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出席番号8
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ドン!
「あっ、」
「おっと、ゴメン。大丈夫?」
後ろに居た私に気付くことなくぶつかってきたのは、違うクラスの男子だ。彼は私の事など知らないだろうが、私は彼の事をよく知っている。と言うより女子なら誰もが彼の事は知っている。彼はこの学校の人気者だ。
「だいじょうぶです」
謝りつつ、私は直ぐに身を引いた。
一緒にいた彼の友達がすかさずフォローする。
「オイ、オイ、お前意外と鈍いな。それでもうちのバスケ部のエースか?」
「うるせぇ」
そのまま二人はじゃれ合いながら、こちらの事など気にする様子も無く行ってしまった。
「いいわぁ・・・・・・」
思わずため息の様な呟きが漏れた。
彼はバスケ部に入っていて背が高く、それに手足もスラッと長くてスタイルがいい。加えて誰もが認める端正な顔つきで、女子達のあこがれの的だ。
私も彼の事はイケメンだと認めている。もし、彼女になってその隣を歩けたのなら、優越感に満たされる事だろう。
しかし!私は彼の事を恋愛対象とは見ていない。このため息は彼女になれたらなんてありきたりな感情なんかじゃない!もっと崇高で、尊いモノ。
私はじゃれ合うあの男子二人の関係に得も言われぬトキメキを感じてしまうのだ。出来る事なら壁にでもなってそっと気付かれないように側で見守っていたい!
(いいわぁ!いいわぁ!鈍いなんて言って一見、茶化している様でも、実は私の様なお邪魔虫が寄り付かないように、常にガードしてるのよね。気が気じゃないんだわ!そうよ!だってあんなイケメンなんだから!でも、守られている事に全然気付いてないのよね。無自覚!なんて罪作りなの!?それなのによくもまぁ、まるで穢れの無いさわやかな笑顔ができるわね!良き!それが実に良き!無自覚王子と献身的な番犬!)
妄想がはかどりすぎてヤバイ。
ドン!
「いたっ!」
妄想の途中で、また誰かが私にぶつかってきた。
「ちょっと!ぼさっと突っ立って、邪魔なんですけど」
「ごめんなさい、」
見ると、ぶつかってきたのは1年生の女子だった。
私はただ静かに立っていただけだというのにそっちからぶつかっておいて、しかも先輩である私に随分な言い草だ。
(怖っわ!なに?この1年、こっわ!)
彼女は謝ることなくスタスタと歩いて行く。その方角はさっきの男子2人組が歩いて行ったほう。
(あぁ・・・・・・)
やはり彼は人気者だ。こうやってこっそり後を付ける追っかけまで要るのだから。
(やめとけばいいのに)
あれだけのイケメンだと、浮いた話の2つや3つ・・・・・・いや、4つや5つはありそうなものだけど、そんな話は聞いたことがない。ただ1つ、バスケ部のマネージャーと、できているのではないかというウワサは聞いた事がある。
あんなイケメンが、次々に言い寄って来るであろう女子達に見向きもしないで、そのマネージャーと密かに交際しているのだとしたら、普通の女子では取りつく島もない。そんな事情をあの1年生はまだ入学したばかりで知らないのだろう。
(やっぱり恋愛なんてするものじゃないわ。眺めて楽しむくらいが私には丁度合ってる)
気を取り直し、私はお昼のパンを買うため購買部へ向かった。
購買部まで来ると、自販機の前で男子2人がじゃれ合っているのを見つけた。私のセンサーが鋭く反応する!
「オレ、今日誕生日だからおごってくれよ」
「は?ウソつけ」
そのやり取りを私は後ろで静かに眺めた。
元々、私は見た目が地味だ。影が薄いとよく言われる。
しかし、こういう時その体質が役に立つ。静かに立って気配を消していると、警戒されずに観察対象の素の様子を近くから覗く事が出来る。
まぁ、さっきのように気配を消しすぎて、ぶつかられる事はしょっちゅうだが・・・・・・
「ホントだって」
「いやいや。俺、お前の誕生日覚えてるし」
「ハァ?なんだよ。面白くねぇな」
2人のやり取りを静かに眺めながら、逆に心の中は激しく興奮した!
(ハァァァァ―――!?なんで男友達の誕生日覚えてるの!!どういう関係?ねぇ!二人はどういう関係なの!?もしかして付き合ってる??リアルBLなんて初めて!!いや、いや、いや、焦るな私っ!この状況をよく見なさい!)
ジュースをタカってきた男子は、親しげに肩を組み友達に寄りかかっている。それは恋人同士というよりは、親しい友人に接する感じだ。それはいい。だがタカられた方は迷惑そうにしながらも、まんざらでもない感じに見えた。
(ハイ!確定っ!この恋、片思い!タカられ男子の秘めた片思い頂きましたっ!!誕生日を覚えてるって事はつい最近出来た友達って訳じゃないよね?男子がわざわざ誕生日教えるわけないもん。幼馴染?二人は幼なじみで、小中高とずっと一緒に居たんでしょ?その間いつもタカられて、渋々与え続けているうちに淡い感情が芽生えたんでしょ?母性!それ、母性だからっ!母性か恋愛感情か分かってない女子なんて沢山いるし男子なら余計に分かんなくて当然!求められれば与えて、与える事に喜びを感じているから抜け出せなくなる。わかる!分かるよっ!その気持ちっ)
ぷしゅ!
ゴク、ゴク、ゴク、
ジュースを買ったタカられ男子が、喉を鳴らしてそれを飲み始めた。
「おい、一人で飲むなよ」
「しょうがないなぁ、ほら」
彼らは1本のジュースを回し飲みしている。
(ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッッッッ!!!!)
私の思考はパンクした。
(ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!)
この出会いに私は、ただただ感謝した。
(今日は大収穫!!)
いま味わった感動をすぐにでも共有しなくては!
スマホを取り出し、指を震わせつつ文章を急いで打つ!いま見た事ありのままに・・・・・・えーと、まぁ、少し主観は加えるけれども。
その文章をSNSに上げると、すぐさま反応が返ってきた。
ピコン♪
「感謝!!!!!!」
ピコン♪
「興奮して、穴という穴から汁が出た!」
ピコン♪
「このネタ、同人誌に使わせてもらってもよろしいでしょうか?」
ピコン♪
「マジで神!いつもどうやってこんなネタ仕入れてくるの?壁になって近くで見ていた様な臨場感!」
ピコン♪
「もう壁じゃんw」
(通知が止まらなぁ―――い!!)
同じ趣向を持った人達からSNSで承認される快感ときたら!!ヘタな恋愛するより数倍興奮する!
(これだから人間観察はやめられないのよ!!)
「あっ、」
「おっと、ゴメン。大丈夫?」
後ろに居た私に気付くことなくぶつかってきたのは、違うクラスの男子だ。彼は私の事など知らないだろうが、私は彼の事をよく知っている。と言うより女子なら誰もが彼の事は知っている。彼はこの学校の人気者だ。
「だいじょうぶです」
謝りつつ、私は直ぐに身を引いた。
一緒にいた彼の友達がすかさずフォローする。
「オイ、オイ、お前意外と鈍いな。それでもうちのバスケ部のエースか?」
「うるせぇ」
そのまま二人はじゃれ合いながら、こちらの事など気にする様子も無く行ってしまった。
「いいわぁ・・・・・・」
思わずため息の様な呟きが漏れた。
彼はバスケ部に入っていて背が高く、それに手足もスラッと長くてスタイルがいい。加えて誰もが認める端正な顔つきで、女子達のあこがれの的だ。
私も彼の事はイケメンだと認めている。もし、彼女になってその隣を歩けたのなら、優越感に満たされる事だろう。
しかし!私は彼の事を恋愛対象とは見ていない。このため息は彼女になれたらなんてありきたりな感情なんかじゃない!もっと崇高で、尊いモノ。
私はじゃれ合うあの男子二人の関係に得も言われぬトキメキを感じてしまうのだ。出来る事なら壁にでもなってそっと気付かれないように側で見守っていたい!
(いいわぁ!いいわぁ!鈍いなんて言って一見、茶化している様でも、実は私の様なお邪魔虫が寄り付かないように、常にガードしてるのよね。気が気じゃないんだわ!そうよ!だってあんなイケメンなんだから!でも、守られている事に全然気付いてないのよね。無自覚!なんて罪作りなの!?それなのによくもまぁ、まるで穢れの無いさわやかな笑顔ができるわね!良き!それが実に良き!無自覚王子と献身的な番犬!)
妄想がはかどりすぎてヤバイ。
ドン!
「いたっ!」
妄想の途中で、また誰かが私にぶつかってきた。
「ちょっと!ぼさっと突っ立って、邪魔なんですけど」
「ごめんなさい、」
見ると、ぶつかってきたのは1年生の女子だった。
私はただ静かに立っていただけだというのにそっちからぶつかっておいて、しかも先輩である私に随分な言い草だ。
(怖っわ!なに?この1年、こっわ!)
彼女は謝ることなくスタスタと歩いて行く。その方角はさっきの男子2人組が歩いて行ったほう。
(あぁ・・・・・・)
やはり彼は人気者だ。こうやってこっそり後を付ける追っかけまで要るのだから。
(やめとけばいいのに)
あれだけのイケメンだと、浮いた話の2つや3つ・・・・・・いや、4つや5つはありそうなものだけど、そんな話は聞いたことがない。ただ1つ、バスケ部のマネージャーと、できているのではないかというウワサは聞いた事がある。
あんなイケメンが、次々に言い寄って来るであろう女子達に見向きもしないで、そのマネージャーと密かに交際しているのだとしたら、普通の女子では取りつく島もない。そんな事情をあの1年生はまだ入学したばかりで知らないのだろう。
(やっぱり恋愛なんてするものじゃないわ。眺めて楽しむくらいが私には丁度合ってる)
気を取り直し、私はお昼のパンを買うため購買部へ向かった。
購買部まで来ると、自販機の前で男子2人がじゃれ合っているのを見つけた。私のセンサーが鋭く反応する!
「オレ、今日誕生日だからおごってくれよ」
「は?ウソつけ」
そのやり取りを私は後ろで静かに眺めた。
元々、私は見た目が地味だ。影が薄いとよく言われる。
しかし、こういう時その体質が役に立つ。静かに立って気配を消していると、警戒されずに観察対象の素の様子を近くから覗く事が出来る。
まぁ、さっきのように気配を消しすぎて、ぶつかられる事はしょっちゅうだが・・・・・・
「ホントだって」
「いやいや。俺、お前の誕生日覚えてるし」
「ハァ?なんだよ。面白くねぇな」
2人のやり取りを静かに眺めながら、逆に心の中は激しく興奮した!
(ハァァァァ―――!?なんで男友達の誕生日覚えてるの!!どういう関係?ねぇ!二人はどういう関係なの!?もしかして付き合ってる??リアルBLなんて初めて!!いや、いや、いや、焦るな私っ!この状況をよく見なさい!)
ジュースをタカってきた男子は、親しげに肩を組み友達に寄りかかっている。それは恋人同士というよりは、親しい友人に接する感じだ。それはいい。だがタカられた方は迷惑そうにしながらも、まんざらでもない感じに見えた。
(ハイ!確定っ!この恋、片思い!タカられ男子の秘めた片思い頂きましたっ!!誕生日を覚えてるって事はつい最近出来た友達って訳じゃないよね?男子がわざわざ誕生日教えるわけないもん。幼馴染?二人は幼なじみで、小中高とずっと一緒に居たんでしょ?その間いつもタカられて、渋々与え続けているうちに淡い感情が芽生えたんでしょ?母性!それ、母性だからっ!母性か恋愛感情か分かってない女子なんて沢山いるし男子なら余計に分かんなくて当然!求められれば与えて、与える事に喜びを感じているから抜け出せなくなる。わかる!分かるよっ!その気持ちっ)
ぷしゅ!
ゴク、ゴク、ゴク、
ジュースを買ったタカられ男子が、喉を鳴らしてそれを飲み始めた。
「おい、一人で飲むなよ」
「しょうがないなぁ、ほら」
彼らは1本のジュースを回し飲みしている。
(ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッッッッ!!!!)
私の思考はパンクした。
(ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!ありがとうございますっ!)
この出会いに私は、ただただ感謝した。
(今日は大収穫!!)
いま味わった感動をすぐにでも共有しなくては!
スマホを取り出し、指を震わせつつ文章を急いで打つ!いま見た事ありのままに・・・・・・えーと、まぁ、少し主観は加えるけれども。
その文章をSNSに上げると、すぐさま反応が返ってきた。
ピコン♪
「感謝!!!!!!」
ピコン♪
「興奮して、穴という穴から汁が出た!」
ピコン♪
「このネタ、同人誌に使わせてもらってもよろしいでしょうか?」
ピコン♪
「マジで神!いつもどうやってこんなネタ仕入れてくるの?壁になって近くで見ていた様な臨場感!」
ピコン♪
「もう壁じゃんw」
(通知が止まらなぁ―――い!!)
同じ趣向を持った人達からSNSで承認される快感ときたら!!ヘタな恋愛するより数倍興奮する!
(これだから人間観察はやめられないのよ!!)
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