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第8章 第4節 あおいは未来人!?~未来人との遭遇

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「これは……霊界通信機のセンサーではないか。今、俺が研究してつくろうとしている最も重要なセンサーが、不良品とはいえ、ガラクタ置き場から見つかるなんて……それにこの霊界通信機のセンサーの解説書……これも役に立ちそうだ……」

そのセンサーは大きいものではなかったので、奏太は、そのセンサーをズボンのポケットに入れた。





――奏太は地下室を出て、1階の本棚の倉庫に戻ってきて、扉を元どおり本棚で隠した。

そのとき、後ろから声がした。アナンだ。

アナン「どうでしたか」

奏太「……」

アナン「さすがに、頭の中が整理つかないようですね」



奏太は質問した。

奏太「おまえは、どうやってこの場所を見つけたんだ?」

アナン「数日前、彼女を街で偶然見つけてね。彼女をつけてきたら、ここに行き着いたのです」

奏太「そうか……やはり、あの地下室に住んでいたのはあおいちゃんだったんだね。今までずっと気づかなかったよ」

アナン「彼女のことについて、他に気づいたことはありましたか?」

奏太「あおいちゃんは俺たちとは違う時代、未来からやってきたんだね……」

アナン「そのとおりです。彼女は地下室にあったタイムマシンを使ってこの時代にやってきたと、私は考えていますよ」

奏太「しかしよくあの地下室を見つけたもんだな。研究所の玄関にはカギだってかかっているのに……」

アナン「私たちのいる未来の世界では、この時代の旧式のカギを開けるのは容易なことです。この研究所のカギだって、簡単に開けられますしね。それから隠し通路だって、このメガネを使えばすぐにわかりました。壁の隠し通路だって透けて見えるんです」

アナンはメガネを取り出して、奏太に見せた。

奏太「おまえも……未来からやってきたんだな」

アナン「想像に任せますと言いたいどころですが、まさに想像どおりです」

奏太「タイムポリスってやつらは、少なくとも近未来ではないしな。タイムマシンを作れるくらいだから、数百年後の未来からきたと思ってるよ。あおいちゃんもそうなのか?」

アナン「君の想像どおり、私たちタイムポリスは、300年後の世界からやって来ました。しかし彼女は、何やら事情が違うようです」

奏太「なに……」

アナン「彼女はどこから、どの時代からやって来たのかは、タイムポリスもまだつかめていないのです。それとあの地下室はどう見てもあなたのおじいちゃんがつくったものです。都合よくあの地下室に、タイムマシンがたどり着くのも不思議なことです。

彼女が使っていたタイムマシンは旧式タイプです。我々は新型の車型タイプのタイムマシンを使用していますが、この地下室にあるのは旧式の転送筒型タイプです。これは初期型のタイムマシン、つまり私のいる時代から五十年ほど前のタイプです。今の時代から250年後に作られたタイムマシンと考えています」

奏太「じゃあ彼女は250年後から?」

アナン「もう少しタイムマシンのことを調べないと断定はできないですが。いつの時代のタイムマシンで誰が設計したかは今、データを分析センターに送って、タイムポリスにも極秘で解析中です。そろそろ解明できるとは思うんですが。

それに……この謎の地下室も気になります。あなたのおじいちゃんが優秀な科学者だったとしても、21世紀では絶対にタイムマシンは作れません。しかし、あなたさえ知らない地下室にタイムマシンがあったのも事実です」

奏太「……」

アナン「ところであなたは、彼女と一緒に何かの実験をしていた様子ですが、どんな実験をしているのですか」



奏太はこのとき思った。

(こいつ、霊界通信機の実験については知らないようだな……地下室にあった霊界通信機のセンサーのこともこいつは知らないようだから、実験の中身までは話さないほうがよさそうだな)

奏太は、別の言い訳を考えた。

奏太「ああ、高校の物理実験をちょっと手伝ってもらっていてな。タイムマシンとは一切関係ねえしな」

アナン「そうですか。まあタイムマシンの開発は、この時代では無理ですからね。経緯はわからないですが、あなたは未来人の彼女を好きになり、一緒に実験することになったのですね」



奏太は少し赤くなって、下を向いた。

アナン「しかし彼女は未来人です。このまま一緒にいるわけにはいかないですよ。彼女は、やがて本来いる世界に戻らなくてはいけません。それとしばらく外出しない方がいいですよ。部隊長も必死に探しているし、他の隊員たちも探しているでしょうから」

奏太「そいつらはお前たちの仲間だろうが!」

アナン「あなたたちを助けてしまいましたから、私も今は、あなたたちと同じ追われる立場の身です」



アナンは少し笑った。

奏太「お前の目的はなんなんだ。奴らと同じように、あおいを捕まえに来たんじゃないのか?」

アナン「そのとおりです。しかし数日前に彼女を追跡して地下室を見つけて、気が変わったと言いますか……」

奏太「大丈夫なのか、俺たちをかくまったりして……」

アナン「何も私はまったく勝算がないとは思っていませんよ。ただ十分な確証が得られるまで、あと少しだけ時間が必要です。その前にあなたたちや、私が捕まったら、それこそ手遅れになります。だからあなたたちも、あと少しの時間だけ行動を控えてほしいのです。幸い、あなたの実家や研究所のことは、タイムポリスには知らせていません。この場所を知っているのは私だけですから」

奏太「俺たちをかくまってくれる気持ちはうれしいけど……ただ君はどうみても平隊員しか見えない……奴らの組織、いかれたおっさんの話からするとタイムポリスって国際的な組織だろ。それをひっくり返すことなんて不可能と思うが……」

アナン「私はこう見えても、私たちの世界で5台しかないタイムマシンの正式隊員に選ばれたエリート隊員です。それに私には、タイムポリストップの総監の決定をくつがえすルートを持っています。ただ確証がないと、連邦防衛軍が決定したことを覆すことはさすがに不可能です」

奏太「連邦防衛軍とは……話が大きすぎて俺にはもうわからねえな。でも、おまえを信じていいんだな」

アナン「そう思っていただけると助かります」

奏太「わかった。信じるよ」

アナン「それにしても、君を捕まえようとしている相手が連邦防衛軍と聞いても、堂々としているなんて、君は本当に心臓が強いんですね」

奏太「俺のおじいちゃんは、日本中のマスコミと大学の教授陣をすべて敵にしてな。おじいちゃんは日本中から叩かれ、俺たちの家族も叩かれ、父はそのことが原因で事故死した。俺は大きな権力の下で、でかい顔をしている奴らが一番嫌いなんだ」

アナン「あはは、私もですよ。お互い、気が合いますね」

奏太「何言ってるんだ。おまえはエリートで、しかも連邦防衛軍の決定を覆すルートをもっていると言ってたじゃないか。おまえこそ権力者の家系じゃないのか」

アナン「でもその権力者の孫である私のおかげで、あなたたちは守られているんですよ」

奏太「まあいい、でも本当にありがとうな」

アナン「なるべく、あなたたちの近くにいて見守っていますから」

奏太「あ、それなら俺よりも彼女を守ってくれ」

アナン「……了解しました。私は次の用事がありますので、今はこれで失礼します」





奏太は、アナンの説明と地下室の状況からわかったことがあった。

あおいちゃんは地下室のタイムマシンで未来からやってきたこと。

あおいを捕まえようとしているタイムポリスも未来からやってきたこと。

未来では、タイムマシンの使用は重罪で、あおいはその違反を破ってタイムワープし、この時代にやってきたこと。



ただ腑に落ちないことがまだある。

あおいはいつの未来から、何の目的でこの時代にやってきたのか。奏太とあおい、そしておじいちゃんとはどのようなつながりがあるのか?

それは奏太だけでなく、タイムポリスやアナンもいまだ解明できていない……。
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