エンドロールを巻き戻せ

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全ての料理が運ばれ、私の25回目の誕生日ディナーはお開きとなった。

私は、プロポーズを切り出されるのならレストランかと思っていたので、少し拍子抜けした。

レストランを出て、私が一彩にお礼を言うと、
「瑞稀、少し歩かない?」
と一彩が言ってきた。

私の胸は一気に跳ね上がる。
もしかして、これは本当にプロポーズされるのかな?


私達は、夜の代官山を目黒方面へ歩いていく。
一彩は何故かさっきまで、馬鹿みたいに喋っていたのに、いきなり何も話さなくなった。

私の心は、期待と不安が入り混じる。
だめだ。心臓が持たない。もう、早く言って欲しい。

私達は気づいたら歩道橋の上にいた。
歩道橋の下を沢山の車達が行き交い、様々な色のライトが私達を照らす。
皆んなそれぞれの目的地に急いでいるんだろう。

歩道橋の上で、一彩が立ち止まって私の方を見る。

「一彩どうしたの?急に黙って、気分悪いとか?」

私が聞くと、一彩は首を振る。
「瑞稀、話しがあるって言っただろ?」

一彩が私に向かって言う。
私はそう言われた瞬間、もうどうにかなりそうだった。
もしプロポーズだったら、YES。YES以外ありえない。

一彩と結婚するのは、ずっと私の夢だったんだから。私は一彩との結婚を勝手に妄想しては、幸せな気分に浸っていた。
着たいドレスだって考えた。

結婚に不安がないといったら嘘になるけれど、一彩と二人なら、私はどんな事でも乗り越えていけそうな気がするの。
だって、今までだってそうだったんだから。



だから、絶対に大丈夫。




二人なら絶対に上手くやれるはず───








「瑞稀、俺他に好きな人が出来たんだ。」
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