ゆるゾン

二コ・タケナカ

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ふーみんが課題の続きを始めた。
「ハァー、それにしてもなんでこんなに課題が多いの?」
「今日は特に多いよねー」はなっちも同意して課題を再開する。
「どの教科も修学旅行で1週間遅れてしまったので、その分を穴埋めしようとしているんでしょうね」あおたんが涼しい顔で言う。その一端を担ってる張本人でしょうに。
「にしたって多すぎよ。それに元々うちの学校って課題多くない?高校に入学したての頃、あまりにも多くてビックリしたもん。こなすのに必死で家で泣きながら夜遅くまでやってたんだから」
「そう、そう、」アタシはちんすこうを摘まみながら頷いた。
「いや、アンタさっきから課題に全然手を付けてないけどいいの?」
「アタシ?アタシはもう終わらせてあるよ」
「え、ウソでしょ?」
「課題は家に持ち帰らない主義だから。アニメやゲームの時間を潰されてなるものかと、必死に休み時間に終わらせてる」
「あぁ、いつも休み時間は一人で机に向かってるもんね。変な所は要領イイんだから。ねえ、みんな休み時間は課題やってるけど、おかしくない?休み時間なんだから、休ませてよ」

フフフと、かいちょが笑っている。
「会長も、もしかして課題終わってるの?」
「ええ、もう済ませてます。今やっているのは気象予報士の試験勉強ですよ」
開いていた参考書を持ち上げてみせるかいちょ。
「信じらんない、どうやったらそんなに早く終わらせられるの?」
アタシが応えた。
「早ベンだね。」
「なんでそうなるのよ。お弁当早く食べ終えて時間作れって?」
「いやいや、早ベンのベンは勉強の勉だよ。授業中に先生に見つからない様に課題をやっているのさ」
「海津さん!そんな事していたんですか⁉」あおたんがすすっていたお茶を吐いてしまいそうなくらい驚いた。
「アタシだけじゃありませーん。かいちょもしてまーす。」
「月光さん!」
「羽島さんまで⁉二人とも真面目に授業を受けていると思っていたのに」
「授業は受けてますよ?ただ、先生によっては授業と関係ない事を喋ってたりするじゃないですか。その時間を有効利用しているだけでーす。特に八百津せんせーはお喋りが多いと思いまーす。」
「アレは勉強ばかりだと集中力が続かないだろうと、休憩の意味で喋っているんですよ?生徒の為を思って、」
「生徒の為を思うなら、課題をもっと減らして休み時間を確保してくださーい。」
ふーみんの要望をかなえてあげようと思ったんだけど、ちょっと言い過ぎたか?あおたんは反論できず、口を真一文字にしている。

「子供か!」
頭にチョップが降ってきた。
たぶんふーみんはこの状況を見かねてワザとちょっかいをかけてきたのだろう。そういう空気を読む力はかなわないよ。アタシも少しやり過ぎる事があるから反省せねば。
ここはふーみんの親切なチョップに甘えて大げさに痛がってみせた。
「あでっ‼」
「はーぁ、まったく。」あおたんの表情が緩んだ。
チョップした手がそのまま頭を撫でてくる。
「課題を終わらせる事ばかり優先して、本当に授業はちゃんと聞いてるの?もうすぐ期末試験なのに赤点取っても知らないわよ」
「え?」「え?」「え?」
あおたんと、かいちょと、はなっちの視線が一斉にこちらに向いた。アタシにではなく、頭を撫でてくるふーみんの方へ。
「ど、どうしたの?先生まで」彼女は何の事か分からず戸惑っているようだ。

アタシは人差し指を静かに唇にあてた。
にもかかわらず、かいちょが口を開いた。さっき巻き込んだ腹いせか?
「月光さんは学年2位の成績ですよ」
「は?そんなワケないでしょ?会長も、なに、冗談・・・・・・言って、ウソよね?」
ふーみんはアタシの背後に立っているのでその表情は分からないが、たぶん視線があおたんに向いたのだろう。先生の目が泳いだ。
「教師が生徒個人の成績を教える訳にはいきませんよ。ただ優秀である事は間違いありません」
「いや、いや、いや、いや、だって、えーッ⁉」
たぶん今度ははなっちに視線が向いたハズ。
彼女はかいちょを指さし一本指を立てた。続けてアタシを指さし2本指を立てた。はなっち!喋らない様にジェスチャーはしたけど、ジェスチャーゲームじゃないんだよ?
「全然、知らなかった、」
(こういう事は言わないようにしてきたのに・・・・・・)
かいちょがここぞとばかりに続ける。
「聞いてください風香さん!ひどいんですよ?月光さんはワザと手を抜いて2位を狙ってるんですから」
「どうゆうことよ?」
ふーみんの顔が上から覗き込んでくる。
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