93 / 136
86
しおりを挟む
86
「いくらアタシだって、全てのゲームをやり尽せるなんて思っちゃいない。金銭的にも時間的にもね。それでも、いつかはあのゲームをプレイしてやるんだという望みは持っていたいじゃないか。その望みがレトロゲームの海外流出によって絶たれてしまうのはあまりに忍びない」
「でも、私に何ができるのでしょうか?」
かいちょが可愛らしく首をひねる。アタシもその動きに合わせて首を傾け言った。
「希望は国会図書館にある。」
「確か、日本中の書籍が保管されている場所ですよね?」
かいちょが今度は逆側に首をひねった。アタシも合わせる。その反応から察するに物知りなかいちょでも、なぜゲームと図書館が関係あるのか知らないようだ。
「国会図書館は名前の通り、国会の活動をサポートするために書籍などの資料を収集している図書館だよ。資料を効率よく収集する為、法律に納本制度という定めがあって、本を出版するとその本を国会図書館へ納めなければいけないという義務が発生するんだ。だから国会図書館には毎週全国から1万冊もの本が送られてくるそうだよ」
「毎週1万冊!?そんなに集めてるの?」ふーみんが驚いている。
「それでも集まってくるのは8割くらいだって言われてる。出版社を通して発行されれば手続はその出版社が行ってくれるから楽だけど、それ以外の個人出版なんかだとわざわざ納本するのは手間だからね。守らないと罰則もあるし義務ではあるけど、図書館側も国内で発行された全ての図書を把握するのは難しいし、」
アタシはヒメに話を振った。
「個人出版でも納本義務はあるんだ。もちろん同人誌でもね!ヒメも今書いてる小説を納本したら、あの国会図書館で後世に永遠と引き継がれていくんだよ。日本が滅亡でもしないかぎり!」
「あ、ハイ」
さっきからヒメの好きな本の話をしているというのに話しに乗ってこないと思ったら、彼女はネタ帳にメモを取ることに忙しいらしい。今も返事そこそこに、ペンをずっと走らせている。
忙しいヒメに代わって、かいちょが不思議そうに聞く。
「全部、本の話ですよね?」
「実は2000年に納本制度は改定されてね、電子出版物もその対象に含まれるようになったのさ。電子出版物、つまりゲームも納める対象になったという事」
「ゲームまで集めてるの⁉国会の図書館なのに?」
「元々の成り立ちは国会の為の資料収集だけど、文化財を後世に残すという役割も持っているんだ。もちろんゲームだけじゃないよ?インターネットの普及した95年からデジタル媒体の利用は急速に発展した。それら電子記録を網羅的に収集するための改定だったんだよ」
アタシは腕を大きく広げた。そして天を仰ぎ言った。
「すばらしい!これで後世にゲーム文化が引き継がれる!」
「なにを大げさな、」
呆れるふーみんに言い返す。
「ゲームっていうのは、どうしても文化的に低く見られがちだよね。例えば面接なんかで趣味を聞かれた時に絵画や音楽鑑賞、読書なんて言えば如何にも知的で文化的に見られるけど、趣味がゲームなんて言ったら面接では落とされちゃうからね。でも、市場規模で見てみるとアート関連ビジネスの市場規模は大まかに言って2000億円規模なんだ。対してゲーム市場の規模は10倍の2兆円だと言われているよ」
「そんなに⁉」
「音楽関連でも2000億円、毎週1万冊もの本が発行されている出版関連でも1兆6000億円規模で2兆円には届かないから、金額で見ても如何に多くの人々の関心がゲーム市場に寄せられているのかが分かるでしょ?1985年にマ○オがBダッシュで駆けだしてからの40年足らずで、ここまで人々に浸透した。これはもう立派な文化と言っていいじゃないか」
「でも、ゲームはゲームじゃない。アンタみたいに一生懸命になってる人はいるだろうけど、」
「そういう意識の差が日本のゲーム産業を衰退に招くんだ。」
アタシはビシッとかいちょを指さした。
「ゲーム産業は日本が世界に誇れるものだよ。そうでしょ?」
「ええ、そうですね。月光さんがいつも一生懸命話してくれるので、私も理解してきました」
アタシはうん、うんと満足して頷いた。
「せっかく産業として発展しているのに、それをただの遊びだと軽んじていては世界に置いていかれてしまうよ。文化は育てていくものなんだ。日本で法律によりゲームが保管されることになったのは素晴らしい事だよ。政治家の皆さんの中にもそういう文化を擁護してくれる人はいたんだろうね。けど!納本だけでは完璧ではない」
「いくらアタシだって、全てのゲームをやり尽せるなんて思っちゃいない。金銭的にも時間的にもね。それでも、いつかはあのゲームをプレイしてやるんだという望みは持っていたいじゃないか。その望みがレトロゲームの海外流出によって絶たれてしまうのはあまりに忍びない」
「でも、私に何ができるのでしょうか?」
かいちょが可愛らしく首をひねる。アタシもその動きに合わせて首を傾け言った。
「希望は国会図書館にある。」
「確か、日本中の書籍が保管されている場所ですよね?」
かいちょが今度は逆側に首をひねった。アタシも合わせる。その反応から察するに物知りなかいちょでも、なぜゲームと図書館が関係あるのか知らないようだ。
「国会図書館は名前の通り、国会の活動をサポートするために書籍などの資料を収集している図書館だよ。資料を効率よく収集する為、法律に納本制度という定めがあって、本を出版するとその本を国会図書館へ納めなければいけないという義務が発生するんだ。だから国会図書館には毎週全国から1万冊もの本が送られてくるそうだよ」
「毎週1万冊!?そんなに集めてるの?」ふーみんが驚いている。
「それでも集まってくるのは8割くらいだって言われてる。出版社を通して発行されれば手続はその出版社が行ってくれるから楽だけど、それ以外の個人出版なんかだとわざわざ納本するのは手間だからね。守らないと罰則もあるし義務ではあるけど、図書館側も国内で発行された全ての図書を把握するのは難しいし、」
アタシはヒメに話を振った。
「個人出版でも納本義務はあるんだ。もちろん同人誌でもね!ヒメも今書いてる小説を納本したら、あの国会図書館で後世に永遠と引き継がれていくんだよ。日本が滅亡でもしないかぎり!」
「あ、ハイ」
さっきからヒメの好きな本の話をしているというのに話しに乗ってこないと思ったら、彼女はネタ帳にメモを取ることに忙しいらしい。今も返事そこそこに、ペンをずっと走らせている。
忙しいヒメに代わって、かいちょが不思議そうに聞く。
「全部、本の話ですよね?」
「実は2000年に納本制度は改定されてね、電子出版物もその対象に含まれるようになったのさ。電子出版物、つまりゲームも納める対象になったという事」
「ゲームまで集めてるの⁉国会の図書館なのに?」
「元々の成り立ちは国会の為の資料収集だけど、文化財を後世に残すという役割も持っているんだ。もちろんゲームだけじゃないよ?インターネットの普及した95年からデジタル媒体の利用は急速に発展した。それら電子記録を網羅的に収集するための改定だったんだよ」
アタシは腕を大きく広げた。そして天を仰ぎ言った。
「すばらしい!これで後世にゲーム文化が引き継がれる!」
「なにを大げさな、」
呆れるふーみんに言い返す。
「ゲームっていうのは、どうしても文化的に低く見られがちだよね。例えば面接なんかで趣味を聞かれた時に絵画や音楽鑑賞、読書なんて言えば如何にも知的で文化的に見られるけど、趣味がゲームなんて言ったら面接では落とされちゃうからね。でも、市場規模で見てみるとアート関連ビジネスの市場規模は大まかに言って2000億円規模なんだ。対してゲーム市場の規模は10倍の2兆円だと言われているよ」
「そんなに⁉」
「音楽関連でも2000億円、毎週1万冊もの本が発行されている出版関連でも1兆6000億円規模で2兆円には届かないから、金額で見ても如何に多くの人々の関心がゲーム市場に寄せられているのかが分かるでしょ?1985年にマ○オがBダッシュで駆けだしてからの40年足らずで、ここまで人々に浸透した。これはもう立派な文化と言っていいじゃないか」
「でも、ゲームはゲームじゃない。アンタみたいに一生懸命になってる人はいるだろうけど、」
「そういう意識の差が日本のゲーム産業を衰退に招くんだ。」
アタシはビシッとかいちょを指さした。
「ゲーム産業は日本が世界に誇れるものだよ。そうでしょ?」
「ええ、そうですね。月光さんがいつも一生懸命話してくれるので、私も理解してきました」
アタシはうん、うんと満足して頷いた。
「せっかく産業として発展しているのに、それをただの遊びだと軽んじていては世界に置いていかれてしまうよ。文化は育てていくものなんだ。日本で法律によりゲームが保管されることになったのは素晴らしい事だよ。政治家の皆さんの中にもそういう文化を擁護してくれる人はいたんだろうね。けど!納本だけでは完璧ではない」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
全体的にどうしようもない高校生日記
天平 楓
青春
ある年の春、高校生になった僕、金沢籘華(かなざわとうか)は念願の玉津高校に入学することができた。そこで出会ったのは中学時代からの友人北見奏輝と喜多方楓の二人。喜多方のどうしようもない性格に奔放されつつも、北見の秘められた性格、そして自身では気づくことのなかった能力に気づいていき…。
ブラックジョーク要素が含まれていますが、決して特定の民族並びに集団を侮蔑、攻撃、または礼賛する意図はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる