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「テ~オ~」
怨念のこもったような声に振り向くと、そこにはジャスパーが立っていました。まるで密会の現場を見てしまったかのように、彼の表情は険しいものでした。
「おっ、お兄様⁉」
「二人とも見かけないと思って探してみれば!」
「違うんですっ、お兄様!これは」
テオがメイベールをかばうように前へ出て言いました。
「少しダンスに付き合ってもらっただけだ」
何もしていないと、テオは首を振ります。ジャスパーは、ハァと息を吐いて言いました。
「こんな所で踊らなくたって、中で踊ればいいだろう」
立ちふさがるテオを除け、ジャスパーはメイベールの手を取りました。
「今度は兄さんと踊ってくれないか?妹よ」
朝日にはアイラを探すという目的が残っています。断りたかったのですが、ジャスパーの目は拒否を許さない凄みがありました。
「……ハイ」
会場に戻ると音楽はスリーテンポの華麗なものへと変わっていました。ジャスパーが妹の手を引き、ダンスの中央へと進んでいきます。
銀髪に赤い瞳の兄妹。誰もがその容姿と、家の名を羨みます。周りで歓談していた貴族達は皆注目しました。どの貴族がどういう動きをしているのか注意を払っているので、二人に自然と道が空きます。踊っている人達でさえ、気を遣い距離を取りました。
天井に吊るされたシャンデリアのクリスタルは灯りを反射させ、まるで星が零れ落ちる様に煌めいています。その光を磨き上げられた大理石の床が受け止め、黄金に輝く絨毯の様です。こんな場所に自分なんかが立っていていいのだろうか?朝日は緊張していました。
ジャスパーが微笑んでから、滑るように一歩を踏み出します。メイベールの体もそれに合わせ付いて行きます。皆の注目を浴び、体はとても興奮いていました。前へ前へと足が出ていきます。それをなだめる様にジャスパーがリードしてくれました。
「緊張しているのかい?メイベール」
「え?ええ、少し」
「こうして踊っていると昔の事を思い出すよ。小さかったキミは僕を練習台にして、よく踊ったね」
「小さな頃なんて覚えていませんわ」
「本当かい?キミはステップを覚える為に、僕の足の甲に乗っていたんだよ?ひたすら僕が踊らされて、とても痛かったのを覚えている。今でもその時、踏まれてできた傷が残っているんだ。見せて上げようか?」
「ウソですわ!そんな酷い事、いたしません!」
「フフフ、」
どうやらジャスパーは緊張をほぐそうとしてくれたようです。けれど、子供の様にからかわれたと思い、メイベールの眉間にはシワが出来ました。
「表情が硬いよ。テオと踊っていた時は随分と楽しそうだったじゃないか」
ドキリとして少しステップが乱れました。すかさずジャスパーが手を引き、腰を支えサポートします。
「彼の事をどう思ってる?」
「……大切に思っています」
「そうか……でもお願いだから、この魔法学校にいる6年間は僕の妹でいてくれ」
彼の赤い瞳がメイベールを見据えます。
「わたくしはこれからも、ずっとジャスパーお兄様の妹です」
笑いかけると、兄は安心したように笑い返してくれました。
怨念のこもったような声に振り向くと、そこにはジャスパーが立っていました。まるで密会の現場を見てしまったかのように、彼の表情は険しいものでした。
「おっ、お兄様⁉」
「二人とも見かけないと思って探してみれば!」
「違うんですっ、お兄様!これは」
テオがメイベールをかばうように前へ出て言いました。
「少しダンスに付き合ってもらっただけだ」
何もしていないと、テオは首を振ります。ジャスパーは、ハァと息を吐いて言いました。
「こんな所で踊らなくたって、中で踊ればいいだろう」
立ちふさがるテオを除け、ジャスパーはメイベールの手を取りました。
「今度は兄さんと踊ってくれないか?妹よ」
朝日にはアイラを探すという目的が残っています。断りたかったのですが、ジャスパーの目は拒否を許さない凄みがありました。
「……ハイ」
会場に戻ると音楽はスリーテンポの華麗なものへと変わっていました。ジャスパーが妹の手を引き、ダンスの中央へと進んでいきます。
銀髪に赤い瞳の兄妹。誰もがその容姿と、家の名を羨みます。周りで歓談していた貴族達は皆注目しました。どの貴族がどういう動きをしているのか注意を払っているので、二人に自然と道が空きます。踊っている人達でさえ、気を遣い距離を取りました。
天井に吊るされたシャンデリアのクリスタルは灯りを反射させ、まるで星が零れ落ちる様に煌めいています。その光を磨き上げられた大理石の床が受け止め、黄金に輝く絨毯の様です。こんな場所に自分なんかが立っていていいのだろうか?朝日は緊張していました。
ジャスパーが微笑んでから、滑るように一歩を踏み出します。メイベールの体もそれに合わせ付いて行きます。皆の注目を浴び、体はとても興奮いていました。前へ前へと足が出ていきます。それをなだめる様にジャスパーがリードしてくれました。
「緊張しているのかい?メイベール」
「え?ええ、少し」
「こうして踊っていると昔の事を思い出すよ。小さかったキミは僕を練習台にして、よく踊ったね」
「小さな頃なんて覚えていませんわ」
「本当かい?キミはステップを覚える為に、僕の足の甲に乗っていたんだよ?ひたすら僕が踊らされて、とても痛かったのを覚えている。今でもその時、踏まれてできた傷が残っているんだ。見せて上げようか?」
「ウソですわ!そんな酷い事、いたしません!」
「フフフ、」
どうやらジャスパーは緊張をほぐそうとしてくれたようです。けれど、子供の様にからかわれたと思い、メイベールの眉間にはシワが出来ました。
「表情が硬いよ。テオと踊っていた時は随分と楽しそうだったじゃないか」
ドキリとして少しステップが乱れました。すかさずジャスパーが手を引き、腰を支えサポートします。
「彼の事をどう思ってる?」
「……大切に思っています」
「そうか……でもお願いだから、この魔法学校にいる6年間は僕の妹でいてくれ」
彼の赤い瞳がメイベールを見据えます。
「わたくしはこれからも、ずっとジャスパーお兄様の妹です」
笑いかけると、兄は安心したように笑い返してくれました。
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