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ファイル14「武器」
6月1日
今日は雑用だった。倉庫から古いスコップを出しておけだと。雪かきの時に使うヤツだが、今どきのプラスチックで出来たカラフルなもんじゃねぇ。昔ながらの鉄で出来た真四角の頑丈なヤツだ。それを刃物の様に刃先を研いでおけだとよ。ああ、何に使うか想像しちまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
45
ふーみんがスカートの両端を摘まんでみせた。
「私だって制服が可愛いければ、このままでも良かったのよ?」
「うちの制服ってちょっとアレだよねー」言葉を濁したはなっち。オシャレに興味のないアタシでも言わんとするところは分かるよ。
「知ってる?このリボン」
今度は首元から垂れ下がるリボンを摘まんでみせる。うちの制服のリボンは赤い紐状のものだ。
「紅ショウガって言われてるんだよ?」
「プッ!」いや、かいちょ笑ってるけど『デカイたこ焼きの上に紅ショウガ乗ってる』とか男子達に陰で言われてるんじゃないの?今日はブラウンのベスト着てるから色合い的にもそのままじゃないか。
「なんで普通のカワイイ感じのにしなかったんだろうねぇ」
「それにこのスカート」ふーみんが腰を回転させスカートをはためかせた。
「長過ぎよね?」
「だよねぇー」
まあ、不満な点があるとアレもコレもと欠点ばかりに目がいってしまうのはしょうがないか。
「ふーみんはギャルになりたいと、」
「そんな事言ってないわよ。ただ、いい感じの長さってあるでしょ?」
そう言った彼女はスカートの腰の部分を折りたたんで、膝が出るくらいにスカートを上げた。
「ほら!」
「うん。わかるぅ」はなっちが大きくうなづいている。
「うちの学校、膝が出てると必ず先生達が注意してくるでしょ?膝くらい出してもいいと思わない?」
いきなり入口の方から声がした。
「伊吹山さん!」
「ひゃい!」
ビックリしたふーみんが変な声を出して振り向いた。そこには八百津先生が立っていた。
「スカートの丈が短いですよ?」
「こ、これは今日から夏服だったから、たまたまで」
「直してください」
「ハイ」
素直に直すふーみん。
たまたま上げてみせただけの場面を目撃されるなんて、ついてないねふーみん。バツが悪そうだから助けてあげようか。
「あおたんは」
「先生ですよ。海津さん」
「せんせーは膝が出ててもいいんですか?」
今日のあおたんは白のブラウスに紺のタイトスカートという取り合わせだ。そのスカートの裾からは膝が覗いている。
「・・・・・・先生、美術部の見回りがありますので」180度回転した先生はスタスタと去って行ってしまった。逃げたな、あおたん。
先生が行ってしまったのを確認してふーみんが声を上げた。
「ほらーっ!絶対言われるでしょ!どこかから監視してるの⁉」確かにあおたんはいつの間にか部室の入り口に立っていることが多い。なんで気配消してるの?
「なんでだろうねぇ、膝くらい出ててもいいと思うんだけど、」お菓子を摘まみながら応えたはなっち。
「スカートの丈に厳しいかと思えば、学校でお菓子食べても何も言われないでしょ?変じゃない?私、上級生がお菓子食べてるの初めて見た時ビックリしたんだから」
「私もー。教室で初めてお菓子食べた時は、何か言われるんじゃないかってドキドキしてたよー」
今はそんな気配、これっぽっちも残って無いよ。はなっち。彼女はまたお菓子を頬張った。
「中学の頃とはだいぶ違うねー」
「このスマホだってそうよ。中学の頃って学校に持って行くのも禁止されてなかった?」
「そう、そう」
下敷きであおぎながらかいちょが言う。
「うちの高校はそういうところ、結構寛大ですね。昔の校風がどうだったのかは分かりませんが、生徒たちの要望を生徒会が学校側へ上げる事で今の様な校則になったのではないでしょうか?」
アタシもかいちょに続く。
「義務教育の間はどうしたって生徒には厳しくならざるおえないんだよ。いろんな子がいるからね。高校だと入試試験があるから集まってくるのは同じくらいの考え方を持った子達になる。例えばふーみんはいつも食べ終えたお菓子の袋は部室のゴミ箱に捨てずに持ち帰ってるでしょ?」
「まあね。部室は鍵かけてるから、ここに捨てるといつまでも残ったままじゃない」
「はなっちはお菓子を食べこぼしてもちゃんと拾ってくれるじゃん。かいちょだって最後の戸締りの前には椅子とか整頓して出てくるでしょ?そういう所なんだよ。この学校には気遣いが当たり前に出来る子達が試験によって寄り分けられて集まってるんだ。だから問題も起こさないし、先生達もある程度寛大に見ていてくれる」
「アンタは何もしてないわよね」
「アタシは部長ですからね。指導係さ。何かあれば注意しないといけないから、見守る事に忙しい。あー、いそがし」
「またそうやって・・・・・・アンタだけはみ出してる様に見えるのよ」
かいちょがフフッと笑って言う。
「手前みそになってしまいますが、うちの高校はそういった意味でかなり優秀だと思いますよ」
「じゃあ、スカートの丈だって自由にしてくれてもいいじゃない。だれも極端に短くしようなんて思ってないんだから」
「そこはもう最後の砦なのさ。色々要望は聞いてあげたけど、これだけは何としても!何としても守り抜く!という先生達の決意」
「なんの決意よ。意味ない」
「意味はあるよ」アタシはイスから立ちあがった。
腰をねじり、反動を付けてから勢いよく逆回転。スカートがふわりと舞って涼しい。
「こんな事しても見えないからね」
「いや、見えてたわよ。おもいっきり」
「え?ナハハハ、」
今日はどんなの穿いてたっけ?
「アニメならどんなに短いスカートを穿いてたっていいけどね。絶対めくれ上がらない様に重力が発生するスカートや、磁場を形成して布が体にフィットしたり、謎の光によって絶対ガードしてくれたり、そんな技術ないんだよ?現実には。先生達がそれらに代わる最終防衛装置なのさ」
「またアンタは、なんでもアニメに繋げる」
「スカートの丈が長くたっていいじゃないか。最近のアニメでもスカートの丈は長くなる傾向にあるよ?少し前かがみになっただけで見えるんじゃないかっていう露骨に短い物は、そういう趣旨のアニメぐらいでしか見れなくなってきてる。それに長いとお嬢様みたいでしょ?」
アタシはその場でうやうやしくお辞儀してみせた。
「ごきげんよう。」
はなっちが素早く察して合わせてくれる。
「ごきげんよう。」
「あら。貴方、タイが曲がっていてよ?」曲っていたところで見た目に変化の無い紅ショウガを直す。
「お姉さま、ありがとうございます。ほほほ」
「どういたしまして。ほほほ」
「・・・・・・アンタ達何してるのよ」
「お嬢様学校ごっこ」
「お嬢様だって言うのなら、もっと丈はスネ辺りまで長くないと。ひざ丈だと、どっち付かずで中途半端なのよッ」
どうにもならない事を考えすぎて熱くなってきたのか、ふーみんがバタバタとスカートをはためかせた。
(ふーみんも見えてるぞ)
6月1日
今日は雑用だった。倉庫から古いスコップを出しておけだと。雪かきの時に使うヤツだが、今どきのプラスチックで出来たカラフルなもんじゃねぇ。昔ながらの鉄で出来た真四角の頑丈なヤツだ。それを刃物の様に刃先を研いでおけだとよ。ああ、何に使うか想像しちまった。
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ふーみんがスカートの両端を摘まんでみせた。
「私だって制服が可愛いければ、このままでも良かったのよ?」
「うちの制服ってちょっとアレだよねー」言葉を濁したはなっち。オシャレに興味のないアタシでも言わんとするところは分かるよ。
「知ってる?このリボン」
今度は首元から垂れ下がるリボンを摘まんでみせる。うちの制服のリボンは赤い紐状のものだ。
「紅ショウガって言われてるんだよ?」
「プッ!」いや、かいちょ笑ってるけど『デカイたこ焼きの上に紅ショウガ乗ってる』とか男子達に陰で言われてるんじゃないの?今日はブラウンのベスト着てるから色合い的にもそのままじゃないか。
「なんで普通のカワイイ感じのにしなかったんだろうねぇ」
「それにこのスカート」ふーみんが腰を回転させスカートをはためかせた。
「長過ぎよね?」
「だよねぇー」
まあ、不満な点があるとアレもコレもと欠点ばかりに目がいってしまうのはしょうがないか。
「ふーみんはギャルになりたいと、」
「そんな事言ってないわよ。ただ、いい感じの長さってあるでしょ?」
そう言った彼女はスカートの腰の部分を折りたたんで、膝が出るくらいにスカートを上げた。
「ほら!」
「うん。わかるぅ」はなっちが大きくうなづいている。
「うちの学校、膝が出てると必ず先生達が注意してくるでしょ?膝くらい出してもいいと思わない?」
いきなり入口の方から声がした。
「伊吹山さん!」
「ひゃい!」
ビックリしたふーみんが変な声を出して振り向いた。そこには八百津先生が立っていた。
「スカートの丈が短いですよ?」
「こ、これは今日から夏服だったから、たまたまで」
「直してください」
「ハイ」
素直に直すふーみん。
たまたま上げてみせただけの場面を目撃されるなんて、ついてないねふーみん。バツが悪そうだから助けてあげようか。
「あおたんは」
「先生ですよ。海津さん」
「せんせーは膝が出ててもいいんですか?」
今日のあおたんは白のブラウスに紺のタイトスカートという取り合わせだ。そのスカートの裾からは膝が覗いている。
「・・・・・・先生、美術部の見回りがありますので」180度回転した先生はスタスタと去って行ってしまった。逃げたな、あおたん。
先生が行ってしまったのを確認してふーみんが声を上げた。
「ほらーっ!絶対言われるでしょ!どこかから監視してるの⁉」確かにあおたんはいつの間にか部室の入り口に立っていることが多い。なんで気配消してるの?
「なんでだろうねぇ、膝くらい出ててもいいと思うんだけど、」お菓子を摘まみながら応えたはなっち。
「スカートの丈に厳しいかと思えば、学校でお菓子食べても何も言われないでしょ?変じゃない?私、上級生がお菓子食べてるの初めて見た時ビックリしたんだから」
「私もー。教室で初めてお菓子食べた時は、何か言われるんじゃないかってドキドキしてたよー」
今はそんな気配、これっぽっちも残って無いよ。はなっち。彼女はまたお菓子を頬張った。
「中学の頃とはだいぶ違うねー」
「このスマホだってそうよ。中学の頃って学校に持って行くのも禁止されてなかった?」
「そう、そう」
下敷きであおぎながらかいちょが言う。
「うちの高校はそういうところ、結構寛大ですね。昔の校風がどうだったのかは分かりませんが、生徒たちの要望を生徒会が学校側へ上げる事で今の様な校則になったのではないでしょうか?」
アタシもかいちょに続く。
「義務教育の間はどうしたって生徒には厳しくならざるおえないんだよ。いろんな子がいるからね。高校だと入試試験があるから集まってくるのは同じくらいの考え方を持った子達になる。例えばふーみんはいつも食べ終えたお菓子の袋は部室のゴミ箱に捨てずに持ち帰ってるでしょ?」
「まあね。部室は鍵かけてるから、ここに捨てるといつまでも残ったままじゃない」
「はなっちはお菓子を食べこぼしてもちゃんと拾ってくれるじゃん。かいちょだって最後の戸締りの前には椅子とか整頓して出てくるでしょ?そういう所なんだよ。この学校には気遣いが当たり前に出来る子達が試験によって寄り分けられて集まってるんだ。だから問題も起こさないし、先生達もある程度寛大に見ていてくれる」
「アンタは何もしてないわよね」
「アタシは部長ですからね。指導係さ。何かあれば注意しないといけないから、見守る事に忙しい。あー、いそがし」
「またそうやって・・・・・・アンタだけはみ出してる様に見えるのよ」
かいちょがフフッと笑って言う。
「手前みそになってしまいますが、うちの高校はそういった意味でかなり優秀だと思いますよ」
「じゃあ、スカートの丈だって自由にしてくれてもいいじゃない。だれも極端に短くしようなんて思ってないんだから」
「そこはもう最後の砦なのさ。色々要望は聞いてあげたけど、これだけは何としても!何としても守り抜く!という先生達の決意」
「なんの決意よ。意味ない」
「意味はあるよ」アタシはイスから立ちあがった。
腰をねじり、反動を付けてから勢いよく逆回転。スカートがふわりと舞って涼しい。
「こんな事しても見えないからね」
「いや、見えてたわよ。おもいっきり」
「え?ナハハハ、」
今日はどんなの穿いてたっけ?
「アニメならどんなに短いスカートを穿いてたっていいけどね。絶対めくれ上がらない様に重力が発生するスカートや、磁場を形成して布が体にフィットしたり、謎の光によって絶対ガードしてくれたり、そんな技術ないんだよ?現実には。先生達がそれらに代わる最終防衛装置なのさ」
「またアンタは、なんでもアニメに繋げる」
「スカートの丈が長くたっていいじゃないか。最近のアニメでもスカートの丈は長くなる傾向にあるよ?少し前かがみになっただけで見えるんじゃないかっていう露骨に短い物は、そういう趣旨のアニメぐらいでしか見れなくなってきてる。それに長いとお嬢様みたいでしょ?」
アタシはその場でうやうやしくお辞儀してみせた。
「ごきげんよう。」
はなっちが素早く察して合わせてくれる。
「ごきげんよう。」
「あら。貴方、タイが曲がっていてよ?」曲っていたところで見た目に変化の無い紅ショウガを直す。
「お姉さま、ありがとうございます。ほほほ」
「どういたしまして。ほほほ」
「・・・・・・アンタ達何してるのよ」
「お嬢様学校ごっこ」
「お嬢様だって言うのなら、もっと丈はスネ辺りまで長くないと。ひざ丈だと、どっち付かずで中途半端なのよッ」
どうにもならない事を考えすぎて熱くなってきたのか、ふーみんがバタバタとスカートをはためかせた。
(ふーみんも見えてるぞ)
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