世界の終わりでキスをして

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2度目の失恋1

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朝から、俺はドキドキしっぱなしだった。
朝起きたら流華がいるなんて、夢みたいな話しだ。

昨日の夜はよく眠れなかった。

まだ朝の5時だが目が覚めてしまったので、水でも飲もうと2階の部屋から1階へ行くと、玄関のドアがガチャリと開いて、流華が外から中へ入ってきた。

「流華、、、?」
こんな朝早くに何処へ行っていたのかと思って俺はびっくりする。

「おはよう。恭弥。朝早いわね。」
「いや、流華こそどうしたの?」
「私?私は毎朝ジョギングを日課にしてるのよ。」
「そうなんだ、凄いね!俺なんてジョギング始めても大体3日坊主だよ。」
「大した事ないわ。10キロぐらいだから。」
「10キロ!?毎朝?」
「毎朝、かかさず。」

俺が驚いて止まっていると、流華が顔の汗を拭きながら言ってくる。

「シャワー借りてもいいかな?」
「ど、どうぞ。」

しかし、ストイックだな。10キロを毎日、、、。

なんというか流華はつけいる隙が全くない。
流華はどうして、流華の様な人間になったのか?
知りたいけど、知るのが怖いような。
今まで出会ってきた人間の中でこんな完璧な人いただろうか?
まじでロボットなんじゃないかと思う。

月曜日。
俺は流華と里さんの作ってくれた朝ご飯を食べて、新宿駅へ向かう。

今日も1コマ目から、講義だった。
もちろん今日も新宿駅は人でごった返している。
「1コマ目からだと、これだから困るんだよな~この人ゴミどうにかしてくれないかな。」
俺がうんざりしながら言うと流華は
「そう?私は好きよ。この人ごみ。
活気があって、これだけの人が一気にこんなに集まるなんて素晴らしい光景だわ。」

と意味不明な事を言う。
「何それ?流華は変わってるね。こんな朝のラッシュが好きな人なんていないよ普通。」

「そうね。私の住んでいた所は人口が少なかったせいかもね。」
と言う。

「そうか、東北って言ってたもんね、実家。それは人少なさそうだね。」
なんだ、流華も普通の若い女の子の感覚があったのか。
人の多い都会に憧れていたなんて。

俺達は、大学まで一緒に行ってその後別れる。
流華とは違う講義を取っている。
そこに、須羽がきた。

「おい!見てたぞ。朝から流華ちゃんと仲良く登校かよ。なんなんだよ、BBQの時あんなに篠田さんと流華ちゃんが良い感じでやきもちやいてたのに。なんだかんだ、上手くいってんじゃん!」

と言ってくる。
「ちげーよ。けど今うちに住んでる。」
俺がそう言うと、須羽は心底驚いた顔をしている。

「嘘だろ?お前んち実家じゃん。何?もう親も公認って事?」
須羽はが俺に詰め寄る。
「そんなんじゃないよ、水漏れだと。」
「み、水漏れ?」
俺は須羽になんで同居する事になったか説明する。

「成る程ねぇ。そうゆういきさつがあったのかあ。でも、それお前にとったら大チャンスじゃん!距離を縮めるチャンス!!」

須羽が目を輝かせながら言ってくる。
「俺もそれは思ったが、そんな簡単じゃないんだ。わかるか?相手は普通の女の子じゃない。加々美 流華だ。一緒に住んだ所で、つけいる隙なんて全くない。」

「そうなの?でもバイトも一緒で、家も同じなら自然と距離縮まるもんだろ?おまけに、お前の所親父さんそんな帰ってこないんだろ?かなりラッキーじゃん。」

「里さんがいるけどな。」
「ああ、里さんか。」
どっちにしろ、俺は長期戦で行くしかないと思った。

徐々に距離を縮めていって、自然といつも側にいて、気づいたらいなきゃ困る存在になる。

それが1番良い作戦だ。我ながら良く考えた。

そう思って1人で納得していると、2コマ目の講義で、また流華と一緒になる。
流華は須羽の隣に座り須羽に聞く。

「ねえ、須羽君。篠田さんって彼女いるの?」
須羽は飲んでいた、コーヒーを吐き出しそうになっている。
俺の方に目配せをしながら答える。
「い、いや?今は彼女いないって聞いた事あるけど?」

いや、そこはいるだろ!!
何正直に答えてるんだよ!!バカなのか須羽は!

「何?流華ちゃんもしかして、篠田さんの事気になってるの?」
須羽が確信に迫る事を聞く。
俺は心臓がバクバクする。と言うか、心臓が痛い。

「気になってるわ。篠田さんどうゆう人がタイプなの?」

終わった、、、。
失恋確定だ、、、。
いや?もっと前に失恋してたか、、、?
俺は殆ど抜け殻になった。

「篠田さんのタイプ、、、?う~ん。前の彼女とかは、普通に美人で優しそうな感じだったかな?スポーツかなんかやっていて、休日はよく2人でアウトドアするとか言ってたな?」

「ふーん。スポーツとアウトドアね、ありがとう。」
流華が須羽に微笑む。

「流華ちゃ~ん!何なに!まじで篠田さん狙ってくの?流華ちゃん、篠田さんみたいのがタイプだったんだね!カッコいいもんね。わかるよ!わかる。男でも惚れちゃうよ。いやぁ、頑張ってね!」

何応援してんだよ!
俺は須羽に思わずツッコミそうになる。
「私は、狙った物は必ず落とすから。」

流華が言い切る。
流華が言うなら、そうなんだろう。本当に篠田さんと付き合う事になるんだろう。

俺は一言も言葉を発せず、そのまま魂が抜けた状態になった。

健一叔父さんが言っていたが、何がなんでも手に入れろって、かなり無理があるだろう。

特に流華みたいなタイプを振り向かせる方法なんて、俺の数少ない恋愛テクニックでは、無理だ。

「恭弥。」
流華が俺に話しかける。
いっその事、あの日渋谷駅で会わなければ良かったのか、、、。
そしたら、こんな辛い思いをする事もなかった。

「恭弥聞いてる?」
「何?」
俺は何となく少し冷たい態度で答える。
これが俺の精一杯の強がりだ。
「この後一緒にバイトへ行きましょう。」
「うん。」
俺はそっけなく答える。無理だ、普通に返事が出来ない。

「何?恭弥やきもち焼いてるの?」
流華が言う。
やきもち!?
「可愛いやきもちね。ありがとう。」
流華がにっこり微笑んで言ってくる。
結局その笑顔でまたどうでも良くなる。

「あっ、恭弥、話し変わるんだけど、また凛の話しなんだけど、凛にあれから、メッセージを送っても、返ってこないし、同じ教育学部の凛の友達にも聞いたんだけど、凛、友達にも一切連絡返してないし、何か実家にも帰ってないっぽいんだよな。」

「え?何それ。結構大事じゃん。警察には届けた?」

須羽だけじゃなく、周りの人間全てと急に連絡取らなくなるなんて、流石に異常だと思う。

「一応これから、凛の実家と連絡とって、捜索願い出してもらおうかって、話してたんだ。大袈裟かもしれないけど、ちょっと心配になっちゃって。」

須羽の気持ちは良くわかる。いくら、別れる寸前とは、いえ心配だ。

「凛の友達に、最近の凛について質問したんだよ。最近の凛で変わった事はなかったかって。そしたら、最初は特に何もなかたって言ってたけど、1人の子が、『凛、最近良く新宿へ行ってた。』っていうんだよ。」

新宿?

「新宿で何してたの?」
「それをわかる子はいなかったんだけどさ、、、。」
「えー?じゃあ何?新宿でもしかしたら消えたって事?」
新宿で消えたって、一体新宿で何していたんだ?

「俺はその可能性高いんじゃないかと思ってさ。」
「でも、手がかりがそれだけじゃ何とも探しようがないなぁ。」
「まあ、そうなんだけど。」

俺と須羽で悩んでいると、流華が隣から口を出してくる。

「あの子達に聞けば、何かわかるかもよ?毎日新宿に来てるじゃない。」
「あの子達?」
須羽が尋ねる。
あの子達って、、、。
ああ、新宿の広場でたむろしているあの子達か!!
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