい『バカヤロー』とベタなセリフを叫んでも、今なら許される気がします。
無心でアイスを食べていた姿が可笑しかったのか、テオがフッと笑いました。
「お前にはコレだ」
取り出したのは真っ赤なリボンです。
「その髪、長くて邪魔じゃないか?結んでやるよ」
明星は朝日の後ろに立つと、髪をまとめてリボンで結ってくれました。懐かしい記憶が蘇ります。小さかった頃、まだ自分では上手く髪を結えなかった朝日は、こうして兄に結んでもらっていたのです。
懐かしい記憶と、アイラに見られている恥ずかしさと、明星がまた自分の髪と同じ色のプレゼントをくれたうれしさが混ざり合い、朝日の顔は夕日の様に真っ赤です。
学校生活の初日から色々ありましたが、なんとか朝日は乗り切ったのでした。
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