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ふーみんが自分はどこもおかしくないという様に、すまして言う。
「ねえ、義龍も強かったのになんで二つ名が残って無いの?それに今川が凄いと言っても結局は信長に負けたんでしょ?」
「うん。負けた。織田と今川が激突した合戦の地である桶狭間はその地名が示す通り、当時は山と山に挟まれた狭間で細い道があるだけの場所だったらしい。尾張へと攻める上がる今川の大軍も一度には通れない場所だよ。そこを信長は突いた。まともに戦っていては勝負にならなかっただろうからね。義元の方も大大名というおごりがあって油断したのかもしれない。この桶狭間での勝利に勢いづいた信長は尾張を平定していくんだ」
パイセンが言った。
「残念だよなぁ」
アタシは応えた。
「そうですねぇ」
歴史が苦手なふーみんは分かっていない。
「え?なにが?」
「ふーみんには順を追って説明してあげよう。まず桶狭間の戦いが1560年の出来事だよ。勝利した信長は今川から独立した徳川家康と同盟を組んだ。この事によって東から攻めて来る敵を家康が引き受けることになり、今川の脅威がなくなった信長はよいよ美濃へ侵攻開始したんだ。ここで行く手を阻んだのは美濃三人衆の筆頭、稲葉良通(いなばよしみち)」
「良通いたんだ。すっかり忘れてたわ」
「いたよっ!良通は凄かったんだぞ!西尾張を拠点としていた信長は、まず北西、西美濃へと侵攻した。そこに居たのが良通達、美濃三人衆だよ。南からは織田家、西からは浅井家が攻めて来る重要な場所、西美濃一体を守っていたんだ。最前線と言っていい場所で、彼は戦に出れば負けなしと言われていた」
「良通そんなに強かったの⁉」
「強かったのは確かだと思うよ。ただ、負けなしと言っているところがミソさ。全ての戦に勝ったとは言っていないんだから。生き残れば負けではないという考えなんでしょ。けど、その生き様が推せる!お前は銀河英○伝説、不敗の○ンか!」
「は?」
「風香ちゃん、アニメの話だから」
「アンタ、真面目な話で唐突にネタ挟むのやめてよね。こっちはどこまで本当か分からないんだから」
「それは申し訳ない。ここからは真面目でいくよ。」
区切りを付ける様に咳ばらいを1つしてからアタシは話し始めた。
「1560年は信長軍が立て続けに美濃へ侵攻した年だよ。勢いに乗っていたからね。大きな戦いは6月の安八(あんぱち)での戦いと8月の西美濃への侵攻。ふーみんなら分かると思うけど、この頃の戦というのは農業に密接にかかわっていたんだ。下級兵士の多くは農民だからね。稲を植えるのに忙しい春と、収穫に忙しい秋は戦を避ける傾向にある。冬は雪が降れば動けなくなるし、」
「あぁ、だから夏なのね」
「そう。もちろん、お殿様が『いくさじゃ!』って号令をかければいつでも行くしかないだろうけど、農民の不満は高まって一揆が起こるよ。ファミ・」
ネタを挟みそうになったアタシは無理に言葉を飲み込んだ。
「んっんうん!・・・・・・信長はね、農民に頼らず戦を専門にする兵を整えたそうだよ。当時、大名の役目は領地を守ることに主眼が置かれていたし、隣国へ攻めて領土を拡大することは農地の拡大を目指したものといえる。けど信長の場合、尾張を守るとか拡大するというのは些細な事だったのかもしれない。その目は日本全体の制覇を見据えていたんだろうね。まさしく信長のやぼ・」
またネタを挟みそうになったアタシは無理に言葉を飲み込んだ。
アタシが言葉を飲み込んでいることが分かったふーみんが怒る。
「もう!いちいち気になるわねッ!アンタの好きに話せばいいじゃない」
ダメだと言うから気を遣ってあげたのに。勝っ手だなぁ、これだからツンデレは。
「では、お言葉に甘えて好きにさせてもらいましょうか。うん、信長が自分の領地にこだわらなかったというのは、住んでいた居城にも現れているよ。最初の居城が那古野(なごや)城、次に清州城、その次に小牧山城、次がこの岐阜の稲葉山城。当時は稲葉と呼ばれていたけど信長が岐阜城に改めた。名前を改めるというのは武士にとって特別な事だから、それだけこの岐阜城に強い思い入れがあった事がうかがえるね。その岐阜城から今度はお隣の滋賀県、近江に安土城を建てた。大名が領地内で移り住む事はあっても、手に入れた領土に移り住んでいくというのは珍しい。信長がどうしてこれほど侵攻に成功したのかと言うと、農業と兵を切り離して専業武士を徐々に整えたのが一つの理由と言われている。その改革を側で見ていた秀吉は兵農分離を進め、更に太閤検地を行ったんだと思うよ」
「あー、その辺りの話ってよく分からないかも。」
「戦国時代は華々しい戦の話がメインでその土台にある平民には目が向かないからね。土地にはそれまで様々な利権が複合的に付いていたんだよ。歴史の授業で習う荘園制(しょうえんせい)と呼ばれるものさ。公家に寺院、力を持った農民や豪族、あらゆる人がそれぞれに自己主張していたんだ。発言力の大きい人が言いたいように言うのはいつの時代も変わらないね。そんな状態では争いはいっこうに収まらないし、何も決められない。それをシンプルにしたのが秀吉だよ。耕している農民の権利を認め、その年貢を徴収するのはその領土を収める大名のみとしたんだ。この事によって農民は農業に専念でき生産性は上がって、武士による支配階級は確立した。兵農分離による荘園制の終わりは、中世戦国時代の終わりと近世の始まりと言われている」
「なんとなく、分かったような?」
「良かったじゃん。分かった気分になったのなら、少しは興味が持てた証だよ。」
ふーみんが自分はどこもおかしくないという様に、すまして言う。
「ねえ、義龍も強かったのになんで二つ名が残って無いの?それに今川が凄いと言っても結局は信長に負けたんでしょ?」
「うん。負けた。織田と今川が激突した合戦の地である桶狭間はその地名が示す通り、当時は山と山に挟まれた狭間で細い道があるだけの場所だったらしい。尾張へと攻める上がる今川の大軍も一度には通れない場所だよ。そこを信長は突いた。まともに戦っていては勝負にならなかっただろうからね。義元の方も大大名というおごりがあって油断したのかもしれない。この桶狭間での勝利に勢いづいた信長は尾張を平定していくんだ」
パイセンが言った。
「残念だよなぁ」
アタシは応えた。
「そうですねぇ」
歴史が苦手なふーみんは分かっていない。
「え?なにが?」
「ふーみんには順を追って説明してあげよう。まず桶狭間の戦いが1560年の出来事だよ。勝利した信長は今川から独立した徳川家康と同盟を組んだ。この事によって東から攻めて来る敵を家康が引き受けることになり、今川の脅威がなくなった信長はよいよ美濃へ侵攻開始したんだ。ここで行く手を阻んだのは美濃三人衆の筆頭、稲葉良通(いなばよしみち)」
「良通いたんだ。すっかり忘れてたわ」
「いたよっ!良通は凄かったんだぞ!西尾張を拠点としていた信長は、まず北西、西美濃へと侵攻した。そこに居たのが良通達、美濃三人衆だよ。南からは織田家、西からは浅井家が攻めて来る重要な場所、西美濃一体を守っていたんだ。最前線と言っていい場所で、彼は戦に出れば負けなしと言われていた」
「良通そんなに強かったの⁉」
「強かったのは確かだと思うよ。ただ、負けなしと言っているところがミソさ。全ての戦に勝ったとは言っていないんだから。生き残れば負けではないという考えなんでしょ。けど、その生き様が推せる!お前は銀河英○伝説、不敗の○ンか!」
「は?」
「風香ちゃん、アニメの話だから」
「アンタ、真面目な話で唐突にネタ挟むのやめてよね。こっちはどこまで本当か分からないんだから」
「それは申し訳ない。ここからは真面目でいくよ。」
区切りを付ける様に咳ばらいを1つしてからアタシは話し始めた。
「1560年は信長軍が立て続けに美濃へ侵攻した年だよ。勢いに乗っていたからね。大きな戦いは6月の安八(あんぱち)での戦いと8月の西美濃への侵攻。ふーみんなら分かると思うけど、この頃の戦というのは農業に密接にかかわっていたんだ。下級兵士の多くは農民だからね。稲を植えるのに忙しい春と、収穫に忙しい秋は戦を避ける傾向にある。冬は雪が降れば動けなくなるし、」
「あぁ、だから夏なのね」
「そう。もちろん、お殿様が『いくさじゃ!』って号令をかければいつでも行くしかないだろうけど、農民の不満は高まって一揆が起こるよ。ファミ・」
ネタを挟みそうになったアタシは無理に言葉を飲み込んだ。
「んっんうん!・・・・・・信長はね、農民に頼らず戦を専門にする兵を整えたそうだよ。当時、大名の役目は領地を守ることに主眼が置かれていたし、隣国へ攻めて領土を拡大することは農地の拡大を目指したものといえる。けど信長の場合、尾張を守るとか拡大するというのは些細な事だったのかもしれない。その目は日本全体の制覇を見据えていたんだろうね。まさしく信長のやぼ・」
またネタを挟みそうになったアタシは無理に言葉を飲み込んだ。
アタシが言葉を飲み込んでいることが分かったふーみんが怒る。
「もう!いちいち気になるわねッ!アンタの好きに話せばいいじゃない」
ダメだと言うから気を遣ってあげたのに。勝っ手だなぁ、これだからツンデレは。
「では、お言葉に甘えて好きにさせてもらいましょうか。うん、信長が自分の領地にこだわらなかったというのは、住んでいた居城にも現れているよ。最初の居城が那古野(なごや)城、次に清州城、その次に小牧山城、次がこの岐阜の稲葉山城。当時は稲葉と呼ばれていたけど信長が岐阜城に改めた。名前を改めるというのは武士にとって特別な事だから、それだけこの岐阜城に強い思い入れがあった事がうかがえるね。その岐阜城から今度はお隣の滋賀県、近江に安土城を建てた。大名が領地内で移り住む事はあっても、手に入れた領土に移り住んでいくというのは珍しい。信長がどうしてこれほど侵攻に成功したのかと言うと、農業と兵を切り離して専業武士を徐々に整えたのが一つの理由と言われている。その改革を側で見ていた秀吉は兵農分離を進め、更に太閤検地を行ったんだと思うよ」
「あー、その辺りの話ってよく分からないかも。」
「戦国時代は華々しい戦の話がメインでその土台にある平民には目が向かないからね。土地にはそれまで様々な利権が複合的に付いていたんだよ。歴史の授業で習う荘園制(しょうえんせい)と呼ばれるものさ。公家に寺院、力を持った農民や豪族、あらゆる人がそれぞれに自己主張していたんだ。発言力の大きい人が言いたいように言うのはいつの時代も変わらないね。そんな状態では争いはいっこうに収まらないし、何も決められない。それをシンプルにしたのが秀吉だよ。耕している農民の権利を認め、その年貢を徴収するのはその領土を収める大名のみとしたんだ。この事によって農民は農業に専念でき生産性は上がって、武士による支配階級は確立した。兵農分離による荘園制の終わりは、中世戦国時代の終わりと近世の始まりと言われている」
「なんとなく、分かったような?」
「良かったじゃん。分かった気分になったのなら、少しは興味が持てた証だよ。」
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