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第9章 第1節 奏太の告白!?~それぞれの選択

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アナンは奏太との話を終えた後、おじいちゃんの研究所から出ていった。アナンは今、ボルトン部隊長との対話を思い出している。



時は少し遡る。

ボルトン部隊長から、奏太とあおいが逃げ去り、アナンが立ち去った直後のこと……。

ボルトンはメガネ型通信機の機能を使って、未来の世界にいるタイムポリス総監のマゼランに連絡をとった。

ボルトン「総監、報告することがあります。今、未来にいるため通信障害が起こるので、手短に言います。アナンが裏切りました」

マゼラン総監「まさか……あのアナンが。まさかスパイだったのか?」

ボルトン「否定できません。いざという時は、アナンを処分いたします」

総監「まあ待て、あいつのことはよく知ってるだろ。アナンについては慎重に対処してくれ。判断を誤れば、我らの首だって危うくなるからな」

ボルトン「しかし総監、決まりは決まりです。アナンの家系がなんであろうと私は、連邦憲章を遵守し、やつを厳しく処分すべきと考えます」



ボルトンはいわゆる強硬派と言われている。正義感は強く、世界秩序を維持するタイムポリスや連邦防衛軍への忠誠心は誰よりも強い。そのため、タイムポリスの総監や連邦防衛軍の長官からも一目置かれていた。しかし総監はボルトンを説得した。

マゼラン総監「もちろん連邦憲章は遵守すべきだ。ただ裏切り行為と決めつけるには時期尚早だ。確実な証拠をつかんでからだ」

ボルトン「悠長なことを言っていると手遅れになるかもしれませんぞ。総監」

マゼラン総監「アナンのことは後回しだ。タイプワープを試みた女とその仲間を捕まえるのが先だ。アナンのことは後で処分を考えようじゃないか」



『ちっ』

内心、ボルトンは思った。それでは手遅れになるではないかと……。

ボルトン部隊長は、総監の指示に従わず、いざとなったら、独自の行動をすると決意した。



* *  *



奏太はアナンと別れた後、自宅に戻り、客間に入って、あおいの様子を見てみた。あおいは気持ちよさそうに眠っている。アナンの言うとおり、あおいは大丈夫そうだ。

「さて、これからどうするか……」

奏太はこれからのことをしばし考えていた。



……それから20分ほど時間が経過し、深夜0時を過ぎた。

「ふああ」

なんとあおいがあくびをして、目覚めたのだ。

「あれ? あたし。こんなところで、なんで寝てるんだろう?」

「目が覚めたか、あおいちゃん!」

「ん、奏太。ここはどこ? あたし、なんで寝てたんだっけ?」

「光線銃で撃たれて気を失い、俺んちの客間で休んでいたんだよ」

「あ! そういえば……」

あおいは思い出した。たしか奏太をかばって、光線に撃たれて……。

「あたし、大丈夫だったんだあ」

「おぼえていたかい。俺たち二人が逃げるとき、実はタイムポリスのアナンっていう、若い奴が助けてくれたんだ」

「そうだったんだ……」

あおいは、これ以上奏太に危険な目に合わせてはいけない。話せる範囲で奏太に真実を話そうと思った。

「奏太、あたし、実は本当はね……」

「あおいちゃん、未来からやってきたんだろ?」

「あれ~、やっぱりばれちゃってたんだあ」

「もしやって思ってたよ。やつら、タイムポリスも未来からやってきたようなこと、言ってたしね」

「そうかあ、しかしなんで、あたしを捕まえにきたのかなあ。あの人たちのこと全然しらないし、何も悪いことしてないのになあ」



奏太は考えた。あおいの様子を見る限り、タイムポリスを本当にしらないようだ。とてもやつらと同じ時代からやってきたとは思えない。タイムワープが極刑ということもまったくわかっていない様子だ。むしろ、未来人というよりも現代人にはるかに近いように思える。

「あおいちゃん、やつらのこと、本当にしらないのか?」

「うん、タイムポリスなんて初めて聞いた」



あおいは、携帯を取り出して、今の時間を確認した。

「あ、もうこんな時間なの!」

「あおいちゃん、その携帯HDK社製だね」

「うん、そうだよ。3年くらい前からずっと使っているのかな。日記も携帯アプリで書いててね。毎日起きたことを、日記につけているんだあ」



奏太は思った。HDK社と言ったらこの時代にもある携帯会社だ。しかもあの機種は現代のタイプと変わらない。奏太はアナンの話を思い出している。タイムマシンは今から250年後でないとつくれないと聞いている。そのためタイムポリスは、あおいが24世紀からやってきた者と思っているようだ。しかしあおいを見る限り、どう見ても現代人だ。たまに霊界通信や如意棒ペンの使い方を知っていて驚くこともあるが、この時代の流行にも詳しく、現代人にしか思えない。

あおいはごく最近の時代からタイムワープしてきたのではないかと奏太は思っている。しかし21世紀では、タイムマシンを開発するのは不可能とアナンは断言している。



同時に、あおいも今、思っていることがあった。

(未来からやってきたことは、奏太にばれちゃったけど……。あたしが栄一お兄ちゃんの妹ってこと、まだ奏太はきづいていないみたいだね……)

あおいは心の中でほっとした。

「あたし、長居していると奏太に迷惑かけるから、今日はそろそろ帰ろうかな」

あおいがベットからおきあがると……

「あ……」

あおいはくらっとした。

あおいは布団から起き上がろうとしたけど、立ち眩みが起きた。

「あおいちゃん、無理しちゃいけないよ。今日は泊まっていったら。もう深夜だし、最終電車もとっくに出ちゃってるしね」

「奏太、なにそれー。それってもしや……あたしを誘ってるのかな?」

あおいはにやにやして、奏太をからかった。

「い、いや、そんなつもりじゃないよ。ただ無理に歩いて大丈夫かなって思っただけだよ。それに俺の家は広いから、この部屋を使ってもいいと思ってね。もちろん、変なことしないから」

くすっとあおいは笑った。

「ありがとう、奏太の気持ち、うれしいよ。じゃあ、朝まで泊まっちゃおうかな。でも、変なことしちゃだめよ」

「あたりまえだろ!」

「じゃあ、俺、この部屋から出るから、ゆっくり休んでね」

「うん、お休み、奏太」

奏太は部屋から出ていき、あおいは再び眠りについた。





朝の6時になった。

「ふああ、よく寝た」

あおいは起きて廊下に出てみると、なんと部屋の前の廊下で奏太が寝ていた。奏太は明け方までずっと起きて、さっき寝付いたところだった。奏太は、いびきをかいてぐっすり寝ていた。

「きっと奏太、あたしが心配で、ずっと外で見守っていたんだろうな」

あおいはとてもうれしくなった。

「奏太ありがとう」

あおいは奏太に毛布をかけてあげた。



「それにしても汗でべとべとして……シャワーを浴びたいなあ。そうだ! 奏太の家のシャワー、借りちゃおっと! 着替えは、後で地下室に行って着替えようかな」

あおいは奏太の家を探検した。

「本当に広いなあ。奏太の家。どこに風呂場があるかわからないよ。あ、あったあった!」



あおいは風呂場に入ってシャワーを浴びた。そしてシャワーを浴びた後、洗濯場を通りかかると、洗濯物がたくさん積んであった。

「これって奏太のね。いっぱいたまってるじゃないの。よし!」

あおいは奏太の洗濯物をすべて洗濯機にかけて、庭に干した。

「あとは朝ごはんでもつくっちゃおうっかな。看病してくれたお礼にね!」

あおいは朝ごはんをつくりはじめた。



8時になった。奏太は起きて、洗濯場を通ると……。

「あれ? 洗濯物がない……」

するとキッチンからおいしいにおいがした。

「あれ? お母さん、帰ってきたのかな」

キッチンに行くと、なんとそこにはあおいがいた。

「あら、おはよう、奏太。朝ごはん、今、できたところよ!」

「え、あおいちゃん、どうして?」

「あたしを看病してくれたお礼よ! おかずは勝手に使っちゃったけどね」

「じゃあ、あの洗濯物も?」

「もちろん、全部洗濯しちゃったわよ!」

「い!」



奏太は慌てて庭に出た。すると奏太の洗濯物が全部干してあった。

「げ!」

なんと、奏太のトランクスまで干してあったのだ。

「まさか俺のトレパンまで……」

奏太は真っ赤になって再びキッチンに入った。

「あ、あおいちゃん、別にお礼なんていいよ。むしろ俺のほうが助けられてばかりだから……」

「あれこれ言わない! 朝ごはんつくっちゃったから、一緒に食べよう!」

奏太は赤くなったまま、椅子に座り、ご飯を食べた。

「あおいちゃん、おいしいよ!」

「奏太、うれしいよ」

奏太はとても幸せな気持ちだった。大好きなあおいの手料理が食べられて本当にうれしかった。そしてそれはあおいも一緒だった。



食事が終わり、二人は食後のコーヒーを飲んでいる。奏太はあおいがつくったコーヒーを飲みながら、ソファに座って静かにくつろいでいる。あおいはコーヒーを飲み終えて、台所で食器を洗っている。あおいが食器を洗っている後姿を見て、奏太は、あおいをとても愛おしい気持ちになった。



「あおいちゃん……」

「ん、なあに?」

あおいはちょうど食器を洗い終え、奏太の方を向いた。

「俺、ずっとこのまま……あおいちゃんと一緒にいたいな」
「え……」
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