ゆるゾン

二コ・タケナカ

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「よし!じゃあゾン研の部長らしいところを見せようか」
アタシはホワイトボードの前に立ち、議題を書いた。

『ゾンビから身を守る為の服装について』

「やるのー?この暑いのにーぃ」今度はふーみんの方がだらけている。
「やるよッ!今は部活動中だぞ!」
「ハイハイ。しょうがないわね」
「では改めて。」
話す前に、ズリズリとスカートをめいいっぱい下げてやる。
「コホン!本日は、わたくし月光院 湊(げっこういん みなと)自らがお相手して差し上げますわ」
「なにか始まったんですけど、」
「いつもの事だよ。風香ちゃん」
「げっこういんってナニ?」
「アレは月光ちゃんがいつもゲームで使ってる名前だよ」
「プッ!」
「そこの方たち!おだまりになってくださる?」
「今回はそういう趣旨なのね。はいはい」
「伊吹山さん!返事をなさる時は1回ですことよ」
「はーい」

背筋をピンと伸ばし、姿勢を正して壇上を歩いてみせる。
「淑女たるもの、身だしなみにはいつも気を遣っていなくてはなりませんわ」
「プッ!」かいちょ!まだ笑わせるつもりなんて微塵もないんですけど⁉歩いてるだけ!アタシ歩いてるだけだよ?
「例え、おゾンビが街中を徘徊していようとも。」
「クッ!おぞんびっ!」かいちょはホラーが苦手なはずなのに変なスイッチ入っちゃったか?
「服装がフォーマルとカジュアルで分かれている様に、サバイバルにおいても使い分けが肝心ですわ。TPOですわ!」
「クッ!ですわっ、フフッ!」
「羽島さん!先程から講義そっちのけで笑っていらっしゃるけど、TPOは何の略かご存知?」
「ふぇ?Tはタイム。フッ、Pはプレイス。フフッ、Oはオケイジョンでふっ!フフフッ!」流石かいちょ。笑いのツボにハマりながらも答えられるとは。
「よろしい。では1つずつ当てはめて考えてみましょうか」

「まず、Time 時間。おゾンビ発生の初期段階では如何に戦わずして逃げ切るかが重要になってきますわ。であれば、おのずと動きやすい服装に限られますわね。この制服の様にスカート姿では何かと不便でしょう。わたくしが考えるに、ジャージといったかしら?庶民が部屋着にするというお召し物がございますでしょ?アレなんか動きやすくて、よろしいのではないかしら?普段から着ていれば、いつバイオハザードが起こっても対処できますわ」
「アンタ、自分の主観入れてるでしょ」
「まあ!アンタだなんて、はしたない言葉使いですこと!伊吹山さん、名前で読んでくださる?月光院様と、ちゃんと様を付けて」
「イ・ヤ・よ!何言ってるの?」
「これだから庶民の方は。いいえ、普民ときたら」
「そっちこそ、ちゃんと呼びなさいよ!」
「そうでしたわね。では、おふーみん様」
「おふッ⁉ブッふー‼」かいちょが何言っても笑うようになってしまったぞ。

アタシはパン!パン!と手を鳴らした。バレエのレッスンでもするかの様なエレガントな仕草で。
「ハイ!お静かに!続けますことよ。以前にも申し上げました通り、バイオハザード初期段階では当てもなく逃げ回るより、どこか安全な場所に籠城する事が賢明な判断と言えますわ。けれど、いつかは外へと出なくてはいけなくなるでしょう。Time、時間の経過によりPlace、場所も変えなくてはなりませんわ。」
「外に出ると言ってもどうすんのよ?ゾンビが沢山いるんでしょ?」
「わたくしが考えるゾンビは生きたゾンビですのよ?つまり籠城をしているうちに、自然と数は減るだろうと見込んでいますの」
「どういうことよ」
「貴方も言っていたじゃありませんか。ゾンビと言ってもただの病人だという事ですわ。理性がプッツンして襲ってくることはあっても、自ら食料を調達するのは難しいはず。であれば、待っていればいずれその数は減ると思うんですの」
「それは餓死するって事?」
「平たく言えば。ですの」
「フフフッ、ふふ!ですのっ、フッ!」かいちょの事はもう放っておこう。

「ちょっと待って。ゾンビは人を襲って食べるんでしょ?それに共食いもするとかって話してなかった?」
「ええ、様々なパターンが考えられますわ。ゾンビが人を襲うパターン。ゾンビ同士が共食いするパターン。犬や猫など身近な動物を襲って食べるパターンなど。ただ、共通項としてゾンビは理性が失われていますから、動いているモノに対して本能的に飛び付くという行動が予想されますわ。それに、脳の機能が著しく低下してますから、もし目の前にお菓子があってもそれが食べ物だと判断するのは難しいのではなくて?袋を開ける事すら思いつかないはずです」
はなっちがお菓子の袋を開け頬張った。よかったねぇ、はなっちは人間で。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ファイル15「自給」

6月5日
今日はサツマイモを植えたわ。滑走路は広いから、隅を耕すぐらい構わないって。嬉しいわね。でも苗はわざわざ畑から掘ってきてもらったのよ。外は危険だと言うのにあの子「私はバイクだから大丈夫」だって。おかげで苗は手に入ったけれど。
サツマイモは丈夫で育てやすいから、きっと沢山収穫できるはずよ。お腹いっぱい食べられるわ。
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