59 / 136
56
しおりを挟む
56
あおたんがまた力なく首を振る。
「二人とも少し浮世離れした所があるので、気をつけてください。海津さんなんて入学式の時、」
(マズイ!)と思ったアタシは声を上げた。
「わー!わー!わー! ぶえっ」ふーみんの手が今度は私の頬を両側から挟んできた。
「小学生か。・・・・・・先生、話してください」
抗議の視線を向けるも、あおたんは語りだした。生徒の個人情報守秘はどこいった?
「去年の入学式です。海津さんには新入生代表の挨拶をお願いしたんですよ」
「それって入試試験で成績がトップの生徒がやるんですよね?」
「ええ。毎年、首席の子が務める事になっています」
「でも、確か入学式の挨拶したのって会長じゃなかった?私、『この子が成績トップだったんだ』って思ってたから覚えてるわよ」
「実は、海津さんはやりたくないと辞退してしまったんですよ。それで急きょ2位の羽島さんに、」
「もーっ!私、ショックだったんですよ!レベルを落として入学したのに首席じゃなかったんですから!しかも代役で挨拶しろだなんて」
「だから会長・・・・・・ううん、もういいわ」
アタシは弁解した。
「あの時はしょうがなかったんだよ。入試で手を抜いて、もし落ちたら話にならないからね。全力でやるしかなかったんだ。それに首席が挨拶するなんて知らなかったんだよ。知ってれば少しは手を抜いたかもしれないけど、」
「ハァー、頭、痛くなってきた」頭の上でふーみんのため息が吹く。
「教師の間でも話題になっていたんです。今年は飛びぬけて優秀な生徒が二人もいると」
「まさかゾン研なんていうふざけた部活が学年トップの集まりだったなんて、」
「そのふざけた部活の集まりが、何のお咎めも受け無いのはなぜだか分かるかね?風香くん。私達が優秀だからだよ、いだだだだだッ!」
ふーみんが肘でグイグイと肩を押してくる。
「しかも辞退しようとした時、なんと言ったと思います?」
あおたんはまだ話を続けるようだ。アタシがワザと話を茶化しているのに通用していない。
「挨拶するくらいなら学校をやめますって言ったんですよ?」
「うわぁ、」ふーみんから色々な感情の混ざったため息が流れてきた。
「そしたら入学式当日、本当に来なかったので先生、慌てて家に呼びに行ったんですから」
「あの時は家が近いのを恨めしく思ったね」
「挨拶するくらい・・・・・・もういいわ」
「これは先生も指導者としてきちんと話し合わないといけないと思って、」
(もうやめて。あおたん)
「学校をやめてどうするのか聞いたんですよ。そしたら『今、友達の家が借金で困っているから私が働いてその友達を支えてあげないといけない』なんて言うんですよ?先生、本当に困ってしまったんですから。教員の間でも話題になっていた優秀な子を入学初日に辞めさせる事になるかもしれないなんて、ヒヤヒヤものでしたよ。これまでの教師生活の中でも一番肝を冷やした体験でしたね」
「あれ?もしかしてその借金で困ってる友達って、」
お前のことだぞ!はなっち。のんきにちんすこう咥えやがって。
「はなっちが入学発表のあった翌日に青ざめた表情でうちにやって来たんだ。ゾンビみたいに。アタシ、高校に落ちたのかと思ってビックリしたんだけど、話を聞いたらもっとビックリしたよ。借金が1億もあるって言うんだから」
「月光ちゃん!」
今日は暴露大会だ!はなっちも巻き込んでやる。
「もう家から追い出される。高校にも行けないかもしれない。将来ずっと借金地獄なんだ。って、この世の終わりみたいに話しやがって!」
「あの時は本当にそう思ってたんだよー!」
「後でよくよく聞いてみたら、そんなに深刻な話でもなさそうだったから良かったけど」
「本当に高校やめて働くつもりだったの?」
「しょうがないじゃないか。ずっと一緒にいる幼馴染なんだから、放っておけないよ」
「月光ちゃん・・・・・・もう私は身も心も月光ちゃんのものだよ」
「身はやめなさい。」
ハァーと大きく息を吐いたあおたん。残っていたお茶を飲み干した。はなっちのボケの効果か、やっと解放してくれるようだ。
まさかこんな暴露をされるなんて、普段から先生をおちょくってはいけないね。何をされるか分かったもんじゃない。
「先生、担任を受け持つことになって不安だったんですよ?優秀な子を一度に二人もだなんて」
「大丈夫!あおたんは良くやってるよ」アタシは親指をビシッ!と立てた。
「ええ。八百津先生はいい先生ですよ」かいちょもニッコリ笑う。
「上から目線はやめなさい。会長もよ!」
「こんな事言うのは部活の中だけだよ?普段なんて従順でおとなしいもんじゃないか」
「私も気兼ねなく言えるのは部活の中だけですから、安心してください」
ふーみんが大きく頭を振った。
「ハァ、頭痛いから私もう帰る。」
あおたんがまた力なく首を振る。
「二人とも少し浮世離れした所があるので、気をつけてください。海津さんなんて入学式の時、」
(マズイ!)と思ったアタシは声を上げた。
「わー!わー!わー! ぶえっ」ふーみんの手が今度は私の頬を両側から挟んできた。
「小学生か。・・・・・・先生、話してください」
抗議の視線を向けるも、あおたんは語りだした。生徒の個人情報守秘はどこいった?
「去年の入学式です。海津さんには新入生代表の挨拶をお願いしたんですよ」
「それって入試試験で成績がトップの生徒がやるんですよね?」
「ええ。毎年、首席の子が務める事になっています」
「でも、確か入学式の挨拶したのって会長じゃなかった?私、『この子が成績トップだったんだ』って思ってたから覚えてるわよ」
「実は、海津さんはやりたくないと辞退してしまったんですよ。それで急きょ2位の羽島さんに、」
「もーっ!私、ショックだったんですよ!レベルを落として入学したのに首席じゃなかったんですから!しかも代役で挨拶しろだなんて」
「だから会長・・・・・・ううん、もういいわ」
アタシは弁解した。
「あの時はしょうがなかったんだよ。入試で手を抜いて、もし落ちたら話にならないからね。全力でやるしかなかったんだ。それに首席が挨拶するなんて知らなかったんだよ。知ってれば少しは手を抜いたかもしれないけど、」
「ハァー、頭、痛くなってきた」頭の上でふーみんのため息が吹く。
「教師の間でも話題になっていたんです。今年は飛びぬけて優秀な生徒が二人もいると」
「まさかゾン研なんていうふざけた部活が学年トップの集まりだったなんて、」
「そのふざけた部活の集まりが、何のお咎めも受け無いのはなぜだか分かるかね?風香くん。私達が優秀だからだよ、いだだだだだッ!」
ふーみんが肘でグイグイと肩を押してくる。
「しかも辞退しようとした時、なんと言ったと思います?」
あおたんはまだ話を続けるようだ。アタシがワザと話を茶化しているのに通用していない。
「挨拶するくらいなら学校をやめますって言ったんですよ?」
「うわぁ、」ふーみんから色々な感情の混ざったため息が流れてきた。
「そしたら入学式当日、本当に来なかったので先生、慌てて家に呼びに行ったんですから」
「あの時は家が近いのを恨めしく思ったね」
「挨拶するくらい・・・・・・もういいわ」
「これは先生も指導者としてきちんと話し合わないといけないと思って、」
(もうやめて。あおたん)
「学校をやめてどうするのか聞いたんですよ。そしたら『今、友達の家が借金で困っているから私が働いてその友達を支えてあげないといけない』なんて言うんですよ?先生、本当に困ってしまったんですから。教員の間でも話題になっていた優秀な子を入学初日に辞めさせる事になるかもしれないなんて、ヒヤヒヤものでしたよ。これまでの教師生活の中でも一番肝を冷やした体験でしたね」
「あれ?もしかしてその借金で困ってる友達って、」
お前のことだぞ!はなっち。のんきにちんすこう咥えやがって。
「はなっちが入学発表のあった翌日に青ざめた表情でうちにやって来たんだ。ゾンビみたいに。アタシ、高校に落ちたのかと思ってビックリしたんだけど、話を聞いたらもっとビックリしたよ。借金が1億もあるって言うんだから」
「月光ちゃん!」
今日は暴露大会だ!はなっちも巻き込んでやる。
「もう家から追い出される。高校にも行けないかもしれない。将来ずっと借金地獄なんだ。って、この世の終わりみたいに話しやがって!」
「あの時は本当にそう思ってたんだよー!」
「後でよくよく聞いてみたら、そんなに深刻な話でもなさそうだったから良かったけど」
「本当に高校やめて働くつもりだったの?」
「しょうがないじゃないか。ずっと一緒にいる幼馴染なんだから、放っておけないよ」
「月光ちゃん・・・・・・もう私は身も心も月光ちゃんのものだよ」
「身はやめなさい。」
ハァーと大きく息を吐いたあおたん。残っていたお茶を飲み干した。はなっちのボケの効果か、やっと解放してくれるようだ。
まさかこんな暴露をされるなんて、普段から先生をおちょくってはいけないね。何をされるか分かったもんじゃない。
「先生、担任を受け持つことになって不安だったんですよ?優秀な子を一度に二人もだなんて」
「大丈夫!あおたんは良くやってるよ」アタシは親指をビシッ!と立てた。
「ええ。八百津先生はいい先生ですよ」かいちょもニッコリ笑う。
「上から目線はやめなさい。会長もよ!」
「こんな事言うのは部活の中だけだよ?普段なんて従順でおとなしいもんじゃないか」
「私も気兼ねなく言えるのは部活の中だけですから、安心してください」
ふーみんが大きく頭を振った。
「ハァ、頭痛いから私もう帰る。」
1
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
適者生存 ~ゾンビ蔓延る世界で~
7 HIRO 7
ホラー
ゾンビ病の蔓延により生きる屍が溢れ返った街で、必死に生き抜く主人公たち。同じ環境下にある者達と、時には対立し、時には手を取り合って生存への道を模索していく。極限状態の中、果たして主人公は この世界で生きるに相応しい〝適者〟となれるのだろうか――
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
終焉の教室
シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。
そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。
提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。
最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。
しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。
そして、一人目の犠牲者が決まった――。
果たして、このデスゲームの真の目的は?
誰が裏切り者で、誰が生き残るのか?
友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。
無能な陰陽師
もちっぱち
ホラー
警視庁の詛呪対策本部に所属する無能な陰陽師と呼ばれる土御門迅はある仕事を任せられていた。
スマホ名前登録『鬼』の上司とともに
次々と起こる事件を解決していく物語
※とてもグロテスク表現入れております
お食事中や苦手な方はご遠慮ください
こちらの作品は、
実在する名前と人物とは
一切関係ありません
すべてフィクションとなっております。
※R指定※
表紙イラスト:名無死 様
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
5A霊話
ポケっこ
ホラー
藤花小学校に七不思議が存在するという噂を聞いた5年生。その七不思議の探索に5年生が挑戦する。
初めは順調に探索を進めていったが、途中謎の少女と出会い……
少しギャグも含む、オリジナルのホラー小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる