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てる 7
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「今から約千年前の平安時代。私の祖先、源頼光(みなもとのよりみつ)は朝廷の命を受け鬼退治に向かったわ。当時、大江山に酒吞童子という鬼の大将がいて、、、」
十時が私の腕を引っ張り、話を止めた。
「おおえやま?ってどこにあるんですか?実際にあります?」
「実際にあるわ。京都の海側、若狭湾の少し西にある山よ。」
彼女の表情が怪しい。眉間にしわを寄せている。
「京都の海側?大阪の方ですか?」
私は頭を振ってみせた。
「学校行かないから、そんな恥ずかしい事言えるのよ」
「えー、自分の住んでる地域以外なんて頭に入ってませんよー」
「京都の北部は日本海に面しているでしょ?」
「ん?京都って海に面してましたっけ?」
「さすがにアナタ勉強不足よ、、、でも、京都といえばあの観光地が真っ先に思い浮かぶから無理はないかもね」
十時が肩をグイグイと当ててくる。
「でしょ?」
気を取り直し、
「大江山がある辺りは昔、豊岡藩が治めていた地域よ。明治になって廃藩置県により暫くは豊岡県が置かれていたんだけれど、その県も数年で廃止されて地域が分割されたの。その内の丹後と丹波と呼ばれていた地域が京都に編入されたのよ。京都の人も後から編入されたから、変に意識しているみたいね」
「輝さん、さっすがー」
「ハァ、、、ご先祖様の話とか歴史に興味ないの?」
「ありますって!」
少し声を張り上げてしまったのを気にして、十時はまた小声に戻った。
「、、、けど私が金太郎の子孫だって知ったの、ついこの間ですよ?」
「あの人は、全然そう言うこと教えなかったのね」
十時がじっとこちらを見てくるので話を戻した。
「平安の時代、京の都では多くの男女が行方不明になる事件が起きたそうよ。その原因を陰陽師 安倍晴明に占ってもらうと、大江山に住む酒吞童子の仕業であると出た。そこで朝廷は源頼光に命じて鬼を討伐することにしたの。頼光は配下の四天王、、、アナタの祖先、坂田金時らと共に大江山に向かった」
「ご先祖、本当にいたんだぁ」
「この時の討伐隊は50人ほどいたそうよ。その内、何名かの子孫はアナタと同じように今も退魔師として働いてもらっているわ」
「未だに続いているんですね、そういうのって。でも50人って多くないですか?その酒吞童子を倒すにしたって」
「鬼は酒吞童子だけではないわよ?酒吞童子は多くの鬼を従えていたんだから」
「そうなんですか⁉なんでその時代ってそんなに鬼だらけなんです?」
「この頃、京都では天然痘が流行して多くの死者を出したそうよ。そういう社会不安が邪気を多く生む事に繋がったんでしょうね」
「あぁ、さっきの地震の話も」
地震などの自然災害や戦争、疫病の流行、邪気が多く発生する度に人々は鬼を祓ってきた。私達の仕事だ。
「ご先祖様達は大江山に行く道中、3人の不思議な老人に出会ったそうよ。その3人は熊野、八幡、住吉、それぞれの神様達が老人の姿に化けたものだったの」
「輝さーん、さすがにそれはウソ臭くないですかぁ?」
「何が?」
「いやぁ、だって神様ですよ?」
「アナタ邪気が見えてるのに、そういうの信じないのね」
「邪気は邪気ですよ。私には見えてるから、それは存在するものとして確定です。けど、神様は流石に見たことないですもん。実際に会えたのなら信じますけど、」
「だったら伊勢神宮で会えるといいわね」
私が笑ったのを見て小バカにされたと感じたのか、十時が腕をぎゅっと掴んできた。
「昔ばなしもそんなにバカにできないものよ。例えばさっき言った熊野神(くまののかみ)は海を司るスサノオだと言われている。八幡神(やはたのかみ)は元をたどると海の神だと言われ、住吉三神(すみよしさんじん)はイザナギが禊(みそぎ)をした際に海から現れた神々だと言われているわ。どの神々も海にまつわるものよ。だから鬼退治で有名な桃太郎の話では出てくるのが大江山ではなく、海を渡って鬼ヶ島に行くストーリーになっているんじゃないかしら?海を越える事は神々に認めてもらった証でもあるのよ。アナタも読んだら?桃太郎」
「あー、今のは確実にバカにしてますね。童話はいいから、続きを教えてください。」
ふくれる十時をなだめ、続きを語る。
「その3人の老人から頼光は3つの宝を貰ったそうよ。一つは神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)これは鬼を眠らせるお酒だと言われてる。もう一つが打銚子(うちでうし)お酒を注ぐ酒器の事だけど、これで注がれたお酒は尽きる事が無いと言われたそうよ。最後に星兜(ほしかぶと)この兜は矢や槍を通さない頑丈な兜だったと言われてるわ」
「やっぱりウソ臭くないですか?」
「何が?」
「だってお酒と兜ですよ?もっと、、、ほら、、、なんかいいものくださいよ。神様なんだから」
「その宝があったからこそ、無事に鬼退治が出来たと言ってもいいくらいに役立ったのよ?」
「そうかもしれないですけどぉ、そもそも神様いるなら直接鬼退治してくれればいいじゃないですかぁ」
「身も蓋もないわね、、、けど、言いたい事は分かるわ」
「でしょ?そういうところが、神様なんていないんじゃないかって思うところなんですよ」
「神様というのは、人間を直接助けたりしない、見守るだけの存在なのかしらね、、、」
十時の方が今の時代の考えを表しているのかもしれない。小さなころから神道を教え込まれた私の方がマイノリティなんだろう。
十時が私の腕を引っ張り、話を止めた。
「おおえやま?ってどこにあるんですか?実際にあります?」
「実際にあるわ。京都の海側、若狭湾の少し西にある山よ。」
彼女の表情が怪しい。眉間にしわを寄せている。
「京都の海側?大阪の方ですか?」
私は頭を振ってみせた。
「学校行かないから、そんな恥ずかしい事言えるのよ」
「えー、自分の住んでる地域以外なんて頭に入ってませんよー」
「京都の北部は日本海に面しているでしょ?」
「ん?京都って海に面してましたっけ?」
「さすがにアナタ勉強不足よ、、、でも、京都といえばあの観光地が真っ先に思い浮かぶから無理はないかもね」
十時が肩をグイグイと当ててくる。
「でしょ?」
気を取り直し、
「大江山がある辺りは昔、豊岡藩が治めていた地域よ。明治になって廃藩置県により暫くは豊岡県が置かれていたんだけれど、その県も数年で廃止されて地域が分割されたの。その内の丹後と丹波と呼ばれていた地域が京都に編入されたのよ。京都の人も後から編入されたから、変に意識しているみたいね」
「輝さん、さっすがー」
「ハァ、、、ご先祖様の話とか歴史に興味ないの?」
「ありますって!」
少し声を張り上げてしまったのを気にして、十時はまた小声に戻った。
「、、、けど私が金太郎の子孫だって知ったの、ついこの間ですよ?」
「あの人は、全然そう言うこと教えなかったのね」
十時がじっとこちらを見てくるので話を戻した。
「平安の時代、京の都では多くの男女が行方不明になる事件が起きたそうよ。その原因を陰陽師 安倍晴明に占ってもらうと、大江山に住む酒吞童子の仕業であると出た。そこで朝廷は源頼光に命じて鬼を討伐することにしたの。頼光は配下の四天王、、、アナタの祖先、坂田金時らと共に大江山に向かった」
「ご先祖、本当にいたんだぁ」
「この時の討伐隊は50人ほどいたそうよ。その内、何名かの子孫はアナタと同じように今も退魔師として働いてもらっているわ」
「未だに続いているんですね、そういうのって。でも50人って多くないですか?その酒吞童子を倒すにしたって」
「鬼は酒吞童子だけではないわよ?酒吞童子は多くの鬼を従えていたんだから」
「そうなんですか⁉なんでその時代ってそんなに鬼だらけなんです?」
「この頃、京都では天然痘が流行して多くの死者を出したそうよ。そういう社会不安が邪気を多く生む事に繋がったんでしょうね」
「あぁ、さっきの地震の話も」
地震などの自然災害や戦争、疫病の流行、邪気が多く発生する度に人々は鬼を祓ってきた。私達の仕事だ。
「ご先祖様達は大江山に行く道中、3人の不思議な老人に出会ったそうよ。その3人は熊野、八幡、住吉、それぞれの神様達が老人の姿に化けたものだったの」
「輝さーん、さすがにそれはウソ臭くないですかぁ?」
「何が?」
「いやぁ、だって神様ですよ?」
「アナタ邪気が見えてるのに、そういうの信じないのね」
「邪気は邪気ですよ。私には見えてるから、それは存在するものとして確定です。けど、神様は流石に見たことないですもん。実際に会えたのなら信じますけど、」
「だったら伊勢神宮で会えるといいわね」
私が笑ったのを見て小バカにされたと感じたのか、十時が腕をぎゅっと掴んできた。
「昔ばなしもそんなにバカにできないものよ。例えばさっき言った熊野神(くまののかみ)は海を司るスサノオだと言われている。八幡神(やはたのかみ)は元をたどると海の神だと言われ、住吉三神(すみよしさんじん)はイザナギが禊(みそぎ)をした際に海から現れた神々だと言われているわ。どの神々も海にまつわるものよ。だから鬼退治で有名な桃太郎の話では出てくるのが大江山ではなく、海を渡って鬼ヶ島に行くストーリーになっているんじゃないかしら?海を越える事は神々に認めてもらった証でもあるのよ。アナタも読んだら?桃太郎」
「あー、今のは確実にバカにしてますね。童話はいいから、続きを教えてください。」
ふくれる十時をなだめ、続きを語る。
「その3人の老人から頼光は3つの宝を貰ったそうよ。一つは神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)これは鬼を眠らせるお酒だと言われてる。もう一つが打銚子(うちでうし)お酒を注ぐ酒器の事だけど、これで注がれたお酒は尽きる事が無いと言われたそうよ。最後に星兜(ほしかぶと)この兜は矢や槍を通さない頑丈な兜だったと言われてるわ」
「やっぱりウソ臭くないですか?」
「何が?」
「だってお酒と兜ですよ?もっと、、、ほら、、、なんかいいものくださいよ。神様なんだから」
「その宝があったからこそ、無事に鬼退治が出来たと言ってもいいくらいに役立ったのよ?」
「そうかもしれないですけどぉ、そもそも神様いるなら直接鬼退治してくれればいいじゃないですかぁ」
「身も蓋もないわね、、、けど、言いたい事は分かるわ」
「でしょ?そういうところが、神様なんていないんじゃないかって思うところなんですよ」
「神様というのは、人間を直接助けたりしない、見守るだけの存在なのかしらね、、、」
十時の方が今の時代の考えを表しているのかもしれない。小さなころから神道を教え込まれた私の方がマイノリティなんだろう。
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