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「それで、長良川の戦いってどうなったの?」
「聞きたいの?」
かいちょは足を速めてスタスタ逃げていく。
「そりゃあ、あれだけ聞かされたんだから結末が気になるじゃない」
「じゃあ聞かせてあげよう」
と言いつつ、アタシもかいちょを追ってスタスタ歩いた。
「あ、ちょっと!待ちなさいよっ」
追いかけてきたふーみんに肩をつかまれ、簡単に捕まってしまった。アタシはピタリと止まり振り返って言った。
「討ち取られた~ぁ」
「はぁ?」
「敗走する敵というのはね、背中を向けていて一番仕留めやすいんだ。武器を構え向き合って戦っていれば、お互い必死だからそんな簡単に切り込めないものさ。一度兵が逃げ出すと、恐怖は連鎖する。軍の士気は落ちて一気に総崩れになるよ。道三軍は地形こそ有利に立ってはいたけど、数で圧倒する高政軍に押し負けていった。恐怖だっただろうね。川の向こうから次々に押し寄せる敵、その中央には遠目でもよく分かる巨人が進撃して来るんだから」
お菓子を分け合っていたチカ丸とはなっちの方をチラリと見る。
意図を察した相棒が右手でドン!っと胸を叩き、心臓を捧げた。チカ丸も何をしているか分かったらしく、同じポーズをとる。
(ナイス!)
彼女らに向かって言った。
「おそらく地獄を見てきた者達だ。面構えが違う」
「は?」
「ただのごっこだよ」
アニメのネタを知らないふーみんはいつもの様に訳が分からないといった顔をした。
「ふーみんは殿(しんがり)という言葉を知ってるかな?」
「しんがり?」
「負け戦の時は大将を逃がすため、忠臣が殿(しんがり)をつとめる事がある。最後尾の盾というか、大将を逃がすためのおとりというか、『ここは任せて先に行け!』って格好つける人だよ。殿はね、おとりだから死亡率が非常に高くなる。死を覚悟して引き受ける役なんだ」
「道三、逃げちゃったの?」
「戦の状況が不利だと見て、道三はここから少し北に行った所にある城田寺城(きだいじじょう)に逃げ込もうとしたという説がある。中間地点には鷺山城(さぎやまじょう)という、道三が隠居していた城もあるんだけど、城田寺城をわざわざ目指そうとしたのはあそこは神社やお寺の集まる場所だから、住職に間に入ってもらって神仏にすがろうとしたのかもしれない。道三は生き延びる道を考えていたと思うよ。最後までね」
「結局、どうなったのよ?」
「殿は誰もやりたがらない役なんだ。ほぼ死にに行くようなものだから。よっぽど主に対して忠誠心がなければやりたがらない。道三にそんな人徳あると思う?家臣達から追い出されたような人なのに。アタシが道三軍なら大将を置いてさっさと逃げ出すよ。逃げ出す兵で総崩れになって川岸は突破される。あとは陣形なんて関係ない。乱戦の中、道三は捕まってその場で首を落とされたんだ」
「うわぁ」
「丁度、そこで。」アタシはふーみんの足元を指さした。
「ひゃっ!」
彼女はかわいい声を出して、飛びのいた。
「フフフッ、」
「アンタねぇ」ジト目でこちらを見てくる。
「これがリアリティというものさ。身近に感じたでしょ?もう道三の事は忘れないね」
「道三ってあんまり知らなかったけど、よく分かったわ」
「知らなかったのはしょうがない。だいたい信長の方がメインで話されるんだから」
「ところで、高政はどうしたのよ」
「長良川の戦いの後、高政は道三がしてなかった政(まつりごと)を積極的におこなったよ。道三の書いた書状は残っているのが少ないのに対し、高政は沢山書状が残っているから分かる。この時、ハンコも使っていたみたいだね。お役所仕事みたいに。大男だったけど意外にそういうマメな部分も持っていたのさ」
アタシはチラリと生徒会の仕事をこなすパイセンの方を見た。視線に気づいた彼女が言う。
「なんだ。アタシが真面目に仕事してちゃ意外か?」
「いやー、さすが高政を推しにしているだけに、強くて仕事も出来るなんて似ているなぁ、と思いまして」
「そうだろ?ハハハッ!」
「それで、長良川の戦いってどうなったの?」
「聞きたいの?」
かいちょは足を速めてスタスタ逃げていく。
「そりゃあ、あれだけ聞かされたんだから結末が気になるじゃない」
「じゃあ聞かせてあげよう」
と言いつつ、アタシもかいちょを追ってスタスタ歩いた。
「あ、ちょっと!待ちなさいよっ」
追いかけてきたふーみんに肩をつかまれ、簡単に捕まってしまった。アタシはピタリと止まり振り返って言った。
「討ち取られた~ぁ」
「はぁ?」
「敗走する敵というのはね、背中を向けていて一番仕留めやすいんだ。武器を構え向き合って戦っていれば、お互い必死だからそんな簡単に切り込めないものさ。一度兵が逃げ出すと、恐怖は連鎖する。軍の士気は落ちて一気に総崩れになるよ。道三軍は地形こそ有利に立ってはいたけど、数で圧倒する高政軍に押し負けていった。恐怖だっただろうね。川の向こうから次々に押し寄せる敵、その中央には遠目でもよく分かる巨人が進撃して来るんだから」
お菓子を分け合っていたチカ丸とはなっちの方をチラリと見る。
意図を察した相棒が右手でドン!っと胸を叩き、心臓を捧げた。チカ丸も何をしているか分かったらしく、同じポーズをとる。
(ナイス!)
彼女らに向かって言った。
「おそらく地獄を見てきた者達だ。面構えが違う」
「は?」
「ただのごっこだよ」
アニメのネタを知らないふーみんはいつもの様に訳が分からないといった顔をした。
「ふーみんは殿(しんがり)という言葉を知ってるかな?」
「しんがり?」
「負け戦の時は大将を逃がすため、忠臣が殿(しんがり)をつとめる事がある。最後尾の盾というか、大将を逃がすためのおとりというか、『ここは任せて先に行け!』って格好つける人だよ。殿はね、おとりだから死亡率が非常に高くなる。死を覚悟して引き受ける役なんだ」
「道三、逃げちゃったの?」
「戦の状況が不利だと見て、道三はここから少し北に行った所にある城田寺城(きだいじじょう)に逃げ込もうとしたという説がある。中間地点には鷺山城(さぎやまじょう)という、道三が隠居していた城もあるんだけど、城田寺城をわざわざ目指そうとしたのはあそこは神社やお寺の集まる場所だから、住職に間に入ってもらって神仏にすがろうとしたのかもしれない。道三は生き延びる道を考えていたと思うよ。最後までね」
「結局、どうなったのよ?」
「殿は誰もやりたがらない役なんだ。ほぼ死にに行くようなものだから。よっぽど主に対して忠誠心がなければやりたがらない。道三にそんな人徳あると思う?家臣達から追い出されたような人なのに。アタシが道三軍なら大将を置いてさっさと逃げ出すよ。逃げ出す兵で総崩れになって川岸は突破される。あとは陣形なんて関係ない。乱戦の中、道三は捕まってその場で首を落とされたんだ」
「うわぁ」
「丁度、そこで。」アタシはふーみんの足元を指さした。
「ひゃっ!」
彼女はかわいい声を出して、飛びのいた。
「フフフッ、」
「アンタねぇ」ジト目でこちらを見てくる。
「これがリアリティというものさ。身近に感じたでしょ?もう道三の事は忘れないね」
「道三ってあんまり知らなかったけど、よく分かったわ」
「知らなかったのはしょうがない。だいたい信長の方がメインで話されるんだから」
「ところで、高政はどうしたのよ」
「長良川の戦いの後、高政は道三がしてなかった政(まつりごと)を積極的におこなったよ。道三の書いた書状は残っているのが少ないのに対し、高政は沢山書状が残っているから分かる。この時、ハンコも使っていたみたいだね。お役所仕事みたいに。大男だったけど意外にそういうマメな部分も持っていたのさ」
アタシはチラリと生徒会の仕事をこなすパイセンの方を見た。視線に気づいた彼女が言う。
「なんだ。アタシが真面目に仕事してちゃ意外か?」
「いやー、さすが高政を推しにしているだけに、強くて仕事も出来るなんて似ているなぁ、と思いまして」
「そうだろ?ハハハッ!」
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