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第6章 第1節 タイムポリス~未来からの来訪者
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ここは一体どこだろう。どこかの研究所の広い一室に見える。
この研究所は、超近代的な実験設備がそろっている。そして21世紀には存在しない地球最先端の発明品が大切に保管されている。どうやらこの世界は21世紀ではなく、数百年先の未来の地球だ。
今、研究所内の特別研究室に、80歳を超えている一人の科学者がいる。彼はこの研究所の所長らしい。そして室内には、その科学者の他に4名いる。
4名のうちの3名は、今でいえば警官か警備隊のような服装をしている。そして服の背中にはタイムポリスという文字が書かれている。彼らはタイムポリス、いわゆる「時の警察」と呼ばれている。頭には警察官が身に着けている帽子と似たキャップをかぶり、キャップの脇には星がついている。星の数が多いほど階級が上のようだ。
一人目はタイプポリス総監でキャップには星が七つあり、組織のトップである。
二人目の隊員には星が四つある。見た目の年齢は四十代。本部直属の部隊長であり、実行部隊のトップである。目は鷹たかのように鋭く、冷徹さが漂っている感じだ。
三人目はまだ二十歳ほどの若き隊員だ。若き隊員は先ほどの部隊長とは違い、目はとても澄んでいて、優しい好青年のように見える。若いながら大任に大抜擢され、ある特殊な任務を遂行している。彼はそのために、今ここに呼ばれているようだ。
そして室内にいる残りの一人は、軍服のような服をまとっている。胸には連邦防衛軍トップのバッチをつけている。彼は連邦防衛軍、最高責任者の司令長官だった。
連邦防衛軍とは地球の先進国、十カ国から構成されている。独裁国家や無神論国家の台頭、国家間の戦争の抑止、惑星破壊兵器や生物兵器などによるテロ攻撃の阻止を目的としてつくられた組織だ。いわゆる地球防衛軍のような存在である。
地球最先端の研究所のトップ、連邦防衛軍のトップ、そして謎の組織であるタイプポリスのトップが集まっていることは、地球にとって大変な事態が起きたことを意味している。
彼らは深刻そうな表情をしながら、空気中に映し出されている映像を見ていた。この映像は、あおいがタイムマシンを発進させるときに現れたパネルと同じ原理で映し出されている。
研究所の所長は細長い棒を持っている。その棒は、オーケストラで指揮者が手に持っている指揮棒にも見える。しかしそれは指揮棒ではない。空気中に映し出された映像を念ねんの力で操作するコントローラーだ。
研究所所長はコントローラーに「次の画面へ」という念を送った。すると空気中に映し出されていた映像が切り替わった。どうやら所長がコントローラーに強い思いを込めると、空気中に映し出される映像を操作できるようだ。
このコントローラーには、人の思いを感知して操作できる微細なセンサーが組み込まれていた。あおいがかぶっているキャップと同じ原理だ。
しばらく彼らの会話を聞いてみよう。
アイア研究所所長「時は21世紀の初旬。この時代の四次元時空間に人工的な歪ゆがみを探知した」
ケニー防衛軍長官「何者かがタイムワープを試みたというのだな」
アイア研究所所長「その可能性が極めて高いじゃろうな。時空間に現れた歪みは、タイムワープを行ったときに生じる歪みじゃ」
ケニー防衛軍長官「そうか、ところでタイムワープを試みたのはやはり、独裁国家ガドムの仕業か」
アイア研究所所長「それはわからんなあ。ただ分析にかなり手こずったが、昨日の深夜、解明できたことがある。この写真が時空間の歪みから一瞬だけとらえた映像じゃ。少し画質は悪いがな」
アイア所長は指揮棒に向けて「次の画面を映しなさい」と念じた。
すると空気中に次の新しい映像が映し出された。その映像を見た途端、ケニー防衛軍長官とタイムポリス隊の二人の隊員が顔をしかめた。スクリーンにはなんと女性の映像が現れたのだ。映像の画質は電波が乱れたテレビ画面のように、鮮明ではない。しかし映像には十代後半のキャップをかぶった少女の姿が明らかに映っていた。
ケニー防衛軍長官「女だと! 何で女が。しかもまだガキのようだぞ!」
アイア研究所所長「そうじゃ。私も目を疑った。タイムワープは国家機密そのものじゃ。その技術を保有しているのは連邦防衛軍直属の研究所と、連邦防衛軍が危惧している独裁国家ガドムくらいじゃろ。ただ独裁国家といえど、タイムワープは国際条例で禁止されている。奴らもやすやすと、タイムワープはできんと思っていたんじゃがな」
ケニー長官「しかしどうして少女なんだ。本当にガドムの手がかかったものなのか?」
ボルトン・タイムポリス部隊長「ケニー長官、油断してはなりませぬ。映像を見る限り十代後半のガキのようですが、特殊訓練を受けた諜報員ちょうほういんの可能性が高いでしょう」
マゼラン・タイムポリス総監「いずれにせよ、タイムワープ実験は連邦国家の最重要プロジェクトの一つだ。タイムワープは巨大な予算と科学力を必要とする。国家レベルの協力がないと実現できないものだ。そして過去に戻って歴史を変えることは禁止されている。核や細菌兵器の使用よりも重罪だ。極刑は免れないな」
ケニー防衛軍長官「こいつがワープした年は、特定できているのか?」
アイア研究所所長「それは確認できておる。2021年7月25日の正午ぐらいじゃ。まあ、8時間前後の時間の誤差はあるがな」
ボルトン・タイムポリス部隊長「どう、いたしましょうか。ケニー長官。ご決断を!」
ケニー防衛軍長官「もちろん、捕まえに行かねばならないだろう。過去に戻って、歴史を変えることは地球人類に対するテロ攻撃と一緒だからな。歴史を変えてしまえば、過去に崩壊した独裁国家が蘇よみがえって世界を支配し、人類を混沌へと貶おとしめることだってできる」
ここで若い隊員が口を挟んだ。
アナン隊員「しかし、私にはどう見ても、普通の少女にしか見えないのですが.……」
ボルトン・タイムポリス部隊長「普通の少女が、タイムマシンを持ってるわけないだろ。国家が絡んでいるに決まっている。油断させるために、若い女やガキをスパイに使うことは、昔から良くある常套手段だ」
アナン隊員「しかし……」
ボルトン部隊長はアナン隊員を戒めるように話す。
ボルトン・タイムポリス部隊長「アナンよ。そんな甘い考えでどうする。おまえも名誉あるタイムポリスの一員なんだぞ」。
アナン隊員「……」
ボルトン部隊長「それにタイムマシンの操縦者には経験、スキル以上に適正というものがある。そんなことくらい、おまえも知ってるだろ。だからこそおまえが、特殊隊員に選ばれたのだからな。あのガキの女だってきっと同じに決まっている。独裁国家ガドムの手のものだ」
アナンは黙っていた。それは映像に映っていた人物が、自分と少ししか変わらない年齢の少女だったこともある。しかしもう一つ気になっていたことがあった。それは少女がかぶっていたキャップだ。映像の画質が乱れていて、少しわかりづらかったが、あのキャップの独特のデザインが気になっていた。
アナン隊員は今まさに、心の中で考えていた。
――あのキャップは……。
ケニー防衛軍長官「ところでアイア所長。肝心のタイムワープの出発元は特定できたのか?」
アイア研究所所長「特定できとらん。出発元の特定は難しいじゃろ。もしタイムマシンが完全な四次元空間を通っていれば、我々とて発見できるものではない。
今回行われたタイムワープが不完全のようで、三次元と四次元の狭間はざまにひょっとり顔を出してきたときに、偶然見つけたものなんじゃ。どうやら時空間嵐に遭遇したようじゃな。その時に発生する独特の三次元周波をキャッチできたんじゃ」
マゼラン・タイムポリス総監「では、女が乗っていたタイムマシンは旧型か?」
アイア所長「そうじゃろうな。時空間嵐は三次元と四次元の境目でしか発生しない。時空の極度の歪みが起こす竜巻みたいなものじゃ。タイムワープ時の四次元変換が完全でないと、次元の境目にタイムマシンが顔を出してしまうことが起きるんじゃ。彼女が使っていたタイムマシンは旧型じゃろ」
ケニー防衛軍長官「ガドムのタイムワープの科学技術は、連邦防衛軍より五十年ほど遅れているとの報告もあった。旧型タイプからすると、やはりガドムの手がかかっているようだな」
ここでケニー長官が決断を下す。
ケニー防衛軍長官「タイムポリスに告ぐ。連邦防衛軍の許可なしでのタイムワープは連邦憲章違反であり、重罪だ。おまえたちはタイムワープして奴を引っ捕らえてくるんだ。
もし抵抗したり、歴史を大きく変える危険があると判断した場合は、その場で処分してもかまわん。歴史を大きく変えられるくらいなら、その場で消えてもらったほうがいい」
マゼラン・タイムポリス総監「了解した。直ちにここにいる部隊長と隊員、合わせて二名を21世紀に先に派遣して、奴を捕まえに行かせる。ところでアイア所長、奴がタイムワープで向かった先は解析できたか?」
アイア所長「それは解析できておる。時空間嵐でどうやら燃料容器のタンクが壊れたようじゃ。三次元と四次元空間の境目にしばらく燃料が漂っていたからのお。漏れた燃料の道筋を解析したら日本の千葉県、南井町付近であることがわかった。ここは田舎で海に近いが、人気のない林や森が多い。タイムマシンを隠すには最適な場所じゃろ」
ケニー長官「なんとしても探し出せ。今すぐ三百年前の日本にタイムワープし、女をできる限り引っ捕らえてこい。ガドムの思い通りにはさせてはならんぞ。出発の準備はできているな?」
ボルトン部隊長「できております。だからこそ運転手をここに連れてきました。二時間後に出発できます」
マゼラン総監「緊急事態だ。今すぐに動かせるタイムマシンは一台しかないが、大丈夫か?後から他の部隊にも出動を要請するが……」
ボルトン部隊長「マゼラン総監、女のガキ一人を捕まえるのに、俺たち二人だけで十分です。他の部隊が到着する前に、あのガキを必ず捕まえているでしょう。行くぞ! アナン」
アナン隊員「承知しました、ボルトン部隊長」
タイムポリスのボルトン部隊長とアナン隊員は、研究室を退出し、廊下を駆け足で走って、タイムマシンのある部屋に向かった。アナンは走りながら考えていた。
「彼女は本当に悪者なのか? それにあのキャップ……どこかで見たことがある……」
アナンは、彼女がガドムの手の者であるかに強い疑念を持っていた。そしてその予感は当たっていたのだ。それとアナンは少女のキャップを見て、何か思い当たることがあるようだった。
** *
一方あおいは、奏太との会話が終わった後、研究所の地下室に戻っていた。シャワーを浴びてジャージに着替え、ベッドに寝転んでいる。
あおい「あーあ。結局、実験機のこと、聞けなかったなあ」
あおいはこれからのことを考えていた。
この研究所は、超近代的な実験設備がそろっている。そして21世紀には存在しない地球最先端の発明品が大切に保管されている。どうやらこの世界は21世紀ではなく、数百年先の未来の地球だ。
今、研究所内の特別研究室に、80歳を超えている一人の科学者がいる。彼はこの研究所の所長らしい。そして室内には、その科学者の他に4名いる。
4名のうちの3名は、今でいえば警官か警備隊のような服装をしている。そして服の背中にはタイムポリスという文字が書かれている。彼らはタイムポリス、いわゆる「時の警察」と呼ばれている。頭には警察官が身に着けている帽子と似たキャップをかぶり、キャップの脇には星がついている。星の数が多いほど階級が上のようだ。
一人目はタイプポリス総監でキャップには星が七つあり、組織のトップである。
二人目の隊員には星が四つある。見た目の年齢は四十代。本部直属の部隊長であり、実行部隊のトップである。目は鷹たかのように鋭く、冷徹さが漂っている感じだ。
三人目はまだ二十歳ほどの若き隊員だ。若き隊員は先ほどの部隊長とは違い、目はとても澄んでいて、優しい好青年のように見える。若いながら大任に大抜擢され、ある特殊な任務を遂行している。彼はそのために、今ここに呼ばれているようだ。
そして室内にいる残りの一人は、軍服のような服をまとっている。胸には連邦防衛軍トップのバッチをつけている。彼は連邦防衛軍、最高責任者の司令長官だった。
連邦防衛軍とは地球の先進国、十カ国から構成されている。独裁国家や無神論国家の台頭、国家間の戦争の抑止、惑星破壊兵器や生物兵器などによるテロ攻撃の阻止を目的としてつくられた組織だ。いわゆる地球防衛軍のような存在である。
地球最先端の研究所のトップ、連邦防衛軍のトップ、そして謎の組織であるタイプポリスのトップが集まっていることは、地球にとって大変な事態が起きたことを意味している。
彼らは深刻そうな表情をしながら、空気中に映し出されている映像を見ていた。この映像は、あおいがタイムマシンを発進させるときに現れたパネルと同じ原理で映し出されている。
研究所の所長は細長い棒を持っている。その棒は、オーケストラで指揮者が手に持っている指揮棒にも見える。しかしそれは指揮棒ではない。空気中に映し出された映像を念ねんの力で操作するコントローラーだ。
研究所所長はコントローラーに「次の画面へ」という念を送った。すると空気中に映し出されていた映像が切り替わった。どうやら所長がコントローラーに強い思いを込めると、空気中に映し出される映像を操作できるようだ。
このコントローラーには、人の思いを感知して操作できる微細なセンサーが組み込まれていた。あおいがかぶっているキャップと同じ原理だ。
しばらく彼らの会話を聞いてみよう。
アイア研究所所長「時は21世紀の初旬。この時代の四次元時空間に人工的な歪ゆがみを探知した」
ケニー防衛軍長官「何者かがタイムワープを試みたというのだな」
アイア研究所所長「その可能性が極めて高いじゃろうな。時空間に現れた歪みは、タイムワープを行ったときに生じる歪みじゃ」
ケニー防衛軍長官「そうか、ところでタイムワープを試みたのはやはり、独裁国家ガドムの仕業か」
アイア研究所所長「それはわからんなあ。ただ分析にかなり手こずったが、昨日の深夜、解明できたことがある。この写真が時空間の歪みから一瞬だけとらえた映像じゃ。少し画質は悪いがな」
アイア所長は指揮棒に向けて「次の画面を映しなさい」と念じた。
すると空気中に次の新しい映像が映し出された。その映像を見た途端、ケニー防衛軍長官とタイムポリス隊の二人の隊員が顔をしかめた。スクリーンにはなんと女性の映像が現れたのだ。映像の画質は電波が乱れたテレビ画面のように、鮮明ではない。しかし映像には十代後半のキャップをかぶった少女の姿が明らかに映っていた。
ケニー防衛軍長官「女だと! 何で女が。しかもまだガキのようだぞ!」
アイア研究所所長「そうじゃ。私も目を疑った。タイムワープは国家機密そのものじゃ。その技術を保有しているのは連邦防衛軍直属の研究所と、連邦防衛軍が危惧している独裁国家ガドムくらいじゃろ。ただ独裁国家といえど、タイムワープは国際条例で禁止されている。奴らもやすやすと、タイムワープはできんと思っていたんじゃがな」
ケニー長官「しかしどうして少女なんだ。本当にガドムの手がかかったものなのか?」
ボルトン・タイムポリス部隊長「ケニー長官、油断してはなりませぬ。映像を見る限り十代後半のガキのようですが、特殊訓練を受けた諜報員ちょうほういんの可能性が高いでしょう」
マゼラン・タイムポリス総監「いずれにせよ、タイムワープ実験は連邦国家の最重要プロジェクトの一つだ。タイムワープは巨大な予算と科学力を必要とする。国家レベルの協力がないと実現できないものだ。そして過去に戻って歴史を変えることは禁止されている。核や細菌兵器の使用よりも重罪だ。極刑は免れないな」
ケニー防衛軍長官「こいつがワープした年は、特定できているのか?」
アイア研究所所長「それは確認できておる。2021年7月25日の正午ぐらいじゃ。まあ、8時間前後の時間の誤差はあるがな」
ボルトン・タイムポリス部隊長「どう、いたしましょうか。ケニー長官。ご決断を!」
ケニー防衛軍長官「もちろん、捕まえに行かねばならないだろう。過去に戻って、歴史を変えることは地球人類に対するテロ攻撃と一緒だからな。歴史を変えてしまえば、過去に崩壊した独裁国家が蘇よみがえって世界を支配し、人類を混沌へと貶おとしめることだってできる」
ここで若い隊員が口を挟んだ。
アナン隊員「しかし、私にはどう見ても、普通の少女にしか見えないのですが.……」
ボルトン・タイムポリス部隊長「普通の少女が、タイムマシンを持ってるわけないだろ。国家が絡んでいるに決まっている。油断させるために、若い女やガキをスパイに使うことは、昔から良くある常套手段だ」
アナン隊員「しかし……」
ボルトン部隊長はアナン隊員を戒めるように話す。
ボルトン・タイムポリス部隊長「アナンよ。そんな甘い考えでどうする。おまえも名誉あるタイムポリスの一員なんだぞ」。
アナン隊員「……」
ボルトン部隊長「それにタイムマシンの操縦者には経験、スキル以上に適正というものがある。そんなことくらい、おまえも知ってるだろ。だからこそおまえが、特殊隊員に選ばれたのだからな。あのガキの女だってきっと同じに決まっている。独裁国家ガドムの手のものだ」
アナンは黙っていた。それは映像に映っていた人物が、自分と少ししか変わらない年齢の少女だったこともある。しかしもう一つ気になっていたことがあった。それは少女がかぶっていたキャップだ。映像の画質が乱れていて、少しわかりづらかったが、あのキャップの独特のデザインが気になっていた。
アナン隊員は今まさに、心の中で考えていた。
――あのキャップは……。
ケニー防衛軍長官「ところでアイア所長。肝心のタイムワープの出発元は特定できたのか?」
アイア研究所所長「特定できとらん。出発元の特定は難しいじゃろ。もしタイムマシンが完全な四次元空間を通っていれば、我々とて発見できるものではない。
今回行われたタイムワープが不完全のようで、三次元と四次元の狭間はざまにひょっとり顔を出してきたときに、偶然見つけたものなんじゃ。どうやら時空間嵐に遭遇したようじゃな。その時に発生する独特の三次元周波をキャッチできたんじゃ」
マゼラン・タイムポリス総監「では、女が乗っていたタイムマシンは旧型か?」
アイア所長「そうじゃろうな。時空間嵐は三次元と四次元の境目でしか発生しない。時空の極度の歪みが起こす竜巻みたいなものじゃ。タイムワープ時の四次元変換が完全でないと、次元の境目にタイムマシンが顔を出してしまうことが起きるんじゃ。彼女が使っていたタイムマシンは旧型じゃろ」
ケニー防衛軍長官「ガドムのタイムワープの科学技術は、連邦防衛軍より五十年ほど遅れているとの報告もあった。旧型タイプからすると、やはりガドムの手がかかっているようだな」
ここでケニー長官が決断を下す。
ケニー防衛軍長官「タイムポリスに告ぐ。連邦防衛軍の許可なしでのタイムワープは連邦憲章違反であり、重罪だ。おまえたちはタイムワープして奴を引っ捕らえてくるんだ。
もし抵抗したり、歴史を大きく変える危険があると判断した場合は、その場で処分してもかまわん。歴史を大きく変えられるくらいなら、その場で消えてもらったほうがいい」
マゼラン・タイムポリス総監「了解した。直ちにここにいる部隊長と隊員、合わせて二名を21世紀に先に派遣して、奴を捕まえに行かせる。ところでアイア所長、奴がタイムワープで向かった先は解析できたか?」
アイア所長「それは解析できておる。時空間嵐でどうやら燃料容器のタンクが壊れたようじゃ。三次元と四次元空間の境目にしばらく燃料が漂っていたからのお。漏れた燃料の道筋を解析したら日本の千葉県、南井町付近であることがわかった。ここは田舎で海に近いが、人気のない林や森が多い。タイムマシンを隠すには最適な場所じゃろ」
ケニー長官「なんとしても探し出せ。今すぐ三百年前の日本にタイムワープし、女をできる限り引っ捕らえてこい。ガドムの思い通りにはさせてはならんぞ。出発の準備はできているな?」
ボルトン部隊長「できております。だからこそ運転手をここに連れてきました。二時間後に出発できます」
マゼラン総監「緊急事態だ。今すぐに動かせるタイムマシンは一台しかないが、大丈夫か?後から他の部隊にも出動を要請するが……」
ボルトン部隊長「マゼラン総監、女のガキ一人を捕まえるのに、俺たち二人だけで十分です。他の部隊が到着する前に、あのガキを必ず捕まえているでしょう。行くぞ! アナン」
アナン隊員「承知しました、ボルトン部隊長」
タイムポリスのボルトン部隊長とアナン隊員は、研究室を退出し、廊下を駆け足で走って、タイムマシンのある部屋に向かった。アナンは走りながら考えていた。
「彼女は本当に悪者なのか? それにあのキャップ……どこかで見たことがある……」
アナンは、彼女がガドムの手の者であるかに強い疑念を持っていた。そしてその予感は当たっていたのだ。それとアナンは少女のキャップを見て、何か思い当たることがあるようだった。
** *
一方あおいは、奏太との会話が終わった後、研究所の地下室に戻っていた。シャワーを浴びてジャージに着替え、ベッドに寝転んでいる。
あおい「あーあ。結局、実験機のこと、聞けなかったなあ」
あおいはこれからのことを考えていた。
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