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「火種って?」
「深芳野(みよしの)は斎藤利政(さいとう としまさ)の側室となって間もなく、男の子を生んだんだ。その子が次期当主になる斎藤利尚(さいとう としひさ)なんだけど、どうも生まれるのが早すぎて土岐 頼芸(とき よりのり)の子じゃないかと言われていたらしい」
「うわぁ・・・・・・」ふーみんの顔がのっぺりする。
「昔だから確かな事は分からないんだけどね。残っている資料は後世になって書かれていたり、書いている人だって手を加えたかもしれないし、権力者の都合のいい様に書き直されているかもしれない。こればっかりは生んだ母親にしか分からないよ」
点検の手を止めてパイセンが言う。
「アタシの推しは斎藤利尚(さいとう としひさ)だ」
ふーみんが何か言いかけて、言葉を飲み込んだ。
「なんだ?伊吹山。その意外そうな目は」
「いえ、何でもありません。」
「利尚はな、大男だったんだぞ。いいよな。体はデカい方が」
「6尺5寸だと言われている」
「1尺はおよそ30,3㎝ですよ」と、かいちょが補足してくれた。
「えっと・・・180と・・・1,8㎝に、」ふーみんの目が空中をさまよう。
「一寸はおよそ3,03㎝です」
面倒くさくなった彼女の顔がこちらを向いた。
「196,95㎝ 四捨五入して、およそ197㎝だよ」
「大きいわねー」ふーみんの視線が上を向く。
「ちなみに母親である深芳野も六尺二寸あったと言われている」
ふーみんがまたこちらを見た。
「187,86㎝ およそ188㎝だね」
「デカいなー」
今度はパイセンが自分の背と比べる様に手のひらを頭の上にかざした。パイセンも十分女子にしては大きい方だけど、やはり視線は上を向いている。
「まあ、いくらデカくてもアタシは筋肉でねじ伏せてやるけどな!ハハハッ!」
豪快に笑い飛ばしたパイセンはまた点検作業に戻った。かいちょも喋りたそうにしていたけど、仕方なく戻っていく。
「笑い話があってね。利尚(としひさ)があまりに大きいものだから馬にまたがっても足が地面に届いたそうだよ」
「いや、それは流石に無いでしょ。いくら2m近い大男でも。それに、私バイクに乗ってるから分かるけど、またがって乗るのって意外に足が届かなくなるものよ?」
「ところが、この時代の日本の馬というのは小さかったそうだよ。ふーみんが今、想像したのは競馬場で走っている様なサラブレッドだと思うんだけど、武士がまたがっていたのはポニーぐらいの小型の馬だった様なんだ」
「ぽにー!」チカ丸が目を輝かせている。この娘は動物好きなのか?
「ちなみに白馬に乗って砂浜を颯爽と駆け抜けるイメージが強い将軍・徳川吉宗は馬に感心があったみたいでね、ペルシャの馬をわざわざ取り寄せていたそうだよ。こちらは大型だから、あのイメージは合っていると言える」
「うま、スキ」
「ペルシャは今のイランだよ。ドバイとはペルシャ湾を挟んで対岸だね。あの辺は元々遊牧民族だから馬とのかかわりが深いのかな?」
「ドバイ、競馬人気。」
「そうなんだね。岐阜にも笠松競馬という有名な競馬場があるよ。その競馬で走っているサラブレットは品種改良されて生み出された馬なんだ。走ることに特化している。だから乗る人、ジョッキーは小柄で体重が軽い人の方がいいそうだね。戦国時代の馬はと言うと、走る事より荷物を載せても大丈夫な頑丈さが求められたそうなんだ。重い甲冑をまとった武者姿の武将を乗せても耐えられる様に。この地域だと木曽馬という種類が飛騨や長野で育てられていたんだ。見た目はずんぐりとしていて、またがる高さも120㎝位だそうだから、小ぶりなのを選べば意外に足も届くかもしれない」
「そうねぇ、意外に」ふーみんがアタシの背と比較しているのか、頭を撫でてくる。
「おい!」
「アンタも、もう少し背があったらねぇ」
「先輩はそのままでもカワイイですよ」
ヒメまで撫でてこようとしたので、アタシは体を引いた。
「大男は戦場でも目立つから利尚(としひさ)が高身長なのは確かだと思うけど、深芳野(みよしの)の方は息子が大きいんだからきっと大きいはずみたいな、憶測が入ってるんじゃないかとアタシは思うけどね。だって母親まで大きいなんて如何にも取って付けたみたいじゃないか」
「アンタ自分が小さいからって、ソレひがみが入ってるでしょ」
「いやいや、中世の頃は日本だけじゃなく大体どこの国でも今より身長は10㎝程低い傾向にあったんだよ?女性なんてアタシぐらいの背が普通だったんだ」
「そうなの?」
「例えば信長は等身大の木像が残されていてね、その木像から推測するに身長は5尺5~6寸だったらしい。およそ166~169㎝だよ」
「そんなに今と変わらないじゃない」
「信長は戦国時代にしては高身長だったんだ。宣教師のルイス・フロイスも『背が高く、痩せていて、髭が少ない』と、身体的特徴を書き残してる。その頃の成人男性の平均身長は150台だよ。きっと食生活が影響しているんだろうね」
ヒメが見下ろしてくる。
「先輩、牛乳は毎日飲んでいますか?」
この娘もわりと身長は高い方だ。しかも胸まで大きい。流石にかいちょ程の化物ではないけど。それでも目の前に立派なモノがズンっと突き出ている。
「飲んでるよッ!ヒメだって中学の頃はアタシより少し高いくらいだったのに!一人だけ立派に成長しやがって!アタシの第2成長期返せ!」
「こ、これは先輩に言われて牛乳を毎日飲む様になったらこうなってしまって、第3成長期に入ってしまったみたいです」
「第3なんてあるかッ!お前は倒しても倒しても起き上がるラスボスか!この出っ張りは第3形態だろッ」
アタシは目の前の立派なモノをぺしりと、軽くはたいた。
「アンっ♪」
思わずもカワイイ声が返ってきたので動揺した。
「ご、ゴメン。痛かった?加減が分からなくて、」
ヒメがすぐに首を一生懸命に振る。
「す、すいませんっ!いきなりだったので、私も変な声出して、」
「ごめんね、」
「い、いいえ!大丈夫ですから」
「アンタ、後輩に何セクハラしてんのよ」
ふーみんの呆れた声が聞こえる。
「火種って?」
「深芳野(みよしの)は斎藤利政(さいとう としまさ)の側室となって間もなく、男の子を生んだんだ。その子が次期当主になる斎藤利尚(さいとう としひさ)なんだけど、どうも生まれるのが早すぎて土岐 頼芸(とき よりのり)の子じゃないかと言われていたらしい」
「うわぁ・・・・・・」ふーみんの顔がのっぺりする。
「昔だから確かな事は分からないんだけどね。残っている資料は後世になって書かれていたり、書いている人だって手を加えたかもしれないし、権力者の都合のいい様に書き直されているかもしれない。こればっかりは生んだ母親にしか分からないよ」
点検の手を止めてパイセンが言う。
「アタシの推しは斎藤利尚(さいとう としひさ)だ」
ふーみんが何か言いかけて、言葉を飲み込んだ。
「なんだ?伊吹山。その意外そうな目は」
「いえ、何でもありません。」
「利尚はな、大男だったんだぞ。いいよな。体はデカい方が」
「6尺5寸だと言われている」
「1尺はおよそ30,3㎝ですよ」と、かいちょが補足してくれた。
「えっと・・・180と・・・1,8㎝に、」ふーみんの目が空中をさまよう。
「一寸はおよそ3,03㎝です」
面倒くさくなった彼女の顔がこちらを向いた。
「196,95㎝ 四捨五入して、およそ197㎝だよ」
「大きいわねー」ふーみんの視線が上を向く。
「ちなみに母親である深芳野も六尺二寸あったと言われている」
ふーみんがまたこちらを見た。
「187,86㎝ およそ188㎝だね」
「デカいなー」
今度はパイセンが自分の背と比べる様に手のひらを頭の上にかざした。パイセンも十分女子にしては大きい方だけど、やはり視線は上を向いている。
「まあ、いくらデカくてもアタシは筋肉でねじ伏せてやるけどな!ハハハッ!」
豪快に笑い飛ばしたパイセンはまた点検作業に戻った。かいちょも喋りたそうにしていたけど、仕方なく戻っていく。
「笑い話があってね。利尚(としひさ)があまりに大きいものだから馬にまたがっても足が地面に届いたそうだよ」
「いや、それは流石に無いでしょ。いくら2m近い大男でも。それに、私バイクに乗ってるから分かるけど、またがって乗るのって意外に足が届かなくなるものよ?」
「ところが、この時代の日本の馬というのは小さかったそうだよ。ふーみんが今、想像したのは競馬場で走っている様なサラブレッドだと思うんだけど、武士がまたがっていたのはポニーぐらいの小型の馬だった様なんだ」
「ぽにー!」チカ丸が目を輝かせている。この娘は動物好きなのか?
「ちなみに白馬に乗って砂浜を颯爽と駆け抜けるイメージが強い将軍・徳川吉宗は馬に感心があったみたいでね、ペルシャの馬をわざわざ取り寄せていたそうだよ。こちらは大型だから、あのイメージは合っていると言える」
「うま、スキ」
「ペルシャは今のイランだよ。ドバイとはペルシャ湾を挟んで対岸だね。あの辺は元々遊牧民族だから馬とのかかわりが深いのかな?」
「ドバイ、競馬人気。」
「そうなんだね。岐阜にも笠松競馬という有名な競馬場があるよ。その競馬で走っているサラブレットは品種改良されて生み出された馬なんだ。走ることに特化している。だから乗る人、ジョッキーは小柄で体重が軽い人の方がいいそうだね。戦国時代の馬はと言うと、走る事より荷物を載せても大丈夫な頑丈さが求められたそうなんだ。重い甲冑をまとった武者姿の武将を乗せても耐えられる様に。この地域だと木曽馬という種類が飛騨や長野で育てられていたんだ。見た目はずんぐりとしていて、またがる高さも120㎝位だそうだから、小ぶりなのを選べば意外に足も届くかもしれない」
「そうねぇ、意外に」ふーみんがアタシの背と比較しているのか、頭を撫でてくる。
「おい!」
「アンタも、もう少し背があったらねぇ」
「先輩はそのままでもカワイイですよ」
ヒメまで撫でてこようとしたので、アタシは体を引いた。
「大男は戦場でも目立つから利尚(としひさ)が高身長なのは確かだと思うけど、深芳野(みよしの)の方は息子が大きいんだからきっと大きいはずみたいな、憶測が入ってるんじゃないかとアタシは思うけどね。だって母親まで大きいなんて如何にも取って付けたみたいじゃないか」
「アンタ自分が小さいからって、ソレひがみが入ってるでしょ」
「いやいや、中世の頃は日本だけじゃなく大体どこの国でも今より身長は10㎝程低い傾向にあったんだよ?女性なんてアタシぐらいの背が普通だったんだ」
「そうなの?」
「例えば信長は等身大の木像が残されていてね、その木像から推測するに身長は5尺5~6寸だったらしい。およそ166~169㎝だよ」
「そんなに今と変わらないじゃない」
「信長は戦国時代にしては高身長だったんだ。宣教師のルイス・フロイスも『背が高く、痩せていて、髭が少ない』と、身体的特徴を書き残してる。その頃の成人男性の平均身長は150台だよ。きっと食生活が影響しているんだろうね」
ヒメが見下ろしてくる。
「先輩、牛乳は毎日飲んでいますか?」
この娘もわりと身長は高い方だ。しかも胸まで大きい。流石にかいちょ程の化物ではないけど。それでも目の前に立派なモノがズンっと突き出ている。
「飲んでるよッ!ヒメだって中学の頃はアタシより少し高いくらいだったのに!一人だけ立派に成長しやがって!アタシの第2成長期返せ!」
「こ、これは先輩に言われて牛乳を毎日飲む様になったらこうなってしまって、第3成長期に入ってしまったみたいです」
「第3なんてあるかッ!お前は倒しても倒しても起き上がるラスボスか!この出っ張りは第3形態だろッ」
アタシは目の前の立派なモノをぺしりと、軽くはたいた。
「アンっ♪」
思わずもカワイイ声が返ってきたので動揺した。
「ご、ゴメン。痛かった?加減が分からなくて、」
ヒメがすぐに首を一生懸命に振る。
「す、すいませんっ!いきなりだったので、私も変な声出して、」
「ごめんね、」
「い、いいえ!大丈夫ですから」
「アンタ、後輩に何セクハラしてんのよ」
ふーみんの呆れた声が聞こえる。
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