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「今のゾンビものの主流は未知のウイルスが題材になっているけど、アタシはもしゾンビが街に溢れるのならウイルスなんかじゃなくプリオンが本命になるんじゃないかと思ってる」
「ぷりおん?」
「プリオンというのはタンパク質の一種だよ。通常のタンパク質が変異したものでコレが脳内に蓄積すると脳神経が破壊されてしまうんだ。クールー病はねプリオンによって引き起こされる病気なんだよ。プリオン病とも言われてる」
アタシは自分の頭をコツコツと指さした。
「脳は体の司令塔だからそこがやられると上手く歩けなくなったり、言葉が出て来なくなったり、感情もコントロールできなくなったり様々な症状が現れるのさ」
「そのプリオンがなんで脳に蓄積されるのよ」
「プリオンはさっき言った様にタンパク質なんだ。お肉だよ。肉。プリオンを摂取、つまり人食する事で蓄積されるよ。変異体のプリオンを宿してないといけないけどね。昔、人食を繰り返した事でタンパク質が変異してプリオンを宿す人は居たんだよ」
「うぅ~・・・・・・」
ふーみんがお腹を押さえた。
「さすがに気持ち悪くなってきた、」
ボリボリボリ、
そのふーみんの隣では、はなっちがケロリとした表情でお菓子をむさぼっている。
(はなっちは食いしん坊通り過ぎて、食に貪欲過ぎるよ)
「人が人を食べるなんて、精神異常者が起こす犯罪じゃない。確かそんな映画あったわよね」
ふーみんからは楽しげな表情は消えているが、最後までこちらの話を聞くつもりでいるらしい。
アタシは応えた。
「正確に言うと精神異常や飢餓でしょうがなくといった場合はカニバリズムとは呼ばないんだ。今では考えられないけど、昔は人が人を食べる行為というのは意外に世界各地であったんだよ」
ふーみんがだるそうに髪をかき上げた。
「まあ、あと少しだから最後まで聞いてって」
彼女はお腹の中に溜まった悪いものを吐き出す様に「はぁー」と深く息を吐いた。
「プリオン病ならすでに発見されている病気だから未知のウイルスでもなんでもない。ゾンビ発生は現実に起こり得ると言ってもいいでしょ?」
「十分可能性はあるかもしれないわ。でも大昔の病気なんでしょ?人を食べるなんて今じゃ考えられない。それに」と視線がまたホワイトボードに向く。
「ゾンビと呼ぶのはオーバーなんじゃない?例えば何で噛まれたら噛まれた方が感染するのよ。摂取する事で発症するなら逆でしょ」
「プリオンはたんぱく質の一種だから接種しなければ発病はしない。ウイルスと違って空気感染も起こらない。ただ血液や体液での感染は起こすだろうと言われてる。これがどういう事か分かる?」
ふーみんの眉間にしわが寄る。
「噛まれたら感染するのね」
「そう。しかもプリオンというのは他の正常なたんぱく質にも伝播して変異させてしまうという特質を持っているんだ。噛まれた後、何も口にしなかったとしても」
「いずれゾンビ化する・・・・・・」
ふーみんがまた「はぁー」と息を吐いた。
「じゃあ、食べ物を求めて徘徊するのは?人じゃなくたって普通の食べ物でいいでしょ」
「もちろん何でも食べると思うよ。ただ、人を襲うというのは本能によるものだと思う。ふーみんはカマキリが共食いするって聞いた事ない?」
「ああ、小学校の理科で聞いた気がするわ」
「共食いというのはね、必要な栄養素を手っ取り早く摂取できる手段なんだよ。ニンジンやジャガイモなどの野菜を食べるにせよ牛や豚、ニワトリなどの肉を食べるにせよ、栄養というのはその食べ物によって偏りがある。けど、自分と同じ個体が目の前にいるのならそれは自身を形作る栄養素その物だからね。脳の理性をつかさどる部分が破壊されれば本能、食欲のままに人を襲う事は考えられる」
ふーみんがまたお腹をさすっている。気持ち悪そうにしながらそれでも聞いてくる。
「ゾンビ同士で共食いをしないのは?理性なんて無いんでしょ?」
「その答は、」ボリボリとまだお菓子をむさぼっているはなっちと目が合った。
アタシは体をぐにゃりと曲げてみせた。
「はなっちはゾンビのアタシと、健康で美味しそうなふーみん。食べるならどっちがいい?」
お菓子を摘まんだままの指がふーみんを指す。ちょっと食べるのやめなさい。
「ね?健康な人が居ればそっちを狙うだろうというのが私の持論だよ。健康な人がいなくなるまでゾンビは襲ってくると思うよ。ゾンビしかいないのであれば共食いも始まるかもしれないけど」
これだけゾンビの可能性を検証していっても、ふーみは全て否定する様に首を振った。
「そのプリオンを摂らなければいいんでしょ?やっぱりゾンビなんて発生しないわ」
「確かに。けど、故意にプリオンがばらまかれてしまったとしたら?知らないうちにある食品に混ぜられたとしても普通は気付かない。タンパク質だからね。気付いた時には世界にゾンビが溢れていて次々に人を襲って増えていく」
「それこそ映画の中の話よ。あるわけない」
「可能性の話だよ。けど、現実に起こらないとは言えない。このコ○ナウイルスによって変わってしまった世界ではね。何が起きてもおかしくない。パンデミックによって見える部分も見えない部分も様々な所で異変が起きてしまった。今のところは何とか平穏に見えていても、ちょっと社会のバランスが崩れてしまえば次は耐えられるかな?」
ふーみは伏し目になって床を見つめていた。
(苦手な人にまで自分の主張を通そうとするのはオタクの悪い所だね)
「まあ、こんなのはただの空想だよ。誰も世界にゾンビが溢れるのを望んだりしないから」
アタシは目を閉じて耳をふさいだままでいるかいちょの肩をトントンと叩いた。
「え?終わったんですか?」
「終わったよ。」
キーン、コーン、カーン、コーン
丁度チャイムも鳴っている。
「ぷりおん?」
「プリオンというのはタンパク質の一種だよ。通常のタンパク質が変異したものでコレが脳内に蓄積すると脳神経が破壊されてしまうんだ。クールー病はねプリオンによって引き起こされる病気なんだよ。プリオン病とも言われてる」
アタシは自分の頭をコツコツと指さした。
「脳は体の司令塔だからそこがやられると上手く歩けなくなったり、言葉が出て来なくなったり、感情もコントロールできなくなったり様々な症状が現れるのさ」
「そのプリオンがなんで脳に蓄積されるのよ」
「プリオンはさっき言った様にタンパク質なんだ。お肉だよ。肉。プリオンを摂取、つまり人食する事で蓄積されるよ。変異体のプリオンを宿してないといけないけどね。昔、人食を繰り返した事でタンパク質が変異してプリオンを宿す人は居たんだよ」
「うぅ~・・・・・・」
ふーみんがお腹を押さえた。
「さすがに気持ち悪くなってきた、」
ボリボリボリ、
そのふーみんの隣では、はなっちがケロリとした表情でお菓子をむさぼっている。
(はなっちは食いしん坊通り過ぎて、食に貪欲過ぎるよ)
「人が人を食べるなんて、精神異常者が起こす犯罪じゃない。確かそんな映画あったわよね」
ふーみんからは楽しげな表情は消えているが、最後までこちらの話を聞くつもりでいるらしい。
アタシは応えた。
「正確に言うと精神異常や飢餓でしょうがなくといった場合はカニバリズムとは呼ばないんだ。今では考えられないけど、昔は人が人を食べる行為というのは意外に世界各地であったんだよ」
ふーみんがだるそうに髪をかき上げた。
「まあ、あと少しだから最後まで聞いてって」
彼女はお腹の中に溜まった悪いものを吐き出す様に「はぁー」と深く息を吐いた。
「プリオン病ならすでに発見されている病気だから未知のウイルスでもなんでもない。ゾンビ発生は現実に起こり得ると言ってもいいでしょ?」
「十分可能性はあるかもしれないわ。でも大昔の病気なんでしょ?人を食べるなんて今じゃ考えられない。それに」と視線がまたホワイトボードに向く。
「ゾンビと呼ぶのはオーバーなんじゃない?例えば何で噛まれたら噛まれた方が感染するのよ。摂取する事で発症するなら逆でしょ」
「プリオンはたんぱく質の一種だから接種しなければ発病はしない。ウイルスと違って空気感染も起こらない。ただ血液や体液での感染は起こすだろうと言われてる。これがどういう事か分かる?」
ふーみんの眉間にしわが寄る。
「噛まれたら感染するのね」
「そう。しかもプリオンというのは他の正常なたんぱく質にも伝播して変異させてしまうという特質を持っているんだ。噛まれた後、何も口にしなかったとしても」
「いずれゾンビ化する・・・・・・」
ふーみんがまた「はぁー」と息を吐いた。
「じゃあ、食べ物を求めて徘徊するのは?人じゃなくたって普通の食べ物でいいでしょ」
「もちろん何でも食べると思うよ。ただ、人を襲うというのは本能によるものだと思う。ふーみんはカマキリが共食いするって聞いた事ない?」
「ああ、小学校の理科で聞いた気がするわ」
「共食いというのはね、必要な栄養素を手っ取り早く摂取できる手段なんだよ。ニンジンやジャガイモなどの野菜を食べるにせよ牛や豚、ニワトリなどの肉を食べるにせよ、栄養というのはその食べ物によって偏りがある。けど、自分と同じ個体が目の前にいるのならそれは自身を形作る栄養素その物だからね。脳の理性をつかさどる部分が破壊されれば本能、食欲のままに人を襲う事は考えられる」
ふーみんがまたお腹をさすっている。気持ち悪そうにしながらそれでも聞いてくる。
「ゾンビ同士で共食いをしないのは?理性なんて無いんでしょ?」
「その答は、」ボリボリとまだお菓子をむさぼっているはなっちと目が合った。
アタシは体をぐにゃりと曲げてみせた。
「はなっちはゾンビのアタシと、健康で美味しそうなふーみん。食べるならどっちがいい?」
お菓子を摘まんだままの指がふーみんを指す。ちょっと食べるのやめなさい。
「ね?健康な人が居ればそっちを狙うだろうというのが私の持論だよ。健康な人がいなくなるまでゾンビは襲ってくると思うよ。ゾンビしかいないのであれば共食いも始まるかもしれないけど」
これだけゾンビの可能性を検証していっても、ふーみは全て否定する様に首を振った。
「そのプリオンを摂らなければいいんでしょ?やっぱりゾンビなんて発生しないわ」
「確かに。けど、故意にプリオンがばらまかれてしまったとしたら?知らないうちにある食品に混ぜられたとしても普通は気付かない。タンパク質だからね。気付いた時には世界にゾンビが溢れていて次々に人を襲って増えていく」
「それこそ映画の中の話よ。あるわけない」
「可能性の話だよ。けど、現実に起こらないとは言えない。このコ○ナウイルスによって変わってしまった世界ではね。何が起きてもおかしくない。パンデミックによって見える部分も見えない部分も様々な所で異変が起きてしまった。今のところは何とか平穏に見えていても、ちょっと社会のバランスが崩れてしまえば次は耐えられるかな?」
ふーみは伏し目になって床を見つめていた。
(苦手な人にまで自分の主張を通そうとするのはオタクの悪い所だね)
「まあ、こんなのはただの空想だよ。誰も世界にゾンビが溢れるのを望んだりしないから」
アタシは目を閉じて耳をふさいだままでいるかいちょの肩をトントンと叩いた。
「え?終わったんですか?」
「終わったよ。」
キーン、コーン、カーン、コーン
丁度チャイムも鳴っている。
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